BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBA・WBC世界Sフライ級タイトルマッチ

2010-03-29 23:35:17 | Boxing
王者 ビック・ダルチニャン VS 挑戦者 ロドリゴ・ゲレロ

ダルチニャン 判定勝利

考察 ~ダルチニャン~

パンチを打つという表現が相変わらず当てはまらず、
浜田風に言う「殴りつける」がしっくり来る。
生まれ持った拳の硬さ以外にも肉体的な素養全般に恵まれている。
30代半ばでもフィジカルを維持できるのはひとえに節制による。
ボクサーを顔で判断してはならないという好個の一例だ。
ウィービングはクネクネとしてどこか緩いが、
スウェーバックはかなり早く、単発のフック系はカウンター以外当てさせない。
ただ、反時計回りのステップを踏んだときのジャブの直後に
まっすぐに左で殴りつけてくるモーションはガードが下がり依然危険。
そこをつける選手は今まで一人しかいなかったわけだが。

ドネアとの初戦では猪突猛進っぷりがbackfireとなったが、
再戦では修正してくるのか、それとも修正しないのか。
プロモーターと口約束で契約更新したというぐらい信義に篤い男なので、
トレーナーもきっと変えないのだろうな。


考察 ~ゲレロ~

西岡の左とダルチニャンの左ではパンチ力は段違いだろう。
だからゲレロが耐えられた、というわけではない。
ジョー小泉が言及しようとしていたが、
パンチの効果はパンチの威力だけではなく、
パンチの角度、タイミング、ヒットポイント、相手の耐久力にもよる。
ダルチニャンの場合、上述の要素すべてが標準からかけ離れているため、
ゲレロの打たれ強さは防御技術(息を吐く、歯を食いしばるetc)よりも
先天的な頑丈さと燃え盛る闘争本能によるものと考えられる。
棒立ちの姿勢で幾度となくベストパンチをもらったが、
身体の柔軟さが衝撃を逃がしており、即入院というほどの深刻なダメージはないのでは?
パンチを打つ際にあっち向いてホイのようになるのは
変則な相手用に磨いてきた技なのか、独自のフォームなのか判断できないが、
ボディは時折捕えていた。
しかし、ストレートは前足の踏み込みからしか打てず、
左右フックを打つ場合には両足をそろえるという習性があるので、
正統派のカウンターパンチャーにはころころ転がされる危険性もつきまとう。
若くしてテクニシャン然としてquitする連中が多い中、
打たれようが効かされようが流血しようが、攻めて攻めて攻めまくる。
さらにDr.に「世界タイトルマッチなんだ。止めないでくれ!」と懇願するところなど
観る者の胸を熱くさせる。
肉体のケアを怠らず、攻防の技術を磨き、近い将来に世界戦線に舞い戻ってほしい。

WBC世界Lフライ級タイトルマッチ

2010-03-29 23:34:53 | Boxing
王者 ロデル・マヨール VS 挑戦者 オマール・ニーニョ

マヨール 3ラウンド負傷引き分けで防衛

考察 ~マヨール~

試合前の精神状態は忖度することしかできないが、
敵地で怖気を震うタイプではなかろう。
スピードと手数でかきまわし、自らの王道を往く腹積もりだったと思われるが、
見事にソーサ戦のretaliationを喰うことになった。
実際にスピードで主導権を握り、展開が落ち着いてからも
強いパンチは食わなかった。
ただ序盤からバッティングの予感はあり、事実数度当たっていた。
故意というよりもただの事故程度にしか感じていないのではないか。
頭が当たるのはお互い様ぐらいにしか考えておらず、
報復行為も想定の範囲内だったはず。
にもかかわらず倒されたのはローブロー後の加撃が想定外だったから。
マヨールは多分、ハムラビ法典に忠実だと思われる。
目には目を、歯には歯をというアレ。
リマッチが決定した暁にはロケーションよりもレフェリーの選定の方が
より重要性を持つだろう。


考察 ~ニーニョ~

ソーサから色々と焚きつけられていたという報道があったが、
メキシカンの仇はメキシカンが取るという意気込みか。
故意のローブローからサンデーパンチでフィニッシュとは
ストリートファイトでもなかなか見られない。
その左フックは右足がマットを噛み、
脇を締めた右腕を踏みこみのブレーキに使い、
背骨を回転軸として死角からナックルで右のチンを打ち抜いた。
惜しむらくは相手が無防備だったこと。
これがコンビネーションの締め、あるいはフェイントからの一撃ならば文句無しだが。

それにしてもキレイにブーメランフックが決まりましたなあ。
喧嘩両成敗的に見えるが、ダイレクトリマッチは、うーむ。
DQ負けが妥当に思える。
まあ、Cお膝元のメヒコでもあり王者の前戦の頭突きもあるからか。

Sフライ級ノンタイトルマッチ12回戦

2010-03-29 23:34:22 | Boxing
ノニト・ドネア VS マヌエル・バルガス

ドネア 3ラウンドKO勝利

考察 ~ドネア~

亀田興毅をパッキャオと重ね合わせて見る向きは皆無だろうが、
このドネアと比較対照しているマニアなファンは結構いるのではないか。
スタイルの比較ではなく直接対決させてみたらどうなるか、
という脳内シミュレーションである。
ドネアは当代随一の左殺しであり・・・
というのは置いといて、この選手の一番の長所はボディメカニクスにある。
早い話、パンチが伸びるわけだ。
ポンサクレックは右に重心を傾けつつボクシングするが、
ドネアの場合は大きく前後に開いた両足に均等にバランスを振り分けている。
超人時代のR・ジョーンズにも通じるところがある、というと褒めすぎか。
遊んでいるうちに相手が倒れたという感覚で、
ひとしきりガッツポーズを披露した後に相手を気遣う余裕もあった。
ダルチニャン、アルセ、モンティエルと絡めるのはいつなのだ?

ジョー小泉はパンチとパンチのつなぎのラグを問題視しているが、
穴と呼べるほどのものではないと思う。
この選手は身体的な瞬発力もさることながら、
ポジションとパンチの選択という思考の瞬発力もずば抜けているのだから。


考察 ~バルガス~

明らかに体格で見劣りし、実際に小さかった。
late sub(late substitute=緊急代替選手)とはいえ、
これは明らかなミスマッチ。
オーソドックス対決でのジャブの差し合いを早々と拒否し、
右から左フックの返しで展開を作ろうとするも、
左フックではなく右ストレートのカウンターを浴びてしまった。
オーブンとスクエアのスタンスを繰り返し、
スイッチするぞするぞと撹乱に出たが、相手は左殺しゆえに無意味。
というよりもジャブの突き合いに出られない時点で
ミスマッチというよりもエキシビションマッチだった。
黒木の2度目の世界前哨戦に日本に来ないかね?