electric

思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

コイルとは何か① 電流と磁気

2012-10-15 20:37:52 | 電子回路
電流と磁気は常に共に存在し「電流のあるところ磁気あり、磁気あるところ電流あり」です。

例えば1本の電線に電流が流れると、その電線を中心として円を描くように磁気が発生します。(磁気の強さが及ぶ範囲を「磁界」といいます)。磁気の強さは円の中心に近付くほど強くなりますが、それを表すために半径の異なる同心円をたくさん書いて、半径が隣り合う円の粗密で磁気の強さを表します。つまり中心に近付くほど半径の差が小さく、遠ざかるほど差が大きいということですね。(この円周を描く線を「磁力線」といいます)。この円は電流が流れている点すべてに存在するので、円×電線の長さが生じている磁界になります。

磁界中の任意の点の磁気の強さをH で表わし、その点が接する円の半径をr [m]とすると、H=i / 2πr [A/m]となります。

通常、1本の電線に生じる磁界はさほど気にしません。というのも、パワーエレクトロニクスの世界でもなければ、電線に流れる電流は相対的に小さく、生じる磁界も無視できるほど小さいからです。しかし電線をスプリング(引バネに近似)のような形に何回も巻けば、電線に流れる電流は小さくても大きな磁界が生じるようになります。これが「コイル」です。基本的にコイルの磁界の強さは「電流と巻数の掛け算」になります。

【コイルは電流増幅器】
ではなぜ、形状の異なる1本の電線でしかないコイルが大きな磁界を生じるのでしょう。それを考えるために、電線が隙間なく50回 巻かれた長さが3cm のコイルを想定します。このコイルに1A が流れているものとし、円筒を縦に切る方向のコイルの断面を思い浮かべて下さい。まず1巻目の電線には1A が流れています。そして2巻目の電線にも同じ個所、同じ方向に1A の電流が流れています。そして3巻目の電線にも1A が流れており、結局、隣り合う50巻すべてに1A が流れています。これは幅が3cmの平らな電線に50A が流れているとみることもできますね。よって巻数をN とすると、コイルはN 倍の電流を流す電線と見なせるのです。比喩的には「コイルは電流増幅器」といえますね。

【コアは磁気増幅器】
コイルが生成する基本的な磁界の強さはNI によりますが、磁界を表す磁力線の粗密が磁界の強さであることは前述しました。コイルが生じる磁力線は巻線の内部が最も密になります。(参考図)。NI が大きくなれば磁力線の数が増えます。ということは巻線の内側の磁力線はさらに密になるということですね。そして次に登場するのが「コア」です。

市販のコイルは鉄やフェライトなどの「磁性体」に電線を巻いてあるものが多いですね。この磁性体がコアです。コイルの巻線内にコアがあれば、磁力線の数がまた更に倍増するのです。しかも100倍、1000倍という桁違いの増え方になります。これはコアの有する「透磁率」という物性の効果です。透磁率は記号μで表し、空気(真空)の透磁率をμ=1とすると、センダストはμ=100、鉄はμ=5000 のようになります。よってコイルが生成する磁界の強さを μNI で表せばより実際に近くなります。コアを用いることによって、巻線のN 数を大幅に減らすことができるので、電子部品としてのコイルを小型にすることが可能になります。

磁気の話は詳しく語り始めると切がないのですが、下の関連記事「磁気の話① 磁界Hと磁束φ、電流Iと巻数N」で細かく説明しているので興味のある方はどうぞ。

関連記事:
磁気の話① 磁界Hと磁束φ、電流Iと巻数N 2012-09-27
コイルとは何か② 自己誘導起電力 2012-10-21

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« LC共振回路の解(ラプラス変換) | トップ | 磁気の話② 磁束φと鎖交磁束... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

電子回路」カテゴリの最新記事