Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

三姉妹~雲南の子

2013年07月05日 | 映画
 映画「三姉妹~雲南の子」。中国雲南省の高地に住む三姉妹のドキュメンタリー。監督は王兵(ワン・ビン)氏、1967年生まれ。

 高地といっても、半端ではない。そこは海抜3200メートル。森林限界を超えている。ただし日本で想像するような岩稜地帯ではない。草が生えている。その草で羊や豚を飼って暮らす人々がいる。約80戸の村がある。中国の経済的な発展から取り残された村。貧しい村。その村のなかでも三姉妹の生活は極貧のほうだ。

 三姉妹は、10歳の英英(インイン)、6歳の珍珍(チェンチェン)、4歳の粉粉(フェンフェン)。母は家出をしてしまった。父は町に出稼ぎに行っている。なので、三姉妹だけで暮らしている。長女のインインが下の二人の面倒を見ている。インインは朝から晩まで働き詰めだ。10歳にして、恥ずかしながらわたしよりも、ずっと働いている。

 インインは人生のすべてを受け入れている。母がいなくなったことも、父が子供を残して出稼ぎに行っていることも、そして何よりも生活の貧しさも。

 父はいったん帰ってくる。三姉妹は大喜び。だが、父はまた出稼ぎに行くという。今度は下の二人を連れて。三人とも連れて行くことは、経済的にできない。インインはそんな現実を黙って受け入れる。フェンフェンのシラミをとってやる。丁寧にとってやる。別れの前の心配りだろうか。

 でも、やがて、父は帰ってくる。町での生活がうまくいかなかったのだろう。今度は子守り女とその連れ子を連れて。インインはその現実も受け入れる。受け入れるしかない。黙って受け入れる。

 そんなインインの姿に人生そのものを見た気がする。人生の何たるかを教えられた気がする。

 インインは10歳。あと5年もすれば嫁に行くだろう。嫁に行った先でも、働き詰めの生活が待っているだろう。インインの人生はよくならないかもしれない。悔しさもあるだろう、悲しさもあるだろう、けれどもそんな感情はぐっと飲み込んで、黙って生きていくだろう――と思った。

 ラストシーン、見渡すかぎり山また山の山道を行くインインが、崇高に見えた。そこには何か犯しがたいものがあった――それを何といったらいいだろう、威厳という言葉ではちがうような気がする、平たくいえば自立心か、ともかく安易な同情や援助を受け付けない、そんな生き方というか――。
(2013.7.4.シアター・イメージフォーラム)

↓予告編
http://www.youtube.com/watch?v=11a65y1efPM
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