△福沢諭吉(1991年 日本 123分)
監督/澤井信一郎 音楽/久石譲
出演/柴田恭兵 榎木孝明 仲村トオル 南野陽子 若村麻由美 哀川翔 村田雄浩 芦川よしみ
△箇条書き伝記映画
期待した音楽までもがなんとも残念な青さであるばかりか、なんといっても脚本が辛い。
笠原和夫さんと桂千穂さんの共同ってことになってるけど、完成までまあほんとにいろいろあったようなことが書かれたり伝えられたりで、ほんとのところはよくわからないけれど、とにかく辛い。
少年から成年になるまでもうほんと箇条書きのように点描してるんだけど、敵役の家老が諭吉に「おまえなど出ていけ」と叫んだ次の場面は数年後で、ふたりはとっくに仲良くなっててまた「出ていけ」と叫び次の場面で仲良くなってるなんて、まじ、あかんですよ。
ところで、活弁士の麻生八咫さんもこの映画に藩士のひとりとして出演してるんだけど、ひと言ふた言、台詞があってそれをおもいきり甲高い声で神経質そうにやってみたところ、澤井さんに「端役がめだってどうすんだ!」みたいに怒鳴りつけられてNGになったらしい。役者が一所懸命考えたんだからちょっとは掬ってあげてもいい感じもするけど、八咫さん、ちょっとやりすぎたんだろね。
けど、そんなことはどうでもいいんで、こういう箇条書き的物語になっちゃうのは邦画のいちばんいけないところで、これは単行本や新書とかで妙な伝記めいたものが多くあって、ほんとの意味でのうまい小説がなかなか見受けられないし、たとえあったにしても世間の目に留まらないという、この国のなんともいえない文学の貧困さがそのまま浮き上がっちゃったとしかいいようがない。
ため息でちゃうよ、まったく。