◇嘘を愛する女(2018)
この女(長澤まさみ)の設定がちょっとエリートすぎてげんなりする。いやまじ、ウーマン・オブ・ザ・イヤーとか、かえって嘘くさくなるから。同僚との会話もなんだかわざとらしすぎて痒くなる。もうすこし庶民的な方がしっくりくるかなあ。
けどまあ、夕陽が沈むとき蝋燭のようになる灯台の記述を頼りに、高橋一生の事実かもしれない記憶のようにあいまいな過去をおいかけてゆくという設定はおもしろい。しかし、長澤まさみ、それと誘ってくる若い男、ふたりとも酔っぱらった演技は下手だな。
ちょい待ち。気分が悪くなったところを介助されて靴まで貸してもらった高橋一生を都内のエレベーターで見かけて声をかけるのは、まあぎりぎりゆるそう。そんなに狭くないぞ東京は、というつぶやきを堪えて。けど、つぎの場面は、早くもマンションの中で咳をしてて、風邪は早いうちに治した方がいいとかいって毛布をかけてやって、ここにしばらくいれば?とか、ほくは家賃が払えないとか、なら家事をしてくださいとかいって同棲が始まるとかありか?そのあたりの経緯がいちばん詳しく知りたいところなんじゃないか。
しかし、働いてるところや、住んでいた部屋までわかったんなら、まず、総務で人事の資料を見せてもらわないか?町役場に行って住民票とか戸籍の照鑑とかしないか?とかいう疑問が出てくるのはわかっていても、あえて物語を展開していくのは、そうか、広島県警をひきだすひっかけかとあとで納得するものの、ちょっとなあ。プロの探偵にしてはずさんな仕事ぶりなんじゃないか?という程度の探偵にしておくのが吉田鋼太郎の設定になってるんだけど、つまり、なかば狂言回しとして扱われてるんだけど、あんまり吉田鋼太郎を描こうとするのは脱線になるんじゃないかって気もしないではないね。
もっと掘り下げてほしいのは昏睡状態にある高橋一生の方で、妻子が無理心中したことで行方不明になったこの男が、過去のリア充日記をつけてたっておもわせて、死んだ子供が女の子で、耳の後ろのほくろの記述に気づいたとき、どんでん返しになるんだが、この日記が自分の描いた新しい生活なら、喫茶店のウェイトレスとの関係はどうなんだと。とるに足らないウソなら、長澤まさみの口にしたセリフをそっくりそのまま言うわけがないわけで、ま、最後の最後に長澤まさみも過去に浮気したことがあると告白するんだけど、そんなことで相殺されるんかな?