Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

プライムたちの夜

2017年11月08日 | 演劇
 新国立劇場の演劇公演「プライムたちの夜」の初日が明けた。作者のジョーダン・ハリソンは1977年生まれのアメリカ人。本作は2014年にロサンジェルスで初演。その後ニューヨークでも上演され、映画化もされた。

 プライムとは人工知能をもつロボットのことのようだが、この定義で正しいかどうか、自信がない。人工知能とかロボットとか、公演プロモーションで使われているアンドロイドとかいう言葉にはまったく疎いので、公演を観てとりあえずそう思ったという程度の定義。

 そのプライムに亡き夫ウォルターの情報をインプットし、昔話を楽しむ85歳のマージョリー、その娘テスと夫のジョン、以上の4人(ウォルターのプライムも1人とカウントする)が登場人物。時は2062年(作者の生年1977年+マージョリーの年齢85歳=2062年)の近未来劇。

 なんといっても、マージョリーを演じる浅丘ルリ子が注目の的。美しくもあり、可愛くもあり、また大女優の風格も漂う。認知症の兆しが見える母マージョリーに苛立つテスを演じる香寿たつき(こうじゅ・たつき)は、その苛立ちが今一つ分かりにくいが、それは台本のせいかもしれない。

 テスの夫ジョンを演じる相島一之(あいじま・かずゆき)は、人のよさを醸し出して味のある好演。ウォルターのプライムを演じる佐川和正(さがわ・かずまさ)は、マージョリーと会話をしているが、じつは人間ではない存在を演じて絶妙。本物のプライムのように見えた。

 プライムが家族の一員になった生活は、正直、気味が悪いが、その気味の悪さをきちんと滲ませた宮田慶子の演出もよかったと思う。

 というわけで、面白かったのだが、不満がなかったわけでもない。プライムが家庭の中に入ってくるという設定は興味深いが、だからこそ、もっとストーリーに発展の余地があったのではないかと想像され、(具体的な台詞の引用は控えるが)人を愛することを称える結末は、陳腐で平凡で、こじんまりと収まってしまった感がある。

 なお、テロリストが置かれた状況を描いた「負傷者16人―SIXTEEN WOUNDED―」から始まった海外の現代戯曲を紹介するシリーズは、本作で終了。全5作、どれも面白かった。また同様の企画を願いたい。
(2017.11.7.新国立劇場小劇場)
コメント (2)
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