わくわく CINEMA PARADISE 映画評論家・高澤瑛一のシネマ・エッセイ

半世紀余りの映画体験をふまえて、映画の新作や名作について硬派のエッセイをお届けいたします。

オダギリ ジョー、アジア映画に羽ばたく

2009-01-30 18:33:38 | スターColumn

Img024_2  オダギリ ジョーの海外出演作品が2本待機しています。そのひとつ「プラスティック・シティ」(3月公開)は、中国・香港・ブラジル・日本の合作。監督は香港出身のユー・リクウァイ。ブラジルを舞台にしたクライム・ムービーで、オダギリは養父とともに闇稼業に暗躍する青年を好演。共演の養父役に、「インファナル・アフェア」シリーズの名優アンソニー・ウォン。猥雑なサンパウロ市の下町と、緑したたるアマゾンのジャングルを舞台に、オダギリの茫洋とした容姿がサスペンスフルで幻想的なドラマに生かされています。

 もう1本は、韓国の鬼才キム・ギドク監督の「悲夢」(27日公開)。せつない夢に翻弄される男女の狂おしい愛を描いた作品で、オダギリの役は夢と現実の間をさまよう男。ギドク監督は、彼を「孤独を愛する人」と評しているが、この作品でもオダギリには幻想的で茫洋としたキャラクターがぴったり。どうやら海外の監督たちは、彼のつかみどころのない底深さに惚れこんでいるみたい。また、中国の田壮壮監督「狼災記」も待機中です。

 ところで、彼の先輩格といえば浅野忠信。浅野の海外での近作は、タイ・オランダ・香港・韓国合作「インビジブル・ウェーブ」(06年)や、ドイツ・カザフスタン・ロシア・モンゴル合作の秀作「モンゴル」(07年)。彼の個性もスケールが大きくて強烈。外国語のセリフをマスターして、難なく国際舞台に進出しています。このふたりのように、日本の俳優たちには、もっともっとアジア各国の映画界に羽ばたいてほしいものです。


1950年代はSF映画の宝庫だった!

2009-01-27 19:22:49 | 映画の話 あれこれ

Main02_ph  地元のユナイテッド・シネマ春日部で、キアヌ・リーブス主演のSF「地球が静止する日」を見てきました。1951年に発表されたロバート・ワイズ監督の「地球の静止する日」のリメークで、今回は戦争や環境破壊で終末間近の人類への警鐘が強いテーマになっています。旧作では、ノッペラボーのロボット、ゴート君が印象に残っていましたが、今回もスケールをデカクしたゴートが登場したので懐かしでいっぱい。SF映画では、宇宙人が地球への冷酷な侵略者として扱われるのがパターンでしたが、ワイズ監督の旧作がその型を打ち破って、エイリアンを地球の救済者として登場させたのでした。

 思えば、1950年代は楽しいSF映画が数多く作られた時代。火星人が大挙して地球への移住を企て戦いを仕掛けてくるという「宇宙戦争」(53年)。この作品は、スティーブン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ主演で05年にリメークされましたが、旧作のほうがはるかに面白かった。また、昆虫怪人ミュータントが登場する「宇宙水爆戦」(55年)や、ユーモラスなロボットのロビーが活躍する「禁断の惑星」(56年)なども忘れられない。おそらく、1950年代末に米ソが人工衛星の打ち上げ競争を始めて、宇宙開発の第一歩を踏み出したことが、SFブームを呼んだのでしょう。

 SF映画のベストワンいえば、なんといってもスタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」(68年)だけれども、青春時代に見た1950年代のSF映画には宇宙への素朴な興味と夢があふれていて、いまでもときどきDVDやビデオで見直しています。


ブラピがアカデミー主演男優賞の本命か?

2009-01-25 17:14:21 | 映画の最新情報(新作紹介 他)

Img019_2 第81回米アカデミー賞のノミネーションが発表されました。その中で、ブラッド・ピットが主演男優賞候補になっています。対象作品は、デビッド・フィンチャー監督の「ベンジャミン・バトン数奇な人生」(27日公開)。1920年代に書かれたF・スコット・フィッツジェラルドの短編小説の映画化で、アメリカ映画としては久しぶりに素晴らしい作品に仕上がっています。ブラピが扮するのは、1918年に80歳で生まれて、年をとるごとに若返っていくという男ベンジャミン。彼は、その数奇な人生をみごとに演じています。

 ブラピの新作といえば、コーエン兄弟の「バーン・アフター・リーディング」も424日に公開。このクライム・コメディで、彼はスポーツドリンク好きのiPod中毒者で、筋肉自慢のフィットネスセンター従業員というオバカ演技を披露。その演技の幅広さに、思わずウーン!「ベンジャミン・バトン」の演技は、たとえて言えば名優マーロン・ブランド風。「バーン・アフター・リーディング」での容姿は、永遠の青春スター、ジェームズ・ディーンを思わせます。彼が、これからどんな大スターになっていくか楽しみ。222日(日本時間23日)の授賞式では、是非ともブラピにオスカーを取ってもらわなきゃ、ね。


アンディ・ラウの「三国志」を楽しむ

2009-01-21 19:09:55 | 映画の最新情報(新作紹介 他)

Img007  中国古代の英雄伝「三国志」が、ジョン・ウー監督によって映画化された「レッドクリフPartⅠ」が大ヒット、完結編「レッドクリフPartⅡ」も410日に公開されます。この作品は、有名な赤壁の戦いをSFXを駆使して描いたスペクタクル。アメリカ・中国・日本・台湾・韓国合作による、まさに超大がかりなプロジェクトです。

 いっぽう、香港の人気スター、アンディ・ラウ主演の「三国志」も214日に公開。監督は、やはり香港出身のダニエル・リー(「ブラック・マスク/黒侠」96年)。こちらは、約600年前に書かれた半史実小説「三国志演義」に基づいて製作され、アンディ・ラウは戦乱の中国で平民から英雄になった趙雲に扮している。「レッドクリフ」では、「インファナル・アフェア無間序曲」の中国俳優フー・ジュンが演じている役です。

このラウ版の「三国志」のスタイルは、中国の伝統を生かした古典劇といったところ。蜀の君主・劉備に仕えた趙雲が魏の曹操軍を相手に頭角を現わし、仲間の将軍たちを失ったあと、年老いて最後の戦いにおもむくまでが描かれます。ユニークなのは、趙雲の生涯を見守る平安(サモ・ハン)と、曹操の孫娘・曹嬰(マギー・Q)というニューキャラの登場。そのほかは、まるで京劇でも見るかのようなスタイリッシュな映像で、武将同士の対決や合戦シーンが展開。その背後に浮かび上がるのは、まさに武士道の魂。「レッドクリフ」の現代的な装いとは対照的な武侠映画スタイルを楽しむのも、また良きかな、です。


ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村