本記事をご覧いただく前に、【昇圧チョッパ】をご一読されることをお勧めします。
【降圧チョッパ】
「降圧チョッパ」の図を見てください。VIN にDC50V を入力しトランジスタQ をON すると出力OUT はどうなるでしょう。トランジスタをON の状態で放置すると、昇圧チョッパのトランジスタOFF の状態と同じなので、出力OUT は最大電圧が100V になり、その後、電流ラインにダイオードがないので、コンデンサC からコイルLに逆電流が流れます。しかし降圧チョッパは入力電圧よりも低い出力電圧を得るのが目的ですから、出力OUT が50V に達するまでにトランジスタをOFF しなければ意味がありません。
トランジスタのON によって出力OUT が20V に達した時点で、トランジスタをOFF するとどうなるでしょう。コイルL にはコイル電流I (I=1/L ∫ V dt)が流れており、Φ=LI の磁気エネルギを溜めているので、電流I はダイオードD を通ってコイルL に流れ続け、コンデンサC をチャージします。これによりコンデンサC の端子電圧は (20+α)V になりますが、この時コイルL の入力端子は0V(0.6V)、出力端子は (20+α)V だから、電流I の方向に対して端子間電圧V はマイナスになります(逆バイアス)。よって、I=1/L ∫ V dt だから電流I は減少しいずれゼロになります。電流I=0 時点の出力端子の電圧は計算で求められますが、面倒なのでここではやりません。参考までに、電流I の定義式を記述しておきます。
I=V/ωL sin ωt [ω=1/√LC]
実際の降圧チョッパは(電流I=0まで律儀に待つわけではなく)、トランジスタを高速にスイッチングさせながらコンデンサC への供給電流を調整しています。降圧チョッパも出力に負荷が接続されるのが前提ですから、負荷電流によって出力電圧が低下します。よって、出力電圧が一定値を保つようにトランジスタのON-OFF タイミングを調整することで、出力電圧を負荷変動に対して定電圧化することができます。これは昇圧チョッパの場合とまったく同じです。(PWM 制御)。というか、いかなるDC/DC コンバータもすべて同じです。
【降圧チョッパが昇圧できない理由】
電源電圧が50V で出力OUT の電圧が50V の時にトランジスタQ をON するとどうなるでしょう。何も起こりませんね。これが、降圧チョッパが電源電圧の値以下の電圧しか出力できない理由です。
【電流可逆チョッパ(双方向DC/DC)】
「電流可逆チョッパ」の美しさはどうでしょう。いつまでも見入ってしまいそうです。チョークコイルを「昇圧チョッパ」と「降圧チョッパ」が共有し、見事に「双方向DC/DC コンバータ」が実現しています。トランジスタQ1 をスイッチングすれば降圧チョッパ、Q2 をスイッチングすれば昇圧チョッパになることが見て取れるでしょう。これはもうこれ以外に言うべき言葉を持ちません。惚れ惚れとしばらく眺めていることにしましょう。
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