後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔659〕最新「腰越9条ニュース210号」が届きました。塚越敏雄さんありがとう!

2024年02月18日 | メール・便り・ミニコミ

●こんにちは。
 鎌倉の塚越です。
 遅くなりましたが、腰越9条ニュース210号ができましたので添付します。
 前回も、パレスチナのことを書きましたが伝えきれなかったことがあり、追加しました。
 お読みください。

                             塚越敏雄

 

  田中優子さんの文章も読んでください。

 ◆「弱さ」と生きる
  日本列島の個性を無視して「生産性」と「金もうけ」を
  目標にするのは愛国心からほど遠い

                          田中優子(法政大学名誉教授・前総長)

 大みそかに「『酷』の1年」を書いて、明けたらまたもや酷がやって
きた。これは日本列島に特徴的な「酷」であった。
 地震のもたらす日本列島の脆弱さと海に囲まれている列島という性質
は、まさに日本の個性である。
 個性をどう生かしてその美質を受け取り、また与えるかは、個々の
人間が求められているとと同じだ。

 しかし近代以降の日本は、その個性を生かしてきたとは言い難い。
 むしろこんな列島にいたくないとばかりに、朝鮮半島や旧満州(中国
東北部)や東南アジアに出て行って戦争を仕掛け、おのれのものにしよ
うとしては、失敗を重ねた。
 戦後になると被害をもたらした原子力を「平和利用するのだ」と言い
くるめられて購入し、この豆腐のような列島の、それもどう形が変わる
かわからない海沿いに次々に発電所を設置した。

 実際、この正月の能登半島地震では、原発設置計画のあった石川県珠
洲市をはじめ、広い範囲にわたって海岸が隆起した。
 原発をつくらなくて良かった、と多くの人が思った。
 一地域の原発事故は日本全国に深刻な影響を与える。数々の困難と地
域の対立に耐えて反対運動を展開した方々に、心より感謝したい。

 しかし日本海沿いには、いや列島のあちこちに実際につくられた原発
が何基もあり、暗雲は立ち込めている。
 そこにまた原発を増設すると言っている政治家たちは、その手で裏金
を集めている。原発関連業者が自民党に多額の献金をしていることが、
原発をやめられない理由だともささやかれている。
 とうとう上場廃止となった東芝は、その原因のひとつが原発による
莫大な損失に向き合わず、それを隠し続けたことだった。

 日本列島をとるか原発をとるか、もはや二者択一の時期に来ている。

 もうひとつ向きあう必要があるのは漁業だ。
 海に囲まれているこの列島では昔から海の恵みは米とともに、ほとんど
の日本人の栄養源となり、牧畜をせずとも人は生きてこられた。
 大企業による不知火海への水銀の垂れ流しで水俣の漁師が漁業をでき
なくなっただけでなく、多くの方々が亡くなり、障害を負った。

 福島の原発事故も、先日の海洋放出も、漁業に影響を与えた。
 本来は漁業こそ日本列島に住む人々が守らねばならない基盤的職能だ
が、サラリーマンがエリートとして尊重され、漁師たちは幾度も苦境に
立たされてきた。
 今回も同じだ。そのような職業格差は、依然として存在する。

  日本列島の個性と美質は顧みられることなく、無理やり「別のありよ
 う」を求められ、別の国土になることを要求されているかのようだ。
 この国の個性を無視して「生産性」と「金もうけ」を目標にするの
は、愛国心から程遠い。

 国土の弱さをしっかり見据え、弱さと共に生きるには何が必要かを
考え抜き、政策に反映するのが日本の政治なのではないか?
 新自由主義は、日本列島に最もそぐわない。

 「国土強靭化」が計画されていて、それは必要なことだが、完全な
強靭化は不可能かもしれない。
 強くなることより、耐震構造のごとく柔軟になること、弱さの上に他
の国にはない独自の文化をつくることこそ、必要なのではないだろうか。
 2月10日は石牟礼道子さんの命日である。この人ほど日本の弱さと美
質を見つめ続けた人はいなかった。
                  (2月4日「東京新聞」朝刊5面「時代を読む」より)


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