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▽=☆

アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男

2022年03月31日 23時42分22秒 | 洋画2015年

 ◎アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男(Der Staat gegen Fritz Bauer)

 

 おもしろかった。

 ドイツがナチスを題材にした映画を撮るのは、どうしてなんだろう?

 いや、ドイツにかぎらず、ヨーロッパでもアメリカでもナチスやヒットラーを主題に持ってくる映画は少なくない。この理由は贖罪だの犠牲だの糾弾だの反省だの憎悪だのとほんとうにいろいろあるけれども、ヒットラーやゲッペルスのほかにもここで追い詰められていくアドルフ・アイヒマンもそのひとりだ。

 けど、この映画はアイヒマンが潜伏しているアルゼンチン・ブエノスアイレスにはさほどの尺を取っていない。

 ほとんどがフランクフルト、そしてイスラエルの砂漠地帯だ。それも検事長のフリッツ・バウアーの懊悩と捜査に費やされる。だから、バウアーを演じたブルクハルト・クラウスナーとその部下カール・アンガーマンを演じたロナルト・ツェアフェルトのやりとりを見ていくことになるんだけど、このふたりはゲイという共通項を持っている。

 バウアーは終戦まで亡命していた先で同性への淫行で捕まっているし、アンガーマンもまた西ドイツの中枢で生き残っているナチスの残党によって同性愛の暴落という脅迫に見舞われる。なるほど、戦後まもない頃っていうのは、ゲイであることに負い目を持ち、脅迫の種になり、出世や生活にも重く圧し掛かってきてたのねと、あらためておもわされたわ。

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ブレイン・ゲーム

2022年03月30日 23時31分07秒 | 洋画2015年

 ◎ブレイン・ゲーム(Solace)

 

 アンソニー・ホプキンスが一枚看板で製作総指揮にクレジットされてる。ちから入ってるな。

 最初は、なんか、FBI捜査官のジェフリー・ディーン・モーガンがやけに好い人間で、部下アビー・コーニッシュも含めて最強のチームだとかいいだして、これじゃいくらアンソニー・ホプキンスが予知能力とテレパシーに長けた超能力者っていう設定でも『羊たちの沈黙』には到底かなわないな~っておもってたら、アメリカの藤枝梅安こと連続慈悲殺人犯の超能力者コリン・ファレルが登場してきたことで、だんだん面白くなってきた。

 なるほど、不治の病で死ななければならない運命に追い込まれて、死にたいくらいの痛みと苦しみを味わってしまうことになる市民を超能力で見つけてしまったコリン・ファレルとしては病気を発するより前に延髄を突き刺すことで一瞬の苦しみすらなく他界させてやるのは慈悲でしかないと断言するのはわからないでもないし、娘オータム・ダイアルが白血病で苦しんで死んだことがジャニン・ターナーと別居する原因になったわけだし、なるほど、これはなかなかむつかしい物語だな。

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夕陽に向って走れ

2022年03月29日 23時09分04秒 | 洋画1961~1970年
 ◇夕陽に向って走れ(Tell Them Willie Boy Is Here)
 
 
 ロバート・レッドフォード演じる主人公に肩入れできないのは、その心がよく見えないからだ。
 
 人道主義の年増の医学博士を欲情のためのみに都合よく抱いているだけでなく、その愛情には応えないっていう生き方は観客には苦しいよね。そこへもってインディアンの青年が結婚を認められない恋人を連れて逃げてゆくんだが、その途中途中で追っ手を迎え撃っちゃうからややこしくなる。
 
 キャサリン・ロスは茶色の肌に塗ってがんばって演技してるけど、どうも魅力的に撮られてないのが残念だ。
 
 それと追いかける側ものんびりしてれば、追いかけられる側もなんだか間延びした印象になるのは、エイブラハム・ポロンスキーの演出と脚本が悪いのかな、やっぱり。
 
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ザ・スクエア 思いやりの聖域

2022年03月28日 23時15分58秒 | 洋画2017年

 △ザ・スクエア 思いやりの聖域

 

 クレス・バングが携帯をすられたんなら警察に通報すればいいのに。スウェーデンって変わってるね。ま、こういう設定でないと物語が展開しないんだけどさ。でも、最初になんとなくつまづくなあ。なんでGPSで盗んだやつのアパートを見つけて、携帯を返さないと頭を吹っ飛ばすぞとかって脅迫状を出さないといけないんだろうっておもっちゃったらだめなんだけどね。

 あ、スマホは、スウェーデンではテリフォンっていうのね。

 それはさておき、セブンイレブン止めで犯人から送り返してきたときには、さすがにまじかっておもったぞ。

 あれ?そのすぐあとに展示されてるスクエアのカットが入るんだけど。叶えてくれたってこと?

 ま、これは一瞬の感想だけど、余談ついでにわからないのはインタビューにきた記者エリザベス・モスとセックスしたあと、精液の入ったコンドームを捨ててあげるといわれても自分で捨てるといって見せないのに対して、エリザベス・モスはわたしがそんなことするとおもってるのと聞き、そんなことってなんだと聞き返して、コンドームを引っ張り合い、結局、彼女が勝って捨てたゴミ箱を抱えて喜びながら部屋を出ていくんだけど、あれはなんだったんだ?

 それはさておき、クレス・バングが貧民層のアパートに投じた脅迫状のせいで親に疑われた子供が謝れと怒ってくる。当たり前の抗議だけど、これをないがしろにしたことで問題が大きくなる。つまりは声なき人々と上目線の連中との格差の問題で、抗議に来てる子供を階段から落としたことで、助けて~という声が届いても最初は無視してたことで、そこへ自分の子供たちが来てたことから、自分の愚かさを知ることになるっていう構図なんだけど、なんにしてもだらだらしたつまんない映画だ。

 不条理ぶってるのになんにも不条理じゃないっていう物語にしかおもえないのは、ぼくの思考が足りないんだろうけどさ。

 予告編に騙された。これは口直しがいるな。

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特捜部Q カルテ番号64

2022年03月27日 22時41分13秒 | 洋画2019年

 ◎特捜部Q カルテ番号64(Journal 64)

 

 複層的だな~。

 優生保護法はなにも日本だけの問題じゃなくて、北欧のデンマークでもかなり深刻な問題になってるんだろうか。そうじゃなかったら、こんな物語にはならないよね。

 それにしても、アパートの閉ざされた部屋から発見される縛られて毒殺されてミイラ化した3つの死体と、1961年のスプロー島の女子矯正施設に収容された従兄弟の子を宿した少女との関係がまるで曖昧なまま、さらに中絶手術をしたことで異常な腹痛を訴える移民の女の子とその知り合いの特捜部の移民ファレス・ファレス、相変わらず嫌われつづける特捜部のニコライ・リー・カースと、やはり彼氏のできない孤独な特捜部の女子ヨハン・ルイズ・シュミットとが一緒くたになって語られ始めるもんだから、物語の世界に入り込むまでかなりの根性を要したけど、でも、やっぱり期待どおりの出来栄えだった。

 ニコライ・アーセルの脚本がいいんだな、これは。

 珈琲やかつてはドイツのビールにも入ってたっていうヒヨスってのがほんとにあるのかどうかは知らんけど。

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ブラック・シー

2022年03月26日 17時09分31秒 | 洋画2014年

 ◇ブラック・シー(Black Sea)

 

 へ~。

 黒海には酸素がないから、Uボートが錆びずに残ってるわけね。

 ロシア人嫌いの潜水夫のしでかす仲間割れから潜水艦が故障して、その修理のためにUボートを探すという展開は上手い。けど、Uボートの艦内に塩素ガスが充満してて水がないという設定は、リアルかもしれないけど、よくわからない。専門的なんだもん。

 食料庫に鎖で繋がれた肢体のあるのを見て、食べてたんだと断定するのはどうかね。でも、直すための部品を探してるときに、山分けにしたくない男が金塊を見つける展開もいいな。

 息子と暮らせないジュード・ロウは、その代わりにUボートの情報を知らせた友達の死を伝えにきた十九歳の若造を連れてゆき、彼に子供ができているのを知るや、息子だと見立てて最後の脱出用スーツで魚雷発射口から出したあと、金塊をスーツに詰めて射出させていた落ちはわかるんだけど、なんか切ない話だったな。

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ナチュラル・ボーン・キラーズ

2022年03月25日 17時15分18秒 | 洋画1994年

 △ナチュラル・ボーン・キラーズ(Natural Born Killers)

 

 東京のワンカットで、石原さとみと佐藤江梨子が並んで出てるとおもうんだけど、時代と年齢が合わないのはなんでなんだろう。で、あとで、ドラッグストアの逮捕戦で、9カットだけ出てるアナウンサー役の中村佐恵美だということはわかるんだけど、いや、二役なんだけど、前のミーハー姉ちゃんのときは石原さとみにものすごく似てるわ。

 ま、なんにしても、ボニー&クライドの現代版なのね。

 クエンティン・タランティーノの原案がどんなものだったのかわからないけど、オリバー・ストーンがもうちからづくで暴力性をひきださそうとした感じがあって、あんまりな~。でもいまおもえば、ウディ・ハレルソン、ジュリエット・ルイス、ロバート・ダウニー・Jr、トミー・リー・ジョーンズと、なんだか役者だけは揃ってるわ。

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昼下がりの情事

2022年03月24日 17時33分33秒 | 洋画1951~1960年

 ◇昼下がりの情事(Love in the Afternoon)

 

 は~。探偵の娘の冒険初恋物語ね。ま、いいんじゃないかしら。

 とはいえ、どうもオードリー・ヘプバーンとゲイリー・クーパーの共演で胸をときめかせたのはいったい誰だったんだろう?

 いつもおもうことなんだけど、このふたりの共演はやっぱり中年のおじさんの胸をかきむしったんじゃないかっておもうんだよな~。つことは、ヘプバーンのファンって、やっぱり、ケーリー・グラントもそうだけど、なんとなくもてないおっさんが主流だったんだろうかっておもったりもする。でも、なぜか、当時はうらわかい女性たちも夢中になったりしてたみたいで、ということは、社会的におっさんとお嬢ちゃんっていう組み合わせはかなり市民権を得ていたってことなんだろうか?

 ま、そんなどうでもいい呟きはさておき、ビリー・ワイルダーの奥さんが出演してるとはおもわなかったし、しかもその名前がオードリーっていうのも知らなかった。ほう、って感じだわ。

 ちなみに、

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恐怖の報酬

2022年03月23日 17時51分57秒 | 洋画1971~1980年

 ◎恐怖の報酬 1977(Sorcerer)

 

 封切りの時に劇場で観た日のことはいまだによく憶えてる。そのときから、タンジェリン・ドリームの音楽に魅せられてて、サントラを探したもんだ。当時、ラジオで偶然に録音できて、そのカセットテープをくりかえし聴いた。いまだに、ええな~っておもう。

 で、最初の爆弾テロ、建物の奥からまじに爆発させてる。通行人はみんなぶっ飛んでるし、凄いな。で、どっちかというと前半はちょっとちんたらしてる分、後半から俄然おもしろくなる。トラックてのは、ほんと、すごいね。生きてるみたいだ。川を越えるのと大木の爆破のあたりの緊張感は、半端じゃない。

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コレクター 1997

2022年03月22日 18時20分38秒 | 洋画1997年

 ◇コレクター(Kiss the Girl)

 

 まったく邦題のつけ方もいいかげんにしてくれって感じで、1965年のウィリアム・ワイラーの監督作品がヒットしたからかもしれないけど、この先、2012年にもモーガン・オニールの監督作が出てくる。で、こいつは、ゲイリー・フレダーの演出作で、3作ともみんな別な話だ。ほんと、やめてほしいわ。まったくおんなじ題名をつけられても混乱するだけだってことがわからないんだろうか?

 そんな文句はつけたところで仕方ないんだけど、それはそれとして、モーガン・フリーマン、若いときがあったんだな。最初から笠智衆みたいな感じかっておもっちゃうわ。それにひきかえ、アシュレイ・ジャッド、まだかわいい時代だね。

 しかし、犯人を共犯にしてしまった分、ひとりだけの孤独な異常さがなくなっちゃって、ただの活劇になっちゃった感じだな。これはまったく残念だ。

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ワイルドカード

2022年03月21日 18時38分52秒 | 洋画2015年

 ▽ワイルドカード(Wild Card)

 

 単なるラスベガスの用心棒の話で、とんだワイルドカードをひいちまったぜ、ていうだけの殴り合い足抜け映画だったわ。くそ、とんだワイルドカード映画をみちまったぜ。これがかつてのバート・レイノルズとカレン・ヤングの出てた映画のリメイクだってんだから、ますますびっくりだ。

 ジェイソン・ステイサム、こんな映画に出てて大丈夫か?

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荒野の誓い

2022年03月20日 18時44分52秒 | 洋画2017年

 ◇荒野の誓い(Hostiles)

 

 スコット・クーパー、やけに堂々とした演出で撮ってんだなあ。がちがちのフィクスとクレーンで、がっちりした絵づくりして、みずから書いた脚本も、実に丁寧だ。

 クリスチャン・ベイルは『ジュリアス・シーザー』を読んでるんだね。なるほど、がちがちの求道的人間ってことなんかな。途中で旅の一行に紛れ込んでくるロザムンド・パイクもそういうがちがち人間のタイプに見えるから、ぜんぶががちがちな印象の映画だったわ。

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長江哀歌

2022年03月19日 22時49分22秒 | 洋画2006年
 ◇長江哀歌(三峡好人)
 
 
 単調すぎて眠気と戦うにはなかなか根性がいるけど、まあ、ドキュメンタリー調のゆったり感は悪くないし、露光をおさえた画づくりはとてもいい。韓三明の演じる妻を探す夫と、趙濤の演じる夫を探す妻のどちらも山西省からやってくることの意味は、やっぱり、毛沢東の夢が三峡ダムだってことにあるんだろうか。わからないけどさ。
 
 夫探しの妻こと趙濤の向こう、ガメラ型のUFOが画面左から右へ飛んでゆくのと、LEGOロボットみたいなビル型のロケットが袖無しの肌着を干した向こうでいきなり発射してゆくのは、三峡から去っていく人々の象徴なのかどうかよくわかんないけど、眠気覚ましにはなる。
 
 まあ、社交ダンスは柔道の組手みたい噴き出しそうになるし、おっさんも若造もみんなランニングシャツか上半身裸っていう日本の戦後のような描かれ方だけど、これが三峡ダムの第3期工事に入った頃の中国なんだよね。ただ、春節ってところはとくに貧しいところらしいけど。
 
 役者はおそらくあらかたが素人で、その分リアルなんだけど、かえって玄人の夫探し女の趙濤の演技が下手に見えちゃう。韓三明が、16年離れ離れになってた妻と再会して、もっと南に出稼ぎに行ってる娘の写真を見てから、解体中のビルでウサギ印の菓子をもらったとき、ぶたぬかれた壁のずっと向こうのビルが爆破解体されてゆくのや、ラストカットの妻とめぐり会ったものの身請けの金を稼ぎに出る夫の向こうで廃墟から廃墟へ綱渡りをしていくシルエットが望まれるのは、なんとも象徴的でよかった。
 
 それにしても、賈樟柯、よくもこれだけ気の長い演出をしたもんだって感心する。ただ、撮影も録音も大したものだから全体的に味はあるし雰囲気もあるし社会性もあるんだけど、つまんないな~。
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花よりもなほ

2022年03月18日 17時02分54秒 | 邦画2006年

 △花よりもなほ

 

 つまんないなあ。

 美術がおそろしく良くて、撮影もなかなか、タブラトゥーラの音楽も印象的だ。

 ところが脚本がだらだらしてるし、演出もなんだか辛気臭い。役者たちも顔をそろえるための芸人たちの演技が下手過ぎて興ざめするし、なんといっても話がまるで始まらない。ずうっと小汚い裏長屋の暮らしを撮ってるだけってのはなんだろうね。だいじょうぶか、是枝裕和。

 なるほど仇討をしようとしている岡田准一と、子持ちの宮沢りえの物語だってことはなんとなくわかった。たぶん、仇討しないっていう話にもっていって、人殺しよりも人を愛することの方がたいせつなんだとかっていう物のわかったような話で締め括るんじゃないかって、そのだらだらの出だしでおもった。

 原田芳雄の小野寺十内が出てくるときだけ絵がしまるがあとはひたすら薄汚く、だらだらだらだらしてて、そもそも寺島進の寺坂吉右衛門の話とか余計だし、忠臣蔵をからませたことで余計なものがくっついてますますだらける。どうしたらこんなにつまらない映画ができるんだろうっておもってしまったのは、ぼくだけなんだろうか。

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ザ・ロック

2022年03月17日 22時57分49秒 | 洋画1996年
 ◇ザ・ロック(The Rock)
 
 
 ショーン・コネリーが娘会いたさに逃げ回ってサンフランシスコをめちゃくちゃにするだけでも重罪もんだけど、そのあたりはまるで問わないのはおいといて、このくだりが長すぎる。アルカトラズを占拠したエド・ハリスのぴりぴり演技が消えるどころか、物語の緊張感はいっさい失せる。これは、つらいよ。
 
 ニコラス・ケイジの彼女のくだりも同様で、物語に幅と変化は出るけど緊張感は削がれる。2基残ったミサイルの1発目をわざと外してしまったことで、エド・ハリスの日和は見えちゃったし緊張感は台無しになった。狂気が消えた時点で、もう物語は終わりだね。
 
 マイケル・ベイの演出はたしかに迫力があっていいんだけど、やっぱり脚本がな~。
 
 あ、それと、音楽はなんだか他の作品にも似たようなものがあって、ちょっとだけ変えてみました観がありありなのはどうよって気がするぞ、ハンス・ジマー。
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