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運命の人(一)~(四) 山崎豊子著

2010年05月07日 00時08分56秒 | 書評 小説系
外務省機密漏洩事件、いわゆる西山太吉事件を題材にした小説です。
西山太吉事件といえば、憲法の判例百選にも載っている有名な事件。

知る権利や正当な取材活動の範囲が問われた憲法学上重要な事案です。
もっとも、現実は小説にもなっているように、
新聞記者と外務省の事務官との男女の仲も絡み
また当時の政治状況も背景にして複雑な様相を呈します。

1970年代初めだと、
大阪万博を開催して、今の中国のように
日本の経済も昇り調子である一方、
70年安保経て、沖縄返還を控えるという不穏な政治状況の中
長期政権が続いた佐藤栄作内閣の末期という時代状況でした。

「運命の人」では、
登場人物が現実に存在した人物を想像させる作りになっています。
「ひそかに情を通じ、これを利用して」という
起訴状を執筆した知恵者検察官って誰だろうと思っていたら
あの「佐藤道夫」氏だったのですね。

文書を国会の場で暴露してしまったのは
あの「横路孝弘」氏でした。

西山さんの弁護人を務めたのは、
のちの最高裁判事「大野正男」氏でした。

さまざまな『有名人』がこの小説には登場してきます。


佐藤内閣退陣時に新聞記者を記者会見の場から退出させたのは
当時、この外務省機密漏洩事件がおこっていて
新聞と政府の対立が激しかったからなのでしょう。

米軍基地と沖縄の問題は
返還当時から遅々として解決に向かわない問題であり、
21世紀にはいって10年たっても
時の首相は再び基地の負担をお願いすべく
沖縄県民に頭を下げ回っています。

沖縄の問題はいびつな返還交渉のときから
はじまっているのではないでしょうか?
国民に明らかにできない密約を米国と結び
米国で明らかになってからようやく密約の存在を認めた日本政府。
政権交代になって初めて明らかになった事実とは言え
あのまま自民党政権であったら、
国民は正しい事実を知らぬまま、
選挙という政治的判断を強いられることになったでしょう。

外交にしても、防衛にしても、政治にしても
最終的にはすべてその責任は国民に帰すことになるのだから
国民に対してはできる限りの情報を開示して
その政治的判断を仰ぐべきなのではないのでしょうか?

外交官も官僚も政治家も、
その国家権力の行使は
国民の信託によるという大前提を
忘れられては困ります。

チェック機能が働かないため、
同じ過ちを何度も繰り返すことになりますよ。

運命の人(一)
山崎 豊子
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運命の人(二)
山崎 豊子
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運命の人(三)
山崎 豊子
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運命の人(四)
山崎 豊子
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それにしても、長かったです。

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