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医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

脊髄損傷の回復へ脳がんばる。画像で初確認=自然科学研究機構生理学研究所

2007年11月16日 | 可視化技術
 脊髄(せきずい)の一部が傷つき一時的に指を上手に動かせなくなった際、リハビリによる回復過程で、本来は使われないはずの脳の領域の活動が高まっている様子を、生理学研究所(愛知県岡崎市)の伊佐正教授らがサルを使った実験で初めて画像にとらえた。16日付の米科学誌サイエンスで発表する。より効果的なリハビリ法の開発につながる可能性がありそうだ。

 サルの脊髄の一部を傷つけ、一時的に人さし指と親指で食べ物をつまむことができなくする。リハビリをさせると、傷を受けなかった神経が働くようになり、3カ月程度で回復する。その過程の脳の働きを、血流量から活動領域を明らかにする装置で調べた。

 右手でつまむように訓練を受けたサルで右手が使えなくなると、回復初期の1カ月には、右手の動きをつかさどる左の脳の領域だけでなく、右手とは無関係なはずの右側の脳も活動した。3カ月後、回復が安定すると、本来使う側の左の脳の活動がさらに高まることがわかった。失われた機能をなんとか回復しようと脳が働く様子をとらえたのは初めてという。

 伊佐さんは「それぞれの脳の部位が、回復に対して果たす役割がわかってくれば、効果的なリハビリ法ができるだろう」といっている。

[朝日新聞 / 2007年11月16日]
http://www.asahi.com/science/update/1115/TKY200711150390.html



【リハビリで運動能力回復、脳が重要な働き】

 脊髄(せきずい)損傷後、リハビリ訓練によって運動能力が回復する過程で、回復にかかわる脳の特定部分が変化することを、自然科学研究機構生理学研究所(愛知県岡崎市)などのチームがサルを使った実験で突き止めた。

 運動能力の回復には、損傷がない特定部分の脊髄をうまく機能させるため、脳が重要な働きをしていることを示す結果で、リハビリでの患者の回復具合が予測できる可能性がある。成果は16日付の米科学誌サイエンスに掲載される。

 首の部分の脊髄(頸髄=けいずい)を一部損傷したサルは、直後は指先を使うことができないが、食べ物を指先でつまむ訓練を繰り返すと、1~3か月後には元通りにつまむことができる。

 研究チームは、回復途中のサルの脳を調べた。損傷1か月後の回復初期には、通常なら右手を動かす時に働きが活発化する脳の左側の運動野のほか、右側の運動野も働いていた。運動能力がほぼ元通りになった3か月後では、右側の運動野の脳活動レベルは下がり、左側の運動野の活動がより広範囲で強くなっていた。

 回復の過程で、損傷を受けていない脊髄の特定部分を通って情報を伝えるよう脳活動が変化しているとみられるという。同研究所の伊佐正教授は「脊髄の損傷の程度に応じて、リハビリ訓練でどこまで回復するか予測できるようになる可能性がある」と話している。

[読売新聞 / 2007年11月16日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20071116i201.htm


炎症抑制タンパク質、感染症予防に効果=香川大学、ハーバード大学

2007年11月16日 | 蛋白質
 炎症反応を抑える作用があるタンパク質「ガレクチン9」に、体内に侵入した細菌やウイルスを退治する働きを強める作用があるらしいことを、香川大の平島光臣教授(免疫病理学)と米ハーバード大などの研究チームが突き止め、16日付の米科学誌サイエンスに発表した。

 炎症が関係するリウマチや膠原(こうげん)病など、自己免疫疾患の新たな治療薬として期待される。平島教授は「インフルエンザなどの感染症治療にも役立ちそうだ」としている。

 平島教授らは、ガレクチンが結合する細胞表面の受容体に着目。白血球の一種マクロファージの受容体にガレクチンがくっつくと、細菌やウイルスを食べるマクロファージの働きが強まることを確かめた。

 一方でガレクチンは、炎症関連物質を出す別の白血球の働きを抑制。生体内で二種類の白血球のバランスを取りながら制御しているらしい。

 バランスが崩れて炎症が過剰になると、リウマチなどの自己免疫疾患が起きる。平島教授は「ガレクチンを投与すれば、炎症を抑えながら感染症を防ぐ新たな治療のアプローチが可能だ」と話す。

[四国新聞社 香川NEWS / 2007年11月16日]
http://www.shikoku-np.co.jp/kagawa_news/social/article.aspx?id=20071116000148

「老化で物忘れ」の仕組み解明=アルツハイマーと同じたんぱく質関与=理化学研究所

2007年11月16日 | 遺伝子組替マウス
 アルツハイマー病に関与するたんぱく質の一つが、老化に伴う記憶障害の原因になっていることを、理化学研究所の高島明彦アルツハイマー病研究チームリーダーらがマウスを使った実験で確認し、15日付の学会誌に発表した。このたんぱく質が脳内に蓄積すると、アルツハイマー病の原因になる神経細胞の変質(神経原繊維変化)をもたらすが、早期に発見できれば、発症予防が期待できるという。
 人間の脳は老化に伴い、記憶の形成にかかわる嗅内野(きゅうないや)という部位に「過剰リン酸化タウたんぱく質」が蓄積し、神経原繊維変化が発生。その後「ベータアミロイド(Aβ)」と呼ばれる別のたんぱく質により脳の広い部位に神経原繊維変化が拡大、アルツハイマー病に至る。
 研究チームは、ヒトのタウたんぱく質を作るマウス(タウマウス)を遺伝子操作でつくった。学習、記憶行動と神経細胞の活動を調べたところ、若いタウマウスでは通常のマウスとの違いはなかったが、老齢では嗅内野の神経原繊維変化が起きていなくても、記憶能力が極端に低下していた。
 老齢タウマウスの嗅内野を詳しく調べると、神経細胞同士のつながり(シナプス)の減少が判明。タウたんぱく質が神経原繊維変化とは別に、シナプスを減少させて記憶障害を起こしていることが分かった。
 神経原繊維変化は元に戻せないが、タウたんぱく質は薬剤で害を与えない状態に変化させることができるため、早期の発見により、記憶障害の改善やアルツハイマー病への進行を防げる可能性があるという。 

[Yahoo!ニュース 時事通信 / 2007年11月16日]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071116-00000020-jij-soci