BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

IBF・WBO世界ヘビー級タイトルマッチ

2010-03-22 23:08:06 | Boxing
王者 ウラディミール・クリチコ VS 挑戦者 エディ・チャンバース

クリチコ 12ラウンドTKO勝利

考察 ~クリチコ~

特定のパンチを主体にしたボクシングは良い、悪いで測れるものではない。
要は自分に有効に作用し、相手にとって不利な状況を演出するかどうかなのだ。
クリチコのストレートは安全策であるゆえに一見してツマラナイかもしれないが、
そこにはintelligenceがあり、ring smartがある。
打たれて弱いことは当然考えているわけで、
身長・リーチ差が絶対的な要素として確立されるためには、
そのアドバンテージを自ら縮めてはならない。
ジャブは肩を入れて伸ばしながら、その肩の少しの戻りを返しの軸に右を振り抜き、
左膝の屈伸と右つま先の蹴りが融合した右ストレートは伸びを生みながらも
顔面をその場に残し、相手のカウンターの可能性を消している。
父に言わせるとこれは評価できないという。
タイソンみたいに踏み込んでガツンと倒さなアカンというが、
それは挑戦者に言うべきでは?
顔面ごとぶつけていくワン・ツーにカウンターをもらって失神KOというのは
今のクリチコにはありえない光景だ。

それにしてもレスリング行為、相撲行為、グローブ取り替えなどで
普通の選手ならば相当カリカリ来るところを上手くメンタルコントロールできたね。
最後のパンチはサルガドがリナレスに見舞ったパンチを彷彿させた。


考察 ~チャンバース~

Now, it's showtime. Now, it's Chambers' time.って放送局は?

2ラウンドは減点2じゃないと誰も納得しないよ。
レスリング行為は相手の頭に血をのぼらせるためだろうが、
アウェーの観客を敵にまわして得することなどひとつもない。

この選手はヘビー級として全く見劣りしない肉体と体格があるが、
身体能力の方は?
ストレート主体の相手のパンチをスリップし、脾臓目がけてワン・ツー、
あるいはダッキングから戻りのばねを利かせてスマッシュ!
まあ、非現実的ですね。
アメリカンの250lb前後の体重でこれらができればNFLかNBAに行くに決まってるから。
それでも悪いところは見当たらず、むしろ最近のウラディミールの相手の中では
最もスペック(≠クオリティ)の高い挑戦者ではなかったか。
(ちなみに最近のクリチコ兄弟と最も良い試合をしたのはビタリと戦ったゴメス)
ジャブにスピードがありフットワークもボディワークも及第以上。
直近で巨人選手もくだしている。
右から入って左足の踏み込みで左フックのフェイントを交える瞬間はA・ウォード的で、
ダブルジャブから顔面への切り返しが届かないのは左右を変えたS・イブラギモフ的だった。
スキルを一通り備えていても前述の相手のスタイルではそのすべてがスポイルされる。
ロープに詰められて自在に戦える選手はほとんどいない。
最終回にKOで散ったのは個人的に拍手。

WBC・IBF世界Sライト級王座統一戦

2010-03-22 22:08:53 | Boxing
WBC王者 デボン・アレキサンダー VS IBF王者 ファン・ウランゴ

アレキサンダー 

考察 ~アレキサンダー~

均整のとれた上半身で脚が細い選手はアウトボクサーと相場が決まっている。
これだけスピードがあれば時計回りでコントロールできるのではと思うが、
相手の右フックに敬意を表したのだろう。
その右への対処はもう一つ。
自身の左グローブの置き所で、これで常に左アゴをカバー。
このスタイルはサウスポーにとっての右ショートアッパー用の構えにもなり、
実際に右ショートアッパーはカウンターで効果的に機能した。
ただし、ディフェンスがナマクラになる瞬間がところどころ訪れるのは、
余裕の為せる業なのか、それともメンタルが生来持つ瑕疵か。
ジャブの差し合いに自信を持つゆえにヒヤリとさせる瞬間を作るのだろうが、
本人としては楽勝で見切っているのかも知れない。
フィニッシュのアッパーはスウェーしながらの狙いすました一発で、
前のラウンドまでは鼻っ柱に命中していたパンチ。
真下からアゴに入ればまさに必倒のパンチとなる。

マイダナといい、ブラッドリーといい、アレキサンダーといい、
ハットンが引退しても次世代が陸続と生まれてくるね。
パッキャオがこういう連中と交わる時は来るのか?
おそらく来ない。
ではバレロやソトがここに殴り込む?
彼らの快進撃すらこのdivisionの中では霞みそうだ。
今、Sライト級が熱い。

考察 ~ウランゴ~

肩幅、太股、ふくらはぎ・・・ 
あらゆるボディのパーツを相手と比較してもとても同階級に見えない。
八の字ガード、オープンスクエアスタンス、リードパンチ・・・
とてもサウスポー同士の対戦には見えない。

半身の構えから打つリードのジャブは肘の屈伸に頼ったパンチで、
牽制というよりも自身のリズム作りか。
コンバーテッドサウスポーが、飛び込みざまの右フックをリードにするというのは
これ以上ない奇策に思えるが、キャリアを通じてずっとこうだったからには、
本人にしか掴めないtouchがあるということか。
しかし、この日はほとんど全てを鼻先でかわされ、
半身から肩を軸にして打つものだから、死角からアッパーをぶち込まれた。
素直すぎたせいと言える。
A・ベルトは割と真っ直ぐ下がってくれたが、
自身のプレッシャーに呑まれない選手にはinitiativeを渡すことになる。
相手は自身よりも若いが、老練さ、老獪さにおいては一枚上手で、
強いジャブと細かいジャブで距離を制した。
リーチ、あるいはスピード差は埋めようがない。
ならばどうすべきか。
フェイントしかない。
目線、あるいは右足のつま先もしくは踵によるフェイント。
優れたアウトボクサーほど対戦相手の全体像を観察しているものなのだ。