Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

デュッセルドルフ:カストールとポリュックス

2012年02月09日 | 音楽
 翌日はデュッセルドルフに移動して、ラモーの「カストールとポリュックス」を観た。当劇場ではラモーのチクルスを続けてきたそうだ。本作はその掉尾を飾る公演。指揮は音楽監督のアクセル・コバー、演出・振付はバレエ監督のマルティン・シュレッパーという布陣。当劇場の総力を挙げた公演だ。

 ラモーのオペラは、オペラとバレエが混然一体となっている。最初はオペラだが、そのうちにバレエが割り込んできて、いつの間にかバレエになる。それが一息つくと、またオペラに戻って、またバレエが割り込んできて……という繰り返しだ。

 話はそれるが、本年1月に東京オペラ・プロデュースが上演したプロコフィエフの「修道院での結婚」も似た作りだった。あのときには、ルーツを探すなら、ラモーになるのではないかと考えたものだ。

 今回は、最初からオペラとバレエ(バレエというよりもダンス。この公演ではバロック時代のバレエではなく、現代的なダンスになっていた。)が舞台上で同時進行した。オペラとバレエの移ろいに期待していたのだが、そうはならなかった。オペラ歌手は最小限の身振りで歌い、身体表現はダンサーが受け持っていた。

 美術と衣装はロザリエ。透明なプラスティックを無数に積み上げたオブジェが奥にあり、そこにさまざまに変化する照明が当てられた。歌手もダンサーも奇抜な衣装を着ている。現実との接点をもたない、近未来的な舞台だ。ストーリーが他愛ないので(ギリシャ神話に取材した双子座の由来だ)、あっけらかんとして、コミカルな、飛んでいる舞台もよい。

 付言すると、ロザリエは本年6月に初演される新国立劇場の「ローエングリン」で美術と衣装を担当する。どのような舞台になるのだろう――。

 なお本作には1737年の初稿版と、ブフォン論争が起きてジャン=ジャック・ルソーなどの攻撃に晒されて書かれた1754年改訂版がある。今回は初稿版が使われた。初稿版にはプロローグがあり(改訂版では削除)、第1幕以降は劇中劇になっている。興味深い構造だが、その点へのこだわりは窺えなかった。

 オーケストラはノイエ・デュッセルドルファー・ホフムジークというピリオド系の団体だった。歯切れのよい演奏だった。指揮のアクセル・コバーは以前ワーグナーやロッシーニを聴いたことがあるが、バロック・オペラも振るとは知らなかった。ピリオドとモダンの垣根は、今はあってないようなものかもしれない。
(2012.2.2.デュッセルドルフ歌劇場)
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