かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

渡辺松男の一首鑑賞  8

2013年08月14日 | 短歌1首鑑賞
   渡辺松男一首鑑賞 8

26 冬の日のあたたかにして老木は吾に緘黙を宥してくれる
    『寒気氾濫』(1997年刊)地下に還せり15頁
        レポーター:崎尾廣子(2013年3月) 
                   司会と記録:鹿取 未放

(記録)(2013年3月)
 ★冬の日の暖かさが老木をつつみ、その老木が私のだんまりを宥してくれる。冬の日の中になに
  もかもが宥されてるという感じ。(慧子)

(追記)(2013年8月)
 暖かい冬の日差しの中で老木と対峙している〈われ〉、ここには宥し合ったもの同士の暖かい交流がある。歌集中には次のような厳しい歌もあるが、こちらは寒気団とヒマラヤ杉の対峙であろうか。
  寒気団ヒマラヤ杉の上にあり同士討ちなり緘黙者とは(52頁)
   (鹿取)


    (レポート)(2013年3月)
 木と向き合った時は言葉はいらない。老木であればなおのことである。静かに向き合うだけでよい。作者は木と目と目で交流ができるのであろう。鹿取さんが以前のレポートで「木は目をあけて何かを(この世におこるすべてを、だろうか)見ているのだ。」と書いている。この老木は作者のすべてを見ていたのかもしれない。そのようにこの歌を読むと「宥してくれる」が心にひびいてくる。「宥」から作者が自然との関わりを大事にしている日々が伝わってくる。(崎尾)