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☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

ブレードランナー2049

2017年11月30日 19時20分17秒 | 洋画2017年

 ☆ブレードランナー2049(2017年 アメリカ 163分)

 原題/Blade Runner 2049

 監督/ドゥニ・ヴィルヌーヴ 音楽/ベンジャミン・ウォルフィッシュ ハンス・ジマー

 出演/アナ・デ・アルマス シルヴィア・フークス マッケンジー・デイヴィス ロビン・ライト

 

 ☆6月10日は時の記念日

 奇しくも、わが国においてはそうなってる。6-10-21っていうのは、レイチェルが赤ん坊を生んだ2021年6月10日のことだ。レイチェルの埋められた木の根っこと木馬のおもちゃにこの数字が彫られてるのを観たとき、時の記念日って外国から来てるのかしら?っておもっちゃったわ。

 それはさておき、Kことライアン・ゴズリングが、自分がレイチェルの産み落とした双子のかたわれだと信じてハリソン・フォードに会いに行く頃から「なんだかな~、これがほんとうだったらどんでん返しとか考えてないのかな~」と不安をおぼえていたんだけど、うん、そんなことはなかったね。

 とはいえ、そんなことは無菌室に暮らす記憶作家ことカーラ・ジュリを訪ねていったときに、この子はなにかの伏線になってるわけね?ってのがありありとしてたからまあ予定調和な世界ではあったけどさ。

 さて、哲学的な雰囲気に満ちていた前作と比較したところで仕方ないし、この作品はたぶん繋ぎの作品で本質的な続編は次作ってことになるっておもってるから今のところはなんともいえない。だって、すべての登場人物がようやく出揃って紹介も終わったってところで終わるんだもんね。カーラ・ジュリとライアン・ゴズリングとがほんとうは双子だったかもしれないし、真実はまだまだ雪景色の向こうにあるってことでしょ?

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しあわせの帰る場所

2017年11月29日 16時36分56秒 | 洋画2008年

 ◇しあわせの帰る場所(2008年 アメリカ 98分)

 原題/Fireflies in the Garden

 監督/デニス・リー 音楽/ハビエル・ナバレテ

 出演/ジュリア・ロバーツ エミリー・ワトソン ウィレム・デフォー キャリー=アン・モス

 

 ◇Firefliesの意味は、ほたる

 つまり、螢の庭、もしくは庭の螢ってことになる。

 まあなにを暗喩しているのかはさておき、タイトルバックの画面の見事さといったらない。だけど、あとはちょっとだれるかな。小説家ライアン・レイノルズが子供の頃から抱えてきた父親ウィレム・デフォーとの確執が母親ジュリア・ロバーツの事故死を起点にして解消されていくまでの物語だった。

 で、過去のさまざまな風景と現在とが交互に語られるのはまあいいし、ほぼ同年代の叔母エミリー・ワトソン(若いときはヘイデン・パネッティーアね)と昔になにがあったのかは観客の想像に任せるかたちにしてるものの、小説『庭のほたる』に書いてあってそれが周りの連中に読まれたらとんでもないことになるってことから簡単に想像できる。あ、ほたる、出てきちゃったね

 けどまあ、母親が自分の大学時代の友人と不倫していたって事実はどうなのかな~。要らないんじゃないかな~っておもえた。まあ、父親も浮気をしたこともあるって匂わせる夫婦喧嘩の場面はあるものの、けっこう母親の方はかなり本気で不倫してたみたいで、こういうのを見つけてしまう息子の立場ってのは辛いよね。なんていうか、どうしようもない憎しみをいかにして赦していくのかっていうのが主題なのかなと。

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甘い生活

2017年11月28日 16時51分03秒 | 洋画1951~1960年

 ◇甘い生活(1960年 イタリア 174分)

 原題/La dolce vita

 監督/フェデリコ・フェリーニ 音楽/ニーノ・ロータ

 出演/マルチェロ・マストロヤンニ、アニタ・エクバーグ、アヌーク・エーメ、イヴォンヌ・フルノー

 

 ◇神は死に、天使は語らず

 しょっぱな、屋上に水着でいるお姉ちゃんたちの腋毛に迎えられるキリストの像をヘリコプターで吊るしていくマストロヤンニは、要するに神を否定した存在で、享楽と退廃に身をゆだねるのはつまり地獄をさ迷っていくゲオルク・ファウストなのだっていう意味をもたせてるのかしら。となると、アニタ・エクバーグは女メフィスト・フェレスってことになる。

 ま、そんなつまらん感想はさておき、つぎつぎに重ねられてゆく挿話が自己を反省させてゆく種のひとつひとつになってるんだけど、そこまで見つめていかないと自分の愚かしさがわからないのかともおもったりする。友人の家庭の幸せぶりに、愛人はこんな家庭を持てたらいいわねというけれども、それも所詮は束の間の幻影にすぎないという虚無感も漂わせてるのは嫌いじゃない。

 いや、実際、海の家みたいなテラスで簾から落ちてくる木洩れ陽のコントラストの美しさだけでなく、すべての画面でくっきりした輪郭と光線と反射が観られ、なんていう見事な絵を撮るんだっておもったりもするけれども、ここでようやく登場してくるのが天使(ギリシア神話のヘレンってことかしら)をおもわせる横顔の綺麗なヴァレリア・チャンゴッティーニだ。

 ラスト、まったく語ることのない彼女はまさしく天使が降りてきているわけで、夏休みの間にマストロヤンニに会いに来てくれたわけで、また天上へ帰っちゃうんだね。だから、この世を象徴するような醜悪な汚らしい魚の死骸が浜辺へ打ち上げられたとき、それはまさしくマストロヤンニたちの見立てにもなってるんだけど、それが野次馬たちの見世物にもなっていく過程をじっと見つめる彼女のアップで映画は終わる。

 難解だとか意味深だとかっていわれるけど、きわめて単純で、とてもわかりやすい映画だったんじゃないかしら。

 まあたしかに、この映画の産み出したのは登場人物の名前パパラッツィオから出た「パパラッチ」っていうゴシップの追っかけ屋の徒名のほかになにがあったんだろうっていうような気にさせなくもないけど、ぼくの受け止め方はかぎりなく単純なんだけどな。

 でもそういう、この世界では神はすでに死んじゃったんだけど、まだ救いもあんじゃないのかな、このマストロヤンニだってちょっとは後悔して自己批判もし始めてるみたいだしねっとかいう皮肉と哀しみを描いてるんじゃないかしら?…なんておもうのはぼくの感性が鈍いからなんだろうな。

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怪物はささやく

2017年11月27日 18時27分53秒 | 洋画2016年

 ☆怪物はささやく(2016年 スペイン、アメリカ 108分)

 原題/A Monster Calls

 監督/フアン・アントニオ・バヨナ 音楽/フェルナンド・ベラスケス

 出演/シガニー・ウィーバー フェリシティ・ジョーンズ ジェラルディン・チャップリン トビー・ケベル

 

 ☆怪物はリーアム・ニーソン

 見えざるものを見ることのできるちからというのは、この映画のナレーションになるように子供でも大人でもなく、その中間にあるとき、得られる。ただし、誰でも得られるものではなく、どんな加減が作用するのかわからないけれども、ともかく、ごくたまにそういう人間がいる。かくいう僕の身近にもいた。霊感が強かったり、超能力と当時いわれた指先のちからを持っていたり、それはさまざまだったけど、ぼくの場合、そういうちからは宿らなかった。

 このルイス・マクドゥーガル演じる少年の場合、怪物が見える。で、亡くなってしまう母親にも怪物は見えたらしい。それは母親の遺してくれたスケッチブックを手にしたときにわかるだけど、この絵を描く能力もまた少年に受け継がれた。だからきわめて美しいタイトルバックが水彩画の描き方になってる。

 この描き方が素敵で、息をふっと吹きかけて水彩をひきのばしていくんだけれど、その描き方がそのまま怪物の造形にもつながってる。枯れ枝が延びていって怪物の髪の毛とかが出来上がってる。つまり、怪物はこの少年と母親の創造によるものだという暗示にもなってる。このあたり、すごいな。きわめて論理的だ。

 悪夢で観る怪物、それはつまり自分の抱えている恐怖や不安なわけだけれども、母親と訣別しなければならない運命を受け入れることができないかぎり、この怪物は消えてくれない。そうしてみると、きわめて筋立ては単純にして明解なんだけど、これを上手に脚本にしているのは、やっぱり物語を骨の髄まで理解している原作者パトリック・ネスだからなんだろね。

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マンチェスター・バイ・ザ・シー

2017年11月26日 19時03分30秒 | 洋画2016年

 ☆マンチェスター・バイ・ザ・シー(2016年 アメリカ 137分)

 原題/Manchester by the Sea

 監督・脚本/ケネス・ロナーガン 音楽/レスリー・バーバー

 出演/ミシェル・ウィリアムズ グレッチェン・モル ヘザー・バーンズ カイル・チャンドラー

 

 ☆ぼくも火事を心配する

 ケイシー・アフレックが一世一代の演技を見せたのはわかるんだけど、そこまでたくさんの賞をとるのかな~というのが観終わったあとの正直な感想ではあった。ところが意外に徐々におもいだされるんだよね。このあたりは不思議だな。

 まあそれはいいんだけれど、冬の寒い夜、寝入っている家族を温めてあげようとして暖炉に薪をくべるのはいいんだけど、そこから目を離して、あるいは柵を閉め忘れて、たとえすぐ近くとはいえ買い物に出ちゃったらあかんね。劇中、警察でもケイシーが諭されるように、誰もがしてしまう過失によって起こされた悲劇なのだから罰するとかいう次元にはならないものの、だからといって心の傷が癒されることは生涯ないわけで、こういうのを原罪を背負うということになるんだろうな。

 いや~マシュー・ブロデリック、わからなかったわ。それと、ヘザー・バーンズ。眼だけはシャーロット・ランプリングなんだよね。いや、そんなことではなく、この作品の救いは、誰にでも優しくしてくれた兄カイル・チャンドラーの存在で、たしかにこの兄の死と遺言によって、甥ことルーカス・ヘッジズとの仲が良いような悪いような関係で、そのあたりは上手だね。

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10 クローバーフィールド・レーン

2017年11月25日 18時39分44秒 | 洋画2016年

 △10 クローバーフィールド・レーン(2016年 アメリカ 103分)

 原題/10 Cloverfield Lane

 監督/ダン・トラクテンバーグ 音楽/ベアー・マクリアリー

 出演/メアリー・エリザベス・ウィンステッド ジョン・グッドマン ジョン・ギャラガー・Jr

 

 △核シェルターの密室劇

 ルイジアナ州レイクチャールズから65キロ離れた農場の地下に設けられたジョン・グッドマンの核シェルターになかば監禁されたカップルの脱出劇という、ただそれだけの他愛のない物語で、なにより問題なのは、ここまですごいシェルターを作ったジョン・グッドマンがメアリー・エリザベス・ウィンステッドとジョン・ギャラガー・Jrを監禁なのか保護なのかわからないけど、とにかくふたりを外に出させないのはなんでかってことだ。

 もはや異星人の襲来だろうと某国の大量殺戮兵器の投下だろうとそんな理由はどうでもよくって、シェルターから逃げ出したいふたりと少なくとも数年間は外に出したくないジョン・グッドマンの戦いが延々と続くだけってのはなんとも辛い。これが佳境、単なる変態的な変人かもしれないジョン・グッドマンのいってることが完全に正しくて、もうこれは大変だってくらいの物凄いエイリアンが登場して三人でちからをあわせて戦って逃げ出すのがせめて3分の1あれば胸のつっかえも落ちるんだけどね。

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誘う女

2017年11月24日 23時21分55秒 | 洋画1995年

 ◇誘う女(1995年 アメリカ 106分)

 原題/To Die For

 監督/ガス・ヴァン・サント 音楽/ダニー・エルフマン

 出演/ニコール・キッドマン マット・ディロン ホアキン・フェニックス ケイシー・アフレック

 

 ◇1990年、パメラ・スマート事件

 ニコール・キッドマン、このころがいちばんきれいかもしれない。

 土手の上の木に下でたちまんをするときの足まで綺麗だ。ま、この股間ぎりぎりのミニスカートから伸びてときどき組み替えたりする脚がいろいろと問題をひきおこすように演出されてるわけだけど、とにかく、鼻持ちならないコーマン女がマット・ディロンをひっかけて結婚して殺したかどうかという物語にはぴったりかもしれないね。

 ただ、ガス・バンサントがうまいのはキッドマンの演じる色気まるだしファッキン・デンジャレス・ウーマンが実は綺麗なだけで自分のことを知的で優秀だと大きく勘違いしてそのせいで周りを辟易させてしまっていることに気がつかないほど哀れだというのを事細かく演出していることで、つまりは男にファックしたいとおもわれるだけの勘違い女がどんどん哀れになっていくように作られてる。

 けど、この自己中女の点描だけで物語が成立するはずもなく、筋立てはマット・ディロンが殺されてキッドマンが逮捕されたところから始まるわけで、その事件に関係してる連中のアトランダムな事情聴取で構成せれてなかったからもたなかったかもしれないね。

 あ、でも、この物語の元ネタになってる「パメラ・スマート」についてはよくわからないし、どれだけ事実に即して物語が構築されているのかもわからないんだけどさ。

 とはいえ、結婚一周年の夜、天気予報中という絶対的なアリバイをつくり、グッナイハニーの挨拶で一連の仕業を終えるあたりはうまいね。ていうか終局、凍った川面を透かしてキッドマンの顔を観た瞬間、前に観たのをおもいだした。なんてこった。

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美女と野獣

2017年11月23日 20時10分20秒 | 洋画2017年

 ◎美女と野獣(2017年 アメリカ 129分)

 原題/Beauty and the Beast

 監督/ビル・コンドン 音楽/アラン・メンケン

 出演/エマ・ワトソン ハティ・モラハン ダン・スティーヴンス ルーク・エヴァンズ ケヴィン・クライン

 

 ◎仏版異類婚姻譚

 途中でミュージカルだということを忘れちゃうのはなんでなんだろう?

 ミュージカルらしくないからかな?

 それとも登場してくるのが人物ではなくて調度類に変えられてしまった連中だからかな?

 まあそれは僕の集中力の足りなさから来るものだろうからいいんだけど、それにしても、燭台のユアン・マクレガー、時計のイアン・マッケラン、ポットのエマ・トンプソン、チェンバロのスタンリー・トゥッチ、はたきのググ・バサ=ロー、箪笥のオードラ・マクドナルドとか、やけに豪華だわ。

 あ、ちなみに、この作品の舞台になってるヴィルヌーヴっていう村の名前は、そもそもの原作者であるガブリエル=スザンヌ・ド・ヴィルヌーヴ夫人から取られたのかしら?

 だよね、きっと。

 となると、元の原作につけたして完成させたジャンヌ=マリー・ルプランス・ド・ボーモン夫人の名前もどこかに活かされてるんじゃないのっておもうのは僕だけかしら?

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ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります

2017年11月22日 01時31分11秒 | 洋画2014年

 ◇ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります(2014年 アメリカ 92分)

 原題/5 Flights Up

 監督/リチャード・ロンクレイン 音楽/デヴィッド・ニューマン

 出演/モーガン・フリーマン ダイアン・キートン コーリー・ジャクソン クレア・バン・ダー・ブーム

 

 ◇若い頃のふたりがよく似てた

 モーガン・フリーマンの若い頃はコーリー・ジャクソン、ダイアン・キートンの方はクレア・バン・ダー・ブーム。よく似てた。いつもおもうんだけど、アメリカはこういうところがちゃんとしてるよね。子役もそうで、ほんとにおとなになったときにはこうなるんだよな~ってことが想像できる。映画に対するプロ根性がしっかりあるんだね。

 さて。

 40年間住んでいた部屋を老齢と貧困の故に手放さなければならない気持ちは、それを味わったものでないとわからない。

 しかも内覧会とかをして、わけのわからない礼儀のかけらもないような失礼きわまりない連中が家の中をかきまわして、言いたい放題見たい放題触りたい放題にあつかわれたらどうだろう。くわえて子供のかわりに飼っていた犬が倒れ、高額な手術をする真っ最中にそんなことが起きたら、どんな気分になるんだろう。

 せめてもの慰めは、夫婦の仲の良さが40年間変わらないということだけど、アメリカってところは、ほんと、こういうどこのどのような国にも起こりそうな小さな話を上手に作るんだね。

 ちなみに、内覧会に訪れ、ふたりが内覧に往くさきざきで現れ、ときにはフリーマンの薬のチャイルドロックを開けてくれる少女は、まるで人生の道案内のような台詞を残していくんだけれども、なんだか『甘い生活』の海の家の少女をおもいだした。

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月光の夏

2017年11月21日 22時03分36秒 | 邦画1991~2000年

 ◇月光の夏(1993年 日本 111分)

 監督 神山征二郎

 出演 若村麻由美、仲代達矢、山本圭、渡辺美佐子、田村高廣、滝田裕介、高橋長英、内藤武敏

 

 ◇振武寮のこと

 映画っていうのは、もちろん、虚構の世界だ。

 物語を作って役者に演じさせ、それを撮影して仕上げるんだから明らかに嘘の産物だ。いうまでもなくこの作品もそういう物語のひとつに過ぎない。だから、この映画が真実とは異なっているとか、この映画に登場する特攻隊員はいなかったといわれても、ああ、そうだろうな~としかおもいようがない。

 だって、映画なんだもん。

 ただまあ、よくできているのは事実だ。よくできているからこそ、こういうことがあったんだね~とかいう人がたくさん出てきて、舞台やらコンサートやらいろいろと広がりを見せた。それはそれでいい。戦争という悲劇を語る上で、いろいろな物語があっていいし、事実をもとにしたものという括りでいえば、事実を真正面からとらえようとしているのか、それとも真実のかけらというか本質のすみっこだけでも扱おうとしているのか、まあそれこそいろいろあるわけだから、あとは観客がおのおの判断すればいい。

 でも、いろんな物語はあっていいけど、あとあと混乱が起きないようにするには、原作の冒頭あるいはあとがき、もちろん映画の最初にも、誰にでもわかるように「これは、歴史に題材をとった架空の物語です」という一文もしっかりと明記するべきだったのかもしれないね。

 で、中身なんだけど、まあ、とある学校に現れたふたりの特攻隊員が最後にピアノを弾きたいから弾かせて下さいなと頼んで弾かせてもらうんだけど、ひとりは出撃したものの帰還して振武寮に収容されていたことから振武寮の存在が明らかになってくるっていうような、簡単にいってしまえばそんな物語だ。

 ぼくみたいな斜に構えた野郎は、ふ~ん、そういうことがあったのね~とかおもえないんだけど、役者たちの顔を見るごとに「お~」と声を出していた。とくに仲代達矢と山本圭が顔を合わせたりしていると、いやもう『謀殺下山事件』をおもいだしちゃったりして、テレビで『五芒星殺人物語』を観ていても、山本圭が登場するだけで嬉しくなっちゃったりする。映画が衰退していく時期に映画を支えようとしてきた人達の演技が観られるのは、なんだか嬉しいんだよね。

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フラットライナーズ

2017年11月20日 18時42分39秒 | 洋画1981~1990年

 ◇フラットライナーズ(1990年 アメリカ 114分)

 原題 Flatliners

 監督 ジョエル・シュマッカー

 出演 キーファー・サザーランド、ジュリア・ロバーツ、ケヴィン・ベーコン、ウィリアム・ボールドウィン

 

 ◇臨死体験

 臨死体験をした人に話を聴いたことがある。

 三途の川のほとりに立ってて水に入って渡ろうとしたんだけれど、あまりにも寒くて、それと後ろから自分を呼んでいる声を聞いたような気がして引き返したら目が覚めたと。で、三途の川、これってたぶん日本人に多いんだろうね。それからあと多いのは花畑だ。なんだろうね、花畑。

 心臓が停止してもまだ脳内で血は流れてるわけだからそのときに観た画像が臨死体験ってことになるんだろう。そのとき、脳がどんな作用をするのかわからないんだけど、アルファ波っていうのか、それが流れる場合、とっても幸せな気分になるものだから、綺麗な風景を見ちゃうのかもしれない。でも、そうじゃないとき、たとえば不安や恐怖や後悔や悔悟がある場合、過去の記憶にまつわる悪夢のような映像体験をするのかもしれない。

 で、この作品の場合は後者で、それぞれの登場人物たちは忌まわしい思い出を持っていて、それが不安の原因になってるものだから、臨死の際、それが追体験される。ところがむりやりに臨死体験をしてしまったものだから、精神のアンバランスが引き起こされて、悪夢がそのまま現実世界でも起こっているようにおもっちゃうんだけど、さてどうしようって話なんだが、そういうことからすれば、理屈を逸脱することのないおとなしい物語だったな。

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超高速!参勤交代リターンズ

2017年11月19日 21時01分37秒 | 邦画2016年

 ◇超高速!参勤交代リターンズ(2016年 日本 119分)

 監督 本木克英

 出演 佐々木蔵之介、深田恭子、西村雅彦、六角精児、伊原剛志、市川猿之助、寺脇康文、石橋蓮司

 

 ◇なるほどリターンは掛詞なのね

 なんのパワーが落ちたといって、深キョンだろう。

 彼女のシンデレラ物語はなりをひそめ、単なるマスコット的な扱いにされてしまったのが筋立てとしては辛いところだ。実をいえばおもしろくなりそうな気配があったのは富田靖子で、彼女らの城のおなごたちがどれだけ奮起するかで乗っ取られた湯長谷藩の復活がおもしろくなったはずなのに、ちょっと辛いかな。佳境の陣内孝則を相手どった合戦まがいの戦いもなんだか煙幕でけむにまかれた観はあるし、吉宗の日光社参の道中における暗殺について暗号まで用意しながらまったくの尻すぼみになっちゃったのはちょっとね。

 周防義和の音楽は前作とおなじながら、なかなかどうしてけっこう耳にのこる。これが好いだけに辛いな。

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超高速!参勤交代

2017年11月18日 20時36分56秒 | 邦画2014年

 ◎超高速!参勤交代(2014年 日本 119分)

 監督 本木克英

 出演 佐々木蔵之介、深田恭子、西村雅彦、六角精児、伊原剛志、市川猿之助、寺脇康文、石橋蓮司

 

 ◎享保20年、陸奥国磐城、湯長谷藩

 藩主の内藤政醇は実在し、家督を継いだときに吉宗にお目見えしている。まあよくこの地味な藩主を主役にしたものだとおもうけど、その発想だけでも充分に物語として成立している。うまいな。筋立てそのものはまあそれなりとはいえ、発想についていえば、そうなる。

 ただまあ深キョンがいいわけで、彼女の不幸な生い立ちとそれにめげない土性っ骨がもうすこし上手に演じられたら、佳境の恋とやがて側室になるというシンデレラ物語もおもしろく観られたような気もするけどね。

 ちなみに藩主の政醇はきわめて優秀な人物だったようで「忠孝、倹約、扶助」の藩法をもって政にあたったようで、こうしたところ、改革派の吉宗の時代の人といえるし、こういう物語には向いてるんだろうね。さらにちなみに、この藩から採掘されたのは金ではなくて石炭で、これはかなりの埋蔵量だったらしい。

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ラ・ラ・ランド

2017年11月17日 01時31分27秒 | 洋画2016年

 ◇ラ・ラ・ランド(2016年 アメリカ 128分)

 原題 La La Land

 監督・脚本 デミアン・チャゼル

 出演 ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、ジョン・レジェンド、ローズマリー・デウィット、J・K・シモンズ

 

 ◇アイス珈琲をふたつ

 つまりは、カフェでバイトしているエマ・ストーンは、この台詞をいつかいってやろうと胸を熱くしていたわけで、しかも、そのふたつの内ひとつは恋人のためのもので、自分だっていつか外で待ってる恋人のために持って出てやるんだ、みたいな情熱のかたまりになって、で、5年後まさにその夢は現実のものになって、夢のかたまりになってるウェイトレスちゃんに「アイス珈琲、ふたつね」と注文し、やっぱりサービスされるのをことわりチップか寄附かよくわからんけどとにかくお札を硝子の器に入れて颯爽と店を出るんだけど、そこでカートに乗って待ってるのは一緒に夢を追いかけていたはずの、しかも最後の最後に挫折していた自分を強引にオーディションへ引っ張り出してくれた最大の恩人であるライアン・ゴズリングじゃないんだよね。

 まあ、この展開は好い。物語としても嫌いじゃない。

 でもなあ、もともとミュージカルがよくわからないぼくは、この映画がなんでこんなに受けたのかがわからない。アカデミー賞のノミネート数とか凄すぎるのはなんでだっておもうんだわ。ていうか、サウンドトラックも凄い売り上げだとかって話だけど、いや実際のところ、いびきをかいてる観客も少なくなかったし、劇場で観てたら途中で退場していったお客さんとかいたし、エンドタイトルが始まった瞬間に何人も席を立ってたよ、まじで。だから、ぼくの感覚が変ってわけでもなさそうなんだけどな~。

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IT

2017年11月16日 13時06分27秒 | 洋画1981~1990年

 ◇IT(1990年 アメリカ 187分)

 原題 IT

 監督 トミー・リー・ウォーレス

 出演 オリビア・ハッセー、アネット・オトゥール、エミリー・パーキンス、リチャード・トーマス

 

 ◇27年も経ってしまった

 この間、ぼくはなにをしていたんだろう?

 1990年当時、ぼくはとにかくスティーブン・キングが大好きで、普段から本を読まない僕にしてはほんとうに珍しいことに、出る本出る本つぎつぎに買い込んでは読んでた。どれもこれもおもしろくて、でも、どうしても読めない本があった。それが『IT』だった。まあとにかく分厚くて、あ、キングはいつもどれも分厚いけどね、その中でもこの本はかくべつに厚かった。

 まあそんなことはいいし『水晶島奇譚』も似たようなものだとおもうんだけど、とにかく『IT』は読み終えることができなかった。このテレビ映画がレンタルビデオ屋に列んだのはそんなころだ。テレビでも『スティーブン・キングのイット』とかってタイトルで放送されたらしいけどそちらは観てない。それはともかく『IT』が読めなくなって、でもなんとかこの作品は観たものの、それ以来、ぼくはキングの読者ではなくなった。

 で、それから27年経っちゃった。ペニー・ワイズが蠢き出す頃だ。

 さて、こちらのピエロ=ペニー・ワイズはティム・カリーだ。う~ん、当時もおもったことなんだけど、テレビというのは照明がベタなんだよな。だから怖さよりも滑稽さの方が先走っちゃってて、マクドナルドにでも行こうかしらって気になったりもした。ただ、給水塔はどっちもどっちながら、大井戸はリメイクされた映画よりも断然こちらの1990年版が好い。ロケーションで、あ、こっちの方が雰囲気あるじゃんってところは随処にある。あるものの、どうしても平板で、ぼくの個人的な感覚からすると187分観続けるのはちょいと辛いかな。

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