ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

酵素「カテプシンE」に抗がん作用、新薬開発に期待=九州大学

2007年11月09日 | 遺伝子組替マウス
 九州大の山本健二教授(薬理学)らの研究グループは8日、たんぱく質分解酵素の「カテプシンE」に抗がん作用があることを突き止めたと発表した。がん細胞だけを自発的に死滅させる特性があり、副作用のない治療薬開発につながる可能性があるという。15日付の米がん学会誌電子版に掲載される。

 山本教授によると、カテプシンEは免疫系細胞に多く見られる酵素だが、これまで具体的な役割は判明していなかった。

 山本教授らは、遺伝子操作でカテプシンEを多くしたマウスと、完全になくしたマウスにがん細胞を移植。50日経過時点での生存率を比較したところ、多くしたマウスは約8割に達したのに対し、なくしたマウスは約2割だった。多くしたマウスではがん細胞の増殖や転移が少なく、健康上の問題も起きなかった。

 これらの結果から、カテプシンEががん細胞を死に導く分子に作用するほか、異物を除去する細胞「マクロファージ」を刺激し、がん細胞を攻撃させる役割があると結論付けた。

 山本教授は「がんの治療薬は副作用の大きさが問題になってきた。毒性の少ない新たな治療薬開発につなげたい」と話している。

[読売新聞(九州発) / 2007年11月09日]
http://kyushu.yomiuri.co.jp/magazine/medical/news/me_news_07110901.htm?from=goo

「お茶の用意をして。体にいいから」 コーヒー大国の米、お茶飲む国に

2007年11月08日 | 食品・栄養
 【ワシントン=USA TODAY(リタ・ルービン)】コーヒー消費大国の米国で、お茶を飲む人が増えている。

 米茶組合によると、昨年まで15年連続でお茶の消費量が増加、スーパーでの売上高は20億ドル(約2300億円)に迫っているという。

 最近、米国でもお茶が体にいいことを知る人が増えたことが、消費量増加の原因のようだ。ウィスコンシン大マディソン校のハサン・ムフタール医師は「この5年で、急速にお茶の研究が進んだ。動物実験段階のものもあるが、お茶を飲むことが健康にいいことは間違いない」と話す。

 お茶には抗酸化作用のあるポリフェノールが含まれており、心臓病、前立腺がんや皮膚がんに効果があると考えられるという。

 アリゾナ大付属がんセンターのイマン・ハーキム教授は「緑茶はDNAの修復作用に好影響を与える。ただし、人によって効果は異なる」と指摘する。

 また、ニューヨーク市立大のジョン・フォックス教授は、お茶に含まれるアミノ酸の一種、テアニンに注目。お茶10杯分のテアニンを摂取すると、集中力が高まり、仕事の効率が上がることが分かったという。

(c) 2007, USA TODAY International. Distributed by Tribune Media Services International.

[msn 産経ニュース / 2007年11月08日]
http://sankei.jp.msn.com/life/body/071108/bdy0711082216004-n1.htm

ネコを怖がらない! マウス=東京大学、小早川高校

2007年11月08日 | 遺伝子組替マウス
 哺乳(ほにゅう)類が天敵のにおいを怖がるのは危険な目に遭って学習した結果ではなく、生まれながらに嗅覚(きゅうかく)に備わった神経回路の働きによるものであることを東京大の坂野仁教授や小早川高・特任助教らの研究チームがマウスの実験で発見、8日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。

 この回路を壊したマウスは、ネコやキツネのにおいを識別しても怖がらず、逃げ出さなかった。

 また、こうしたにおいによる危険の判断は、大脳の高次機能を担う領域ではなく、鼻の奥の細胞からにおいの情報を最初に受け取る「嗅球」と呼ばれる低次の部分で行われていることも判明。外界の情報を処理する脳神経回路の構造解明に役立つ成果だという。

 チームは独自に開発した遺伝子操作の手法で、嗅球の一部の機能を失わせたマウスをつくった。腐った食べ物や天敵のキツネのにおいをかがせると、正常なマウスはにおいから逃げたり、すくんだりしたが、遺伝子操作したマウスはにおいを識別しているにもかかわらず逃げなかった。

 チームは、この部位の神経回路に危険を判断して逃避行動を起こす仕組みが遺伝的にプログラムされているとみている。

 坂野教授は「哺乳類の脳では、遺伝的に組み込まれた本能による判断の上に、環境による学習回路が積み重なっているのだろう」と話している。

(写真:ネコをまったく怖がらず、耳の後ろに顔を寄せる遺伝子操作したマウス(東京大・坂野研究室提供))

[MSN産経ニュース / 2007年11月08日]
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/071108/trd0711081055007-n1.htm

イモリのしっぽはなぜ生える?謎の再生メカニズム、解明へ=ロンドン大学

2007年11月07日 | 生きもの色々
【11月7日 AFP】(一部訂正)イモリなどの両生類の切断された足を再生する際に主要な役割を果たすタンパク質の分子シグナルを発見したとする研究結果が、米科学誌「サイエンス(Science)」に発表された。

 イモリなどの両生類がど切断された足を再生させる生物学的プロセスは、生物学者らにとって長年の関心事だったが、完全に解明されていなかった。

 ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College London、UCL)の研究チームが再生プロセスを研究した結果、神経細胞や皮膚細胞が作り出す「nAG」と呼ばれるタンパク質がこのプロセスに重要な役割を果たすことが分かった。

 切断された部分の近くの神経細胞と上皮細胞が、nAGを分泌することで、新たな器官や足を生み出す未分化細胞である芽細胞を刺激し、その形成が促進されるという。nAGは、神経が切断されていても分泌される。

 今回の発見は、ヒトの体の失われた部分の細胞再生への鍵となる可能性もある。研究の主著者であるアヌープ・クマール(Anoop Kumar)氏は、「この発見がほ乳類やヒトの再生医療分野での進展につながるのでは」と期待を寄せている。(c)AFP

[AFP BB News / 2007年11月07日]
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2308300/2322583

子宮筋肉に「幹細胞」、筋腫発症の解明に期待=慶応大学

2007年11月06日 | 再生医療
 人間の子宮の筋肉組織に、高い増殖能力を持ち、筋肉や脂肪などの細胞に成長できる「幹細胞」が存在することが、慶応大の岡野栄之(ひでゆき)教授(生理学)らの研究でわかった。子宮筋腫(きんしゅ)などの病気発症の解明につながる成果で、米科学アカデミー紀要(電子版)に近く掲載される。

 女性が妊娠すると、胎児をはぐくむ子宮は通常の20倍以上の重さまで増大する。また、子宮の中に筋肉の塊ができる子宮筋腫は、単一細胞が増大してできると考えられてきた。だが、これらの詳しい仕組みはわかっていなかった。

 研究チームは、手術で摘出した63人分の子宮筋組織から特殊な方法を使い、幹細胞の性質を持つ細胞を収集。この細胞をマウスの子宮に移植し、妊娠させたところ、人の細胞で構成された子宮筋組織が作られた。妊娠・出産に重要なホルモンと結合するたんぱく質もできていた。

 この細胞は脂肪細胞や骨細胞にも変化でき、幹細胞であることが確認された。研究チームの丸山哲夫・同大講師(産婦人科)は「子宮の一部を失った人に、この細胞を移植して再生する医療に結びつく可能性がある」と話している。

[読売新聞 / 2007年11月06日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20071106i406.htm



【ヒトの子宮筋幹細胞を確認 慶大グループ】

 子宮の細胞は妊娠すると増えたり大きくなったりするが、そのおおもとになる子宮筋幹細胞を、ヒトの子宮筋組織から見つけることに慶応大グループが成功、今週の米国科学アカデミー紀要電子版に発表する。幹細胞は子宮筋腫の発生にかかわっている可能性があり、子宮筋腫の仕組み解明や治療に道が開けそうだ。

 グループは同意を得て採取したヒトの子宮筋組織の細胞から、活動していない細胞群を選び出し、個別の細胞に分化していない幹細胞の集まりであることを確認、培養にも成功した。

 この細胞群から得た細胞を免疫不全マウスの子宮に移植したら、ヒト由来の子宮筋ができた。妊娠後は分娩(ぶんべん)に必要なヒト由来のたんぱく質も発現した。多分化能を確認したほか、子宮筋腫でみられる子宮筋細胞が骨や脂肪の細胞に変わる様子も確認できた。幹細胞が子宮筋腫の発生に関係する可能性もうかがえた。

 同グループの丸山哲夫講師(生殖内分泌学)は「将来、子宮頸(けい)がんの手術で切除した部分の再生など治療法の開発につなげたい」と話す。

[朝日新聞 / 2007年11月06日]
http://www.asahi.com/science/update/1106/TKY200711060044.html

肺がん治療に光、肺がん進行要因の遺伝子特定=ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学

2007年11月05日 | 医療技術
【11月5日 AFP】肺ガンの原因とされる遺伝子異常を解析するプロジェクトで「遺伝子地図」が制作された結果、疾患進行の主要因となる遺伝子が特定されたとする研究報告が、4日の英科学誌『ネイチャー(Nature)』のインターネット版に掲載された。これにより今後、肺がん治療の進歩が期待できるという。

 同プロジェクトは国際的な「Tumor Sequencing Project、TSP(がん解析プロジェクト)」の一環として、世界各地の研究機関が参加する合同研究チームにより進められているもの。

 ヒトがんの大半は細胞の遺伝子異変が原因だが、この遺伝子異変の性質や影響については、ほとんど解明されていない。

 研究チームは、肺ガンの症例の3分の1を占める肺腺がんに焦点を当て、肺がん患者から採取した500以上の腫瘍サンプルのDNA異常を調査。その結果、がん患者の細胞に多く見られる57種類の遺伝子変異が特定された。このうち少なくとも40種類は、今回初めて肺腺がんとの関連が判明した。

 研究を主導している米ハーバード大学(Harvard University)およびマサチューセッツ工科大学(MIT)のMathew Meyerson氏によると、肺がん遺伝子がこれほど幅広く大規模に研究されたプロジェクトはこれが初めてだという。「今後の研究の重要な基礎となるプロジェクトだ。肺細胞の成長を制御する重要な遺伝子もすでに突き止めている」と同氏は語っている。

 世界保健機関(World Health Organisation、WHO)によると、毎年130万人が肺がんで死亡しており、最も致死率の高い病気とされている。(c)AFP

[AFP BB News / 2007年11月05日]
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2307431/2314959

聴覚の発達のしくみを解明=ジョンズホプキンス大学

2007年11月02日 | ラット
【11月2日 AFP】聴覚の発達のしくみを解明した研究結果が10月31日、英科学誌「ネイチャー(Nature)」で発表された。

 研究を行ったのは米メリーランド(Maryland)州ボルティモア(Baltimore)にあるジョンズホプキンス大学(Johns Hopkins University)のDwight Bergles氏率いる研究チーム。チームは中耳と内耳が発達しておらず空気伝送音を感知できない、生まれたばかりのラットを使い実験を行った。

 聴覚器官内の細胞が、細胞間のエネルギー伝達をつかさどるアデノシン三リン酸(ATP)を放出すると、これが音波に反応する内有毛細胞を刺激し、グルタミン酸塩と呼ばれるアミノ酸を放出。これにより、音を感知して脳に電気的信号を送る神経線維である初期聴覚神経細胞が活性化され、音が聞こえるという。

 研究チームは、今回の研究結果を「耳鳴り」の原因解明にも活用できる可能性があるとして期待を寄せている。(c)AFP

[AFP BB NEWS / 2007年11月02日]
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2305581/2302827

6時間走り続ける「スーパーマウス」が、遺伝子操作により誕生=ケース・ウエスタン・リザーブ大学

2007年11月02日 | 遺伝子組替マウス
【11月2日 AFP】ピレネー山脈をバイクでのぼる自転車ロードレーサーのランス・アームストロング(Lance Armstrong)にも匹敵する「スーパーマウス」が、遺伝子操作により誕生した。

 スーパーマウスを開発したのは、米オハイオ州ケース・ウエスタン・リザーブ大学(Case Western Reserve University)の研究チーム。同大学のRichard Hanson教授によると、このマウスは、分速20メートルの速度で6キロほどの距離を最長6時間走り続けることができる。

 スーパーマウスは、野生のマウスよりも60%多く食物を摂取するが、それでもスリムな体形を保つことができる。また、寿命も長く、生殖期間も通常より長い。このマウスは激しい運動の際に蓄積される乳酸が極端に少ないため、激しい運動に耐えることができるという。

 通常の動物はエネルギー源が脂肪酸代謝から筋グリコーゲンに切り替わり血中乳酸値が上がるのに対し、スーパーマウスは主に脂肪酸に頼るため、持久力に差が出るという。

 研究結果は1日に出版されたJournal of Biological Chemistryに掲載されている。(c)AFP

[AFP BB News / 2007年11月02日]
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2306041/2304826


【遺伝子組み換えで「スーパーマウス」が誕生 米大学】
 最大6時間も走り続ける「スーパーマウス」を遺伝子組み換え技術で作った、と米オハイオ州のケース・ウエスタン・リザーブ大学が発表した。エネルギー代謝に関係する酵素が活性化しているため、運動の際に筋肉にたまる乳酸が非常に少なく、激しい運動に耐えられるという。

 スーパーマウスは、走行装置の上を、分速20メートル(時速1.2キロ)ほどで5~6キロを走り通した。普通のマウスが200メートルで脱落した後も走り続ける映像が、大学のウェブサイト(http://blog.case.edu/case-news)に掲載された。普通のマウスと外見は変わらないが、行動的・攻撃的で、寿命や生殖期間は長いという。ただし、普通の1.6倍ものエサを食べる。

 研究グループは、このスーパーマウスを著名な自転車レース「ツール・ド・フランス」で7年連続総合優勝したランス・アームストロング選手にたとえた。一方で、今回の動物実験はあくまで運動と病気などの関係を調べるのが目的で、人への応用は倫理的にも不適切と強調。「人の代謝過程への干渉は、どんなものであれ、効果よりも害の方が大きくなるだろう」と注意を促している。

[朝日新聞 / 2007年11月09日]
http://www.asahi.com/science/update/1108/TKY200711080445.html