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河井夫妻逮捕は序章 原資を出した党と官邸の関与が核心

2020-06-18 22:03:31 | Web News
河井夫妻逮捕は序章 原資を出した党と官邸の関与が核心

日刊ゲンダイDIGITAL
公開日:2020/06/18 17:00 更新日:2020/06/18 17:37

ついに東京地検特捜部が動いた。昨夏の参院選で地元県議らに現金を渡し、票の取りまとめを依頼したなどとして、検察当局は18日、公選法違反(買収)容疑で、自民党を離党した衆院議員で前法相の河井克行容疑者(57)=広島3区=と妻の参院議員、案里容疑者(46)=広島選挙区=を逮捕した。

河井前法相の逮捕容疑は計約2570万円を選挙運動の報酬として提供、買収した疑い。案里議員の容疑はこのうち170万円で前法相と共謀した疑いがもたれている。

ウグイス嬢と呼ばれる車上運動員に対する違法報酬疑惑に端を発した一連の問題は、法務行政トップを務めた現職国会議員の逮捕に発展。国会議員が夫婦そろって逮捕されるのは、前代未聞のことだ。

2人はこれまで検察当局から複数回、任意で聴取を受けたが、買収行為を否定してきた。しかし、検察は今年1月以降、2人の関係先を家宅捜索し、“現金配布リスト”を押収。検察はリストに基づき地元議員や運動員らに事情を聴いたところ、大半が2人からの現金の受け取りを認めた。「参院選をよろしく」などの発言もあったという。

この参院選では当初、前職の溝手顕正氏だけが自民党公認で立候補するはずだった。しかし、第1次政権時に溝手から痛烈に批判されたことを根に持った安倍首相が案里を刺客に立てた。

捜査の焦点の1つは、自民党本部から夫妻陣営に渡った1億5000万円ものカネだ。通常、候補者には1500万円の資金が渡される。溝手氏に支給されたのも、1500万円だった。なのに、なぜ河井陣営には10倍ものカネが流されたのか。いったい、誰が判断したのか。1億5000万円のカネはどう使われたのか。もし、党本部や大物議員に還流していたとしたら、一大スキャンダルになる。

安倍官邸が、ルールを破ってまで“官邸の守護神”と呼ばれた黒川弘務前東京高検検事長の定年を延長したのは、河井夫妻の公選法違反を事件化させないためだったのではないかと疑われている。捜査によって、安倍政権の暗部が明らかになる可能性がある。

果たして今後の捜査はどう進むのか。案里が出馬した昨年の参院選について、判決が下された。

16日の広島地裁では、車上運動員に法定上限を超える報酬を支払ったとして、公選法違反(買収)罪に問われた案里の公設第2秘書、立道被告の判決公判が行われ、冨田裁判長は「主体的、積極的に関与した」とし、立道に対して懲役1年6月、執行猶予5年(求刑懲役1年6月)を言い渡した。

検察側は立道について、選挙運動の計画や調整を担当し、連座制の対象となる「組織的選挙運動管理者」に当たると判断。禁錮以上の有罪が確定すれば、広島高検が連座制の適用を求める行政訴訟を起こす方針だ。地裁が懲役刑を言い渡したことで、すでに案里が失職する公算が高まっているが、現職の衆参両院議員が揃って逮捕、起訴なんて事態になれば、憲政史上に残る汚職事件になるのは間違いない。

これまで2人は「良心に照らしてやましい政治行動を起こして法にもとるような政治活動を行ってきたことはありません」(克行)、「弁護士から止められている。申し訳ありません」(案里)などとシラを切り、「党に迷惑を掛けたくない」と言って離党したが、逃げ切れると思ったら大間違いだ。

自民党の党紀では、所属議員が逮捕された場合は党員資格停止か除名。恐らく離党せずに立件されれば、復党が難しいと考えたのだろう。この期に及んでも実に身勝手極まりない。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)がこう言う。

「自民党は所属議員に問題が起きると、いつも『個人の責任』を持ち出してくるが、選挙の際に公認した党にも責任があり、まずは党が疑惑について調査し、国民に説明するべきです。それが政党政治の在り方です。今のような状況をいつまでも許していると、また同じような問題が起きる可能性がある。メディアも世論も厳しく追及するべきです」

■公選法違反事件を巡る構図は、お友達優遇のアベ政治の姿そのもの

公選法は有権者が選挙を通じて民意を示すことを定めている。その法律に違反し、選挙結果を歪めた政治家は、不正選挙で得た議席を返上(辞職)するしかない。つまり、離党なんて有権者、国民にとっては茶番以外の何物でもなく、責任を取ったことにならないのは言うまでもない。

自民党の二階幹事長は、案里の秘書が有罪判決を受けたことに対し、「(党や政権に)影響を及ぼすほどの大物議員でもなければ、そんなに大騒ぎするような立場の人の行動でもない」なんて答えていたが、選挙違反疑惑を持たれている政治家(秘書)に大物も小物も関係ないだろう。

まさか、卑しい夫婦の離党で疑惑に蓋をして幕引き――と考えているのであれば許し難いが、今回の公選法違反はあくまで「入り口」であり、本丸は、背景に横たわる金権選挙の闇の解明だ。

安倍首相や菅官房長官に近しいとされ、党総裁外交特別補佐などを歴任してきた克行。そんな安倍官邸の“お気に入り”の妻(案里)が送り込まれたのは、安倍に批判的な言動で知られた現職(当時)の溝手顕正氏の選挙区だった。

この時、党本部は通常、1500万円とされる選挙資金の10倍に当たる1億5000万円を河井側に渡しており、この金の一部が今回の買収工作に使われていたとみられているのだが、一体、誰の指示で1億5000万円もの資金提供が決まったのか。金はどう流れ、どう使われたのか。安倍や菅の指示や関与はなかったのか。河井夫妻を巡る公選法違反事件は、ここが最大のキモなのだ。

■退官が迫る稲田検事総長が踏ん張れるか

「国会議員は与党であろうと野党であろうと、かけられた疑惑についてしっかり説明を果たしていく責任を負っている」

河井夫妻が離党の意向を固めたことを問われた安倍はこう言っていたが、「責任は私にある」と言うばかりで責任を一度も取ったことのない男がどの面下げて言っているのか。大体、今回の公選法違反事件を巡る構図は、これまでのアベ政治の姿そのものを表しているといっていい。通常の10倍という豊富な選挙資金が提供され、現職の国会議員にもかかわらず平然と現金封筒を配り歩く――。

これらが示しているのは、お友達だけが優遇されるという好き嫌いによる政治の私物化と、安倍のお気に入りであれば何をやっても許されるという傲慢さ以外の何物でもない。揚げ句、地検の捜査に介入し、疑惑潰しを図ろうという意図だったのか、安倍政権は検察人事にまで手を突っ込み、これが疑惑を深めている。要するに、河井事件は党ぐるみ、官邸ぐるみ、政権が“黒幕”に見える疑惑なのだ。

安倍官邸は“守護神”といわれた黒川前東京高検検事長の定年を閣議決定という禁じ手を使ってまで延長し、疑惑のもみ消しを図ろうとしたものの、結局、黒川は賭けマージャン問題で辞職した。こうなると、安倍政権に残された手は、河井夫妻をスケープゴートにして知らんぷりすることしかないが、検察が河井夫妻を逮捕してオシマイ、とはならないだろう。

政治評論家・本澤二郎氏がこう言う。

「1・5億円の選挙資金というのは、普通に考えると、安倍首相がOKしなければ絶対に支出できない。つまり、今回の河井事件=アベ事件なのです。見方を変えると、森友事件の財務官僚のように河井夫妻が全てを話したら安倍政権は終わるかもしれない。だから、河井夫妻はあれだけ強気なのです。ここで退官が迫る稲田検事総長が踏ん張れるか。世論もメディアも今後の捜査の展開を注視する必要があります」

この闇はあまりに深い。
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