◎クリムゾン・ピーク(2015年 アメリカ、カナダ 119分)
原題 Crimson Peak
監督 ギレルモ・デル・トロ
出演 ミア・ワシコウスカ、ジェシカ・チャステイン、トム・ヒドルストン
◎クリムゾン・ピークに気をつけなさい
ミア・ワシコウスカは死者の魂と通じ合うちからを持っているっていう設定で、だから、母親が「クリムゾン・ピークに気をつけなさい」っていうなんともおもわせぶりな忠告をしてくれるんだけど、そのクリムゾン・ピークに棲んでる近親相姦の姉弟の罠に誘い込まれかけた際、父親が殺されちゃうんだけど、なんで死んだ父親は幽霊になって現れて忠告してくれないんだよっていう疑問は、余計なお世話だよね。
で、ラストに赤い雪が降るのかとおもったらきわめて定番のゴシック・ホラーだった。
赤い粘土のせいで土が赤く変色してしまう山頂に建つ、なかば廃墟と化した屋敷でひきおこされる怪奇な物語とくれば、なんだかおもしろそうな展開を期待するけど、でも、こういう設定はやっぱり定番になりやすいんだろうね。赤く染まった幽霊が、かつてこの屋敷で惨殺されて地下室の赤い液体の詰められた樽の中で眠っている遺体の魂だというのも出だしからありありとわかるし、とうに死んでいる彼女らが真実を語ろうとしているのもわかる。
まあ、その真実っていうか、ミア・ワシコウスカを殺してその財産をぶんどろうとしているトム・ヒドルストンとジェシカ・チャステインがいかにも幽霊よりも怖い悪人を演じてますって感じで登場してくるから猶更なんだけど、まあこの作品はそんな事実を探り出していくのが主題じゃないしね。
人間の業の深さっていうか、粘土掘削機によって粘土層をひたすら掘り下げていく先にあるものが結局なんだかよくわからないんだけど、そういうわからないものを求めるために結婚詐欺めいた重婚の果てに次々に女性を殺してそのぶんどった財産を掘削機につぎ込んでいく夫婦の異常さを描こうとしてるんだろうしね。
でも、その異常さがあまりにも異常なだけなものだから、ちょっと納得しづらい。いくら生まれ育った屋敷とはいえ、とてもじゃないけど暮らすには不向きなところに住みながら、限りなく失敗するにちがいない事業をなんで続けなければいけなかったのかなって気になっちゃうからだ。
とはいえ、主要な3人の演技は大したもので、絵作りもさすがにギレルモ・デル・トロだけあって単純な話とはいえ、ついつい引き込まれちゃうんだよね。