アイデンティティーを見失った若者が、真実の自分を探す危険な冒険行に突き進む。ジョン・シングルトン監督「ミッシングID」(6月1日公開)は、失踪児童・行方不明者サイトを題材にしたサスペンス・アクションです。郊外に住む高校生ネイサン(テイラー・ロートナー)は、あるとき誘拐児童サイトに13年前の自分の写真を発見。幸せな家庭で暮らす自分がなぜこのサイトに? 俺は一体誰なのか? ネイサンが自分を疑い始めた瞬間、両親ら周囲の人々が消され始め、過去の日常がすべて仕組まれたものであることを知る。
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毎晩見る不吉な夢と暴力衝動、謎のカウンセラー、ベネット医師(シガーニー・ウィーバー)の存在、CIAを名乗る男や凶悪犯罪組織を率いる男の登場、近所に住む幼なじみの少女カレン(リリー・コリンズ)との逃亡劇、そして自分に潜在する戦闘能力と国家的陰謀がからむ<ある暗号>の顕在。アメリカ社会では失踪児童が年間80万人に及ぶという。こうした不条理な現実を素材にしたアイデンティティー探しというアイデアが抜群に面白い。加えて、パソコンによるサイト検索、ネイサンとカレンを監視・追跡する電子機器。こうした電子ネットワークがネイサンを追いつめ、彼の過去の記憶の断片をつなげていく。
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ネイサンを演じるテイラー・ロートナーは、「トワイライト」シリーズでブレイクした肉体派十代スター。監督のシングルトンは、デビュー作「ボーイズ’ン・ザ・フッド」(91年)で注目され、近作に「ワイルド・スピード×2」(03年)などがあるアフリカ系米国人。だがディテールの流れは、いかにもハリウッド流ガキンチョ・サスペンスといった感じ。こうした現代的な題材が、なぜ浅薄なアイドル映画になってしまうのだろう? 救いは、「エイリアン」で衝撃的なヒロインを演じたシガーニー・ウィーバーや、「ミレニアム」三部作のスウェーデン俳優、ミカエル・ニクヴィストら脇役陣の確かな存在感にある。(★★★)
艶麗
千葉県野田市・清水公園
バラ・ガーデンで