渡辺松男研究28(15年6月)【陰陽石】『寒気氾濫』(1997年)100頁
参加者:石井彩子、泉真帆、M・K、崎尾廣子、M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:曽我 亮子
司会と記録:鹿取 未放
234 山よ笑え 若葉に眩む朝礼のおのこらにみな睾丸が垂る
(レポート)
山よ、笑いなさい、若葉の力強い生命力に目がくらんで朝礼の男の子等の睾丸―みなしょんぼりと垂れ下がっている様子を。
・山笑ふ=俳句の季語=春。山の木々が芽吹き花が咲き色づいていく様子を、ほがらかに笑う人に例えて「山笑ふ」と言い表す。語源は「春淡冶にして笑ふが如く(北宋の画家・郭煕の言葉)『季節のことば』(自由国民社)
(曽我)
(当日意見)
★しょんぼりと垂れているわけではないと思いますが。思春期前の少年達なんですね、若
葉でいきいきと輝いている山を背景に、朝礼に並ばされている少年達がいる。若葉の照
り返しで眩しくてくらくらとしている少年達にはみんな睾丸が垂れている。何かかわい
らしい感じがしますけど、思春期ちょっと前あたりの少年達の恥ずかしさ、滑稽さも見
ているのかな。「山よ笑え」はおかしいから笑いなさいと言うのではなくて、曽我さん
が書いてくれているように「山笑ふ」という季語の命令形ですね。(鹿取)
★「若葉に眩む」で全体が肯定的な輝かしい感じになっていると思います。さわさわとし
た中に、男の子達がいっちょうまえに睾丸を付けていて、楽しい感じ。(真帆)
★「眩む」というのが曽我さんの意見の裏付けになると思います。眠たいわけですよ、だ
から睾丸もしょんぼりしている。しかし山よ笑えは季語ですけど、滑稽と言えば滑稽で
すよね、服を透明にしてみたらみんな睾丸が垂れているんだから。アパートを縦に割っ
て透明にしてみているような視点です。人間のそれぞれの行為って滑稽じゃないですか。
そんな舞台の書き割りを見ているような滑稽さがある。(鈴木)
★山にはもっともっと萌えて欲しいと願っている。そして男の子達のこれからの活躍を秘
めているよと言っていると思いました。(M・S)
★未来を包含しているような歌で、いい歌だと思います。子ども達にエールを送っている
ようで。(石井)
★睾丸が「ある」ではなく「垂る」がいいですね。(崎尾)
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