永瀬正敏、宮沢りえ主演の「ゼラチンシルバーLOVE」(3月7日公開)は、写真家の操上和美(くりがみ かずみ)が原案・撮影監督・監督を手がけた作品です。そして、映像もドラマの進行も、ユニークな仕上がりになっています。無機質な部屋から向かいの女をビデオカメラで監視するカメラマン(永瀬)。運河をへだてた部屋で24時間監視され、ビデオで撮られる美しい女(宮沢)。映画は、カメラマンがビデオやカメラで収めていく女のプロフィールをとらえながら、ふたりの交わらない線をたどっていきます。
この作品で、宮沢りえは、主人公のカメラマンの被写体になると同時に、操上監督の被写体にもなるわけです。そして、その姿は、あくまで冷たいまでの美しさを保ち続けます。無機質な部屋、無造作に積まれた本の列、テーブルがひとつ、キッチンにはステンレスの鍋。そこで女は静かに本を読み、卵をきっちり12分30秒かけてゆでて食べるという生活を繰り返す。操上監督は、セリフを極端におさえ、ある時は超クローズアップで、ある時はロングショットで女の姿を凝視し、エロスの影を浮かび上がらせます。
もともと生活臭のないガラスのような美しさが宮沢りえの魅力ですが、この映画は、そうした彼女の美を、つきつめてとらえていきます。そして、その正体がわかった時の衝撃…。さらに、街並みや草木やゴミを映し出すひとつひとつのショットも、くすんだ色彩で存在感を与えられ、素晴らしい構図を作り出す。そんな中で、宮沢りえのプロフィールが、まるで極彩色の蝶の標本のように浮かび上がる。新しい実験精神にあふれた映像作品であると同時に、冷たい熱さを秘めた宮沢りえのビューティショットも見どころです。