わくわく CINEMA PARADISE 映画評論家・高澤瑛一のシネマ・エッセイ

半世紀余りの映画体験をふまえて、映画の新作や名作について硬派のエッセイをお届けいたします。

嘘ではない、本当の物語「マシンガン・プリーチャー」

2012-02-14 18:48:13 | 映画の最新情報(新作紹介 他)

Photo 銃を持った牧師と呼ばれる、元麻薬売人サム・チルダース。彼はアフリカのスーダンに乗り込んで、ゲリラに拉致された子供たちの命を救うため銃で戦いを挑む…。この実話を映画化した作品が「マシンガン・プリーチャー」(2月4日公開)です。監督は「チョコレート」「ネバーランド」などのマーク・フォースター。チルダースに扮するのが「300<スリーハンドレッド>」のジェラルド・バトラーで、彼自身製作総指揮に名をつらねるという力のいれようだ。二人とも実在のチルダースに接触して、彼の性格に触れたという。
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 1990年代の米ペンシルベニア州。刑務所を出たチルダースは、麻薬と酒に溺れる生活に戻り、ヒッチハイクの男を半殺しの目にあわせるという罪を犯す。後悔にさいなまれた彼は、妻リン(ミシェル・モナハン)に助けを求め、教会で洗礼を受ける。第2の人生を歩み始めたチルダースは、数年後ウガンダから来た牧師の話に感銘を受け、ボランティアとしてウガンダにおもむく。そして、隣国スーダンで神の抵抗軍(LRA)と称する武装ゲリラが村々を襲って子供たちを拉致、強制的に少年兵に仕立てているという現実に直面する。
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 紛糾する内戦の中で、親の遺体にとりすがって泣き、地雷に吹き飛ばされる子供たち。チルダースは、スーダンに孤児院を建設しようと決意。やがて、拉致された子供たちをLRAから取り戻す戦いに乗り出す。何といっても、チルダースのキャラがユニークだ。ならず者からクルッと方向転換し、熱狂的な説教者(牧師)に転身。スーダンの子供救済のために、故郷の企業や人々に強引に寄付や借金を申し込む。そしてスーダンでは、銃によるバイオレンスでLRAに立ち向かう。いわば、テロルの姿勢を貫くプリーチャー(牧師)だ。
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 映画の最後、実在のチルダースが登場して言う。「言い訳はしない。私が、あなたがたの拉致された家族を救うとしたら、そのための手段を問えるか」と。それは、「神のしもべが銃を手に戦うのは正しいことだろうか?」という、多くの常識的な批判の声に対する彼の答えだ。だが現在は銃を捨て、エチオピアやウガンダ、南スーダンなどで救済プロジェクトを手がけているそうだ。片手にショットガン、もう片方の手に聖書。まるで、西部劇のガンマンのような男。彼は語る。「人を助けるためには政治の知識は必須ではないと思う。食べ物が必要な人がいたら、食べ物を与えるだけなんだよ」―五つ星採点で★★★★。


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