【 コイルLとコンデンサC 】
電気回路における受動素子は「抵抗R 」「コイルL 」「コンデンサC 」の3種類です。それぞれに電流I を流すとエネルギを生じます。もう少し厳密にいうと、電流I を流す原動力のエネルギを、それぞれの素子が別のエネルギに変換するということです。
抵抗R に生じるエネルギは「熱:W 」であり、コイルLに生じるエネルギは「磁気(磁荷:Φ」であり、コンデンサC に生じるエネルギは「電気(電荷):Q 」です。熱は放熱によって消滅しますが、コイルの磁気エネルギとコンデンサの電気エネルギは放置しても無くなりません。これがコイルとコンデンサ、最大の特徴です。両者はエネルギを溜める「容器」なのです。
「コイルとコンデンサは容器(容量)であること以外にも特性に相補性があり、対称的に共通する非常に興味深い素子です。機械的構造も、コイルは1本の電線を巻いたもの、コンデンサは金属平板を向かい合わせたもの、似ているようにも思えます」
コイルの単位H(ヘンリー)とコンデンサの単位F(ファラド)は容器の「定面積」であり、容器の「高さ」は、コイルの場合は電流容量、コンデンサの場合は耐圧です。
「容積=定面積×高さ」
【対称的特性】
コイルに溜まる磁気量(磁荷)をΦ、コンデンサに溜まる電気量(電荷)をQ で 表わすと、次式が成り立ちます。
Φ= LI (I :コイルに流れる電流)
Φ=∫V dt (V :コイルの端子間電圧)
Q = CV ( V:コンデンサの端子間電圧)
Q =∫I dt ( I:コンデンサに流れる電流)
ΦとQ の式よりコイル電流I とコンデンサの端子電圧V は
I = 1/L∫V dt V が定数の場合 I = V/L t
V = 1/C∫I dt I が定数の場合 V = I/C t
磁気エネルギと電気エネルギの大きさは
EΦ= 1/2 LI^2
EQ = 1/2 CV^2
以上の式からも、コイルとコンデンサが対称的に共通していることがわかりますね。
【LC 共振】
このコイルL とコンデンサC の対称特性によって、LC を接続して閉回路にして回路の中にエネルギがあれば「LC 共振」という現象が生じ、エネルギ交換によって永久運動することになります。
左の「LC 共振回路」の動作を、順を追ってみてみましょう。いまコンデンサC は電気量Q(電気エネルギ)を溜めており端子電圧はV であり(V = Q/C )、電流はI = 0であり、よってコイルL の磁気エネルギはΦ= 0であるとします。この状態から時間を進めます。
[記号V とI に付く±は極性。電流の±は向きを示す]
コイルL の端子電圧V+ によってコイルに電流I- が流れ始め、同時に磁気エネルギΦが生じます。電流I- はコンデンサC から流れるので V = 1/C∫I dt により端子電圧V+ は減少していきます。コイル電流I- は I = 1/L∫V dt だからV+ が減少しても増加を続け、磁気エネルギΦも増大していきます。
コンデンサC の電気エネルギQ はΦの増加分だけ減少します。いずれV = 0となり、このときI- は最大であり、Φも最大であり、Q = 0になっています。磁気エネルギΦによって電流I- は継続して流れV はV- になります。これにより I = 1/L∫V dt だからI- は減少していきます。I- が減少しても V = 1/C∫I dt だからV- は増加を続けます。いずれI = 0となり、このときV- は最大であり、Q も最大であり(Q = CV )、Φ= 0になっています。
V- によってコイルにI+ が流れ始め、コイルにΦが溜まり始めます。電流I+ はコンデンサC から流れるので V = 1/C∫I dt により端子電圧V- は減少していきます。コイル電流I+ は I = 1/L∫V dt だからV- が減少しても増加を続け、磁気エネルギΦも増大していきます。
コンデンサC の電気エネルギ QはΦの増加分だけ減少します。いずれV = 0となり、このときI+ は最大であり、Φも最大であり、Q = 0になっています。磁気エネルギΦによって電流I+ は継続して流れV はV+ になります。これにより I = 1/L∫V dt だからI+ は減少していきます。I+ が減少しても V = 1/C∫I dt だからV+ は増加を続けます。いずれI = 0となり、このときV+ は最大であり、Q も最大であり(Q = CV )、Φ= 0になっています。
これで最初の状態に戻りました。この先は同じサイクルを永久に繰り返します。コンデンサの電気エネルギQ とコイルの磁気エネルギΦが行ったり来たりしますね。ここが重要なポイントです。
「参考までに、このLC 共振におけるI とV の式を示します」
I =-I sin ωt [ω=1/√LC]
V = V cos ωt
[参考波形]
【外部電源を用いたLC 共振回路】
右の図は電圧V の直流電源を初期エネルギに用いた、LC 共振回路です。スイッチをON すると、上記とまったく同じ動作をします。ただしコイルL の電源側がV に固定されるので、共振電圧Vc は0点がV だけオフセットし、式で表わせば次のようになります。
I = I sin ωt [ω=1/√LC]
Vc =-V cos ωt+V
実はこの右の図のLC 共振回路と電流と電圧の式が、DC/DC コンバータに大きく関係するのです。
【昇圧チョッパの回路】
どのようなDC/DC コンバータでも同じなのですが、ここでは「昇圧チョッパ」の回路と動作を確認してみましょう。添付図を見てください。
VIN 端子に電源V を接続し、トランジスタをOFF にしてダイオードD を短絡してみてください。いかがでしょう、これはLC 共振回路そのものですね。この回路構成からDC/DC コンバータはLC 共振の動作原理を応用したものであることが伺えます。
コンデンサC の端子が出力電圧OUT になっています。このC はDC/DC コンバータの回路では「出力コンデンサ」と呼ばれ、C が溜めている電気エネルギQ によって出力電圧を得ます(V=Q/C )。出力から負荷電流を取り出すとQ が減少し出力電圧が低下しますが、「LC 共振の原理に基づいて」コイルL の磁気エネルギΦを即座にC の電気エネルギQ に変換して補充します。ダイオードD は逆流防止ですね。
負荷がC の電気エネルギQ を消費している間に、トランジスタをON にしてコイルLに電流I を流し磁気エネルギΦを作ります。Φが適量溜まればトランジスタをOFF して電流I をコンデンサC に流し、磁気エネルギΦを電気エネルギQ に変換するわけです。
[トランジスタON 時は、コイル電流I は「電源-グランド間」に流れますが、トランジスタをOFF すると電流I は大きさを保ったままダイオードの方に向きを変えます]
実際のDC/DC コンバータは10kHz~100kHz でスイッチングしますので、1秒間に10000回以上「磁気エネルギ-電気エネルギ変換」やっているということですね。
関連記事:
LC共振回路とDC/DCコンバータ(構想) 2012-09-18 21
LC共振回路 2007-10-03
電気回路における受動素子は「抵抗R 」「コイルL 」「コンデンサC 」の3種類です。それぞれに電流I を流すとエネルギを生じます。もう少し厳密にいうと、電流I を流す原動力のエネルギを、それぞれの素子が別のエネルギに変換するということです。
抵抗R に生じるエネルギは「熱:W 」であり、コイルLに生じるエネルギは「磁気(磁荷:Φ」であり、コンデンサC に生じるエネルギは「電気(電荷):Q 」です。熱は放熱によって消滅しますが、コイルの磁気エネルギとコンデンサの電気エネルギは放置しても無くなりません。これがコイルとコンデンサ、最大の特徴です。両者はエネルギを溜める「容器」なのです。
「コイルとコンデンサは容器(容量)であること以外にも特性に相補性があり、対称的に共通する非常に興味深い素子です。機械的構造も、コイルは1本の電線を巻いたもの、コンデンサは金属平板を向かい合わせたもの、似ているようにも思えます」
コイルの単位H(ヘンリー)とコンデンサの単位F(ファラド)は容器の「定面積」であり、容器の「高さ」は、コイルの場合は電流容量、コンデンサの場合は耐圧です。
「容積=定面積×高さ」
【対称的特性】
コイルに溜まる磁気量(磁荷)をΦ、コンデンサに溜まる電気量(電荷)をQ で 表わすと、次式が成り立ちます。
Φ= LI (I :コイルに流れる電流)
Φ=∫V dt (V :コイルの端子間電圧)
Q = CV ( V:コンデンサの端子間電圧)
Q =∫I dt ( I:コンデンサに流れる電流)
ΦとQ の式よりコイル電流I とコンデンサの端子電圧V は
I = 1/L∫V dt V が定数の場合 I = V/L t
V = 1/C∫I dt I が定数の場合 V = I/C t
磁気エネルギと電気エネルギの大きさは
EΦ= 1/2 LI^2
EQ = 1/2 CV^2
以上の式からも、コイルとコンデンサが対称的に共通していることがわかりますね。
【LC 共振】
このコイルL とコンデンサC の対称特性によって、LC を接続して閉回路にして回路の中にエネルギがあれば「LC 共振」という現象が生じ、エネルギ交換によって永久運動することになります。
左の「LC 共振回路」の動作を、順を追ってみてみましょう。いまコンデンサC は電気量Q(電気エネルギ)を溜めており端子電圧はV であり(V = Q/C )、電流はI = 0であり、よってコイルL の磁気エネルギはΦ= 0であるとします。この状態から時間を進めます。
[記号V とI に付く±は極性。電流の±は向きを示す]
コイルL の端子電圧V+ によってコイルに電流I- が流れ始め、同時に磁気エネルギΦが生じます。電流I- はコンデンサC から流れるので V = 1/C∫I dt により端子電圧V+ は減少していきます。コイル電流I- は I = 1/L∫V dt だからV+ が減少しても増加を続け、磁気エネルギΦも増大していきます。
コンデンサC の電気エネルギQ はΦの増加分だけ減少します。いずれV = 0となり、このときI- は最大であり、Φも最大であり、Q = 0になっています。磁気エネルギΦによって電流I- は継続して流れV はV- になります。これにより I = 1/L∫V dt だからI- は減少していきます。I- が減少しても V = 1/C∫I dt だからV- は増加を続けます。いずれI = 0となり、このときV- は最大であり、Q も最大であり(Q = CV )、Φ= 0になっています。
V- によってコイルにI+ が流れ始め、コイルにΦが溜まり始めます。電流I+ はコンデンサC から流れるので V = 1/C∫I dt により端子電圧V- は減少していきます。コイル電流I+ は I = 1/L∫V dt だからV- が減少しても増加を続け、磁気エネルギΦも増大していきます。
コンデンサC の電気エネルギ QはΦの増加分だけ減少します。いずれV = 0となり、このときI+ は最大であり、Φも最大であり、Q = 0になっています。磁気エネルギΦによって電流I+ は継続して流れV はV+ になります。これにより I = 1/L∫V dt だからI+ は減少していきます。I+ が減少しても V = 1/C∫I dt だからV+ は増加を続けます。いずれI = 0となり、このときV+ は最大であり、Q も最大であり(Q = CV )、Φ= 0になっています。
これで最初の状態に戻りました。この先は同じサイクルを永久に繰り返します。コンデンサの電気エネルギQ とコイルの磁気エネルギΦが行ったり来たりしますね。ここが重要なポイントです。
「参考までに、このLC 共振におけるI とV の式を示します」
I =-I sin ωt [ω=1/√LC]
V = V cos ωt
[参考波形]
【外部電源を用いたLC 共振回路】
右の図は電圧V の直流電源を初期エネルギに用いた、LC 共振回路です。スイッチをON すると、上記とまったく同じ動作をします。ただしコイルL の電源側がV に固定されるので、共振電圧Vc は0点がV だけオフセットし、式で表わせば次のようになります。
I = I sin ωt [ω=1/√LC]
Vc =-V cos ωt+V
実はこの右の図のLC 共振回路と電流と電圧の式が、DC/DC コンバータに大きく関係するのです。
【昇圧チョッパの回路】
どのようなDC/DC コンバータでも同じなのですが、ここでは「昇圧チョッパ」の回路と動作を確認してみましょう。添付図を見てください。
VIN 端子に電源V を接続し、トランジスタをOFF にしてダイオードD を短絡してみてください。いかがでしょう、これはLC 共振回路そのものですね。この回路構成からDC/DC コンバータはLC 共振の動作原理を応用したものであることが伺えます。
コンデンサC の端子が出力電圧OUT になっています。このC はDC/DC コンバータの回路では「出力コンデンサ」と呼ばれ、C が溜めている電気エネルギQ によって出力電圧を得ます(V=Q/C )。出力から負荷電流を取り出すとQ が減少し出力電圧が低下しますが、「LC 共振の原理に基づいて」コイルL の磁気エネルギΦを即座にC の電気エネルギQ に変換して補充します。ダイオードD は逆流防止ですね。
負荷がC の電気エネルギQ を消費している間に、トランジスタをON にしてコイルLに電流I を流し磁気エネルギΦを作ります。Φが適量溜まればトランジスタをOFF して電流I をコンデンサC に流し、磁気エネルギΦを電気エネルギQ に変換するわけです。
[トランジスタON 時は、コイル電流I は「電源-グランド間」に流れますが、トランジスタをOFF すると電流I は大きさを保ったままダイオードの方に向きを変えます]
実際のDC/DC コンバータは10kHz~100kHz でスイッチングしますので、1秒間に10000回以上「磁気エネルギ-電気エネルギ変換」やっているということですね。
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LC共振回路とDC/DCコンバータ(構想) 2012-09-18 21
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