◎クレイマー、クレイマー(1979年 アメリカ 105分)
原題 Kramer vs. Kramer
staff 原作/アヴェリー・コーマン『Kramer vs. Kramer』
監督・脚本/ロバート・ベントン 撮影/ネストール・アルメンドロス
美術/ポール・シルバート 衣装デザイン/ルース・モーリー
音楽/ヘンリー・パーセル アントニオ・ヴィヴァルディ
cast ダスティン・ホフマン メリル・ストリープ ジェーン・アレクサンダー
◎離婚と親権
自立を求めて家を出て行く情緒不安定な妻と、
仕事優先で短気で感情的な夫が8年も一緒に暮らせば、
当然、小さなことから大きなことまでいさかいがたえなくなるだろう。
70年代くらいからアメリカの深刻な問題になってきたのは、離婚と親権だ。
けど、もともと離婚して親権を争う人達は、
夫も妻も、両方ともかなりきつい性格なんじゃないかっておもってきた。
きついっていうか、わがままっていうか、ともかく自分大好きな人達だ。
ぼくはかなり古びた日本人なものだから、
どうも簡単に離婚してしまう風潮は好きではないんだけど、
ことにこの映画の、
メリル・ストリープの身勝手さと、
ダスティン・ホフマンの無理解さには、
無性に腹が立つ。ていうか、腹が立った。
といっても大学に入学した頃の話だけどね。
けど、同時に、
メリル・ストリープのどうしようもない母性の寂しさと、
ダスティン・ホフマンの生来持っていたであろう父性の優しさもまた、
ちょっぴりわからないでもなかった。
で、35年も経ってしまった今、あらためて観直しても、
似たようなことを考えてる。
人間ってのは、どれだけ年を食っても、あんまり変わらないんだな~、
てなことをしみじみと感じたんだけど、
この映画でいちばん人間的だとおもうのは、
ダスティン・ホフマンが彼女をアパートに連れ込んでくる件だ。
夜中、トイレに立った息子と、まっぱだかの彼女が鉢合わせるんだけど、
こういう離婚と親権を真正面から扱った映画でも、
人間の本能っていうか、性欲の面に関して、
オブラートに包むような表現はしていなくて、
父親になっても新しい彼女とはセックスをするんだっていう、
ひとりの人間として描かれてて、
息子と対峙するときも、
父と子でありながら、男と男のつきあいなんだという面も伝わってくる。
それは、ときとして、どちらが少年でどちらが大人なのかという点についても、
ときに健気に、ときに憂鬱に、ときに感情的に描くのは大変で、
どれだけダスティン・ホフマンの意見が脚本に反映されてるか知らないけど、
どうやらこのあたりから、
ダスティン・ホフマンは製作する側に興味があったのかもね。