Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

高関健/東京シティ・フィル

2021年06月17日 | 音楽
 高関健指揮の東京シティ・フィルの定期。プログラムはブルックナーの交響曲第5番。この演奏会は、50%規制の下ではあるが、チケット完売になったそうだ。最近の東京シティ・フィルへの評価の高まりの反映だろう。それも高関健という優れた指導者を得たおかげだ。

 高関健と東京シティ・フィルは昨年8月12日に、コロナ禍以来はじめて聴衆を会場に迎えた演奏会を開いたとき、ブルックナーの交響曲第8番を演奏した。まだどのオーケストラも傷口が癒えない状態の中で、ブルックナーを演奏するので注目された。わたしもその演奏会を聴いた。真に感動的な演奏だった。

 さて、今回は第5番。いつものことながら、高関健がツイッターで譜面の検討結果をつぶやいている。今回はとくに多いようだ。わたしは譜面を見ながらそのツイッターを追ったわけではないので、あまり理解できていないが、それでもこれだけ入念に譜面を洗い直すなら、演奏はマンネリ化せず、新鮮なものになるだろうと想像された。

 はたしてその通りの演奏だった。音に張りがあり、音楽の展開には確信があった。高関健の意図がオーケストラに徹底され、指揮者とオーケストラとが一体になっていた。東京シティ・フィルはすっかり高関健のオーケストラになったと感じた。

 第1楽章では導入部の後の「ビオラとチェロが出す流麗な第1主題、ピッツィカートに始まる第2主題、木管楽器が出す伸びやかな第3主題」(柴田克彦氏のプログラムノートより)が、各主題の性格を反映した細かなニュアンスをつけて演奏された。そのニュアンスが考え抜かれたものであることが感じられた。また途中でクラリネットとオーボエが交互にベルアップして吹く箇所があった。あのベルアップは他の指揮者やオーケストラの演奏では見た記憶がないので、おそらく高関健の指示だったろう。おかげで、それぞれのパートがなにをやっているのか、注意が向いた。

 第2楽章では「弦5部による深々とした主題」(同)が共感をこめて、多少比喩的にいえば、魂の底から絞りだすように演奏された。その感動的な歌い方は、一夜明けたいまも胸の奥に残っている。第3楽章はブルックナー特有のスケルツォ楽章だが、「ソナタ形式のような構成」(同)と指摘されるだけあり、意外に複雑だと思った。第4楽章は二重フーガが堂々と展開する異例な構成だが、それがギクシャクせずに、明快に流れた。なお第4楽章でもクラリネットがベルアップする箇所があった。

 終演後、高関健のソロ・カーテンコールが2度もあった。演奏も熱かったが、聴衆も熱かった。
(2021.6.16.東京オペラシティ)
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