台湾でも夢二を知る人は多く、人気もあるといいます。しかし、夢二の中国語文献は少なかったため、2022年、まず台湾で出版されました。本書はその出版の2年後、今年の2月に日本で翻訳出版されたものです。
夢二といえば美人画が有名ですが、その他にも児童向け作品、少年少女画、図案・商業デザイン、雑誌の表紙と挿絵、書籍の装丁、楽譜の装丁、挿絵・漫画、人形作品などのマルチアーティストとして名を馳せています。本書は、現代でも十分通用する洗練された絵画がふんだんにちりばめられていて、それをくつろいで眺めるだけで楽しくなります。お茶の間美術館絵本といった趣でしょうか。
夢二という人物にも興味をそそられます。幸徳秋水主宰の平民社に出入りし、社会主義的な考えも持ち合わせていたのでしょうか。また、自由恋愛主義とでもいうのでしょうか、多くの女性と浮き名を流したことも知れ渡っています。アナキスト・大杉榮との類似性もあるのでしょうか。それゆえ、美人画に付き合った女性たちの面影を見ることができるのは感慨深いところがあります。
■ 大正ロマンを輝かせた、竹久夢二の人生と作品(アマゾンのサイトより)
西欧の文化や思想が、人々の暮らしに大きな変化をもたらした大正時代。「夢二式美人」をきっかけに人気を博した夢二は、ジャンルの垣根を越え、庶民の暮らしに芸術を浸透させていきました。本書では、人生と作品という2つの視点から、夢二の作品を読み解きます。独学で芸術を学んだ夢二が、どのようにマルチアーティストとして活躍するようになったのか、そのルーツと全貌を美しい図版と共にたどります。