Kinema DENBEY since January 1. 2007

☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

満員電車

2009年02月28日 23時36分54秒 | 邦画1951~1960年

 ◎満員電車(1957年 日本 99分)

 監督/市川崑 音楽/宅孝二

 出演/川口浩 笠智衆 杉村春子 小野道子 川崎敬三 船越英二 浜村純 響令子 新宮信子

 

 ◎追悼市川崑その30

 追悼もこれで最後。

 一周忌に見る作品としては息子さんも見た事がないという本作。

 シュールだ。かっとんでる。市川夫妻の感性の結晶としかおもえない。

 笠智衆と杉村春子が絶妙の上手さだし、なんといっても放送禁止用語がばんばん飛び跳ねて自由闊達だ。歯切れもいいし、世の中を完全に笑い飛ばしてやろうっていう覚悟のほどが知れてくる。こういうかっとんだ邦画はもう作られないんだろね。さびしいことだけど、市川崑を超えられる監督が生まれるとはちょっとこの国では期待できないし。

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お姉チャンバラ THE MOVIE

2009年02月20日 03時06分29秒 | 邦画2008年

 ◇お姉チャンバラ THE MOVIE(2008年 日本 80分)

 監督・撮影/福田陽平 音楽/藤野智香 碇英記

 出演/乙黒えり 橋本愛実 葉月あい 倉内沙莉 諏訪太朗 渡辺哲 中村知世

 

 ◇血みどろ剣劇アクション

 もはやこれは理屈は抜きにして楽しむしかない。

 ビキニにテンガロンハットに臍ピアスに日本刀とくれば、おもいだされるのはなんといっても永井豪なんだけど、そういう無国籍な日活的アクションはこういうひたすら戦いまくるだけの世界にはぴったりと嵌まってるのかもしれない。

 いや実際たいしたもので「28日後」よりおもしろいんじゃないかってくらいだった。

 まじ、能天気なくらいにゾンビを斬りまくるだけの話で、実際のところをいえば、嵐のように陳腐な筋立てはあるものの、乙黒えりも好感度たっぷりで、そういうところからいえば見るべきところはたっぷりあるわけで、痛快娯楽作に仕上がってる。そうおもった。

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かあちゃん

2009年02月19日 00時15分34秒 | 邦画2001年

 ◇かあちゃん(2001年 日本 96分)

 監督/市川崑 音楽/宇崎竜童

 出演/岸惠子 原田龍二 うじきつよし 勝野雅奈恵 中村梅雀 尾藤イサオ 常田富士男

 

 ◇追悼市川崑その29

 人間を性善説で見るとこうなるんだろうか?

 黒澤明の晩年を思い出しちゃうんだけど、これはまあ、市川崑なりの岸恵子への感謝と讃歌なのかな。単調さと間延び加減が市川崑の齢を匂わせる。これはどうしようもないことで、ああ、市川崑も老いたんだなあとしみじみ感じる。黒澤の『まあだだよ』もそうだったんだけど、幸せな話なのになんだか悲しくなってくる。

 人間はどうしようもなく年老いていくんだけど、それでも物を作ろうとする意欲だけは失われず、過去に輝かしさがあればあるほどその期待値と妥協値は高まる。もうほんと、すべてが仕方のないことなのかもしれないね。

 ただ、この作品は市川崑というより和田夏十のやりたかった原作だそうで、そのおもいが叶うまで半世紀ちかい時が必要だったということも考えれば、亡き妻への感謝もあったんだろうね。

 なんだかそういう点もしみじみさせるんだけど、かといって作品のグレードが低かったかといえばそんなことはなく、お得意の銀残しによって画面はひきしまっているし、渋みもある。登場している役者たちは誰も市川崑ばりの役を演じて、幸せの大きさとはなんだろうという主題をちゃんと語ってる。そういうところはたいしたもんだっておもうんだよね。

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容疑者Xの献身

2009年02月18日 00時28分15秒 | 邦画2008年

 ◎容疑者Xの献身(2008年 日本 128分)

 監督/西谷弘 音楽/福山雅治 菅野祐悟

 出演/福山雅治 柴咲コウ 北村一輝 松雪泰子 堤真一 渡辺いっけい リリー・フランキー

 

 ◎石坂浩二は特別出演だったのか

 いや~素朴に一観客になってしまった。

 アリバイ崩しの見せかけに成程っておもちゃったんだからもはや観客だよね。

 でも、浮浪者は哀れだな~。あんまり品の良いトリックじゃないよな~。人権とかって言葉は使いたくないけど、なんだかそういう人間なんだなって感じがするよね、犯人っていうか作り手側が。

 あ、それと、ドッペルゲンガーの前ふりはわかるんだけど、磁力砲の象徴はちょっと余計な感じもしたかな。ただ堤真一が自殺したく思った理由が教育者不適合だけのように見えてしまうのがなんだか弱い気もするかな。

 とはいえ、そういうあれこれをひっくるめても、この作品はおもしろかった。

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四十七人の刺客

2009年02月17日 12時22分04秒 | 邦画1991~2000年

 ◇四十七人の刺客(1994年 日本 129分)

 英題/47RONIN

 監督/市川崑 音楽/谷川賢作

 出演/高倉健 中井貴一 宮沢りえ 西村晃 石坂浩二 浅丘ルリ子 森繁久彌 古手川祐子

 

 ◇追悼市川崑その28

 人間臭い内蔵助は初めて見た気がするんだけど、どうも往年の『十三人の刺客』とかいった一連の集団時代劇をおもいだしちゃうんだよな~。

 ま、それは脚本に池上金男が噛んでいるから仕方のないことかもしれないんだけどさ。

 おかること宮沢りえは高倉健との不釣り合いが妙に現実味もあってよかったけど、吉良邸の庭、これはやっぱりいただけませんな。リアルなようでいて絵空事になっちゃってるんだもん。誰の発案かは原作を読んでないし、まあそれはどうでもいいんだけど、なににしてもこういう陣地取り合戦みたいな演出は辛いよ。

 いちばんよかったのは「聴きとうない!」という台詞で、こいつはこれまでの忠臣蔵にはなかった。お見事。

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大決戦!超ウルトラ8兄弟

2009年02月16日 13時58分27秒 | 邦画2008年

 △大決戦!超ウルトラ8兄弟(2008年 日本 97分)

 監督/八木毅 音楽/佐橋俊彦

 出演/長野博 吉本多香美 黒部進 森次晃嗣 団時朗 桜井浩子 ひし美ゆり子 榊原るみ

 

 △対象とする観客は誰なんだ?

 懐かしさ溢れる昭和の記念すべき日から始まる懐古趣味の物語である以上、おそらく、ぼくら世代あるいは次の世代が対象になるんだろうけど、ともかく、光の国のウルトラマンたちを知っている世代が喜ぶにちがいないとおもわれる役者たちが集まってて、なんというか、同窓会のような作品だったかなと。

 もちろんそれなりにパラレルワールドとかの設定をすることによって、過去のウルトラシリーズの人々を出演させるはできているものの、現代の子供たちにその感激はわからないだろうな~とおもえるのが、なんともね。まあ、そのあたりのことはいろいろあるけど、問題はCGと脚本だ。

 もう少しなんとかならなかったんだろうか。

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天河伝説殺人事件

2009年02月13日 21時12分35秒 | 邦画1991~2000年

 ◇天河伝説殺人事件(1991年 日本 109分)

 監督/市川崑 音楽/宮下富実夫 谷川賢作

 出演/榎木孝明 石坂浩二 岸惠子 奈良岡朋子 大滝秀治 加藤武 小林昭二 岸田今日子

 

 ◇追悼市川崑その27

 原作が市川崑に向いてないんだよね。

 ふとした感じは『犬神家の一族』(特にポスターとかね)や『悪魔の手毬唄』をおもいださせるところがないでもないんだけど、オドロオドロしさはまるで影を潜めちゃって、まったくもって中途半端な現代劇になっちゃってる。最後のファイル1というクレジットが、もうなんとも悲しいわ。

 加藤武の警部と崑組の役者だけが支えだなんて、もういかん、悲しすぎる。

 ていうかさあ、まあ、角川映画ってことになるんだろうから、ほかの版元から探すわけにはいかないんだろうけど、それにしてもなんで…ていうくらいの脱力感だったのは僕だけなんだろうか?

 いや、なんつうか、テレビ的なんだよね、原作の世界が。原作を読んでないのになにいってんだって話かもしれないんだけど、どうしても2時間ドラマでよく見かける感じがあるものだから、いくら市川崑が市川崑的に撮っててもやっぱり無理があんだよな~。

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デジャヴ

2009年02月12日 22時48分41秒 | 洋画2006年

 ◇デジャヴ(2006年 アメリカ 127分)

 原題/Déjà Vu

 監督/トニー・スコット 音楽/ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ

 出演/デンゼル・ワシントン ヴァル・キルマー ポーラ・パットン

 

 ◇親友ミヌティは二度死ぬ

 どうも、この世の中、デジャヴという事象についてよくわからない人間どもが多すぎる。

 デジャブってのは既視感ってことで「あっ、これ、前にも観たし体験したことある」っていうのがデジャヴで、疲れたときの脳が勘違いして体感している時の流れを歪めちゃうことを「既に視た感じ」ってことでデジャヴっていうんだけど、どうもそうじゃないんだよね。

 1987年だったかに『デジャヴュ』っていうフランス映画があって、これはとっても雰囲気があってぼくは好きな映画なんだけど、それでもやっぱり本来の既視感とは解釈が違うんだよな~って感じはあったのに、この作品に至ってはまるでちがうじゃんっていいたくなるような解釈だった。

 まあ、それはさておき、この作品だ。

 デジャヴではなくタイムマシンの亜流で他に筋立てはなかったんだろうか。せっかくの近未来的な設定がまるで生きてないんだよね。いや、それよりなにより、シャツやガーゼの血や留守電など最初から奇妙に時が乱れて介入している所があって、理屈が通じないんじゃないかなと。

 さすがにトニー・スコットだけあって飽きさせないし、画面はかっこええんだけどね~。

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帰ってきた木枯し紋次郎

2009年02月10日 18時37分38秒 | 邦画1991~2000年

 ◇帰ってきた木枯し紋次郎(1993年 日本 96分)

 監督/市川崑 音楽/谷川賢作 ナレーター/日下武史

 出演/中村敦夫 坂口良子 岸部一徳 加藤武 鈴木京香 石橋蓮司 上條恒彦 神山繁 尾藤イサオ

 

 ◇追悼市川崑その26

 タイトルバックはTVかしら?

 斬新なカット割にいやまじわくわくした。

 紋次郎の墓があって、中年になってからの恋の設定も天眼鏡が水というのも乙な感じだ。

 けどまあ、殺陣も決闘前の支度も実にリアルでそのあたりはまったくいうことがないんだけど、惜しむらくはどうしても紋次郎の初々しさが見られないんだよね。まあ、それは「帰ってきた」わけだから仕方のないことなんだろうけどさ。

 ふとおもったんだけど、市川崑って人はどうしても横溝シリーズが先に立っちゃうけど、昔の『股旅』もさることながら、こういう侠客の話って好きだったんだろか。金田一耕助もまあいってみれば流れ者なわけで、そういう共通点を市川崑は気に入っていたのかもしれないね。

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ひぐらしのなく頃に

2009年02月09日 20時04分02秒 | 邦画2008年

 △ひぐらしのなく頃に(2008年 日本 106分)

 監督・脚本/及川中 音楽/川井憲次

 出演/前田公輝 飛鳥凛 松山愛里 あいか 小野恵令奈 杉本哲太 川原亜矢子 三輪ひとみ

 

 △なにが昭和58年?

 今でもあるんだけど、早稲田大学に「映画制作グループひぐらし」という自主制作映画のクラブがある。

 で、昭和58年頃、そこで『真夏の白い夢』通称『まなしろ』っていう8ミリながら1時間30分っていう長尺物が撮られた。夏、山奥の村に合宿に出かけた大学生の集団の話で「山に入って白い少女に出会った者には必ず不幸が訪れる」っていう伝説がそのまま始まるっていう、いかにもな物語だったんだけど、その物語の主人公の名前が、この作品の主人公と同じ「圭一」なんだよね。

 なんだか、時代設定と「ひぐらし」というフレーズとがそこはかとない懐かしさに彩られて、ついつい誘われるように観ちゃったんだけど、中身はとほほなくらいに現代的で昭和58年を感じない。

 とはいえ、予想していたよりも前半は面白かったかもしれない。背景も匂わせるしね。でも後半は走りすぎっていうか、まあなんていうかね。

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鍵(1959)

2009年02月07日 00時44分01秒 | 邦画1951~1960年

 ◇鍵(1959年 日本 107分)

 英題/Odd Obsession

 監督/市川崑 音楽/芥川也寸志

 出演/京マチ子 叶順子 仲代達矢 中村鴈治郎 北林谷栄 菅井一郎 浜村純 中條静夫

 

 ◇追悼市川崑その25

 雁治郎、名演。

 京マチ子の肌は綺麗だけど、メークが良くないかな。

 濡れ場の直後の連結と汽笛の場面は『波の塔』みたいで苦笑しちゃうしかないんだけど、こういう演出って当時の流行だったんだろうか?

 市川崑にして、こんだけあざとい演出しちゃうんだね。ちょうど映画から観客が離れていく時代にさしかかってるけど、こういう演出はどうだったんだろう?

 たぶん、当時だとちょっと高級だったんだろうか?

 それともその逆だったんだろうか?

 でも、脳溢血前の竹藪に夜が来る場面は鮮やかだ。毒薬の件りは今ひとつだけどね。

 そうそう、音楽は八つ墓村の一部。音楽が他の作品とおんなじじゃんなんてことは、当時は誰も気づかなかったんだろうね。まあ、名画座で掛けられるくらいしか考えられなかった時代だもんね。ま、それはいいとしよう。複数の作品で同じクラシックをかけるのとおんなじことだっておもえばいいんだから。

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隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS

2009年02月05日 13時46分25秒 | 邦画2008年

 ▽隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS(2008年 日本 118分)

 監督/樋口真嗣 音楽/佐藤直紀

 出演/松本潤 長澤まさみ 阿部寛 椎名桔平 甲本雅裕 高嶋政宏 國村隼 生瀬勝久 上川隆也

 

 ▽HIHOはくさい映画賞

 さもあらん。

 戦国の身分差も物腰も言葉遣いも何もかも無視したアイドル物にされた悲しみに黒澤明も絶句するしかないだろうが、本家の作った人物関係も否定され活劇の面白さも滑稽味も無くされた無駄遣い極まりない抜殻を見せられる辛さは喩えようがない。

 いや、そもそもこの映画を作ることを考えたり、許したり、作ったりした背景にはいったいなにがあったのかとおもってやまないのだが、それについては『椿三十郎』のリメイクもまた同じことだよね。

 おれは泣けてきたぞ、阿部。

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