Kinema DENBEY since January 1. 2007

☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

ゆれる

2009年04月30日 23時50分35秒 | 邦画2006年

 ◎ゆれる(2006年 日本 119分)

 監督・原案・脚本/西川美和 音楽/カリフラワーズ

 出演/オダギリ・ジョー 香川照之 伊武雅刀 真木よう子 木村祐一 蟹江敬三 田口トモロヲ

 

 ◎淡々とした強烈さが好い

 ただ、観客を惹きつけるためとはいえ、弟ことオダギリ・ジョーの目撃証言が最初は曖昧なまま推移するのがやや違和感を覚えないでもない。兄こと香川照之の無実を目撃したのであれば明確に証言すればいいのに、なにかを隠しているという印象を観客に与えるのが少しばかりあざとさを感じるというか。

 でもまあ、そんなものはいいがかりのようなもので、善意的によくまとまってて、心理サスペンスの良作といってもいいくらいによくできてた。

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舞妓 Haaaan!!!

2009年04月28日 17時07分48秒 | 邦画2007年

 ◇舞妓Haaaan!!!(2007年 日本 120分)

 監督/水田伸生 音楽/岩代太郎

 出演/阿部サダヲ 堤真一 京野ことみ 山田孝之 生瀬勝久 植木等 真矢みき 伊東四朗

 

 ◇前半は凄く面白いのに

 なんでこうも後半に失速するのかな~。

 悪乗りが加速するあたりから息切れしている感じがするんだよね。

 柴咲コウの役が中途半端で、阿部サダヲの心が終り近くで、舞妓になった昔の恋人に不自然に傾くのは解せません。恋のために舞妓になるって筋はいいのに、なんでこんな展開になっていっちゃうんだろね。

 宮藤官九郎の脚本って、どうも多々、そういう気があるような気がするのは気のせいなんだろか?

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血を吸う宇宙

2009年04月19日 01時36分45秒 | 邦画2001年

 ◇血を吸う宇宙(2001年 日本 85分)

 監督/佐々木浩久 音楽/ゲイリー芦屋

 出演/阿部寛 中村愛美 阿部サダヲ 栗林知美 由良宜子 上田耕一 三輪ひとみ

 

 ◇音楽、東宝SF調なのね

 宇宙人が火事で死んだ筈の美郷の名を死刑囚で姉の里美の脳へ刻み込ませ、セックスレスなのに子があるように錯誤させかつ幼児誘拐の幻想を生ませ、それを嗅ぎつけたブラックメンが里美を守る地球防衛の物語なのではないかと僕は踏んだのだけれども、そんなことはどうでもいいのかしらね。

 まあ、悪乗りともいえないし、なんだかよくわからない展開をおもえば、題名は『発狂する地球』とか『発狂する宇宙』でも良かったんじゃないかって気がするんだけどな。

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クローズ ZERO

2009年04月18日 12時41分38秒 | 邦画2007年

 △クローズ ZERO(2007年 日本 130分)

 監督/三池崇史 音楽/大坪直樹

 出演/小栗旬 黒木メイサ 岸谷五朗 山田孝之 松重豊 塩見三省 遠藤憲一 桐谷健太

 

 △ストリート・オブ・ファイヤーかよ

 黒木メイサがダイアンレインに見え、ビーバップの時代から常に男2女1の構図なのねとおもって観てた。

 佳境の雨はもう日本の活劇にはつきもので、実をいえば『ビッグマグナム黒岩先生』もそうなるはずだった。

 感心したのは髪の水滴だったけど、校内の容子はやっぱり『黒岩先生』で、まったく『ストリート・オブ・ファイヤー』と『黒岩先生』を足して2で割るとこれかよ、みたいな。ま、監督の雰囲気とか、山口和彦さんと似てるもんね。

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雨の町

2009年04月16日 01時39分11秒 | 邦画2006年

 ◇雨の町(2006年 日本 95分)

 監督・脚本/田中誠 音楽/遠藤浩二

 出演/和田聰宏 真木よう子 成海璃子 光石研 安田顕 上田耕一 絵沢萠子 草薙幸二郎

 

 ◇ありがちな小品ながら

 小学生の集団失踪の謎が山奥に巣食う魔獣によるものという、ひとつ間違えば拍子抜けしそうな物語を淡々と撮ってるのは好感が持てる。

 そうした淡々さが恐怖を煽ってゆくんだってことがわかってるんだな~って感じがするもんね。異形になった子を待ちわびる親が子を殺さざるを得ない描き方も、うん、なかなか共感できるところだし、撮影もオーソドックスながらかっちりしてるな~って気がするわ。

 とはいえ、物語そのものはなんといえばいいのか、やっぱりありがちな印象はぬぐえない。

 ただ、出だしは好いね~。ちょいとぞくぞくしたわ。

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相棒 劇場版 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン

2009年04月14日 14時35分31秒 | 邦画2008年

 ◇相棒 劇場版 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン(2008年 日本 117分)

 監督/和泉聖治 音楽/池頼広

 出演/水谷豊 寺脇康文 本仮屋ユイカ 平幹二朗 西田敏行 津川雅彦 木村佳乃

 

 ◇長い題名だな

 2時間ドラマかとおもったぜ。

 1万人のエキストラを動員したっていうマラソンのロケはたいしたもんだけど、連続殺人をしでかし、娘までも爆死させたかもしれない男に同情の眼を向け、政治家までも説得されて、父の遺志を破る展開は情緒に流れすぎててちょっと苦しい。

 それと、この『相棒・劇場版』って、なんだかアナーキーな感じの犯人像が多くない?

 犯人の生き方とか性格ってだけじゃなくて、なんか、それを包み込んでる世界に反体制派の匂いがあるんだよな~。よくわからないんだけどさ。

 あと、全体的にテレビ的な印象があるのはどうしてなんだろう?

 ぼくはこのテレビシリーズを見たことがないからなんともいえないんだけれども、テレビのシリーズドラマが劇場版になったとき、たまに感じるんだけど、でもこれはそのテレビを観ていた観客にとっては心地よい感覚なんだろうっておもうんだよね。

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立喰師列伝

2009年04月10日 12時43分31秒 | 邦画2006年

 ◎立喰師列伝(2006年 日本 62分)

 原作・脚本・監督/押井守 音楽・出演/川井憲次

 出演/吉祥寺怪人 兵藤まこ 石川光久 鈴木敏夫 樋口真嗣 山寺宏一 立木文彦

 

 ◎原作が読みたいとおもってから何年経ったのだろう?

 戦後まもない頃から順に登場する立喰師たちの伝記を独白してゆく事で、アナーキーとも暗部とも傾斜した拘りともいうべき歴史が語られてゆく訳だが、しかし、さにあらず、語られる内容は多分に吉本隆明的な共同幻想世界にほかならないのである。

 それは、おそらくはぼくらがこうした破天荒なアニメの第一世代であって、この作品に語られている世界観を多少なりとも感覚とか直感とかそうした言葉でもって捉えられることがかろうじてできる世代であるため、そうした共同幻想を抱くことがあるいはできるかもしれないという多少の期待を持てるからにほかならない。

 それにしても、この映画がぼくに与えた影響は大なるものがあって、中でも最大級のものが「月見そば」の作り方だ。そうか、卵は麺の上に乗せてからそこへ熱湯をかけるのだな、たしかにそうだ、そうでないと雲居にかかる満月の美しさを堪能できないものな、まさしくそのとおりだ、とおもったことだ。

 以来、ぼくは月見そばを食べる際、これをかたく厳守しているし、むろん、立ち食い蕎麦を注文したときなど、この鉄則を守っているかどうかをじっくりと観察することにしている。これについては大仰ではなく、それがあたかも生まれ落ちたときからの習慣ででもあるかのように淡々と実行し続けているのである。

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張り込み

2009年04月09日 02時02分52秒 | 邦画1951~1960年

 ◇張り込み(1958年 日本 116分)

 監督/野村芳太郎 音楽/黛敏郎

 出演/大木実 宮口精二 高峰秀子 田村高広 高千穂ひづる 芦田伸介 北林谷栄 小田切みき

 

 ◇かっちり焼き上げたばかりのモノクロで観たい

 もう少しコントラストが強烈だと濡れた生々しさが出たのになんとも残念だ。

 いかにも訝しい刑事のするがままに張り込ませる裏には、人妻に何らかの弱みがある、とは思わせながらも強引な動機と尻切れ蜻蛉のラストは弱いかもしれないね。でも、結局、今にいたるまでこの『張り込み』の越える『張り込み』は作られないんだから、なんとも推して知るべしだ。

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悪夢探偵

2009年04月08日 00時37分09秒 | 邦画2006年

 ◎悪夢探偵(2007年 日本 106分)

 監督・出演/塚本晋也 音楽/石川忠

 出演/松田龍平 hitomi 安藤政信 猪俣ユキ 原田芳雄 大杉漣 ふせえり

 

 ◎鮮烈なカッティング

 他人の夢に自らの意識を入れる事が出来てしまう男の苦悩と夢がここにある。

 また、それを媒介にして、心中しながらも自分だけで生きてしまう男の殺人による快楽もある。そうした事件というよりは、苦悩や快楽といった自意識を捜査しなければならなくなった女の物語でもある。自殺願望を潜在意識に持った女刑事の危うく棄て鉢な心模様ときわめて映画的な映像が融合した佳作なのではないかと、そんなことをおもった。

 2が観たいぞ。

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遠き落日

2009年04月03日 12時48分45秒 | 邦画1991~2000年

 ◇遠き落日(1992年 日本 119分)

 監督/神山征二郎 音楽/林哲二

 出演/三田佳子 三上博史 仲代達矢 牧瀬里穂 田村高廣 河原崎長一郎 長門裕之 山本圭

 

 ◇野口英世の否定面

 それも書いてる分、焦点の当て方がいい。

 邦画で偉人伝みたいなものをするとき、多くの場合、箇条書きになっちゃう。これはほんとに嫌で、まあ映画にかぎったことじゃないんだけど、出版の世界でもそういう本を出そうとする編集者や営業がいたりする。ほんと、物語っていうものを学んだことがないんじゃないかっていうくらいのおばか連中が後を絶たない。

 ところが、この映画は野口英世の好悪両面を描き分けたところに演出の良さが見受けられる。演技は全般的にわざとらしさが鼻につくことはつくんだけど、それはまあおいておこう。ともかく、故郷の人々の素朴さと横恋慕される女性の心模様は、野口の妙なこすっからさと上手く天秤にされてて、なんとも上手だ。

 さすが新藤兼人ってところなんだろうか。

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福沢諭吉

2009年04月02日 12時10分50秒 | 邦画1991~2000年

 △福沢諭吉(1991年 日本 123分)

 監督/澤井信一郎 音楽/久石譲

 出演/柴田恭兵 榎木孝明 仲村トオル 南野陽子 若村麻由美 哀川翔 村田雄浩 芦川よしみ

 

 △箇条書き伝記映画

 期待した音楽までもがなんとも残念な青さであるばかりか、なんといっても脚本が辛い。

 笠原和夫さんと桂千穂さんの共同ってことになってるけど、完成までまあほんとにいろいろあったようなことが書かれたり伝えられたりで、ほんとのところはよくわからないけれど、とにかく辛い。

 少年から成年になるまでもうほんと箇条書きのように点描してるんだけど、敵役の家老が諭吉に「おまえなど出ていけ」と叫んだ次の場面は数年後で、ふたりはとっくに仲良くなっててまた「出ていけ」と叫び次の場面で仲良くなってるなんて、まじ、あかんですよ。

 ところで、活弁士の麻生八咫さんもこの映画に藩士のひとりとして出演してるんだけど、ひと言ふた言、台詞があってそれをおもいきり甲高い声で神経質そうにやってみたところ、澤井さんに「端役がめだってどうすんだ!」みたいに怒鳴りつけられてNGになったらしい。役者が一所懸命考えたんだからちょっとは掬ってあげてもいい感じもするけど、八咫さん、ちょっとやりすぎたんだろね。

 けど、そんなことはどうでもいいんで、こういう箇条書き的物語になっちゃうのは邦画のいちばんいけないところで、これは単行本や新書とかで妙な伝記めいたものが多くあって、ほんとの意味でのうまい小説がなかなか見受けられないし、たとえあったにしても世間の目に留まらないという、この国のなんともいえない文学の貧困さがそのまま浮き上がっちゃったとしかいいようがない。

 ため息でちゃうよ、まったく。

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わが青春のマリアンヌ

2009年04月01日 12時10分45秒 | 洋画1951~1960年

 ☆わが青春のマリアンヌ(1955年 フランス 105分)

 原題/Marianne de ma Jeunesse

 監督・脚色/ジュリアン・デュヴィヴィエ 音楽/ジャック・イベール

 出演/マリアンヌ・ホルト イサベル・ピア ピエール・ヴァネック フリードリッヒ・ドミン

 

 ☆イリゲンシュタットの古城

 この物語が幻想譚の原点なのは論を待たない。

 17歳の時、その幻想的な展開と映像に衝撃を受けた。もちろん、今観ても見事だ。かといってここで今更、マリアンヌとの美しくも儚い幻の恋物語を記したところで意味はないし、労力の無駄だ。

 ただ、この映画をはじめて観たとき、ぼくは黒服の男たちは死神だとおもった。ひと目見て、そうおもった。

 なんでなのかはわからない。けど、霧に包まれた湖に浮かぶ古城そのものが黄泉の国のようにおもえたし、そこにいるものは人ならぬものにちがいないともおもった。おそらくはそれだけデュヴィヴィエの演出が人並み外れていたってことなんだろう。

 いやほんと、見事な映画だとおもうわ。

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