Kinema DENBEY since January 1. 2007

☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

ガール・イン・ザ・ミラー

2023年03月31日 19時02分52秒 | 洋画2018年

 ◇ガール・イン・ザ・ミラー(Look Away)

 

 インディア・アイズリーの綺麗なこと。さすが、オリビア・ハッセーの娘だわ。

 ていうだけじゃなく、演技も上手だし、このメークは凄いな。性格っていうか性質っていうか、とにかく鏡の中に映っているもうひとりの自分に憑依することでしか生きてこられなかった強烈な個性で罪悪感を封じ込めて人殺しをこなしてしまえる少女と、親のいいなりに生きることしかできない臆病でいじめられることに堪えるしかない少女のふたりを、みごとに分けてる。これはたいしたものだっておもうわ。

 橘薫の『鏡の中の私』に酷似してるのは仕方ないかもしれないっておもうしかないか。

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ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男

2023年03月26日 23時24分57秒 | 洋画2016年

 ◇ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男(Free State of Jones)

 

 南北戦争の時代、ミシシッピ州ジョーンズ郡に「ジョーンズ自由州」をつくった男の物語なんだけど、ふ~ん、こんなことがあったのねっていう感想がまず来る。それほど、日本人のぼくにとって南北戦争時のニュートン・ナイトという連邦保安官は遠い。ただ、奴隷解放だの異人種間結婚の自由だのを主張したのは、リンカーンよりも早いってことになるんだそうで、なるほど、そうだろうなって気はする。ただ、まあ、ニュートンの主張っていうか思想みたいなものは、父親から受け継いだもののようで、或る日、いきなり天の啓示を受けたように自由主義者になったってわけでもないみたいだけどね。

 まあ、とはいえ、アメリカの国内でも彼のことを知っているのは少ないのか、まるきりヒットしなかったらしい。

 

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ジェイン・オースティン 秘められた恋

2023年03月25日 15時30分51秒 | 洋画2007年

 ◎ジェイン・オースティン 秘められた恋(Becoming Jane)

 

 邦題の品の無さには閉口するけど、なんだか『シェルブールの雨傘』のラストをおもいだした。ジェインっていう名前がBecomingするわけで、いや、こういうのをはずして題名にするなよ。つか、これが元だったのかもしれないね。

 まあ、アン・ハサウェイのほかは、ジェームズ・マカヴォイやジェームズ・クロムウェルやジュリー・ウォルターズがなんとも英国風の濃さを見せてくれるし、19世紀の大英帝国になってた。

 なんといっても、お見事、マギー・スミス。高慢な貴族はみごとで、ほんと、上手だ。

 また駆け落ち女の心がわりだっていう馬車の御者たちの台詞もいい。こういう情景が当時はいたるところで見受けられたってことで、恋のなせる情景なんだね。みじめなイモ掘りといわれる夫はつらいが、愛はそりゃあった方がいいさ。けどお金はなくちゃ生きていけないのよ。という母は現実に耐えかねてるわけで、こういうのはつらいね。人の心をもっとも打ち砕くのは貧しさだぞという父のことばも真実やね。

 カメラがうまいな~。演出と一体化しとるわ。干潟の引きの画面はため息でるわ。けどなんかこう恋に現実逃避してるととんだ落とし穴が待ってるぞ的な不安をずうっと感じさせるね。ま、そんな演出なんだな。

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テーラー 人生の仕立て屋

2023年03月21日 18時16分14秒 | 洋画2021年

 ◇テーラー 人生の仕立て屋(Tallor)

 

 地味ながら、ちょっと現実離れしつつも、現実の余韻をただよわせる作品を、監督のソニア・リザ・ケンターマンはめざしたんだろうけど、老舗の仕立て屋として生きてきた父親が倒れたことで店を継いでひとりだちしなくちゃいけなくなったディミトリス・イメロスの物語というのであれば、それに徹するべきだったんじゃないかな。

 隣に住んでるタクシー運転手の娘(小学生)が彼を応援したいっていうんなら、その絆を臍にした、運転手とのほのぼのした友情物語っていう筋立てもあったはずなんだけど、その妻タミラ・クリエヴァが仕立てを手伝ったことで恋が生まれちゃうっていう展開はかなり抜き差しならないもので、後味を悪くする。

 屋台のテーラーっていう発想はおもしろいし、それをひいていくのがスズキのバイクっていうのもいいし、まあラストはベンツかなんかのワゴンになるんだけど、そういう段階を経た感じもいいんだけど、差し押さえになった店の中が荒らされ、殴りつけられたような跡があるのはあきらかに運転手の夫の仕業で、このあたり、きわめてばつのわるい妻の心がつらいし、どうもね~。

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ミス・シェパードをお手本に

2023年03月20日 19時25分48秒 | 洋画2015年

 ◎ミス・シェパードをお手本に(The Lady in the Van)

 

 優しさはあらゆる徳の中で最も自分本位なものだ。ハズリッドの引用。

 原作者アラン・ベネットの体験談だって話だけど、なるほど、でも、ラストが淋しいな。

 夢の中でもいいから修道院のピアノをマギー・スミスに弾かせてやりたいし、それがコンサートになって喝采を浴びるところで目が覚め、夢かと絶望するんだがワゴンから出たときに町の連中がピアノを用意してコンサートをしかけるんだがそこで倒れる。そういう感じにしてほしかったわ。

 ジョージ・フェントンの音楽がいいね。

 作家の二重人格をそのまま映像にしているのは、なかなかよかった。

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カオス・ウォーキング

2023年03月18日 13時27分50秒 | 洋画2021年

 ◇カオス・ウォーキング(Chaos Walking)

 

 やけに哲学的な邦題だなとおもってたら、なんのこたない、原題そのままかよと。

 ただ、どこも歩いてなくない?走ってはいたけど、馬にも乗ってたし。

 2257年の惑星入植者の物語なんだけど、男しかいない集落ってのがあって、そこへ新たな入植船の母船から発進してた探査船が壊れて墜落し、ひとりだけ生き残ったデイジー・リドリーが女だってだけで追いかけ回され、彼女にひと目惚れしたトム・ホランドが守りながら、シンシア・エリヴォのファーブランチまで行きつくんだけど、元居た集落の女たちを虐殺したマッツ・ミケルセンが追いかけてきて、母船が救けに来る前に決着をつけようとするっていう展開だ。

 よくある話で、肝心なのはどうして女たちを虐殺しなければいけなかったのかってことと、原住民と戦ってきたっていうんだけど、実は戦う気がたぶんない片手の原住民の真実が見えないっていうことで、これが物語の要になってるはずが、まるで語られないままに終わるって、どうよ、これ?

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アムー 負けない心

2023年03月09日 00時16分38秒 | 洋画2022年

 ◎アムー 負けない心(Ammu)

 

 家庭内暴力はどこの国もおなじで、暴力に走る沸点が低いのはわかるとしても、発火点がよくわからないといわれる。でも、おそらくは、言われても解決させられないことを突きつけられたり、気にしていることや図星をさされたりしたときにおもわず我を失って手が出るんだろう。

 このチャルケシュ・セカル演出の映画もそうで、アイシュワリヤー・レクシュミにはなんの嫌味もないし、ただ夫に尽くそうとしているのに、自分でもわけがわからない内に暴力をふるわれる。しかも夫アイシュワリヤー・レクシュミは警部で、部下たちの信望も篤く、上からの評判もいい。四面楚歌というのはこういう妻をしていうのだろうが、翌日になると夫はけろっとして、もっといえば、猫変わりして優しくなる。愛していると囁き、ひたすら謝り、けれど、またすぐに暴力が始まる。

 どこもおなじだ。

 で、映画では、妻の復讐が始まる。おひとよしの犯罪者を自宅に匿い、それで夫の足元を掬って復讐を果たそうというのだけど、現実は難しいんだろうね。それにしても、台詞をいうときに顔がゆれる。舞台みたいだ。

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7月22日

2023年03月08日 00時39分34秒 | 洋画2018年

 ◎7月22日(22 July)

 

 ぼくには「22 July」はバンコクにあるジュライホテルのあるロータリなんだけど、これは2011年にノルウェーで起きた77人殺しのテロ事件の顛末と裁判だ。ウトヤ島の合宿地が襲撃されたことで被害がとてつもなく広がったんだけど、でも、これほどの大事件が日本ではさほど報道されなかった。そんな気がするんだけど、ちがってるんだろうか?

 まあ、それはそれとして、ポール・グリーングラス、さすがに前半のテロの描き方は迫力がある。でも、主要な後半部分、つまり、左目を奪われ、びっこをよぎなくさせられている兄ヨン・オイガーデンが、裁判で、銃撃犯アンデルシュ・ダニエルセン・リーを糾弾するんだけれども、つまりは、勇敢というものについての映画だね。

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ロング・トレイル!

2023年03月07日 01時09分07秒 | 洋画2015年

 ◇ロング・トレイル!(A Walk in the Woods)

 

 さすがにロバート・レッドフォード、老けたな。

 ニック・ノルティもそうだけど、まだこっちは太ってる分、老け方が小さい気がする。エマ・トンプソンはあいかわらず物分かりのいい柔和な主婦を演じてるけど、老け方はほぼ感じられない。ただまあ、ふたりのしょってるリュックがあまりにも軽そうで、もうすこし重さを出してくれないといかにも演技してますって感じになっちゃうのは辛い。

 とはいえ、まあ、紀行作家ビル・ブライソンなる実在の人物の話だし、強烈な挿話も作りにくかったんだろう。モーテルの3代目メアリー・スティーンバージェンとの恋になりそうでならないくらいが精一杯のところだったのかなあ。

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キーパー ある兵士の奇跡

2023年03月01日 00時32分38秒 | 洋画2018年

 ◎キーパー ある兵士の奇跡(The Keeper)

 

 ドイツ兵の捕虜だったバート・トラウトマンがマンチェスター・シティのゴール・キーパーになっていく物語なんだけど、サッカーの知識が皆無でもふつうに観られる。事実にどこまで合わせてるのかってことはあんまり興味がないし、それをいいだしたらせっかく物語として昇華させてるものを腰砕けにさせちゃう。

 バートを演じたダフィット・クロスは『愛をよむひと』からちょうど10年経ってて、いやまあ大人になったこと。妻フレイア・メイヴァーはとっても好感が持てたし、父親ジョン・ヘンショウも好演してた。マンチェスターの監督を演じたゲイリー・ルイスも好い味を出してたし。

 たしかに感傷的な流れではあるけれど、物語の緩急がよく、後半のマンチェスター時代になってからは往年のフィルムが挿入されているせいか事実の重みがぐんと加わってる。

 かつて戦争中に助けることのできなかったフランスの少年と重なるトラウマの苦しみと、それを頸椎の怪我で入院しているときに電話で妻に告げようとした矢先、ひとりでアイスクリームを買いに行った5歳の息子が車に撥ねられて死亡するっていうのを重ねているところはまあ脚本上の都合ではあるんだけれど、感情を移入させるには充分なものがあったんじゃないかな。

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