わくわく CINEMA PARADISE 映画評論家・高澤瑛一のシネマ・エッセイ

半世紀余りの映画体験をふまえて、映画の新作や名作について硬派のエッセイをお届けいたします。

話題の「イタリア映画祭2012」がGWに開催

2012-04-10 17:43:37 | 映画祭

8 恒例の「イタリア映画祭2012」がゴールデン・ウィークに開催されます。期間は4月28日(土)~5月4日(金・祝)。開催場所は、東京の有楽町朝日ホール。今回は、2010年以降に製作された新作14本を上映。代表作は、昨年のヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞を獲得し、本年の米アカデミー賞イタリア代表にも選ばれた「大陸」(エマヌエーレ・クリアレーゼ監督)、エミール・クストリッツァ監督絶賛の「七つの慈しみ」(ジャンルカ&マッシミリアーノ・デ・セリオ監督)、実際に起こった事件から創作された生々しいドラマ「至宝」(アンドレア・モライヨーリ監督)など。
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 その中で、日本での劇場公開が決まっている3作品-6時間超に及ぶ家族の物語「そこにとどまるもの(仮題)」(ジャンルカ・マリア・タヴァレッリ監督)、法王版・ローマの休日といわれる「ローマ法王の休日」(ナンニ・モレッティ監督)、移民の中国女性を主人公にした「シュン・リーと詩人(仮題)」(アンドレア・セグレ監督)が特別上映となる。更に、来日ゲストが登壇して、開会式や舞台挨拶、座談会などが予定されています。
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 本映画祭は、大阪でも5月12日(土)~13日(日)、ABCホールで開催され、日本未公開作7本が上映される。2001年春に始まったイタリア映画祭。このイベントでの上映をきっかけに、「人生、ここにあり!」「愛の勝利を ムッソリーニを愛した女」「ゴモラ」「ポー川のひかり」「湖のほとり」などの力作が日本で一般公開されて、ヒット。人間ドラマから社会派作品まで、幅広いジャンルの異色作がイタリア映画新時代の到来を告げた。今年は、どんな作品にお目にかかれるか、楽しみです。公式サイト:http://www.asahi.com/italia/

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春天来了!

千葉市稲毛区の草野水路で

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「100年のロシアPartⅡ 旧ソ連映画特集」開催

2011-09-08 19:31:25 | 映画祭

Photo かつて旧ソ連は映画大国でした。セルゲイ・エイゼンシュテイン監督が、モンタージュ理論を確立したサイレントの名作「戦艦ポチョムキン」(1925年)に始まり、第二次世界大戦後から1980年代まで、ソ連映画界は社会的なテーマを持つ斬新な、かずかずの異色作を送り出してきた。この12月でソ連崩壊から20年を迎える節目にあたって、その時代の傑作・問題作12本が連続上映される。開催期間は9月17日~25日。開催場所は東京・渋谷のアップリンク・ファクトリー。
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 主な上映作品は、エイゼンシュテインの「メキシコ万歳」(31~79年)、若い兵士の苦難を描く「誓いの休暇」(59年/グリゴーリ・チュフライ監督)、若い男女の愛を引き裂く戦争の非情さを新鮮な感覚でとらえた「鶴は翔んでゆく」(57年/ミハイル・カラトーゾフ監督)、チェーホフの戯曲をもとにした人間喜劇「機械じかけのピアノのための未完成の戯曲」(76年/ニキータ・ミハルコフ監督)、3人の若い女性の人生を現代的なタッチで描いた「モスクワは涙を信じない」(79年/ウラジーミル・メニシェフ監督)など。
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 なかでも注目作が、75年度米アカデミー外国語映画賞を得た黒澤明監督の「デルス・ウザーラ」です。先住民族の猟師とロシア人探検家アルセーニエフとの交流を、シベリアの大自然を背景につづった壮大なドラマ。現地の厳しい自然の中でのロケ撮影に際しては、黒澤監督の完全主義が貫かれたという。また、徹底したリアリズムで社会の実相や人間の複雑さをとらえ、ソ連時代は公開禁止処分を受けたり無視されたりしたアレクセイ・ゲルマン監督の「道中の点検」(71年)など3作品が上映される。野上照代、植草信和、下斗米伸夫各氏のトークショーも予定されている。詳細は http://russia100.doorblog.jp/ まで。


名優アン・ソンギ特集「韓国ニュー・ウェーブ、再発見」

2011-06-30 17:36:15 | 映画祭

Img442 アン・ソンギ(1952~)は、確かな演技力と50年に及ぶキャリア、誠実な人柄によって敬愛される韓国の国民的俳優です。子役出身で、1980年代におこった韓国ニュー・ウェーブの流れとともに、意欲的な監督の作品に出演、昨今の韓国映画隆盛の原点的な存在になった。その彼が、80年代初頭に表現の自由をめざした作家たちの作品に出演したころの2作が連続上映される。韓国では、1979年に軍事独裁政権が崩壊。だが軍政は続き、87年の民主化宣言まで激動の時代だった。そんな中で、新世代の映画人は果敢な戦いを続けた。今回上映される2作は、時代を反映して、映画作りの喜びにあふれたものになっています。
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 まず、目下上映中の作品が、イ・ジャンホ監督(1945~)の「風吹く良き日」(80年・日本劇場初公開・6月18日から上映中)。ソウルで出会った地方出身の3人の青年の友情と恋を描く。いまから見ると、やや古臭い作りだが、底辺に生きる若者の閉塞感や希望を生き生きと描写する。アン・ソンギが扮するのは、中華料理店の出前持ち。吃音症で、最後にボクサーをめざす青年を好演。20代後半だった彼の初々しさにビックリ。監督のイ・ジャンホは、76年に芸能界風紀取り締まり事件に連座、映画製作を禁じられたが、本作で復帰。以後、「暗闇の子供たち」(81年)、「旅人は休まない」(87年)などの名作を手がけた。
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 もう1本の作品は、ペ・チャンホ監督の「鯨とり/ナドヤカンダ」(84年・リバイバル上映「鯨とり/コレサニャン」から改題・7月9日公開)。うだつのあがらない大学生と、インテリ浮浪者が、売春宿で出会った失語症の少女を助けて、追っ手から逃れ、故郷の離島まで送り届けるというロードムービー。アン・ソンギは、やや貫禄が出て、強面でユーモラスな浮浪者を演じます。題名の「鯨とり」とは、「大きな目的をめざす、夢をつかむ」という意味の隠語だそうだ。監督のペ・チャンホ(1953~)は、高校の先輩にあたるイ・ジャンホに師事。代表作は「赤道の花」(83年)、「ディープ・ブルー・ナイト」(85年)など。
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 アン・ソンギは、その後「ディープ・ブルー・ナイト」、「太白山脈」(94年)、日本映画「眠る男」(96年)、「ピアノを弾く大統領」(02年)、「光州5・18」(07年)などに出演。韓国のアカデミー賞にあたる大鐘賞主演男優賞を過去5度受賞。いまなお、多くの監督・俳優たちに大きな影響を与えている。ドラマ「冬のソナタ」で韓流ブームが爆発した直後、彼にインタビューをしたことがある。そのとき彼は、このブームを肯定しつつ「いつまで続くかが問題」と語っていた。そして、「自分は、監督やプロデューサーを手がける気はなく、あくまで俳優としての立場を貫きたい」と。それが、名優の変わらぬ信念のようです。
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花菖蒲の涼やかさ

(千葉県野田市の清水公園で)

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「イタリア映画祭2011」がGWに開催

2011-04-17 18:02:23 | 映画祭

Img417 今年も、ゴールデンウィーク恒例の「イタリア映画際2011」が開催されます。期間は、4月29日~5月4日。開催場所は、東京の有楽町朝日ホール。2010年に製作された日本未公開の新作イタリア映画11本と、2000年代初頭のイタリア映画を代表する旧作1本を上映。代表作は、2010年カンヌ国際映画祭でエリオ・ジェルマーノが最優秀男優賞を得た「ぼくたちの生活」(ダニエーレ・ルケッティ監督)、今年の米アカデミー賞のイタリア代表に選ばれた「はじめての大切なもの」(パオロ・ヴィルズィ監督)、イタリア統一運動を描いた大作「われわれは信じていた」(マリオ・マルトーネ監督)など。また、ハートフル・コメディー「アルデンテな男たち」(フェルザン・オズペテク監督)と、男女の恋愛模様を描いたヒット作「最後のキス」(ガブリエーレ・ムッチーノ監督/2001年)を特別上映。
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 また、来日ゲストの舞台挨拶が、4月29日~5月1日に予定されている。本映画祭は、大阪でも5月7日~8日、ABCホール(大阪・福島)で開催され、7本の作品が上映される。更に今年は、過去のイタリア映画際で上映された作品が数本、日本で公開される。なかでも、独裁者ムッソリーニを愛したが故に悲劇に見舞われる女性をとおして、20世紀初頭の激動の時代をとらえた「愛の勝利を/ムッソリーニを愛した女」(マルコ・ベロッキオ監督:5月28日公開)は衝撃作です。その他、「プッチーニの愛人」(パオロ・ベンヴェヌーティ他監督:6月18日公開)、「やがて来たる者へ」(ジョルジョ・ディリッティ監督:10月公開)などが上映される。本映画祭の詳細は http://www.asahi.com/italia/ まで。


ブラジル映画の新しい波「シネマ・ノーヴォ特集」

2010-12-04 15:58:43 | 映画祭

Img381 1950~60年代、世界中の新世代映画作家たちが新しい潮流を巻き起こし、以後の映画界に変革をもたらした。その好例が、ジャン=リュック・ゴダールを筆頭とするフランスのヌーベルバーグだった。時を同じくして、ブラジルでおこったのがシネマ・ノーヴォ(新しい映画)です。このとき製作された伝説的作品群は、反ハリウッド・モデルを特徴とするもので、一世を風靡。なかでも、グラウベル・ローシャ監督「黒い神と白い悪魔」(64年)などが印象に残っている。そのシネマ・ノーヴォ作品が、いままた世界的に再評価され、各国の映画祭でデジタル修復による回顧上映も行われている。今回、日本でも、3人の代表的な映画作家による計5作品が「シネマ・ノーヴォ特集」として上映されることになった。
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 そのうちの1作品、ジョアキン・ペドロ・デ・アンドラーデ監督の「マクナイーマ」(69年)を見てきましたが、これがトンデモナイ珍品で、思わずドキッとさせられます。ブラジル近代文学の代表として知られるマリオ・デ・アンドラーデの小説をもとに映画化されたものだとか。物語の冒頭、アマゾンの密林で黒人の中年男の姿をした赤ん坊が生まれる。不吉を意味する“マクナイーマ”と名づけられたその子は、魔法の泉の水を浴びて美しい白人の青年に変身。早速、彼は、兄弟たちと都会に出かけて行く。だが、そこで遭遇したのは、女性ゲリラや、人食い巨人の異名を持つ金持ちなど、常識を超えた人間ばかり。マクナイーマ一行は、次々と奇想天外な珍事・奇談の嵐に巻き込まれる…。
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 トロピカルでサイケデリックな色彩世界で繰り広げられる、ハチャメチャで幼児症的なドタバタ映画とでもいったらいいだろうか。加えて、映画作法の面でも未熟です。でも、その裏にうかがわれる不条理でグロテスクな世界には、都市文明や政治に対する痛烈な風刺や批判がこめられていて、一見に値する。このほか、同じデ・アンドラーデ監督の「夫婦間戦争」(75年)、ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督の「リオ40度」(56年)と「乾いた人生」(63年)、グラウベル・ローシャ監督の「切られた首」(70年)が上映されます。いずれも、鋭い社会風刺や反権力の姿勢に満ちた作品。開催期間は12月4日~24日の期間限定ロードショー。開催場所は東京・渋谷の[シアター]イメージフォーラムです。


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