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黄泉がえり

2007年08月31日 14時41分09秒 | 邦画2003年

 ◎黄泉がえり(2003年 日本 126分)

 原作/梶尾真治『黄泉がえり』

 監督/塩田明彦 脚本/犬童一心 斉藤ひろし 塩田明彦

 撮影/喜久村徳章 美術/新田隆之 スタイリスト/宇都宮いく子 小倉久乃

 特殊効果/浅野秀二 3DCG/中島征隆 CGI/横石淳 音楽/千住明

 主題歌/RUI(柴咲コウ)『月のしずく』作詞Satomi 作曲松本良喜

 出演/草なぎ剛 竹内結子 石田ゆり子 伊東美咲 忍足亜希子 長澤まさみ 田中邦衛

 

 ◎熊本県阿蘇地方

 まあ、いろんな理由はあるんだけど、ぼくはこの映画が好きだ。

 なぜか、ひとつだけ、理由をいおう。自主製作映画の匂いがするからだ。塩田明彦という監督は立教大学のパロディアス・ユニティーの出身らしく、早稲田大学の映画制作グループひぐらし出身の山口貴義の『恋のたそがれ』や『ヤマトナデシコ』の撮影や照明を担当したりしつつ『月光の囁き』でデビューしたんだけど、ちょっとふしぎな映画を撮ったりする。

 で、この映画だ。

 柴咲コウの『月のしずく』もとってもいいし、出演者たちの瑞々しさも好感がもてる。

 なにより、良質なリアルさとでもいうんだろうか、ファンタジーはどれだけ人物の感情を抑えるかに懸かっている面があって、ことに、邦画で死人が蘇るという妙な感激による悲劇を描こうとすれば、必然的に感情は昂ぶるものなんだけど、それを最低限に抑えている演出には好感が持てる。

 ふとおもいだしたときに観たくなる映画はあんまりないけど、これはそういう貴重な1本かもしれないね。

 あ、ぼくにとって。

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日本誕生

2007年08月28日 15時23分16秒 | 邦画1951~1960年

 ◇日本誕生(1959年 日本 181分)

 英題/The Three Treasures

 監督/稲垣浩 脚本/八住利雄 菊島隆三

 撮影/山田一夫  有川貞昌 美術/伊藤熹朔 植田寛

 作画/向山宏 特殊技術/渡辺明 井上泰幸

 特撮監督/円谷英二 音楽/伊福部昭

 出演/三船敏郎 原節子 上原美佐 香川京子 司葉子 田中絹代 水野久美

 

 ◇東宝1000本記念超大作

 日本映画界において、剣ひとつでヤマタノオロチと戦えるのは、やっぱり三船敏郎しかいない。

 ていうだけでなく、東宝オールスターの記紀神話なんて、もう後にも先にもこれっきりな作品なんで、まあ、なんといったらいいのか、東宝ファンが「1000本なんだね~」といって愉しめばそれでいいのかなと。おおらかで、ほがらかで、ほんっとに明朗健全な東宝映画だ。たまには、こういう日本人の良心みたいな映画もいいものだ。

 ちなみに、この映画は2005年12月3日(土)に、稲垣浩の生誕100年を待ってニュープリント版が作られ、リバイバル上映されたんだけど、どうせならもう10年待ってデジタルリマスターにしてほしかった。

 ま、この映画については、こんなもんにしとこ。

 あ、ところで、映画の中で香川京子が演じているのは美夜受姫っていうんだけど、尾張国造乎止与命の娘にして、建稲種命の妹らしく、関連しているのは熱田神宮だ。

 辞書によれば、こんな感じだ。

「日本武尊は東征の帰途、媛を娶って草薙剣を預けた。尊の死後、媛はこの剣をまつって社を建て、熱田神宮の起源をなしたという」

 で、知多半島に阿久比町宮津という在所がある。美夜受も宮津も音は同じだ。付近には日本武尊の伝説もある。となると、もしかしたら宮津は記紀神話でいうミヤヅかもしれない。興味ぶかいのは、この宮津に、知多半島では唯一の前方後円墳があることだ。そんなに大きなものじゃないけど、二子塚古墳という。

 美夜受姫の墓だったりしたら、愉しいね。

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尻啖え孫市

2007年08月26日 15時19分31秒 | 邦画1961~1970年

 ◇尻啖え孫市(1969年 日本 104分)

 英題 The Magoichi Saga

 原作/司馬遼太郎『尻啖え孫市』

 監督/三隅研次 脚本/菊島隆三

 撮影/宮川一夫 美術/西岡善信 音楽/佐藤勝

 出演/中村錦之助 栗原小巻 本郷功次郎 中村賀津雄 勝新太郎 志村喬 内藤武敏

 

 ◇錦之助、FA

 東映からフリー宣言した錦之助が最初に撮ったものらしいんだけど、なんだか、中村兄弟の芸競べみたいな印象だったわ。ていうか、なんでこの映画が大映なんだろ~っていう素朴な疑問も。

 聞くところによれば、佐藤勝も大映では唯一の作品らしいし、そういうことでいえば、なんだか無戸籍な感じがして、雑賀孫市の映画にふさわしいような気もしないではない。

 史実の孫市ってのはとってもふしぎな人間で、5人くらいが孫市に比せられるんだけど、ほんとの孫市が誰だったのかといえば、よくわからない。司馬遼太郎の小説があまりにも強烈だったものだから、どうしてもそちらに引き摺られちゃうし、この映画もそれを原作にしてるんで、余計に信長とわたりあったような印象になってる。

 でもまあ、孫市が世襲名だとすればなんとなく解決するわけだし、雑賀党の党首が常に孫市を名乗ったんだとすればもっと明解になる。そういう観点に立った上で、この映画を観るのがいいかもね。

 で、錦之助が白塗りをやめたのはいいとしても、やはりズボンなのね。破れ傘刀舟みたいだわ。烏の張りぼては意味があったのかって合戦もあるけど、登場人物の中では、中村賀津雄がなんだかいつもの好青年と違ってて好い感じだ。

 ただ、勝新太郎の信長はいただけないけど。

 ま、足フェチの物語ってのが、いかにも司馬遼太郎の原作らしくて好い。

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夜ごとの夢 イタリア幻想譚

2007年08月25日 16時07分43秒 | 洋画1991年

 ◇夜ごとの夢 イタリア幻想譚(1991年 イタリア、フランス、ベルギー 89分)

 原題/La domenica specialmente

 

 ◇プロローグ・断章・エピローグ

 原作・脚本/トニーノ・グエッラ 監督/ジュゼッペ・ベルトルッチ

 撮影/ファビオ・チャンケッティ 美術/ネッロ・ジョルジェッティ

 衣装デザイン/マリオリーナ・ボーノ 音楽/エンニオ・モリコーネ

 出演/ジャン=ユーグ・アングラード アルベルト・オッタヴィアーニ

 

 ◇イタリア北部のマレッキア渓谷、記念碑

 受取側の印象として、映像詩だから物語を想起するのは難しいんだけど、死者の魂への純粋な憧れと、死それ自体の内蔵している不気味さを現代的に表現するために必要なものを考えた時、バイクと子供と男と石墓と鳥というのは妙に嵌まってる。

 

 ◎第一夜 青い犬

 原題/Il Cane Blu

 監督/ジュゼッペ・トルナトーレ 原作・脚本/トニーノ・グエッラ

 撮影/トニーノ・デリ・コリ 美術/フランチェスコ・ブロンヅィ

 衣装デザイン/ベアトリス・ボルドネ 音楽/エンニオ・モリコーネ

 出演/フィリップ・ノワレ ヴィント ニコラ・ディ・ピント ルイ・ヴェルヴォール

 

 ◎犬嫌いの靴の修理人兼床屋と青い犬

 青い染みがペンキに見えるのはさておき、物事という物は不思議なもので、心霊的なものであるという先入観をもって眺めれば、それは心霊現象になってしまう。銃弾で撃ち抜かれることが死であるのか、接するものが死を感じた時はじめて死となるのかが、主題なんじゃないかと。

 

 ◇第二夜 特別な日曜日

 原題/La Domenica Specialmente

 監督/ジュゼッペ・ベルトルッチ 原作・脚本/トニーノ・グエッラ

 撮影/ファビオ・チャンケッティ 美術/ネッロ・ジョルジェッティ

 衣装デザイン/マリオリーナ・ボーノ 音楽/エンニオ・モリコーネ

 出演/ブルーノ・ガンツ オルネラ・ムーティ アンドレア・プロダン ニコレッタ・ブラスキ

 

 ◇なにかが邪魔をする

 オルネラ・ムーティの下品そうで下品にならない色気というのは、神経症の男と恋人にならない看護婦という関係に妙に嵌まってる。手の届く所にいる筈の異性に触れたいに触れないのは、ガンツが焦るとおり何かが邪魔をしてるわけで、そういうのをおそらくこの世では運命とかっていうんだろうね。でも、運命ってのは、おもいもよらないところで待ってるもんだ。バス停でのニコレッタ・ブラスキの登場が、それを物語ってる。

 

 ◇第三夜 炎の中の雪

 原題/Il Neve Sul Fuoco

 監督/マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ 原作・脚本/トニーノ・グエッラ

 撮影/フランコ・レッカ 美術/ジャンニ・シルベストリ

 衣装デザイン/メトカ・コサック 音楽/エンニオ・モリコーネ

 出演/マリア・マッダレーナ・フェリーニ キアラ・カゼッリ イヴァーノ・マレスコッティ

 

 ◇雪に閉ざされた教会での懺悔

 懺悔は自己満足と見栄の延長にすぎない、とかっていったら叱られるんだろうね、たぶん。息子と嫁の痴態を覗いて嫉妬しつつも、覗く誘惑に負けてしまうのを戒める姑と、覗かれる事で興奮を覚えながらも、姑に生気を取り戻してもらいたいために覗かれていたと懺悔する嫁の話なんだけど、ふたりの本心について、ぼくたちは想像しないといけないんだろうっておもうんだよね。

 

 ◇エピローグ

 原題、staffともに序章と同じで、批評しようもない事ながら、断章で描かれた飛び立つ鳥は、もちろん新たな死者の魂で群れ集う仲間の鳥と、それを出迎える死者達の魂なんだろうけど、バイクに花束を抱いた青年も同じく死者の魂と考えれば、断片的な光景は葬儀と復活の象徴的儀式な訳なんだろな~。

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バットマン&ロビン Mr. フリーズの逆襲

2007年08月12日 00時36分44秒 | 邦画1991~2000年

 ◇バットマン&ロビン Mr. フリーズの逆襲(BATMAN & ROBIN)

 

 ロビンも鬱陶しければ、バットガールまで登場とは…。

 アルシア・シルバー・ストーンが可愛いから許容するしかないような出来だな。

 狂学者化するユマ・サーマンがMrフリーズことアーノルド・シュワルツネッガーを誑し込む事で、彼の狂える愛妻ぶりをもっと押し出せなかったのかな~と、中途半端さに不満も感じる。

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ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔

2007年08月11日 19時53分39秒 | 洋画2002年

 ◎ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔(The Lord of the Rings : The Two Towers)

 

 物語って、この物語にかぎらず、敵役がどれだけ強そうかということがおもしろさを決める。

 親玉ではないけれど、なんとなくひきこまれちゃうのが、冥王サウロンの配下の指輪の幽鬼ナズグルで、馬に乗って顔を見せずに迫ってくるこの9人がいかにも不気味で好い。顔を見せないことでその兜の下が暗黒になってて、結局はそこに槍をぶっさして倒すことになるんだけど、指輪をひとたびは手に入れながらもその魔力によって闇に引き込まれてしまった哀れな連中ってわけで、このあたりの設定がいい。

 そうした指輪の魔力にひきずりこまれしまう旅の仲間も当然いるわけで、これをショーン・ビーンが演じてるんだけど、これは当時の適役だね。ショーン・ビーンの弟役のデビッド・ウェナムが入れ替わりに仲間になるようなならないような、ちょっと微妙な役回りになるのは、ちょっと物足りなさもあるかな。

 ヘルム峡谷の角笛城の戦いは見応えがあったけど、その分、主人公のはずのイライジャ・ウッドとショーン・アスティンの旅がかすむなあ。

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危険な年

2007年08月10日 12時23分23秒 | 邦画1981~1990年

 ◇危険な年(The Year of Living Dangerously)

 

 観てすぐには、ピーターウェアのように異文化に理解ある監督にしても白人は自分らの目線が平等だと勘違いしてるんだろうか?とかいう印象を受けたもので、しょせん、共産党の大物に取材する出だしのほかは旧植民地での白人記者と大使館の職員の恋愛話にすぎないんじゃないか?ともおもったけど、あれれ、それだけでもないかなと、あとになっておもいおこす。そんな映画だ。

 モーリス・ジャールの音楽はさすがだね、雰囲気があってよろしい。

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シン・シティ

2007年08月09日 01時26分20秒 | 邦画2005年

 ◇シン・シティ(Sin City)

 

 三原色パートカラーとCGにより現実味の無い夢を観るような錯覚に囚われる。

 ミッキーロークは体当たりの演技で、女性は皆たわわな美肢を惜しげもなく披露し、筋は三つの流れが錯綜してて見事なことは見事なんだけど、う~ん、残酷すぎな気もするね。

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バタフライ・エフェクト2

2007年08月08日 00時51分09秒 | 邦画2006年

 ◇バタフライ・エフェクト2(The Butterfly Effect 2)

 

 近未来的なトイレの中の濡れ場のほかには観るところがないかも。

 1が仲間の人生や父の名誉や自己の飛んだ記憶と行為の謎を追うという理由づけがあったのに、この2は出世と恋愛の為に安易に写真でリプレイに走り、伏線の妊娠だけが佳境の鍵になってるだけってのはちょっと哀しい。

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バタフライ・エフェクト

2007年08月07日 01時00分59秒 | 邦画2004年

 ◎バラフライ・エフェクト(butterfly effect)

 

 手塚治虫の『クレーター』をおもいだした。

 人生のリプレイなんだけど、日記を滅却しない限り何度も挑戦できるため物語が込み入ってて、くりかえされる別な人生が断片的になりすぎてしまうのが、難といえば難かな。父親に絞殺されかけた真実が謎解きされるのはいい感じで、撮影ビデオが味噌なのも見事だね。

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戦火の勇気

2007年08月06日 22時27分43秒 | 邦画1991~2000年

 ◇戦火の勇気(Courage Under Fire)1996年

 

 羅生門の湾岸戦争版か?

 英雄譚に懐疑的な姿勢でもって『藪の中』のように話を展開させつつも、いつのまにか讃歌になってる。

 こうなっちゃうのが、ハリウッドの当時の限界なのかもしれない。メグ・ライアンの娘役の少女は実の母娘かとおもえるほどよく似てて、こういう子役の配役は限界を感じさせないほど、アメリカはいつも上手だ。もっともアメリカに限ったことでもなくて、もしかしたら日本以外はすべての国が上手なのかもしれない。

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レディ・イポリタの恋人 夢魔

2007年08月05日 20時17分24秒 | 邦画1971~1980年

 ◇レディ・イポリタの恋人 夢魔(原題 L'anticristo、英題 The Antichrist)

 

 イタリア版エクソシストとしかいえない。

 夢魔の物語ではなく、前世にサタンと交わった女が現世に降臨してきて…っていう話なんだけど、前世の交わりはパノラマ島みたいで、なんともいかがわしい。神父に追い込まれても、コロッセオで父親の愛が試されるという展開はなんとなく理解できるんだけどね。

 音楽が、これ、モリコーネなんだよなあ。

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マレーナ

2007年08月04日 13時58分45秒 | 邦画1991~2000年

 ◎マレーナ(Malèna)

 

 まあ、ジョゼッペ・トルナトーレだわねえ。

 昇華される定番っていうか、ほろ苦い時期を扱う映画は大抵複数の若造に薄幸の別嬪となるんだけど、見事な作品になってた。

 少年の顔つきが変わる佳境や武蔵の音楽家とは思えない出来栄えは演出のちからなんだろうなあ。

 暴行されるモニカ・ベルッチは別人のように見えてくるなあ。

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ナインスゲート

2007年08月03日 20時43分45秒 | 邦画1991~2000年

 ◇ナインスゲート(The Ninth Gate)

 

 3冊だけの悪魔の書の版画にルシファが刷った物が混じってて全9画集めれば門が開くと途中で気づんだけど、鼻血を額に塗りつけるのも燃える城を背に謎の女と交わるのも悪魔との契約なんだね。

 悪魔崇拝儀式は、陳腐。

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サン・ジャックへの道

2007年08月02日 02時10分08秒 | 洋画2007年

 ☆サン・ジャックへの道(Saint Jacques... La Mecque)

 四国の巡礼は何キロあるのか知らないんだけど、このサン・ジャックの巡礼道は1500キロ。

 邦画でも出来なくない筋立てと構成にも拘わらず、フランス映画でしかできない絶妙な設定と展開と皮肉。

 遺産めあての三兄弟の実家で彼らの去る姿を見送る後ろ姿が印象的だね。

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