BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBOウェルター級タイトルマッチ

2010-03-15 19:29:02 | Boxing
王者 マニー・パッキャオ VS 挑戦者 ジョシュア・クロッティ

パッキャオ 判定勝利

考察 ~パッキャオ~

ビタリのK・ジョンソン戦をグミかこんにゃくを打つ感触と評したが、
この日のパッキャオはアメリカンのwell doneステーキを
ぶっ叩き続けたように感じたのではないか。
映画『ロッキー』でスタローンが冷凍(解凍済み?)肉を打ちまくっていたが、
おそらく相通ずる感触があると思われる。
打ったパンチが1200発超だって?
近年だと対ペニャロサのファンマ、同じく対ペニャロサのデ・レオン、
対クロッティのマルガリートぐらいしか思い浮かばない。
あれだけ打ちまくって拳だけでなく手首、肘、肩を痛めないものかね。
現役チャンピオンの西岡をして驚嘆せしめるのだから、
こんなブログであれこれを称賛しても無意味ですな。
ガードの隙間を射抜く眼の良さと反射神経、パンチの選択、スタミナなど、
もしかしたらミドル級でアブラハムと戦えるかも、と期待させるが、
さすがにそれは無理、というか無謀。
パッキャオが撲殺されてしまう。
じっくり休んで年末にメイウェザー戦というのが理想的展開か。

閑話休題。

ジョー小泉も旧約聖書を読むのかね。
それとも十戒を観ただけか。
まさかこのブログを読んだなどということは・・・


考察 ~クロッティ~

人間ヘビーバッグかいな・・・
いや、ヘビーバッグならば壊れもしよう。
テーマはズバリ、大怪我をしないこと。
硬いガードは脇を思い切り絞り込み、背中を丸め、首をすぼめて完成。
ジョー小泉は横隔膜の上下動が制限され、呼吸苦、そして酸欠に
なると分析していたが、まさにその通り。
加えてこの姿勢では肋間筋の上下動も抑制されるので、
胸式呼吸がさらに苦しくなる。
ボクサーはゴング中は呼吸を止め、腹式呼吸はインターバル中ぐらい。
肩で息をするのは胸郭を広げようという半ば無意識の行動だが、
腹式呼吸しだしたら終わりが近い。
2ラウンドのダンスはあきらかにボディへのダメージでしょ。
終盤ではコーナーがデカイ声で"Breath in!(大きく息を吸え!)"を連発していたが、
この指示はクロッティの呼吸苦を裏付けていた。
ラウンドを重ねるごとに腰が軽くなり、また相手の攻めのつなぎの間に、
両足首を軽く屈伸させ、足の残り具合を常にチェックしていた。
大過なく生き延び、ファイトマネーで豪遊することだけが目的だったようだ。
黒人特有のメンタルの弱さはアジア人相手でも健在だったと見るべきか、
それとも純粋に相手の強さに臆したと見るべきか。
その両方と見るのが妥当でしょうかね。

WBCライト級王座決定戦

2010-03-15 18:30:50 | Boxing
ウンベルト・ソト VS デビッド・ディアス

ソト 判定勝利

考察 ~ソト~

ロングでは鋭角的なストレート連打が冴え、
クロスではショートのフックとアッパーが冴える。
対サウスポーにおいてはスピード差があるか、
相手が自分のどちら側に廻ろうとするのか、
相手のリードに対応できるのかが一次的な戦術面を決定する。
身長とリーチのアドバンテージから強いジャブの連打で
相手を釘付けにする場面も作り、
掻い潜られた場合には左ショートから右フックの返しが光った。
A・マルガリート同様、自身の階級では長身を誇る故に
潜り込んでくる相手には特に前腕(上腕との対比ではなくリード側の腕)での
アッパーが有効になる。
ファイタータイプのサウスポーは自身の右を高く掲げる傾向にあり、
ディアスもまさにそのタイプ。
このスタイル・スタンスにはオーソドックスの右アッパーは右フックよりも見えづらい。
つまり、ただでさえ高い効果も倍増。
相手が粘り、努力、根性などあらゆる泥臭い要素を体現したタイプだけに
かなり手こずり、実際の肉体・精神の消耗度もスコアほどの差はなかった。

ほんの数年前までは一部でパッキャオよりも強いと評されていたが、
J・グスマンに敗れ、その評価も今一つ伸びきらず。
バレロと交わることはあるのだろうか?

考察 ~ディアス~

サウスポーの定石を採用せず、血と汗を滴らせながら戦う姿は
勇敢なヒスパニックというよりは泥臭い日本人のシルエットを浮かび上がらせる。
しかし、左ストレートの伸びは肩と腰がよく回り、
長身選手の顔面にもスムーズに届く。
日本人選手の場合、身体的素養と指導者による育成過程で
強い左を打つのにカウンター、もしくは踏み込みを重視する。
利き腕の左右によらず、日本に洗練されたインファイターが育たない理由は
ボクシングというゲーム自体がポイントゲームにシフトしつつあるからだろう。
そのことの是非は問うまい。
だが、亀田長男のようなカウンターは上手いとはいえても、
強い、すごい、怖いとは感じない。
パッキャオ戦のダメージは抜けているようだが、
フック、アッパー、打ちおろしのストレート連打と喰らいまくったね。
相手の連打をダックする際に両手を下げるのは定石だが、
パッキャオ戦ではそこからアッパーを狙い、カウンターで痛烈に沈んだ。
この試合ではさらなる打ち下ろしの連打を喰い、最終回にダウンした。
アゴをカバーする必要はなくとも、クロスアームしながらローリングは?
あるいはコットが時折見せるスクワットは?
うーむ、どれも泥臭いファイターには似合わないムーブですなあ。

WBC米大陸ウェルター級タイトルマッチ

2010-03-15 17:08:22 | Boxing
王者 アルフォンソ・ゴメス VS 挑戦者 ホセ・ルイス・カスティージョ

ゴメス 5ラウンド終了TKO勝利

考察 ~ゴメス~

以前は荒削りな面と洗練された面が7:3で配合されていたが、
今はその割合が6:4まで来ている。
武骨な打ち合いから主導権を握った打ち合いというか。
コット戦では相手のレベルがあまりにも上だったが、
左のパンチでは右、右のパンチでは左のグローブの置き所が甘く、
また距離に応じず思い切りフォロースルーを効かせていたために
ボディを狙い打たれた。
この試合ではやや前傾の姿勢からゆるいジャブを操り、
相手に打たせながらバックステップと小さな振り抜きのカウンターが生きた。
今後トップ戦線に上り詰めるにはバランスを崩すほどのパンチを打ちながら、
バランスを崩さない体幹の強さが求められる。
揉み合いから一発だけ打ったが、アッパーをサンデーパンチにできれば
大化けしない予感がないでもない。
ただし、このスタイルは生粋のアウトボクサーには容易にボックスされる。
ウェルターという花形階級においては地味なリードパンチが不可欠だからだ。

考察 ~カスティージョ~

打ち合いと辞書で引けばこの男の挿絵が出てくるのではと
思わせるほどの選手も、年輪を重ね、階級を上げていけば
必然的にスタイルも通用しなくなる。
パワー、スピード、若さに象徴されるこれらの要素は
ボクシングの幹を為す(根はメンタル、枝葉は技術)。
キャリアで戦おうとしている浜田氏は評すが、
たとえばそれは相手の入りを誘いながらの中間距離からの
左のアッパーフックであり、
密着した瞬間のレバーブローだったが、
相手はすでにその対応をインプットしていた。
プレスを持ち味にしながら、同じような身長・体重の相手に
容易にプレッシャーを跳ね返されては勝負ができない。
数々の激闘に彩られたプロキャリアも、
同じぐらいにウェイトオーバーを犯しては・・・
引退が報じられているが、それが正解だろう。