◎キーパー ある兵士の奇跡(The Keeper)
ドイツ兵の捕虜だったバート・トラウトマンがマンチェスター・シティのゴール・キーパーになっていく物語なんだけど、サッカーの知識が皆無でもふつうに観られる。事実にどこまで合わせてるのかってことはあんまり興味がないし、それをいいだしたらせっかく物語として昇華させてるものを腰砕けにさせちゃう。
バートを演じたダフィット・クロスは『愛をよむひと』からちょうど10年経ってて、いやまあ大人になったこと。妻フレイア・メイヴァーはとっても好感が持てたし、父親ジョン・ヘンショウも好演してた。マンチェスターの監督を演じたゲイリー・ルイスも好い味を出してたし。
たしかに感傷的な流れではあるけれど、物語の緩急がよく、後半のマンチェスター時代になってからは往年のフィルムが挿入されているせいか事実の重みがぐんと加わってる。
かつて戦争中に助けることのできなかったフランスの少年と重なるトラウマの苦しみと、それを頸椎の怪我で入院しているときに電話で妻に告げようとした矢先、ひとりでアイスクリームを買いに行った5歳の息子が車に撥ねられて死亡するっていうのを重ねているところはまあ脚本上の都合ではあるんだけれど、感情を移入させるには充分なものがあったんじゃないかな。