◎アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男(Der Staat gegen Fritz Bauer)
おもしろかった。
ドイツがナチスを題材にした映画を撮るのは、どうしてなんだろう?
いや、ドイツにかぎらず、ヨーロッパでもアメリカでもナチスやヒットラーを主題に持ってくる映画は少なくない。この理由は贖罪だの犠牲だの糾弾だの反省だの憎悪だのとほんとうにいろいろあるけれども、ヒットラーやゲッペルスのほかにもここで追い詰められていくアドルフ・アイヒマンもそのひとりだ。
けど、この映画はアイヒマンが潜伏しているアルゼンチン・ブエノスアイレスにはさほどの尺を取っていない。
ほとんどがフランクフルト、そしてイスラエルの砂漠地帯だ。それも検事長のフリッツ・バウアーの懊悩と捜査に費やされる。だから、バウアーを演じたブルクハルト・クラウスナーとその部下カール・アンガーマンを演じたロナルト・ツェアフェルトのやりとりを見ていくことになるんだけど、このふたりはゲイという共通項を持っている。
バウアーは終戦まで亡命していた先で同性への淫行で捕まっているし、アンガーマンもまた西ドイツの中枢で生き残っているナチスの残党によって同性愛の暴落という脅迫に見舞われる。なるほど、戦後まもない頃っていうのは、ゲイであることに負い目を持ち、脅迫の種になり、出世や生活にも重く圧し掛かってきてたのねと、あらためておもわされたわ。