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☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
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▽=☆

スリー・ビルボード

2018年07月31日 00時15分19秒 | 洋画2017年

 ☆スリー・ビルボード(2017年 アメリカ、イギリス 115分)

 原題/Three Billboards Outside Ebbing, Missouri

 監督・脚本/マーティン・マクドナー 音楽/カーター・バーウェル

 出演 ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル、アビー・コーニッシュ、ジョン・ホークス、ケリー・コンドン

 

 ☆ミズーリ州エビング

 架空の町だ。そこに三つの大きな広告板が掲げられる。「娘はレイプされて焼き殺された」「未だに犯人が捕まらない」「どうして、ウィロビー署長?」で、それを注文したのが、その母親フランシス・マクドーマンドってわけなんだけど、彼女の無表情ながらも多彩な表情を見せる演技の小気味よさといったらない。

 まあ、くわしいことはさておき、アメリカ南部の現実を皮肉たっぷりにしかも暴力的に描いているにもかかわらず、なんだか大らかさを感じちゃうのは、ウディ・ハレルソンの演じた癌で余命いくばくもない警察署長のせいかもしれないし、かれに感化されていくレイシストすなわち人種差別主義者にしてマザコンのサム・ロックウェルや、132㎝の小人症のピーター・ディンクレイジや、もしくは後任署長のクラーク・ピーターズかもしれないけど、とにかく、これでもかってくらいにステレオタイプの南部人を投入してくる。なるほど、アメリカの南部はこんな匂いなんだねっておもっちゃうわ。

 まあ、この世の中ってのはいつも真実が究明されるとは限らないし、そのために悲しみに暮れて涙を呑み続ける人々もいる。それが現実ってやつで、尻を叩かれて病をおして捜査をしようとしてもやはり病には勝てずに自殺に追い込まれるのも悲しいながらも現実だったりする。暴力をふるう警官もいるだろうし、そういう世間に対して広告代理店の仕事ながらもでも戦いを挑もうとするような仕事の仕方もあったりする。そう、ここに描かれているのは、架空の町の出来事ながらも現実なんだよね。

 で、佳境、娘をレイプして焼き殺したとかっていう自慢話をしてた野郎は、母親の雑貨屋へ脅しをかけていた野郎なんだけど、こいつのDNAは殺人犯とは異なってた。それはそれで仕方ない。でも、奴は、ちゃんとウディ・ハレルソンが遺書で予言しているように、酒場で口を滑らせて証言してる。ほかに2人いた、と。つまり、この先、フランシス・マクドーマンドとサム・ロックウェルがどれだけ無表情かつ大らかかつ狂気と不安に満ちて事件の核心に迫っていくのかはわからないけれど、その光景が目に見えるように演出されているのがなんとも上手いとしかいいようがない。

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ベロニカとの記憶

2018年07月17日 00時18分46秒 | 洋画2017年

 ◎ベロニカとの記憶(2017年 アメリカ、イギリス 108分)

 原題/The Sense of an Ending

 監督/リテーシュ・バトラ 音楽/マックス・リヒター

 出演/ジム・ブロードベント シャーロット・ランプリング フレイア・メイヴァー エミリー・モーティマー

 

 ◎ジュリアン・バーンズの『終わりの感覚』

 いってみれば懺悔の物語なんだけれども、所詮男ってのはどうしようもない動物で、昔の彼女に再会するっていうだけで胸をときめかし、さらには髭まで剃っちゃったり、眼鏡をかけるのをやめたり、ともかく必死になってカッコをつけようとするんだろうか?ってことを自問しちゃうような話だ。

 で、さらに男なんてやつはどいつもこいつもいつの時代もストーカーじみてて、いったん逆上しちゃうとリベンジポルノよろしく根も葉もない出鱈目な中傷や誹謗をしでかし、自分から去った彼女とその新しいオトコをどん底まで叩き落とさないと気が済まないんだな~っておもわせる物語だったなと。

 まあそれにしても、昔の彼女のフレイア・メイヴァーの母親を演じたエミリー・モーティマーなんだけど、いやまあたいしたもので、娘の彼氏を寝取っちゃう凄さを可憐な天然さっていうオブラートに包んでいるところを上手に演ってたね。

 そんな母親の産み落とした彼の息子、つまり自分の弟を育てて一生を送ってしまったシャーロット・ランプリングのすべてを諦めながらも見守り続けるっていう円熟みのある印象もなかなかたいしたものだった。この枯れながらも怒りを抑えてる感じは、やっぱり年の功なのかしらね。

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王になった男

2018年07月16日 23時47分37秒 | 洋画2012年

 ◇王になった男(2012年 韓国 131分)

 原題/광해, 왕이 된 남자

 監督/チュ・チャンミン 音楽/キム・ジュンソン モグ

 出演/イ・ビョンホン リュ・スンリョン ハン・ヒョジュ シム・ウンギョン

 

 ◇1616年、李氏朝鮮

 李氏朝鮮の第15代国王の光海の物語らしい。

 始まったときにおもいだしたのはやっぱり『影武者』で、そりゃまあたしかに王の影武者の物語ならそういう始まり方なんだろうけど、とにかくおもいだした。

 ただ、歴史的な事実として影武者がいたかいなかったかはまったく知らないものの、なるほど暴君があるときいきなり人が変わったように善政を布いちゃうのはこういう背景があったのねっていう物語にはなってた。

 ハン・ヒョジュは綺麗で、王の妃にはしっくりくるし、シム・ウンギョンも田舎からやってきた純朴な侍女はよく似合ってたような気がする。

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あなたの旅立ち、綴ります

2018年07月15日 00時02分28秒 | 洋画2017年

 ◎あなたの旅立ち、綴ります(2017年 アメリカ 108分)

 原題/The Last Word

 監督/マーク・ペリントン 音楽/ネイサン・マシュー・デヴィッド

 出演/シャーリー・マクレーン アマンダ・セイフライド アン・ヘッシュ トム・エヴェレット・スコット

 

 ◎死亡記事を書かれたい

 アメリカと日本とじゃかなり違いがあるみたいで、日本人の場合、現役の芸能人はそれなりに大きく死亡記事が掲載されるものの、なかば引退した観のある芸能人やスポーツ選手どころか、一般的な人間はおしなべて大きく取り上げられたりはしない。新聞の片隅の、小さな死亡欄に押し込まれるのが落ちだ。

 日本とよく似た状況にあるなあと感じたのは、やっぱりアメリカもネットに圧されて新聞は売れなくなっているってことだ。なるほど、どこもおんなじなんだね。

 ところで、この作品、シャーリー・マクレーンとアマンダ・セイフライドがふたりして制作に名前を連ねてる。自分で出資して映画を作るってのも、日本じゃなかなかない。なんでだろうね、製作における技量が違うのかな。それとも自分で映画を製作して世になにか問いかけてみたいとか主張したいとおもったりするってことはないんだろうか?

 映画は、前半、もたついてる。ディスクジョッキーになろうとするのがちょっと遅すぎるに、伏線はほとんどなくて唐突な感じは否めない。なによりよくないのが、シャーリー・マクレーンが嫌われ者っていう設定なんだけど、どうにもそうは見えないところだ。自分が間違ってたと感じたときだけ、けらけら大声で笑うっていう設定はいいにしても、それを聞かされたすぐあと、彼女はアマンダ・セイフライドの前でも含み笑いをしたり、普通に笑ったりしてる。なんだか、ちょっとね。

 まあそれはともかく、嫌われ者っていうより厄介者なんだけどやっぱり憎めない女なんだよなとかって元夫がいったりしたらたしかに物語にはならないけれど、どうにも嫌われ者に見えないのは、あかんね。だって、すぐにディスクジョッキーになれちゃうんだもん。嫌われ者はそうならないし、人気も出ないんじゃないかしら。だから、うん、ちょっとね。

 でもまあ、ありあまったお金をもった老婦人が、その死の直前に自分の孫のような女の子に出会って、彼女が生きていくための勇気と根性とちょっぴりの処世術と餞別を送ってあげるっていう、なんとも定番ながらちゃんとした物語に仕上がってたって気もするな。

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ジョーズ

2018年07月07日 00時02分55秒 | 洋画1971~1980年

 ◎ジョーズ(1975年 アメリカ 124分)

 原題/Jaws

 監督/スティーヴン・スピルバーグ 音楽/ジョン・ウィリアムズ

 出演/ロイ・シャイダー ロバート・ショウ リチャード・ドレイファス

 

 ◎才能の発露

 28歳の若者の演出とはおもえない。

 こんなに上手な映画だったかなっておもっちゃうくらい上手な演出だった。

 たしかに、最初の惨劇が起こる前、浜の砂丘をレール移動しながら一枚ずつ服を抜いでいく女性をワンカットで撮ったところや、鮫取り船が出港していくときに、窓辺に掛けられている鮫の顎がその船を噛み砕いていくような印象を与えるカットとかは憶えていたんだけど、海水浴場の点描とロイシェイダーのモンタージュはまったく忘れてた。見事だった。シャッターを入れ込んだカットの切り返しで、不気味な海と気持ちの焦りが徐々に高まってくる。その後、ホオジロザメが出たという情報で、波打ち際まで駆けていくスローモーションもやっぱり見事だった。

 まいっちゃうな、ほんと。

 あ、ちなみに、この映画のサウンドトラックだけど、オリジナルと完全盤の二枚ある。ぼくの趣味としては、最初に出たオリジナルの方が好いな。完全盤は、時が経ってから別なテイクが発見されたとかっていうんだけど、なんだか無理矢理に使用されていないテイクをぶちこんだような気がするんだよね。そうじゃないのかな。

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ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ

2018年07月06日 00時08分19秒 | 洋画1999年

 ☆ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ(1999年 ドイツ、アメリカ、フランス、キューバ 105分)

 原題/Buena Vista Social Club

 監督・脚本/ヴィム・ヴェンダース 音楽/ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ

 出演/ライ・クーダー オマーラ・ポルトゥオンド コンパイ・セグンド ピオ・レイヴァ

 

 ☆キューバに行きたい

 なんだか、とっても好い感じだった。説明できない。観るしかない。

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SOMEWHERE

2018年07月05日 23時55分12秒 | 洋画2010年

 ◇SOMEWHERE(2010年 アメリカ 98分)

 原題/somewhere

 監督・脚本/ソフィア・コッポラ 音楽/フェニックス

 出演/スティーヴン・ドーフ エル・ファニング ベニチオ・デル・トロ ミシェル・モナハン

 

 ◇エルファニングはコッポラ家の好みなの?

 ポールダンスのシャノン姉妹(カリッサ・シャノン、クリスティーナ・シャノン)はさすがプレイメイトだけあって可愛いことは可愛いんだけど、このシーンも含めてだらだらとワンカットが長い。エルファニングのアイススケートの練習もそうで、練習をはじめて三週間ならわかるが三年というのはあまりにも嘘くさい。まあ出てくる子がみんな綺麗でカットも刺激的だから赦したいが総じて退屈だった。

 待っている間というか、次の反応までの表情というか、長いカットの中で役者が見せるふとした素の表情がリアルなのかもしれないけど、それは普段の他人とのつきあいで飽きるほど見られるわけだから。しかしいくらなんでも途中で辛くなってきた。最後に母親がいつ帰ってくるのかと泣くエルファニングに『傍にいてあげられなくてごめん』というのが居場所とはなにかを考えた主題だとしたら陳腐じゃないか?

 ポルシェを乗り捨てて歩き出すくらいなら、エルファニングのところへ飛んでふたりで歩き出すべきなんじゃないか?

 どうも自己陶酔というか、おしゃれなふりをしているだけというか、なんとも空っぽな印象はぬぐえないんだけどね。

 

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gifted ギフテッド

2018年07月04日 02時13分03秒 | 洋画2017年

 ☆gifted ギフテッド(2017年 アメリカ 101分)

 原題/gifted

 監督/マーク・ウェブ 音楽/ロブ・シモンセン

 出演/クリス・エヴァンス リンゼイ・ダンカン ジェニー・スレイト オクタヴィア・スペンサー

 

 ☆マッケナ・グレイス、よく見つけたな~。

 親権を裁判で争う映画はよくあるがたいがい男が不器用に育ててる絆にスポットがあてられる気がする。

 これもそうで、自殺した天才数学者の姉の子を育てる元大学准教授クリス・エヴァンスの物語なんだけど、ボートの修理工になってる必要はないような気がする。ちょっと狙い過ぎっていうかね。ただ、実家がとんでもない資産家でその母親リンゼイ・ダンカンと親権を争うわけだから対比としては修理工なのだろう。哲学の教師ではうまくないということなんだろう。

 まあ、いずれにせよ、主役の天才少女を演じたマッケナ・グレイスの愛らしさといったらない。

 

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トゥルー・ロマンス

2018年07月03日 13時00分39秒 | 洋画1993年

 ◇トゥルー・ロマンス(1993 アメリカ 121分)

 原題/True Romance

 監督/トニー・スコット 音楽/ハンス・ジマー

 出演/パトリシア・アークエット デニス・ホッパー ブラッド・ピット サミュエル・L・ジャクソン

 

 ◇タランティーノ脚本のロード・ムービー

 そりゃあたしかにタランティーノが撮ったらどうなってただろうっていう気持ちはある。

 千葉真一の『激突! 殺人拳』を観に行ったり『カミカゼ野郎 真昼の決斗』や『東京-ソウル-バンコック 実録麻薬地帯』のポスターが貼ってあったりと、もうめちゃめちゃタランティーノなんだけど、でも、トニー・スコットはやっぱりトニー・スコットで、異様なかっこよさが散りばめられてた。

 もちろん、テレンス・マリックの『地獄の逃避行』へのオマージュということであるなら、これは三人の監督の合作みたいなもので、それぞれの長所も短所も融合させたものと受け取った方がいいかもしれない。まあ、テレンス・マリックからすればはた迷惑な話かもしれないけどね。

 とはいえ、クリスチャン・スレーター演じる主人公にいまひとつ共感できない身としては、ああ、派手な映画だったな~ていう感想が最初に来る。とはいえ、最初の酒場で綺麗な年増にふられるときのサニー千葉の話から、たしかにうきうきはしてた。で、このうきうきする展開から、さらに『娼婦じゃないわ、コールガールよ、レンタル店の店長に頼まれたの』と泣きながら告白する段になると、のめりこんでるかもしれない自分に気がつく。

 で、途中、すっかり忘れてたゲーリーオールドマンの奪った麻薬を手にいれたとき、なるほどかなりハードな展開だと納得したんだけどね。あ、それはそうと、クリストファー・ウォーケンとの決着はつけなくてもいいのかしら?

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勝手にふるえてろ

2018年07月02日 21時30分14秒 | 邦画2017年

 ◇勝手にふるえてろ(2017年 日本 117分)

 監督・脚本/大九明子 音楽/高野正樹

 出演/松岡茉優 北村匠海 渡辺大知 石橋杏奈 趣里 前野朋哉 古舘寛治 片桐はいり

 

 ◇イチとニ

 脳内召喚という語句は新鮮な印象を受けたんだけど、まあ、そうね、勝手に召喚してろっていう感じだった。

 とはいえ、26歳のOLの下手な恋愛を追う物語はたくさんあるんだろうけど、衣裳の多さに「これはないだろ」とはおもいつつも、あとはなんとなく現実的な印象は受けた。もちろん、現実の26歳の子たちがどんなふうに観ているのかはわからないけどね。

 ただ、処女であるかないか、それが知られてしまうことに恥ずかしさと怒りを覚えるかどうかってことは、ぼくにはよくわからない。

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彼女がその名を知らない鳥たち

2018年07月01日 21時41分09秒 | 邦画2017年

 ◇彼女がその名を知らない鳥たち(2017年 日本 123分)

 監督/白石和彌 音楽/大間々昴

 出演/阿部サダヲ 蒼井優 松坂桃李 村川絵梨 赤堀雅秋 赤澤ムック 中嶋しゅう 竹野内豊

 

 ◇えらいことになっちゃうよ

 まったく中身を知らないで観ていたものだから前半のだるさといったらなくて、ああ、なんでこんな共感度0の同棲カップルの話を観ちゃったんだろうっていう後悔だけに包まれてたんだけど、途中から、あれ、これってミステリなの?とかっておもったときから、なんとなく観られた。

 ただ、まあ、予測された範囲をまるきり逸脱せずに最後まで往っちゃったのはなんだかね。ていうより、途中から阿部サダヲのいろんな言動と行動がちょっとわかりすぎる伏線になってる分、これはたぶん製作者側の観客に対する優しさなのかもしれないねっておもうことにした。

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