BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBC米大陸ウェルター級タイトルマッチ

2010-03-15 17:08:22 | Boxing
王者 アルフォンソ・ゴメス VS 挑戦者 ホセ・ルイス・カスティージョ

ゴメス 5ラウンド終了TKO勝利

考察 ~ゴメス~

以前は荒削りな面と洗練された面が7:3で配合されていたが、
今はその割合が6:4まで来ている。
武骨な打ち合いから主導権を握った打ち合いというか。
コット戦では相手のレベルがあまりにも上だったが、
左のパンチでは右、右のパンチでは左のグローブの置き所が甘く、
また距離に応じず思い切りフォロースルーを効かせていたために
ボディを狙い打たれた。
この試合ではやや前傾の姿勢からゆるいジャブを操り、
相手に打たせながらバックステップと小さな振り抜きのカウンターが生きた。
今後トップ戦線に上り詰めるにはバランスを崩すほどのパンチを打ちながら、
バランスを崩さない体幹の強さが求められる。
揉み合いから一発だけ打ったが、アッパーをサンデーパンチにできれば
大化けしない予感がないでもない。
ただし、このスタイルは生粋のアウトボクサーには容易にボックスされる。
ウェルターという花形階級においては地味なリードパンチが不可欠だからだ。

考察 ~カスティージョ~

打ち合いと辞書で引けばこの男の挿絵が出てくるのではと
思わせるほどの選手も、年輪を重ね、階級を上げていけば
必然的にスタイルも通用しなくなる。
パワー、スピード、若さに象徴されるこれらの要素は
ボクシングの幹を為す(根はメンタル、枝葉は技術)。
キャリアで戦おうとしている浜田氏は評すが、
たとえばそれは相手の入りを誘いながらの中間距離からの
左のアッパーフックであり、
密着した瞬間のレバーブローだったが、
相手はすでにその対応をインプットしていた。
プレスを持ち味にしながら、同じような身長・体重の相手に
容易にプレッシャーを跳ね返されては勝負ができない。
数々の激闘に彩られたプロキャリアも、
同じぐらいにウェイトオーバーを犯しては・・・
引退が報じられているが、それが正解だろう。

WBOウェルター級タイトルマッチ予想

2010-03-13 22:31:42 | Boxing
王者 マニー・パッキャオ VS 挑戦者 ジョシュア・クロッティ

予想:パッキャオの僅差判定勝利

クロッティに10カウントを聞かせることはおそらく不可能だろう。
破竹の勢いのパックマンをもってしてもだ。
それでも判定勝ちなら十分に狙える。
相手はコット以上の剛腕とブロックの持ち主だが、
それゆえにコット戦以上の明快な勝利が期待できる。
ガードの上からでもしつこく叩き続け
クロッティの強打からは脚とガードで逃げる。
これだけでよし。
パッキャオにしてもローチにしても狙うはもはやメイウェザーのみ。
そのためには圧倒的な手数と運動量が必要とされるが、
クロッティはそれを試すにはうってつけの相手である。

と、ここまではパッキャオにとって楽観的な展望を述べたが、
実際にはそこまでイージーな対戦相手ではない。
懸念としては、クロッティはジュダーを粉砕していることだ。
マルガリートに手数の差で敗れたのはしゃーないにしても
コット戦の敗戦ではメンタルタフネスの重要性を思い知らされただろう。
人間が一番変われないのは実はフィジカルであって、メンタルではない。
メンタルは変えにくい。
フィジカルは変えられない。
メンタリティとは精神力だが、とどのつまり気持ちのコントロール方法だ。
我々も日常生活で嫌なことがあれば、熱い風呂やサウナに入る、
カラオケで大声で歌う、バッグを打つ、酒や女に走るなど、
様々なストレス解消方法を持っている。
また靴は左足から履く、電車は先頭車両に乗る、必ず味噌汁から手をつける
などのルーティンは験担ぎとしても作用する。

ボクシングにおけるメンタルのコントロールは常に相対的で、
打たれて気持ちが萎えるのもいれば、打たれる前からキレている奴もいる。
だが、強いのは結局クールにキレる者なのだ。
クロッティもそのあたりはさすがに自覚しているだろう。
黒人特有の気の弱さは人種が背負った被差別の歴史と不可分だが、
相手がアジア系となると秘めたるポテンシャルを解放させそうな予感も。
OT(Old Testament=旧約聖書)において最も残虐な王として描かれる
ヨシュアの名を冠する挑戦者は、敬虔なパッキャオにとって最も危険な相手になりうる。

東洋太平洋フェザー級王座決定戦

2010-03-13 20:55:06 | Boxing
松田直樹 VS ビンビン・ルフィーノ

松田 SDで勝利

考察 ~松田~

顔面だけ見ればとても勝ったようには見えない。
いつ見ても激闘、熱闘になるが、この男はパンチの喰らい方がいい。
真正面からもらうというのかな。
踏み込む左足のつま先を常に相手の右足のつま先の線上に平行に持っていくのは
真正面からしかパンチを当てられないということ同時に、
真正面からのパンチなら防御できる、あるいはかわせるという自信の表れだろう。
G・エスパダス戦では距離の違いから手も足も出ずストップされたが、
この日のように相手も詰めてきてくれるのなら勝負になる。
苦戦の要因は対サウスポーという点よりも相手の出入りによる。
ロングのジャブに次いで飛んでくる左は足の踏み込みではなく
上体の柔らかさを利したもので、突っ込んだ状態から瞬時に上体をスウェーされた。
サンデーパンチの左フックもこれではカウンターでは当たらない。
自身はリーチにも柔軟性にも秀でていないので踏み込みが肝になる。
相手と逆のスタイルで被ダメージは明らかに大きかったが、ダウン回数で勝ち。
ダウン内容では負けていたけど。
ボクシングは採点競技でダメージではなく、ジャッジからの点を競うもの。
ボクサーとしての素材では相手に上回れたが、キャリアでギリギリ勝ったかな。

考察 ~ルフィーノ~

フィリピンにジャバーなしを証明するような選手だな。
実測のリーチ差はわずかだろうが、
スタイルによる間合いの差は明らかで足と同じぐらいパンチをビジーにできれば
より確実な点差で勝利できたはず。
この選手は倒しに行くというマインドよりもラウンドを取りに行く意識が強く、
スロースターターでもあり、ショーマンシップも少しだけある。
サウスポーの右フックはリード、引っかけ、コンビネーションのつなぎと
用途が幅広いが、この選手は右のパンチに明確な意志が込められていない。
そのくせ打ち合いが好きなのか、相手の疲労とダメージを読み取ったか、
ナックルの返しが半端なまま打ち合いにでる。
ただし、体の柔らかさを使った出入りは
ガチガチで戦う日本人選手を翻弄する可能性が高く、
この試合でも松田を大いに苦しめた。
中南米の選手はサイドの動きに長けていることが多く、
東南アジアの選手は前後と上下の動きに特徴があることが多い。
日本人選手の特質は勤勉さ。
これが盾になるのか矛になるのかは噛み合わせによる。

フィリピン旋風は世界のトップ戦線では停滞中だが、
アジアレベルではまだまだ猛威。
ルフィーノ陣営はリマッチをやる気満々だろう。
残念ながら帝拳はそんな試合は組まないだろうが、
日本のリングで稼ぐチャンスはまだまだ残されている。

WBO世界バンタム級暫定王座決定戦

2010-03-05 23:37:57 | Boxing
ジェリー・ペニャロサ VS エリック・モレル

モレル 2-1判定で勝利

考察 ~ペニャロサ~

川島、徳山あたりと戦った頃に比べ、当然ながら反射速度は落ちる。
にもかかわらず総合的なディフェンスに進化を見せているのは、
蓄積した経験値がスタイルではなく能力と勝負勘に割り振られているからだ。
ボクサーが年齢とともにファイター化する傾向は一般的だが、
手数を増やしながら被弾を増やすという結果につながることも多い。
ペニャロサの場合は逆で、より近い距離で戦いながら被弾はむしろ減っている。
これはブロッキングの巧みさと同時にボディワークの巧みさにもよるもので、
相手のコンビネーションの初撃をブロックし、追撃を避けるスタイルは、
省エネではなく合理性の追求。
一緒じゃないのか?と思われる向きは、
ペニャロサのイメージ相手にシャドーをしてみよう。
攻撃に省エネはありえてもディフェンスに省エネはない。
このディフェンススタイルは当然の如く攻撃にも反映され、
コンビネーションあるいはワン・ツーにおいてさえも
初撃を当てることを意識しない攻撃が随所に見られた。
また、相手のフットワークに目のフェイントで対抗するとともに、
出端のカウンターとパンチの引きのカウンターを操り、
空間の主導権支配では一歩リードしていた。
しかし、後半からは出血により間合いの詰めと波状攻撃に粗さが生じた。
これはファイター的要素ではなく、強引さの現れ。
敗北は妥当とも言えるが、不当とも言える。
モンティエル戦が実現しなかったのは無念としかいいようがない。
それにしても前戦では引退勧告をしたが、
これなら大場あたりはまだまだ中差判定で退けそうな気がする。

考察 ~モレル~

ハンドスピードはあるがパンチは軽く、
ストレート系はヘッドスリップ、
フック系はブロックとダッキングで有効性を消された。
中盤以降は手数を減らし、足捌きに光明を見出そうとしたが、
結局、流れを変えたのは相手の出血。
出血=カウンターという方程式を組み立ててしまえばいい、
とジョー小泉が言うとおり、単純ながら理にかなったカウンター戦法で
終盤のポイントを押さえたことがジャッジに訴えたか。
腰の軽さが見栄えの良さにつながらないと個人的に感じるのだが、
あれはあれでプエルトリカンのスタイルとして認知されているのだろうか。
まあ、ファンが色眼鏡で試合を評価するのなら
ジャッジがある程度のステレオタイプで採点に臨むのもむべなるかな。
ペニャロサ的な二階級制覇(前回戴冠とその後の戴冠までのタイムラグなど)だが、
安定王者とは感じられない。
また、ビッグマッチに絡むとも思えない。
代わりにメキシコ、フィリピンに腕撫す若い挑戦者がひしめいている。

PS.
今日は何という一日か。
大学時代の先輩と約10年ぶりの偶然の再会。
突然の訃報。
贔屓のブログの存続。
少年老い易く学成り難しの実感。
眼疾。

一日としては考えることが多すぎる。
今はしばらく休みたい。

という一節をお気に入りの小説から引かせて頂く。
(ちなみにこの小説の訳者は管理人の大学の大先輩である)

WBC世界ライト級王座統一戦

2010-03-02 22:40:15 | Boxing
正規王者 エドウィン・バレロ VS 暫定王者 アントニオ・デマルコ

バレロ 9ラウンド終了TKO勝利

考察 ~バレロ~

肘打ちに流血とキレる要素はいくらでもあったが、
思いのほかring smartであることを証明した。
長身選手相手に打ち込めるのかどうかは疑問だったが、
手首を反り返らせるようにしてでも、あるいは猫手でも打つ時は打つのだ。
西岡や嶋田はパンチのボディメカニクスを微に入り細に穿って追求するが、
バレロは肉体がそう動くから、という理由で打っている、
というより浜田氏の言うとおり「殴っている」。
血を見て興奮するのではなくナチュラルハイなんだな、きっと。
ディフェンスはどうか。
この日は相手のサイズに敬意を表してパリーを織り交ぜつつも、
基本はバックステップなどのフットワーク。
避ける、かわすというよりは逃げるという表現が不適切かもしれないが適当か。
攻防は一体であるべきだが、攻防分離もOK。
だが、この日のバレロのディフェンスにはらしさは感じられなかった。
それでもボディワークはパッキャオ的でもあった。
散発的にもらうことはあっても決定的にはもらわないと言おうか。

パッキャオにとって最も危険な対戦相手になりうる。
ただし、そのためにはSライトでブラッドリー、マイダナ、カーンあたりを
完膚なきまでにぶちのめす必要がある。
1年で辿り着けるか?

考察 ~デマルコ~

前戦分析で対バレロに懸念を表明したが、その通りになってしまった。
長身、手長で相手をじっくり見ながら長いジャブ、ワンツー、カウンターで
相手の勢いを殺ごうとするが、見ているうちに見過ぎてしまい、
また届くと思っているうちに打たれてしまった。
相手の強さは早い時点で肌で感じたはずだが、
そこから勝負する(≠勝利する)術を見つけられなかった。
かつてイーグル・デーン・ジュンラパン(父君の病はいかがか?)は
「相手が自分よりも強いと悟った瞬間に本当の勝負が始まる」と語ったが、
そこまでの勝負師の域には達していなかったね。
内容は異なるも構図としてはミハレスがダルチニャンにタコ殴りにあったように、
サウスポーのボクサーはサウスポーの猛烈ファイターに相性悪し。
というよりサウスポーの猛烈ファイター自体が珍しいのか。

WBO世界バンタム級タイトルマッチ

2010-03-02 22:39:27 | Boxing
王者 フェルナンド・モンティエル VS 挑戦者 シソ・モラレス

モンティエル 1ラウンドKO勝利

考察 ~モンティエル~

VS長谷川をシミュレートする。
左を苦手・・・とまではいかないが、決して得意ではない。
強く速く正確な左フックにフェイントを交えて主導権を握るが、
これは長谷川のカウンターにとっても絶好の間合いとなる。
ステップワークでは長谷川に一枚劣る。
バルデスを間にはさんで分析することが有意味とは限らないが、
長谷川の中盤KO勝ちは揺るがない。

VSドネアをシミュレートする。
全ては左ジャブの差し合いで決まる。
かつて自身が退けたL・マルドナドはサウスポーにスイッチし、
傷口を広げたが、モンティエルは血迷ってもスイッチなどしない。
カウンターとなればドネアに譲るが、ジャブに限れば充分に格すことができる。
ただし、ドネアに対してもバンタムではフィジカル・サイズ・パワー面で見劣りし、
ステップワークでも相手が一枚上手。
バンタムに上がったのは得策ではなかったと今でも思う。

考察 ~モラレス~

戦績は文句無し。
ただし、一定レベル以上のメキシカンとの対戦は皆無だろう。
かつて徳山昌守は対戦相手のビデオを一切見ず、
1ラウンド最初の30秒で相手の強さを正確に測ることができたそうだが、
そこまでのレベルはさすがに求められない。
それでも30秒で彼我の距離、パンチ力、パンチの角度とスピードは
ある程度インプットできるはず。
ボクサーのinteligenceで最も大切な部分だ。
この敗戦は勢いだけで世界戦に臨んだツケというわけだ。
最近のPinoy fighterはcrash and burnが多い気がする。