◎黄色い星の子供たち(2010年 フランス、ドイツ、ハンガリー 125分)
仏題 La Rafle
英題 The Round Up
staff 監督・脚本/ローズ・ボッシュ 撮影/ダヴィッド・ウンガロ
美術/オリヴィエ・ロー 衣装デザイン/ピエール=ジャン・ラロック
挿入歌/エディット・ピアフ『Paris』
cast メラニー・ロラン ジャン・レノ ガド・エルマレ ラファエル・アゴゲ アンヌ・ブロシェ
◎1942年7月16日、ヴェル・ディヴ事件
正式には、ヴェロドローム・ディヴェール大量検挙事件っていうんだけど、
どうやら、近頃のフランスでは、この事件を知らない若者が増えているらしい。
嘆かわしい話だけど、ちょっと驚いたのは、
フランス政府がナチスへの加担を1995年まで正式に認めてなかったことかも。
ナチスに占領されていた時代のできごとは関係ないという姿勢だったらしく、
まあ、そういいたくなるのはわからないではないけど、
実際にヴェル・ディヴ事件は起こってるわけだからね~。
で、どんな事件かっていえば、
ユダヤ人の大量検挙を目的とした「春の風作戦」により、
パリ市内および郊外在住のユダヤ人1万3152人を一斉に検挙して、
市内にある冬季競輪場ヴェロドローム・ディヴェールに強制収容し、
そのあらかたを絶滅収容所へ送りつけたのが、それだ。
黄色い星の子供たちは、ここに4115人、いた。
メラニー・ロランはそこで赤十字から派遣された看護婦をつとめ、
ジャン・レノはユダヤ人ながらも医師だったために収容所への移送が送らされていた。
このふたりの目撃するという形になっているのがこの映画で、
主役となるのは、ユダヤ人のガド・エルマレ一家だ。
実はこの一家は実在している。
たったひとり、長男のジョゼフ・ヴァイスマンだけが逃げ、生き延びた。
この役をやったのはユーゴ・ルヴェルテという11歳の少年で、
知的な目をして、必死になって役になりきり、物事をしっかり見つめようとしている。
いや、ほんと、いい表情だった。
ジョゼフ・ヴァイスマンは、このたびの撮影にも参加したらしい。
孫の手をひいてヴェル・ディヴに収容された役を演じ、
メラニー・ロランと対話した。
メラニーは、経由先であるロワレ県ボーヌの収容所までかれらに付き合うんだけど、
食事もかれらとおなじものを食べたことで痩せ細り、倒れる。
実際、彼女はそのときのストレスと栄養失調が元で帯状疱疹になり、倒れたとか。
なんだか、デ・ニーロ・アプローチみたいだけど、
この6人しか派遣されなかった内のひとりで実在する看護婦の名前は、アネット・モノ。
人権について生涯訴えた人らしい。
その看護婦の魂がのりうつったように、メラニー・ロランはがんばってる。
帯状疱疹の薬によるものか、
それとも、
役に入れ込みすぎて子供たちを列車から引き摺り下ろさんばかりに怒り、
それが頂点に達したためか、
ともかく、ぎらぎらと光る瞳のまま痙攣を起こして倒れ込んだらしい。
凄い話だ。
正義感があって、同時にとってもやさしい女性なんだろう。
そうした心の美しさが、そのまま容姿に満ちてるみたいで、
だから、メラニー・ロランが好きなんだよな~。