Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

オルセー美術館展

2014年08月18日 | 美術
 前回のオルセー美術館展は2010年、テーマは「ポスト印象派」だった。アンリ・ルソーの「蛇使いの女」と「戦争」が並ぶ豪華版だった。普段は図録を買わないのだが(図録は高価だし、我が家には置き場所もないので)、そのときばかりは禁を破って買ってしまった。

 今回は「印象派の誕生――描くことの自由――」。なので(といってもいいと思うが)、マネの作品が柱になっている。会場第1室に「笛を吹く少年」が展示されている。これはすごい。名画中の名画だ。最近‘目ヂカラ’という言葉をよく見かけるが、かりに‘絵ヂカラ’という言葉があるとしたら、この絵こそ相応しい。

 少年の赤いズボンの両側の黒いストライプ、黒い上着そして黒い帽子、これらの黒くて太い輪郭線によって、少年が浮き上がって見える。背景はなにもない灰色の空間。その抽象的な空間と少年の具象性との鮮やかなコントラスト。

 あっと驚く斬新さがあった。近代絵画の流れを変えるインパクトがあったという。それもわかる気がした。今でもそのインパクトは衰えていない。

 もう一つ、これも名画中の名画だが、ミレーの「晩鐘」が来ている。‘西洋絵画’の代名詞のような作品。さすがに美しい。凄味のある美しさだ。夕焼けに染まった雲、夕日に照らされた畑。その前で釘付けになった。その前から立ち去りがたかった。混雑した会場では叶うべくもないことだが。

 今更ながら‘名画’とはすごいものだと思った。でも、一方では、そんな平凡な感想しか浮かんでこないことにもどかしさを感じた。感想がその先に進まないのだ。自分の言葉が出てこない。‘名画’に抱かれるとか、‘名画’の深みにはまるとかは、そういうことかもしれない――。

 これら2点が本展の二枚看板であることは、衆目の一致するところではないだろうか。だが、それはそれとして、では、その次に来る作品はどうだろう。各人各様の関心や好みによって、かなり分かれるのではないだろうか。

 わたしの場合はモネの「かささぎ」だった。過去のモネ展にも来ていた作品。そのときは雪の白さと朝日の輝きに圧倒された。今回は落ち着いて見ることができた。よく見ると、手前の雪が白一色ではなかった。ピンクや青や黄の斑点がびっしり付いている。それが朝日の反映と陰影とを感じさせるのだ。驚いた。なんと手が込んでいるのだろう。モネの秘密の一端を見るような気がした。
(2014.8.15.国立新美術館)

↓各作品の画像(本展のホームページ。「展示構成」をクリックしてください。)
http://orsay2014.jp/highlight.html
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