フランチャイズ開業&読書日記・・・どこまで行くの?

2010年7月からフランチャイズ店の営業開始。サラリーマンを辞めての再スタートになります。

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ウェルカム トゥ パールハーバー(上)(下) (角川文庫)

2011年08月23日 00時22分39秒 | 書評 小説系
8月11日ぐらいから断続的にNHKスペシャルで
再放送「日本人はなぜ戦争へと向かったのか」を放送していて興味深く観ました。
終戦記念日の15日は戦中編「果てしなき戦線拡大の悲劇」も放送され
陸軍よりもむしろ海軍が無謀な戦線の拡大を主張していたと知り、
意外な印象を持ちました。

NHKスペシャルでは
リーダー不在、軍部の組織の問題、メディアや世論の熱狂など
もっぱら日本国内の内部事情によって
戦争へと突き進んだ様子が描かれています。

本書では、うってかわって国際情勢の見地から謀略によって
日本が英米との戦争に引きずり込まれた様子が
小説の形式をとりながら克明に描かれています。

ヒトラー率いるドイツ軍によって追い込まれていた英国チャーチル首相は
どうにかしてアメリカを参戦させることによって窮地を脱する方法を考えていました。
しかし、アメリカの世論は参戦することに反対しており、
一気に米国世論の転換を促す方法として考えられたのが
日本の対米戦争突入、とりわけ真珠湾への奇襲だったというのがあらすじです。

そこに英、米、日、ソのエージェントによる謀略が絡み合い
複雑な様相を呈します。

真珠湾攻撃が英米に仕組まれた罠だったという俗説は根強くささやかれていますが
外的要因と内的要因、意識的と無意識的、いずれにせよ
国家のリーダーが国民全体を死の淵にまで導いたことは間違いなく
われわれ国民はそのことを忘れてはならないと思います。


ウェルカム トゥ パールハーバー(上) (角川文庫)
クリエーター情報なし
角川学芸出版


ウェルカム トゥ パールハーバー(下) (角川文庫)
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角川学芸出版



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ボックス 百田尚樹著 太田出版

2011年08月08日 14時04分30秒 | 書評 小説系

「人は苦労して一生懸命に努力して手に入れたものは、
決して簡単には手放さない。」


「才能のある子は努力の喜びを知らない子が多いのよ。
出来ないことができるようになる喜びを知らない―
ある意味でそれは不幸なことやと思う。」


主人公の一人、鏑矢義平が宿敵稲村にボクシングの試合で敗れ、
あっさりボクシング部を辞めたことについて、
顧問の高津先生が鏑矢の友人である木樽優紀に語った言葉です。

才能におごることなく不断の努力を重ねて
超一流のプレーヤーになるスポーツ選手も多いですが、
一方で人格が陶冶されていない高校生レベルでは
才能におぼれてしまう生徒もいるのが現実なのでしょう。

このことは、スポーツに限った事ではありません。
最近は、努力を積み重ねて物事を成し遂げるということを
賞賛する機会が減っているなぁという気がします。

「本当の才能というのは、実は努力する才能なのよ。
努力と言っても、苦しんで苦しんでしんどい思いを
克服してやるのとは違うの。さぼりたい気持ちを抑えつけないと
努力できない人は才能がないのよ。
本当の天才って、努力を努力と思わないのよ。」



映画ボックスを観て、
原作も読んでみたいと思って手にした本です。
映画はキャスト陣の個性もあいまって迫力がありました。

原作はどうかな?と思いましたが、
単なるボクシング小説にとどまらず、
二人の高校生の成長を描く青春小説になっています。
二人の主人公の複雑な心の機微をうまく捉え
読者に感動を与える内容になっています。

ともすればありがちな展開になるストーリーが
感動の名作になるのは、そこに作者の訴えたい何かがあり、
それをうまく読者に伝え、共感を得ることができる力量が
あるからなのだと思わせる一作です。


主人公と同年代の高校生に読んでもらいたいなぁ。
生きていくうえで何が大事かということを
分別くさくなく教えてくれると思いますよ。


ボックス! 上
クリエーター情報なし
太田出版


ボックス! 下
クリエーター情報なし
太田出版



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永遠のゼロ(講談社文庫)

2011年07月31日 16時12分12秒 | 書評 小説系
平成23年の現在では、昭和20年に終戦となった
太平洋戦争は遠い昔の話になりました。
今年で66年目の夏を迎えます。

もちろん僕は、記録の中でしか読んだり
聞いたりしたことがありません。
戦争を実体験した方は、
かなり少なくなっているのでは
ないでしょうか?

太平洋戦争の記録も昔は数多く読んだ記憶があります。
最近はそれほど読む機会も少なくなっていました。
以前は、太平洋戦争での出来事を否定する著作が
多かったように思いますが、
太平洋戦争での個々の局面においては
それを賛美する出版物も増えてきています。

正解のない問題については
その人の政治的・思想的な信条が
強く影響すると感じるようになりました。
だから、太平洋戦争についても、
個々の場面においては立場によって
さまざまな見方があるのだろうと思っています。


永遠の0 (講談社文庫)
クリエーター情報なし
講談社


当初、『永遠のゼロ』は、その題名からも
戦記、とくに特攻隊のストーリーだと勝手に
陳腐な話を想像していたので敬遠していたのです。
しかし、アマゾンでのあまりに良い評判と
同じ作者の『ボックス』という映画を観て
読んでみる気になりました。


あらすじは、主人公である健太郎が、
特攻隊員として死んだ祖父の生涯を
元戦友たちの数々の証言を聞き取りしながら
調べていくうちに、意外な真実に出会うと
いうものです。

素材として扱っているのは
戦争、とくに特攻隊員として最後は
敵戦空母に突入を命じられる
熟練パイロットの短い生涯なのですが、
底流に流れているのは、
身近に存在する人たちが背負っていた
重い現実を明かされる過程で
主人公たちが真摯に人生と向き合う
というヒューマンドラマです。

良きにつけ悪しきにつけ、
「人間というのは表から見える姿だけがすべてではない」
というのは年齢を重ねるとわかってくる真理ですが
本書のストーリーを読んでも、
そういう印象を受けています。

「生きて帰りたい」と公言した
戦闘機乗りが単なる臆病者ではなかったという事実や
数々の無謀な作戦計画を立案した海軍のエリートたちが
現実の戦闘にでると、臆病風に吹かれた行動をして
勝機を逸したという現実。

ふりかえって現代をみてみると、
いつもの、政府・東電・官僚・政治家批判になってしまいますけども、
エスタブリッシュメントとしてでかい顔をしていた人たちが
いざとなったときに情けなーい行動しかとれない現実。

「わかっていたこと」であったとしても、
あらためて見せつけられると、
実は「日本のお家芸」やったんやなぁと
怒りがこみ上げてきます。

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せんせい。 (新潮文庫)

2011年07月31日 14時45分15秒 | 書評 小説系
あっという間に7月が過ぎていく。
忙しい日々を送っております。

小説は、忙しい日常をちょっと忘れて
気分転換には最適でした。

せんせい。 (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社


本書は、教師と生徒にまつわる6つの短編集。


教え子にギターを習う物理の教師の話である「白髪の二ール」

おっかない保健室の養護教諭と
保健室に身を寄せる児童の物語である「「ドロップスは神さまの涙」

画家のマティスにあこがれ続けた美術教師の物語「マティスのビンタ」

一人の生徒を嫌い続けた教師の後悔をつづった「にんじん」

高校野球の鬼監督と中退してしまった
高校球児のその後を描いた「泣くな赤鬼」

どもりで苦しんでいた生徒の、
寸借詐欺事件をおこした教師との思い出をかたる「気をつけ、礼」


ラストの短編は作者「重松清」の自伝を思わせる短編でした。

教師と生徒との関係を描写することで、
より強く読者に考えさせ、
訴えかけることができるという側面はあるように思います。

さりげないやさしさや
夢を追いかける大切さ。
人を大切に思う気持ちや
教師であっても、一人の人間であるゆえに持つ弱さ。

大切なんだけれども
直接的に書くと薄っぺらくなってしまう、
こういう感情のかずかずは
小説だからこそ伝えらるのではないか、
そう思いました。

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プリンセス・トヨトミ 万城目学著

2011年04月24日 23時12分58秒 | 書評 小説系
最後まで読み終えることができたので
ストーリーとしては面白い出来なのではないかという
印象を持っています。
(鴨川ホルモーは残念ながら途中で挫折した)
リアリティを追求するか、ファンタジーとして創造性を発揮するかで
小説の味わい方も変わってくるかと思いますが、
万城目(マキメ)学の小説はリアリティとファンタジーを結合させて
読む人の好奇心を刺激するようなところがあります。

会計検査官と大阪市立中学校をドッキングさせるという奇抜な設定。

個人的には、高校時代に通った地域の地名がバンバンでてくるので
懐かしさとともに街の知らなかった一面をも知ることができ、
リアリティの面白さを刺激されました。

あとがきに辰野金吾の近代建築について触れられており
小説のなかで一つのポイントになっています。
日銀大阪支店や中之島公会堂など大阪における辰野金吾の近代建築のみならず
以前旅しながら、旧日本銀行小樽支店や岩手銀行の中ノ橋支店など
日本各地にある建築物に興味を持っていたので、
奇妙な符合を感じながら読んでいました。


帯やあらすじには『大阪全停止』がメインに置かれていますが
会計検査官と大阪市立空堀中学校とがどうつながっていくのかを
単純に楽しむことができたら面白いと感じることができるでしょう。



プリンセス・トヨトミ (文春文庫)
クリエーター情報なし
文藝春秋


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新世界より(上) (講談社文庫) 貴志 祐介著

2011年01月22日 22時22分22秒 | 書評 小説系
厳しい寒さが続きますね。
インフルエンザもはやり始めているようなので
皆様ご自愛ください。


ところで最近、おもしろい小説によく当たります。
忙しいときに限っておもしろい小説に当たり、
寝不足になったりします(笑)

「新世界より」もそうです。
いま下巻を読んでいるところです。
夢中になって読んでいます。
著者の貴志 祐介といえば、
最近も「悪の経典」このミスベスト1に輝き
再び注目を集めています。
この人の初期の作品「黒い家」や「クリムゾンの迷宮」
「天使の囀り」「青い炎」なども夢中で読んだ記憶があります。

新世界より(上) (講談社文庫)
貴志 祐介
講談社


「新世界より」は1000年後の未来の世界。
ハイテクノロジーの世界というよりは
どちらかというと原始的な世界なのですが、
唯一過去の世界と異なるのは
人間が呪力という超能力を有している点です。
それが進化といえるかどうか別にして。


人間が呪力を持ったときに
どういう世界になるか
人間同士あるいは人間とそのほかの生物との関係を
とてもリアルに描きます。
SF(サイエンス・フィクション)なのですが
とてもリアルなのです。

人間が一般的に超能力を持っているとして
たとえば、その能力を悪用した場合
どのような状況が起こりうると考えられますか?

一人ひとりが核兵器を所有しているような状況になりかねないと
作者は考えたようです。

そのような状況から平穏な社会を維持するためには
どうしたらよいのかという観点から
さまざまな仕組みが構築されていきます。
そのあたりの複雑な仕組みを
巧みに描いているところが驚きです。

SFは物語の設定や環境がチープだと興ざめしがちなのですが、
逆にここを丁寧に矛盾なく描き切ると俄然読者の好奇心をつかみます。

「新世界より」は、その点が成功していると思います。

長い長い物語ですが
その先を読みたいと思わせる筆力はさすがです。


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チーム (実業之日本社文庫) 堂場瞬一著

2011年01月10日 23時21分54秒 | 書評 小説系
チーム (実業之日本社文庫)
堂場 瞬一
実業之日本社


1月2日、3日はたいてい「箱根駅伝」を観ています。
今年もテレビで観戦しました。
早稲田が18年ぶりの総合優勝でしたね。

毎年恒例となっている箱根駅伝。
数々のドラマが多くの人々を惹きつけるのだと思います。

関東の大学が熾烈を極めて争うこの大会には
独特の仕組みがあって、そのひとつが「学連選抜」。

箱根駅伝出場を逃した大学の中から
予選で好タイムを出した選手が選ばれる
混成チームなのが「学連選抜」です。

本書は、その「学連選抜」にスポットをあてた小説です。
大学対抗という舞台の場に、違和感の伴う混成チーム。
チームの絆とはなんなのか考えさせる内容です。


堂場瞬一の小説は初めて読みましたが、面白かったです。
テンポが良くて、場面の展開が鮮やかにイメージでき
映像を観ている様な感覚で小説を読むことが出来ました。
文章を読んでいて頭に映像が浮かぶというのは、
うまい小説家の証拠だと思っています。

設定もさることながら、
ストーリー運びの展開が見事でした。

お勧めの1冊です。

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オレたち花のバブル組 (文春文庫)

2011年01月07日 15時35分08秒 | 書評 小説系
オレたち花のバブル組 (文春文庫)
池井戸 潤
文藝春秋


自分の考える正義のためなら上司にもたてつく主人公
半沢直樹のようなキャラは実際の銀行内ではリアリティが
あまりないようには思います。
そういう意味で、本書は架空の経済小説なのですが、
とても痛快で元気になる小説です。

現在の銀行業界をとりまく複雑な事情をわかりやすく描きながら
その中で働く銀行マンの苦悩と哀切と、そして誇りを
厭味なく表現できる筆力がすばらしいです。

池井戸潤の小説にはバランスのとれた正当な価値観がうまく反映されていて、
読む者をすがすがしい気持ちにさせてくれます。

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山田 風太郎―学生時代にはまってました!

2010年12月12日 23時23分34秒 | 書評 小説系
信玄忍法帖 (河出文庫)
山田 風太郎
河出書房新社


あとがきの解説を読んでみると
90年代前半に、山田風太郎の再評価が始まったと書かれてあったので
ちょうど僕の学生時代に山田風太郎の再ブームが到来していたのですね。
「明治~」とか「警視庁~」などけっこう読み漁っていた記憶があります。

『信玄忍法帖』は、先週の日曜日に訪れた京都の古本屋でたまたま見つけた1冊です。
ひまつぶしにと思いましたが、予想以上に面白かったです。
史実に反しない範囲のなかで著者の想像力がいかんなく発揮され
ぐいぐいと物語に引き込まれていきました。

信玄が都に向けて進軍し始めた矢先、
急死してしまいますが、3年間は死を隠匿せよと遺言した話は有名です。
もっとも、その間、徳川や北条などの他国の諜報活動から
どのように切り抜けてきたのかは謎であり、
想像力をかきたてられます。

本書は、信玄が影武者を使っていたという逸話をもとに
徳川の伊賀忍者と武田方の猿飛・霧隠との攻防を描いたものです。
単なるファンタジーに終わっていないところが秀逸です。


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マンチュリアン・リポート 浅田次郎著

2010年10月10日 20時05分40秒 | 書評 小説系
マンチュリアン・リポート (100周年書き下ろし)
浅田 次郎
講談社

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今NHKで放送されている「蒼穹の昴」の
続編「中原の虹」が文庫化され、
さらに張作霖爆殺事件を扱った本書が出版されました。
うまい販売戦略ですね!

清朝末期を扱ったこのシリーズで、
中原の虹では張作霖が大きく取り上げられていましたが
肝心の爆殺事件に関しては、詳細に書かれてはいませんでした。


本書は、その爆殺事件の前後にスポットライトをあて
詳細に描いています。歴史的事実に味付けしながら描くのは
意外と難しいと思いますが、ストーリーテラーらしい
浅田次郎さんならではの視点で物語が進みます。
読みやすく最後まで一気に読めました。


機関車トーマスからの着想?と思わせるような
機関車の語りは小説ならではでしょうね。


天皇の密使として張作霖爆殺事件の真相を探る軍人のレポートと
交互に章立てされ、真相に迫っていきます。


最後におなじみの李春雲も登場するので、
このシリーズが好きな読者にはたまらない構成になっています。

ただ、このシリーズを最初に読むなら
蒼穹の昴から読み始めたほうが
面白さは倍増すると思います。


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『砂漠』 伊坂幸太郎著 新潮文庫

2010年08月09日 00時00分35秒 | 書評 小説系
フランチャイズ店舗の営業を開始してから
てんてこ舞いの忙しさと休みは疲れてぐったりしてるので(笑)
なかなか好きな本も読めていない状態でしたが、
この『砂漠』は、読んでみたかったのです。


砂漠 (新潮文庫)
伊坂 幸太郎
新潮社

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伊坂幸太郎自身が東北大学法学部の出身なので、
この小説の舞台も、東北大学が舞台かなと思わせる
シチュエーションです。

大学生の日常を描く青春小説ですが、
何気ない事件を絶妙な筆致でぐいぐい読ませる
伊坂幸太郎ならではの小説でした。

『自らの未熟さに悩み、過剰さを持て余し、
それでも何かを求めて手探りで先へ進もうとする青春時代』

大学時代を振り返ると、恥ずかしくて穴があったら入りたい(笑)
印象しか持っていないので、あんまり幻想も抱いていませんが、
それでも今から考えると優雅な時間を過ごせていたなぁと
思います。あの時間を与えてくれた両親に感謝。

同年代の50%が大学へ行く時代です。
このことは、若者達を大学に行かせることのできる余裕が
日本の社会にはまだあるということを意味するのだと思うのです。
そうだとするなら、やっぱり日本の国力はまだまだ凄い。


「人間にとって最大の贅沢とは、
人間関係における贅沢のことである」

大学を卒業する主人公たちに
学長が最後に贈る言葉です。

学生時代に豊かな人間関係を創ることが
最も大切な勉強なのかもしれません。

伊坂幸太郎の卒業時の東北大学の学長といえば
西澤潤一氏が気骨ある学者として有名だったから
もしかしたら本当におっしゃった言葉かもしれませんね。

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運命の人(一)~(四) 山崎豊子著

2010年05月07日 00時08分56秒 | 書評 小説系
外務省機密漏洩事件、いわゆる西山太吉事件を題材にした小説です。
西山太吉事件といえば、憲法の判例百選にも載っている有名な事件。

知る権利や正当な取材活動の範囲が問われた憲法学上重要な事案です。
もっとも、現実は小説にもなっているように、
新聞記者と外務省の事務官との男女の仲も絡み
また当時の政治状況も背景にして複雑な様相を呈します。

1970年代初めだと、
大阪万博を開催して、今の中国のように
日本の経済も昇り調子である一方、
70年安保経て、沖縄返還を控えるという不穏な政治状況の中
長期政権が続いた佐藤栄作内閣の末期という時代状況でした。

「運命の人」では、
登場人物が現実に存在した人物を想像させる作りになっています。
「ひそかに情を通じ、これを利用して」という
起訴状を執筆した知恵者検察官って誰だろうと思っていたら
あの「佐藤道夫」氏だったのですね。

文書を国会の場で暴露してしまったのは
あの「横路孝弘」氏でした。

西山さんの弁護人を務めたのは、
のちの最高裁判事「大野正男」氏でした。

さまざまな『有名人』がこの小説には登場してきます。


佐藤内閣退陣時に新聞記者を記者会見の場から退出させたのは
当時、この外務省機密漏洩事件がおこっていて
新聞と政府の対立が激しかったからなのでしょう。

米軍基地と沖縄の問題は
返還当時から遅々として解決に向かわない問題であり、
21世紀にはいって10年たっても
時の首相は再び基地の負担をお願いすべく
沖縄県民に頭を下げ回っています。

沖縄の問題はいびつな返還交渉のときから
はじまっているのではないでしょうか?
国民に明らかにできない密約を米国と結び
米国で明らかになってからようやく密約の存在を認めた日本政府。
政権交代になって初めて明らかになった事実とは言え
あのまま自民党政権であったら、
国民は正しい事実を知らぬまま、
選挙という政治的判断を強いられることになったでしょう。

外交にしても、防衛にしても、政治にしても
最終的にはすべてその責任は国民に帰すことになるのだから
国民に対してはできる限りの情報を開示して
その政治的判断を仰ぐべきなのではないのでしょうか?

外交官も官僚も政治家も、
その国家権力の行使は
国民の信託によるという大前提を
忘れられては困ります。

チェック機能が働かないため、
同じ過ちを何度も繰り返すことになりますよ。

運命の人(一)
山崎 豊子
文藝春秋

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運命の人(二)
山崎 豊子
文藝春秋

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運命の人(三)
山崎 豊子
文藝春秋

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運命の人(四)
山崎 豊子
文藝春秋

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それにしても、長かったです。

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ベイジン〈下〉 (幻冬舎文庫)と加藤嘉一

2010年04月24日 01時09分09秒 | 書評 小説系
真山仁著 ベイジン下巻は巨大な原子力発電所建設の現場で起きる
トラブルに主人公の田嶋とがどう立ち向かうかを描いていきます。

中国社会や中国人の気質を微に入り細に描き、
原子力発電所の建設の困難さを現実感あふれる筆致で描きます。

あとがきで著者の中国取材に協力した方々の名前が列記され
謝辞が述べられていましたが、その中に北京大学の加藤嘉一さんが
紹介されていました。

この方、4月10日の日経新聞の1面企画「こもるな!ニッポン」
でも紹介されていました。中国では加藤さんが語る日本論、中国論に
注目が集まっているそうです。

ネット上に公開されている彼のプロフィールによると、
1984年静岡県生まれ。2003年より北京大学国際関係学院に在籍。
現在は大学院での研究のかたわら、中国メディアなどでの
さまざまな言論活動を続けている。
主な出版物に、中国の有名演出家・山奇氏との対談集
「七日談」(新華出版社2007年)、
外務省アジア太平州局の小原雅博氏による「国益と外交」の翻訳書
「日本走向何方(日本はどこへ向かうのか)」(中信出版社2009年)。
2005年、東京大学と北京大学との学術プラットホーム「京論壇」を
立ち上げる。2008年、日中合作ドラマ「泣きぼくろ」の助監督を務める。
香港フェニックステレビのウェブサイト「フェニックスネット」での
ブログ連載や、フィナンシャルタイムズ中国語版のウェブサイトでの
コラム連載など、旺盛な執筆活動でも人気を博している。
中国語で書いた初の自著「以誰為師(誰を以って師と為すか)」
の出版も間もない。人民網より

高校から単身、中国に渡り北京大学に入学して
しかも中国のメディアにも登場してその発言が注目されるって
尋常じゃない凄さですね。26歳の若者、畏るべし!

ベイジン〈下〉 (幻冬舎文庫)
真山 仁
幻冬舎

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圧倒的面白さ!ベイジン〈上〉(幻冬舎文庫) 真山 仁

2010年04月23日 00時05分22秒 | 書評 小説系
まだ、上巻しか読んでいませんが、
ものすごく面白いです。下巻に飛びつきました(笑)

ストーリーは、北京オリンピック前夜、
国家の威信をかけた原子力発電所の建設に携わる
日本人技術顧問と地方都市の中国共産党幹部との
葛藤を描く経済小説です。ストーリー展開のうまさ
もさることながら、日本人の思考方法、
中国人の思考方法というものが克明に描かれていて、
その対比をつかみ取りながら、中国のいま置かれている問題が
何に根差しているのかがよくわかる情報小説です。

本書は、北京オリンピック前夜に単行本として出版されていますが、
今また中国は上海万博の開催を控え
国を挙げての大イベントに総力を注ぎこんでいます。

国際社会の視線を気にして体裁を整える外側の部分と、
共産党一党独裁政治の中で腐敗と汚職が蔓延している内側の部分。
そこに、自我の強い中国人気質があいまって、
いわく言い難い強烈な国家体質を作り上げているのが今の中国です。
行ってみたいとは思いませんが、
強い興味と関心を惹きたてる魅力を持っています。


本書を読んでいると、
浅田次郎の「蒼穹の昴」「中原の虹」を思い出します。
こちらは、清朝末期の中国を描いたものですが、
中国人の気質は帝国主義社会下でも共産主義社会下でも
本質的には何ら変わっていないのだろうなと思わせる感じがしました。

もちろん創作の小説における描写で現実の中国人気質を語るのは
おかしな話だし、現実には様々な中国人がおられると思います。
しかし、観察力・洞察力に優れている二人の作家が描く
中国人の描写は、それほど的を外してはいないだろうと思いました。


ベイジン〈上〉 (幻冬舎文庫)
真山 仁
幻冬舎

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メーンストーリーからは外れますが、
映画監督の楊麗清を支援する李明恵が言った言葉
として紹介されていた次の言葉が印象に残ります。
「国際社会に仲間入りしようと必死にもがきあがく中国の姿を、
過不足なく後世に残す責任を負っていると。
そのためには・・・、目の前で起きている現実から目を背けず、
むしろその現実の中から真実を浮かび上がらせようとする・・・」


目の前の現実に目を背けず
その現実の中から真実を浮かび上がらせ
問題解決に立ち向かうのは、
中国人だけでなく日本人にとっても
とても大切なことだろうと思います。

》》レビューを気に入ってくれた方は、ぽちっとひと押し!
う~ん、という方も怒りのひと押し(笑)》》
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午前三時のルースター  垣根涼介著

2010年04月03日 00時24分49秒 | 書評 小説系
「君たちに明日はない」シリーズで人気の
垣根涼介のデビュー作。
第17回サントリーミステリー大賞を受賞しています。

あらすじは、旅行代理店に勤める主人公が、
失踪した父を捜す少年を手伝いベトナムにわたり、
様々な妨害にあいながら、
父を発見するサスペンスミステリーです。

原 を思わせるハードボイルドなタッチで
文章がうまく読みやすい。

父親の失踪理由など、なかなか共感できない部分もありますが
読者を飽きさせない場面の展開がうまく筆力を感じさせました。

ルースターというのは一番鶏のこと。

サイゴンで聞いた一番鶏の鳴き声が夜明けを意味するように、
実の父親と決別して逞しく生きていかざるを得ない少年の
成長を物語る象徴にもなっています。

文春文庫の解説を書いている川端裕人の文章もいいですね。
「世界を創造したがる」作家と
「お話を語りたがる作家と二種類の作家がいるという。
垣根涼介は、一見「お話」指向の作家でありつつ、
登場人物の「這いずりまわる」様を描くことで
世界観を創造することに成功しているという。

このような批評の仕方がとても面白いなあと思いました。
荒唐無稽な物語も、
その作家の想像力の発露として
楽しみたいと思っていますが、
現実的な地に足ついた日常を
リアリティ溢れる圧倒的な描写力で描く作品にも
元気と勇気と感動をもらえるかもしれません。

読書が楽しいゆえんです。

押しつけるわけではありませんが、
優れた作家の作品はもっと多くの人に
読んでもらいたいなぁと思います。

午前三時のルースター (文春文庫)
垣根 涼介
文藝春秋

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