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☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

ハンバーガー・ヒル

2021年06月28日 12時35分33秒 | 洋画1981~1990年

 ◇ハンバーガー・ヒル

 

 空挺部隊のヘリコプターが煙の中を飛んでくと後ろでそれが渦を巻く。こういうのはCGじゃできんだろな~と信じたい。

 封切りされたときから何度見直しても頭に残るのは淫売窟で一緒に風呂に入ったり泥濘をトラックがゆくところだったりする。

 937髙地のアパッチ・スノー作戦はどうも印象が薄いんだけど、なんでなんだろう?

 まあそりゃそうで、兵士になりきれない若者たちがどんどん戦争の狂気に駆り立てられながら、ひとりひとり仲間が死んでゆく中で、絶望と友情が生まれては消えてゆくわけだから、作戦の全体像もその目標も語られることはないし、当然、髙地奪取の到達点に到っても喜びなんかはこれっぽっちもない。そんな『ハンバーガー・ヒルへようこそ』ていうラストの立て札に語られる皮肉しか存在しないって物語なんだから仕方ないけどね。

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間違えられた男

2021年06月25日 13時40分58秒 | 洋画1951~1960年

 ◎間違えられた男

 

 出だし、工藤栄一のような逆光でヒッチコックが登場して、本当の話だと前置きする。とぼけた顔を見せないのがいいよね。

 それはさておきベラ・マイルズ綺麗だな。親不知を抜くのに借金しないとっていう肝心の話のときに、人間の歯と顎の進化の話にもっていって、ベラの美しさがその進化の結晶だといってまぐあいに入る巧さといったらない。筋立ての全部がここにあるじゃんね。

 で、ヘンリー・フォンダはベース奏者なんだけど、全編にわたってベースが流れる。不気味な感じで効果的だ。気が利いてる。

 たしかに1956年作だからのんびりした展開ではあるんだけど、ついつい見入っちゃうのは演出の巧さだね。

 うまさといえば、ヘンリー・フォンダの静かな慌てぶりがうまい。ベラ・マイルズもそうだけど、おさえた感情の演技は観ていて気持ちがいい。邦画だったら叫びまくって焦りまくって怒鳴りまくって感情むきだしで、だんだん鬱陶しくなって嫌気がさしてくる。

 もうひとつ、カメラワークだけど、保釈されるときに、カメラは通路から監視窓越しに撮ってて、ヘンリー・フォンダが名前を呼ばれてふりかえるやすうっと引く。すると小さな窓のフレームが画面いっぱいになって、そこへフォンダの目が迫り、声の聞こえた方を見るんだけど、このとき両目はクローズアップになる。さすがに、うまいな。

 カメラワークはもうひとつへ~っておもうことがある。当時はよくある演出なのかもしれないけど、ヘンリー・フォンダが家に帰ってきたとき、玄関に入るのをカメラは追って中に入るんだけど、このとき、フォンダはドアを開けて中に入り、開けたドアを閉める演技だけする。そうしないとワンカットで撮れないからね。でもこの演技が自然なんだなあ。

 で、ベラ・マイルズがノイローゼになっていく過程もちょっとしたことを積み重ねていくんだけど、ここも抑えられてて好感が持てる。ふた晩眠れずにフォンダを待ってるところが、なるほどとおもうのは、彼女が寝間着に着替えてないのと、でもベッドメイキングだけはちゃんとしてあるってことだ。細かいな、演出が。

 ただまあ当時のアメリカの暮らしはわかんないけど、ベース奏者ってみんなこんな良い暮らしをしてるんだろうか?親不知を抜くお金を借りないといけないのに、なんだか高級そうな町家に住んでるように見えるのは僕だけなんだろうか?

 

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座頭市と用心棒

2021年06月18日 12時10分35秒 | 邦画1961~1970年

 ◇座頭市と用心棒

 

 凄いなとおもったのは、いつもと雰囲気のちがう伊福部昭の主題曲が流れたとおもったら、なんとまあ、座頭市が3年ぶりに訪れた宿場の鍛冶屋で常田冨士夫がなまくらを打ってる音とリズムがおんなじだった。岡本喜八の頼みか伊福部昭の発想かはわからないけど、これは凄い。『七人の侍』の水車の響きと主題曲のリズムの見立てより合ってるわ。

 脚本もうまい。常田がなまくらしか打てねえというのに対して、なあに大根が斬れりゃいいんだよという勝新太郎が、さらに、鶯の声でも聞きながら露天風呂にのんびりとなといえば、次のカットは温泉に浸かる勝新の背後で騒いでるのは女郎どもだ。せせらぎの音がいいなあという勝新だが、そこには斬られて棄てられた死体がある。うまい。

 うまいといえば、最初、酔っぱらった三船敏郎がつまずきながら逆さ抜きして勝新を刺そうとしたとき、咄嗟に鞘を抜いてまたそこへ刀を差し入れさせる勝新の絶好さといったらない。

 ていうかこれ、傑作だな。得体の知れない烏帽子屋こと滝澤修んちの蔵が火事になるのと九頭竜こと仲代達矢じゃなかった岸田森の登場が合わさるのもうまいし、謎と心の小出しもうまいね。

 三船敏郎と岡本喜八ってのはほんと良いコンビだとおもうな。

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北北西に進路を取れ

2021年06月11日 12時29分22秒 | 洋画1951~1960年

 ◎北北西に進路を取れ

 

 意表を突く出だしとはこのことで、最初のカット、緑の地に黒の線が引かれ始めるんだけど、あら、なんか三点透視図法のパースラインみたいじゃん、とかおもって、その線に沿ってケーリー・グラントだのエバ・マリー・セイントだのといった名前が続き、in ALFRED HITCHCOCK 'S NORTH BY NORTH WEST がクレジットされたとおもったら、どんぴしゃり、ビルの画にオーバーラップしてその窓にクレジットが続けられた。おお~って悦に入るよね、これは。

 しかも、のっけから、路線バスのカットが無意味に置かれてるなとおもったら、駆け込んできた乗客が無情に閉められるドアに立ち往生するんだけど、これがヒッチコックだ。やられちゃうよね。

 ちなみにあまりにも有名になってしまった場面、インディアナポリスからパスで行った41番プレーリーストップだが、よくここ探したな~。けど、銃撃と農薬で狙ってきたセスナが、タンクローリーに激突して炎上したとき、駆けつけた冷蔵庫の運搬車を盗んで逃げるていうのは感心しないな。どうも米国人はそう緊急避難を認めるところがあるんだよね。

 それにしても小学校の時に初めて見て以来、何度観たかも覚えてないけど、見るたびにおもしろくなってくるのは、ほんとにたいしたもんだなあ。

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リービング・ラスベガス

2021年06月06日 17時38分38秒 | 邦画1991~2000年

 △リービング・ラスベガス

 エリザベス・シューはずうっとご贔屓なもんだから、どうしても観ちゃうんだけど、なんだか緊張感に欠ける娼婦とアル中脚本家の恋愛話だったな~と。

 しかしエリザベス・シュー、下半身のスタイルは惚れ惚れするんだけど、なんだかはつらつさの無くなった観が濃厚で、そもそも綺麗なのが足をひっぱってるだよな~。

 ニコラス・ケイジの出演作の多さは突出してるね。でも面白い話はその半分もない気がする。今回だって、せっかくアル中になるまで売れなくて自殺したくてもできずにいるところへ、夫のロシア人ジュリアン・サンズが暗黒街の揉め事で殺されて最後に会ったのが娼婦をさせられて尻を切られ続けてきたエリザベス・シューと出逢うわけなんだから、そのあたりから追い込まれていかないと、単にのんびりした中年まぢかな男女の破滅行にしかならないんだよね。

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断崖

2021年06月04日 19時09分03秒 | 洋画1941~1950年

 ◎断崖

 

 戦後、この映画がようやく日本で封切られたときの影響はものすごいものがあったんだろう。それは、ぼくらの想像できないくらいなもので、殺人事件と断崖をセットにしちゃうっていう、小説や漫画から2時間ドラマまで日本人が最大級に好む世界を作っちゃった。そういう意味からいえば、この作品はすごい。

 それだけじゃなく、たとえば、ジョーン・フォンテインがケーリー・グラントを疑い、親友を殺したんじゃないかと確信して屋敷に戻ると、美しき青きドナウの口笛が聞こえてくる。殺人を成功させて気分がよくなってるていう夫の心理と妻の恐怖が醸し出され、それが勘違いだとわかるやレコードのオーケストラに変わる場面とかだが、こうした一連の疑心暗鬼の描き方はもうヒッチコックならではで脱帽するしかない。

 けど、ラストはどうかなあ。原作では、夫はとんでもないゲス野郎だそうだけど、やっぱりもしかしたらほんとに殺人を犯してるかもしれないな~とおもわせる濃厚な不気味さが漂っててほしかったな~。

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