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コーヒーカップの耳

『愛は愛は愛は』

2019-07-09 18:31:19 | 時実新子さん
川柳作家、N野友擴さんがお持ちくださった本を読み始めました。
今読んでいる何冊かの本はちょっと横に置いておいて。

先ず詩集『折にふれて』を読みました。

著者の吉田泰巳さんは受賞歴多数のいけばな作家さんです。
詩は最近になって書き始め、詩集もこれが初めてとのこと。
内容について、わたしは評論しないでおきます。
ただ、言葉を操ることにおいては優れておられるな、という印象。
続けられるとしたら、次はどんな詩集になるのでしょうか?

次に、読み始めたのは時実新子さんの『愛は愛は愛は』(左右社刊・1500円+税)です。



これは文句なしに素晴らしい。
しようがないですねえ、新子ちゃんのアンソロジーですから。
352句、たっぷりと楽しめます。

わたしの好きな句もいっぱい。


乳房つんつん私に背き恋をする

なわとびに入っておいで出てお行き

手が好きでやがてすべてが好きになる

何だ何だと大きな月が昇りくる

まだ咲いているのは夾竹桃のバカ

飛行機の昇る角度は恋に似る

飛行機の降りる角度は愛に似る

君は日の子われは月の子顔上げよ

大方の虫はしずかに生きて死ぬ

犬走れ使いに走れ愛走れ

愛咬やはるかはるかにさくら散る

入っています入っていますこの世です

こうやって繋がっていくカアカアと

平成七年一月十七日 裂ける

ほんとうに刺すからそこに立たないで

かなしみは遠く遠くに桃をむく

こちらあなたの夫と死ねる女です

凶暴な愛が欲しいの煙突よ

母だから泣かない母だから泣く日

ころすかもしれぬ愛へとさしかかり

妻を殺してゆらりゆらりと訪ね来よ

風の駅まもなく電車が入ります

れんげ草この世の旅もあと少し

稀にある美しい日が今日だった



ほかにもいっぱいいいのがあるが、もう一つ、わたしにとって忘れ得ぬ句。


目的はあなたにあった旅をした


これは文句なしに珠玉の一冊です。いつも手もとに置いておこう。
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