Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

高関健/東京シティ・フィル

2021年10月15日 | 音楽
 高関健が指揮する東京シティ・フィルの定期は、ストラヴィンスキー(1882‐1971)の没後50年を記念するオール・ストラヴィンスキー・プロだ。曲目は「小管弦楽のための組曲第2番」(1921)、バレエ音楽「ミューズを率いるアポロ」(1928)、バレエ音楽「カルタ遊び」(1936)、「3楽章の交響曲」(1945)の4曲。各オーケストラの今年の定期の中で、わたしが一番楽しみにしていた演奏会だ。

 4曲ともオーケストラはあまりなじみがなく、また演奏時間もけっこう長いので(4曲合計で80分あまり)、オーケストラは準備が大変だったと思うが、どの曲も準備不足を感じさせず、ごまかしのない、正確な譜読みの演奏だった。高関健の指揮のたまものだが、同時に東京シティ・フィルの基礎的なアンサンブルの向上も感じた。

 1曲目の「小管弦楽のための組曲第2番」はパリのミュージックホールの依頼で書かれたそうだが、その割にはリズムやソリスティックな動きなど、意外に難しそうだ。演奏はそんな難しさを感じさせず、とぼけた味わいを醸し出した。

 2曲目の「ミューズを率いるアポロ」は弦楽器の音の鮮度が高かった。2分割したチェロのそれぞれの動き、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの絡み合い(当演奏会では第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが指揮者の左右に配置された。それが効果的だった)、コンサートマスターとフォアシュピーラーと第2ヴァイオリンの首席奏者の3人のアンサンブルなど、実演でこそ実感できるおもしろさがあった。

 高関健がプレトークでいっていたが、この曲はカラヤンがよくやった(高関健はカラヤンのアシスタントをしていたので、何度も聴いたそうだ)。たしかに弦楽器の威力のデモンストレーションには絶好の曲だ。分厚い音から繊細な音まで多彩な音が展開し、加えて上述のような細かい動きにも事欠かない。カラヤンが好んだのも頷ける。

 3曲目の「カルタ遊び」(高関健はプレトークで「トランプ・ゲーム」のほうがふさわしいといっていた。原題はフランス語でJeu de Cartes)はアバドが好んだ曲で、高関健もその演奏を聴いたことがあるそうだ。たしかに多数の有名曲を潜ませたアバド好みの知的な遊びのある曲だ。演奏はそのおもしろさをクリアに伝えた。

 4曲目の「3楽章の交響曲」はニューヨーク・フィルの依頼で書かれた曲。高関健はバーンスタインの指揮で聴いたことがあるそうだ。そのためかバーンスタインを彷彿とさせるダイナミックな演奏だった。第1楽章はピアノが活躍し、第2楽章はハープが活躍する曲なので、ピアノとハープを指揮者の前に据えた配置が効果的だった。
(2021.10.14.東京オペラシティ)
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