かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

渡辺松男の一首鑑賞 238

2015年08月21日 | 短歌一首鑑賞

 渡辺松男研究29(15年7月)【陰陽石】『寒気氾濫』(1997年)101頁
              参加者:石井彩子、M・S、渡部慧子、鹿取未放
              レポーター:渡部 慧子
              司会と記録:鹿取 未放


238 赤城山の天辺に立ち呼吸深し関東平野を吸い込みては吐く  

          (レポート)
 赤城山の天辺に立てば、みることと呼吸とがひとつになって、理屈もなく作者は赤城山という存在になる。赤城山と関東平野、二つの固有名詞がうるさく響かないのは、作者のものに望む時の原初的といえばよいのか、その生命が大きく働いているゆえだろう。(慧子)


        (当日意見)
★「関東平野を吸い込みては吐く」という非常に大きい世界を詠っていらっしゃる。
    (石井)
★天辺に立ってお山の大将というか、天下を取ったような気分で関東平野の空気を吸い込
 むような気がするという、おおらかな男性的な歌だと思います。(M・S)
★この人、登山が大好きな人で、週末には周辺の山々に登っていたそうなので、赤城山もし
 ょっちゅう登られた山なのでしょう。ここは頂上に着いた達成感とか快い疲れとかで関東
 平野を見下ろしていい気分で深呼吸しているんでしょう。だから、レポーターの「理屈も
 なく作者は赤城山という存在になる」という意見とは違います。(鹿取)


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