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★ 私のクラシック音楽館 (MCM) ★ 蔵 志津久

クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

◇クラシック音楽CDレビュー◇マリス・ヤンソンス指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団のベートーヴェン:交響曲第2番/ブラームス:交響曲第2番(ライヴ録音)

2019-12-10 09:39:59 | 交響曲(ベートーヴェン)

 

~追悼 名指揮者 マリス・ヤンソンス~

ベートーヴェン:交響曲第2番
ブラームス:交響曲第2番

指揮:マリス・ヤンソンス

管弦楽:ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

収録:2004年10月27日~28日、アムステルダム、コンセルトヘボウ(ライヴ録音)

CD:RCO 05002

 指揮者のマリス・ヤンソンスが、2019年11月30日に死去した。76歳であった。死因は不明だが心臓病を患っており、ロシア北西部サンクトペテルブルクの自宅で亡くなったという。マリス・ヤンソン(1943年―2019年)は、ラトビア出身の指揮者。父はレニングラード・フィルの名指揮者であったアルヴィド・ヤンソンス(1914年―1984年)。レニングラード音楽院で学んだ後、ウィーン国立音楽アカデミーに留学し、スワロフスキーやエスターライヒャー、カラヤンに師事。1971年「カラヤン国際指揮者コンクール」で第2位、同年レニングラード・フィルを指揮してプロ・デビューを果たす。1973年からレニングラード・フィルの副指揮者を務める。1977年レニングラード・フィルとともに初来日。1979年~2000年オスロ・フィルの首席指揮者を務める。2003年バイエルン放送交響楽団の首席指揮者に就任。さらに2004年~2015年ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の常任指揮者を務めた。2006年、2012年、2016年の元日には、ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートの指揮を務めるなど、わが国でも多くのファンを有していた現代の名指揮者であった。

 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(旧称:アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団)は、オランダ・アムステルダムに本拠を置くオーケストラ。アムステルダムにコンセルトヘボウがオープンした1888年に、コンセルトヘボウの専属オーケストラとしてアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団が創設された。1988年創立100周年を迎えたコンセルトヘボウは、ベアトリクス女王より「ロイヤル」(王立)の称号を下賜され、現在の名称「ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団」に改称された。これまでの首席指揮者は、ウィレム・ケス、ウィレム・メンゲルベルク、エドゥアルト・ファン・ベイヌム、オイゲン・ヨッフム、ベルナルト・ハイティンク、リッカルド・シャイー、マリス・ヤンソンス、ダニエレ・ガッティ。現在、ベルリン・フィル、ウィーン・フィルなどと並び、“世界3大オーケストラ”に挙げられる、実力を備えたオーケストラとして知られる。

 ベートーヴェンの交響曲第2番は、1801年から作曲が開始され、翌1802年の3月には完成されたと考えられている。1803年4月5日にウィーン近郊のアン・デア・ウィーン劇場において初演された。この作品が作曲されたのは難聴が特に悪化した時期で、10月には「ハイリゲンシュタットの遺書」も書かれている。しかし、作品内に苦悩の跡はほぼ見られない。形式的にはハイドンの枠組みの中にあるものの、作曲技法としては第1番より一層の進歩を示している。この曲でのマリス・ヤンソンス指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏は、躍動的であると同時に、細部に行き届いた細かな気配りが、聴いていて何とも心地良い。この交響曲は、指揮者によってはベートーヴェンの若さを強調するあまり、奥行きのない曲に聴こえてしまうことが多いが、マリス・ヤンソンスの指揮は、中期や後期の交響曲に劣らず、少しの手抜きもなく、がっちりとした構成感を持って演奏するので、腹にずしりとした重みが感じられる。特筆すべきは、第2楽章で示された静寂さとも取れる、流麗極まりない演奏内容だ。これほどの優美さを、ベートヴェンの第2交響曲から引き出すことに成功した演奏は、他に挙げることはできない。名指揮者と名オーケストラだけが到達し得た至高の境地に、ただただリスナーは酔いしれる。

 ブラームスの交響曲第2番は、1877年に作曲された。第1交響曲とは対照的に伸びやかで快活な雰囲気を示すところから、“ブラームスの「田園」交響曲”と呼ばれることもある。1877年12月30日に、ハンス・リヒター指揮のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によって初演され、大成功を収めたという。この曲でのマリス・ヤンソンス指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏は、ベートーヴェン:交響曲第2番の以上に相性がいい曲であることを窺わせるような演奏内容を聴かせる。全体が豊かな表現力に満ち溢れた演奏内容に徹したものとなった。マリス・ヤンソンスの指揮の特徴は、「静」をベースとした「動」の持つ躍動感の輝きである。ちなみに、マリス・ヤンソンスの師であるカラヤンは「動」をベースとし、時折見せる「静」の佇まいが聴衆を魅了した。マリス・ヤンソンスの指揮は、カラヤンとは対象的に「静」が大きな位置を占め、時折見せる放射線状に伸びやかに広がる「動」が聴衆に強い印象を与えるのである。このブラームスの交響曲第2番は、そんなマリス・ヤンソンスの特質にぴたりと合った曲想を持った曲であり、全てが自然な流れの中で曲が静かに進んでいく。最後の第4楽章では、沸き立つような躍動感が、精神的な喜びに昇華され尽されたかのようにも聴こえ、何とも魅力的な演奏で終える。

 追記 マリス・ヤンソンスの師である帝王カラヤンが亡くなって30年が経つ2019年、名指揮者であるマリス・ヤンソンスの死去の報を聞き、また一つの時代が過ぎ去っのたかという悲しい思いが私の胸をよぎる・・・。  合掌。(蔵 志津久)


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