ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

米研究チーム、魚も不眠症になることを発見=スタンフォード大学(米国)

2007年10月16日 | 生きもの色々
 [ロサンゼルス 15日 ロイター] 米スタンフォード大医学部の研究チームは15日、魚にも不眠症になる種類がいることを明らかにした。

 人の睡眠障害を研究している同チームだが、観賞魚として飼われることも多いゼブラフィッシュの一部には、人間の不眠症に似た状態をもたらす突然変異遺伝子を持つ種類がいることが分かったとしている。

 この遺伝子を持つゼブラフィッシュは、食欲や睡眠などに関連する神経伝達物質ヒポクレチンの受容体が欠如しており、睡眠時間がほかの仲間に比べて30%少ないという。

 ゼブラフィッシュは、飼育にかかる費用がマウスよりも安価であり、ショウジョウバエにはない背骨を持っているため人間の神経系統を研究する上でより良い実験用生物として人気が高まっている。

[REUTER ロイター / 2007年10月16日]
http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-28368520071016

米食品医薬品局、メルク社のインテグラーゼ阻害剤(抗HIV薬)を承認

2007年10月15日 | 創薬
【Technobahn 2007/10/15 16:05】米製薬大手のメルク社は12日、抗HIV(エイズ)薬「Isentress(MK-0518)」が米食品医薬品局(FDA)によって承認されたことを発表した。

 エイズウィルスは発症するために3つの異なる酵素を利用。これまでその内、プロテアーゼと逆転写酵素と呼ばれている2つの酵素のブロックすることまでは成功してきた。メルク社のIsentressは3つめの酵素となるインテグラーゼをブロックすることに成功した最初の抗HIV薬となる。

 プロテアーゼと逆転写酵素をブロックする抗HIV薬と今回、メルク社が開発を行ったインテグラーゼをブロックする抗HIV薬を混成(カクテル)して処方することにより、エイズ感染患者の死亡率を大幅に低下することが可能となる。

  Isentressの価格は1日分で27ドル(約3100円)、1年分で9855ドル(113万円)となる見通。画像を拡大する

[Technobahn science news / 2007年10月15日]
http://www.technobahn.com/cgi-bin/news/read2?f=200710151605

物体の動きの「速い」「遅い」、脳の別領域で処理=理化学研究所

2007年10月15日 | 心のしくみ
 目に映る物体のゆっくりした動きと素早い動きを区別するため、人間の脳が、視覚情報に含まれる速い変化と遅い変化をそれぞれ別の領域で処理していることを、理化学研究所のチームが突き止めた。自動車運転中に危険を察知したり、飛んでくるボールを避けたりできる人間の高度な危険回避能力の元になるメカニズムという。

 英科学誌ネイチャー・ニューロサイエンス(電子版)に発表する。

 人間の脳は、左右の目でとらえた画像など異なる視覚情報を神経細胞が集まる「大脳皮質」で処理し、区別している。ただ、物体の動きの速さを判別する仕組みはこれまで分からなかった。

 研究チームは、脳の活動を外から調べる機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)を改良し、大脳皮質の様子を細かく観察できるようにした。白黒の模様が高速と低速の2種類の速さで変化する実験用画像を被験者に見せて、脳の中の活発な部分を詳しく調べた。

[日本経済新聞 NIKKEI NET / 2007年10月15日]
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20071015AT1G1500E15102007.html

理化学研究所 プレスリリース
「速い」、「遅い」変化を処理する機能構造をヒト第一次視覚野で発見
- 動きのある画像を知覚するために重要な皮質機能構造をfMRIで解明 -
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2007/071015/index.html

http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2007/071015/detail.html

(図:今回の研究手法で用いた最適化(第一次視覚野をこのような撮像スライスで処理し、機能構造を見つけ出した)

マングース、水銀解毒? 高濃度蓄積も平気 沖縄・奄美=東京農工大学

2007年10月14日 | 生きもの色々
 沖縄や奄美大島で野生化した外来種ジャワマングースの体内に、高い濃度の水銀が蓄積していることが、東京農工大大学院の渡辺泉・准教授(環境毒性学)のグループの研究でわかった。水銀を高濃度蓄積するクジラなどの海生哺乳(ほにゅう)類に近いレベルだが、汚染源は謎。中毒症状はなく、渡辺准教授は「両島のマングースには、有害なメチル水銀を無毒化する機構が備わっているようだ。野生の陸生哺乳類では他に報告例はない」と話す。

 沖縄と奄美のジャワマングースは、ハブ退治などのために人間が野生に放した。ところが、ヤンバルクイナやアマミノクロウサギなど島固有の希少種を捕食し、生息域を拡大。生態系への影響を防ぐため環境省は05年、マングースを特定外来生物に指定して防除事業を展開している。

 渡辺准教授らは、同事業で捕獲した奄美大島の57匹と沖縄の10匹を分析。最も蓄積する肝臓の総水銀濃度は、奄美が最高213ppm(平均21.0ppm)、沖縄が同112ppm(同23.1ppm)に上った(濃度は1グラムあたりの湿重量)。

 魚をえさにするハクジラ類などの海生哺乳類は、食物連鎖で水銀が濃縮し、成体で肝臓に数十から数百ppmレベルの総水銀をため込むという。このうち毒性の強いメチル水銀は、肝臓で元素の一つセレンと相互作用を起こし、毒性の低い無機水銀化合物に変わることが知られている。

 国内の陸生哺乳類の場合、せいぜい数十ppbレベル(1ppbは1ppmの1000分の1)と低く、海生哺乳類のように無毒化はできない。特に人間では、メチル水銀が血液脳関門を突破して脳細胞を破壊し、水俣病を引き起こした。マングースの水銀濃度は、人間なら水俣病にかかってもおかしくないレベルだという。

 両島のマングースは魚を食べない。クマネズミなど島内の他の陸上哺乳類からは高濃度の水銀は見つかっておらず、汚染源の謎は深まるばかり。

 研究グループでは、両島のマングースは少しずつ取り込んだメチル水銀を排泄(はいせつ)せず、肝臓で無毒化しているとみる。今後、解毒作用を担う遺伝子を特定し、マングースだけに効く駆除薬や、メチル水銀が人間の脳に入る前に解毒する薬品開発に結びつけたい考え。

 渡辺准教授は「世界中で水銀汚染が深刻。解毒機構を解明し、人間への応用につなげたい」と話している。

[朝日新聞 / 2007年10月14日]
http://www.asahi.com/science/update/1014/SEB200710140004.html

ピロリ菌の感染持続の謎を解明、胃粘膜の細胞死抑制=東京大学医科学研究所

2007年10月11日 | 消化器
 50歳以上の日本人の半数が感染しているとされるピロリ菌が、胃の中で感染を持続させる仕組みを、東京大医科学研究所などの研究チームが解明した。ピロリ菌は胃かいようや胃がんの原因になるとされる。抗生物質による除菌以外の新たな治療法の開発につながる成果で、11日発行の米科学誌に掲載される。

 胃や腸の表皮細胞は絶えず自ら細胞死を引き起こし、2~3日ごとに新たな細胞と置き換わることで病原菌の感染から身を守る。その中で、ピロリ菌が長期間、感染し続ける仕組みは謎だった。

 笹川千尋・東京大医科学研究所教授(細菌学)らは、ピロリ菌に感染したスナネズミでは、細胞死が通常の半分程度しか起きないことを発見。一方、「CagA」というたんぱく質を作れないピロリ菌を作り、スナネズミに感染させると、通常通り細胞死が起きた。このため、ピロリ菌は胃粘膜にCagAを注入することで細胞死を抑制していると結論した。笹川教授は「細胞死を抑制する経路を断てれば、持続感染を防ぐ新たな治療法への布石になる」と話している。【西川拓】

[毎日新聞 / 2007年10月11日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20071011ddm003040028000c.html

牛乳増産の安価な方法を発見 「ウシをうつ状態にする副作用もなし」=シンシナティ大学(米国)

2007年10月09日 | 生きもの色々
【10月9日 シカゴ発/AFP】成長ホルモンに頼らずに牛乳の生産量を増やす安価な薬品の製造に成功したとの研究結果が、8日発行の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、PNAS)に発表された。

 研究を発表したのは、オハイオ州シンシナティ大学(University of Cincinnati)医学部の研究者、ネルソン・ホースマン(Nelson Horseman)氏率いる研究チーム。研究によると、乳腺のセロトニン量を抑制することで、牛乳の生産量を15%増やすことが可能となる。

 脳内のセロトニン量の低下は従来、うつなどの気分障害を引き起こすものだったが、チームはウシをうつ状態にすることなく、乳腺のセロトニン量を削減する効果があるとみられる薬品の製造に成功したという。ホースマン氏は「ウシが落ち込んでいるかどうか見分けられたわけではないが、(ホルモン量を調整する薬品は)脳に影響を与えていない」と主張する。

 研究チームは、セロトニンが牛乳の生産を遅らせる信号を送る化学物質であることを発見。ヒト細胞を利用した実験で、ヒトの乳腺が乳で満たされるとセロトニンが合成され、それ以上の乳の分泌を抑制することをつきとめた。

 研究チームは、この研究結果を乳製品の生産量向上のために利用することを目指し、薬品の特許を取得。まもなく、乳牛での試験を開始する。

 ホースマン氏は「薬品が牛乳にも現れるかどうか確認しなければならない。もし現れるのであれば、低温殺菌プロセスで除去できるかどうかの確認が必要だ」と試験の趣旨を語った。

 現在のホルモン療法は、新興国の農家にとっては高価すぎる一方、欧州では牛乳にホルモンが残留するとの懸念から、その使用が禁止されている。
 
 研究チームの薬品を使った牛乳の増産量は成長ホルモン療法によるものと同程度だ。しかも、この薬はより簡単で安価に合成することができる上、注射ではなく経口投与できる点が売りだ。

「われわれの最終目標は、副作用なしに牛乳生産量を効果的に増やすことだ」とホースマン氏は抱負を語った。(c)AFP

[AFP BB-News / 2007年10月09日]
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2295381/2224466

異常たんぱく質の処理解明、アルツハイマー病治療に光明か=奈良先端科学技術大学院大学

2007年10月08日 | 蛋白質
 細胞内にたまった異常なたんぱく質を見つけ、修復機構を発動させるメカニズムを、奈良先端科学技術大学院大の木俣行雄・助教(動物細胞工学)らのグループが解明し、8日付の米科学誌セルバイオロジーに発表した。

 アルツハイマー病など、異常なたんぱく質が蓄積する病気の治療につながる可能性があるという。

 細胞内に立体構造が変形した異常たんぱく質が作られると、センサー物質「Ire1(ワン)」が検知し、たんぱく質の構造を正常に戻すのを助ける分子「シャペロン」の合成量を増やして修復する。

 Ire1にはふだん、シャペロンの一種「BiP」が結合しており、異常たんぱく質が増えると分離することが知られていたが、Ire1がどうやって活性化するかは不明だった。

 木俣助教らは酵母を使った研究で、BiPが分離すると、Ire1が集合し、その中に取り込んだ異常たんぱく質に直接、結合することでIre1が活性化することを発見した。活性化したIre1は遺伝子に情報を伝え、シャペロンの合成を促す。

 木俣助教は「修復機構の各段階が明確になったことで、病気の原因解明や、異常たんぱく質の処理を人為的に調節する方法の開発が進むのでは」と話している。

[読売新聞 / 2007年10月08日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20071008i114.htm

ノーベル医学生理学賞:マリオ・カペッキ氏ら米英の3人に

2007年10月08日 | 遺伝子組替マウス
 スウェーデンのカロリンスカ研究所は8日、07年のノーベル医学生理学賞を米ユタ大のマリオ・カペッキ教授(70)とノースカロライナ大のオリバー・スミシーズ教授(82)、英カーディフ大のマーチン・エバンス教授(66)の3氏に授与すると発表した。授賞理由は「マウスの胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を使って特定の遺伝子を改変する原理の発見」。その結果、マウスの特定遺伝子の働きを止めたり、別の遺伝子で置き換える「ジーンターゲティング」が可能となり、さまざまな遺伝子の働きが明らかになった。がんや糖尿病をはじめとする病気の解明や治療法開発に役立っている。

 授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、賞金として1000万クローナ(約1億8000万円)が贈られる。

 エバンス氏は81年、さまざまな細胞に分化することができ、万能細胞とも呼ばれるES細胞をマウスで作り出した。哺乳(ほにゅう)類では初の成功だった。スミシーズ氏とカペッキ氏はそれぞれ、染色体上にある遺伝子を別の遺伝子で置き換える手法を開発した。スミシーズ氏はこの手法を使い、貧血や動脈硬化のモデルマウスを作成した。

 さらに、カペッキ氏はマウスのES細胞を活用することで、特定の遺伝子を失った「ノックアウトマウス」を効率よく作成する方法を確立した。カペッキ氏は96年に京都賞を受賞している。

 現在では1万個以上のマウスの遺伝子の操作が可能になった。その数は哺乳類の遺伝子のほぼ半数に達し、500種類以上の病気のモデルマウスが作られている。

[毎日新聞 / 2007年10月08日]
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20071009k0000m040031000c.html

筋委縮性側索硬化症(ALS)、進行の仕組みを解明=慶應義塾大学

2007年10月06日 | 遺伝子組替マウス
 運動神経が破壊され、筋力が低下する難病の筋委縮性側索硬化症(ALS)は、脊髄(せきずい)でアミノ酸の一種「D―セリン」が過剰に作り出されて進行することを、慶応大医学部の相磯貞和教授(形態形成学)らのグループが突き止めた。

 新たな治療薬の開発につながる成果で、英科学誌に発表した。

 ALSに伴う神経の破壊は、情報伝達物質であるグルタミン酸が過剰に神経を興奮させるために起きるとされている。このグルタミン酸の過剰興奮の一端を、神経細胞に栄養を与える「グリア細胞」が作るD―セリンが担うことも知られていたが、その仕組みは不明だった。

 相磯教授らは、ALSを発症させたマウスや、ALSで亡くなった患者の脊髄を分析。病気が進行するにつれてグリア細胞が増え、D―セリンの濃度が脊髄の中で高まった結果、グルタミン酸が神経を破壊する働きも強まっていることがわかった。一方、このアミノ酸の働きを抑えると、グルタミン酸による神経の破壊も抑えられた。

[読売新聞 / 2007年10月06日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20071006i515.htm

がんワクチン「効果あり」 34人中22人、安定か改善=東京大学医科学研究所

2007年10月05日 | 創薬
 進行した膵臓(すいぞう)がんや食道がんなどを対象にしたがんワクチンの臨床研究で、患者34人のうち22人に病状の悪化を防ぐ効果が確認されていることがわかった。横浜市で5日まで開かれている日本癌(がん)学会総会で、東大医科学研究所ヒトゲノム解析センターの中村祐輔教授が発表した。目立った副作用は出ていないという。新薬として開発を進める方針だ。

 がんワクチンは、がん細胞に狙いを絞って免疫反応を高め、がんをやっつけようという手法。中村教授らが、正常細胞ではほとんど働かないのに、それぞれのがん細胞で特徴的に活発に働いている遺伝子を特定。その中から強い免疫反応を導くものを選び出し、複数のワクチンを作った。

 膵臓、食道のほか、肺、肝臓、膀胱(ぼうこう)、大腸の各がんを対象に、岩手医大や福島県立医大、山梨大、和歌山県立医大、九州大などが昨秋から順次、臨床研究を始めた。

 今はワクチン自体に毒性がないかどうかを確認している段階で、標準的な治療法がないと判断された患者らに説明し、同意を得て研究に参加してもらっている。

 9月末までに投与した患者は67人おり、このうち、計画通り投与し、3カ月以上過ぎた34人について分析した。がんが縮小したと評価された人は膵臓、膀胱、大腸の各がんだった5人。がんが大きくならずに安定していた人が17人で、計22人で効果があったと判断した。

 がんに対する免疫反応が高まっていることも確認され、特に比較的若い人で顕著だった。また、投与の結果、半年以上、病状が安定している患者がいた一方、効果のみられないケースもあった。

 グループが、がんワクチンに期待するのは、手術後の再発予防。実用化にはさらに研究を重ねる必要があるが、新薬の承認申請を目指し、臨床試験(治験)を担当する厚生労働省の関連組織と相談に入りたい考えだ。

[朝日新聞 / 2007年10月05日]
http://www.asahi.com/science/update/1005/TKY200710050196.html

鳥インフルエンザ、アミノ酸変異で大増殖=東京大学医科学研究所

2007年10月05日 | 蛋白質
 新型インフルエンザウイルス大規模流行につながる恐れがある鳥インフルエンザウイルス中のアミノ酸の変異を、河岡義裕・東大医科学研究所教授の研究チームが突き止めた。

 新型インフルエンザの流行を予測する際の有力な手がかりになるとして注目されそうだ。5日のオンライン科学誌に掲載される。

 研究チームは、人に感染した2種類のH5N1型の鳥インフルエンザウイルスを構成するたんぱく質を比較。ウイルスの増殖に関係している「PB2」と呼ばれるたんぱく質を分析したところ、627番目のアミノ酸が、人の鼻粘膜での増殖に大きくかかわっていることを見つけた。

 さらに、このアミノ酸を人工的にリジンという別のアミノ酸に変えたウイルスを作り、マウスに感染させたところ、感染後3日間で、鼻の粘膜でのウイルス数が変異前に比べて1万倍以上に増えることが判明。一方、627番目がもともとリジンであるもう片方のウイルスを改造し、ここをグルタミン酸というアミノ酸に変えた場合は、鼻粘膜ではほとんど増殖しなかったという。

 河岡教授は「鼻の中でウイルスが増えれば、くしゃみなどによりウイルスが周囲に飛び散り、人同士で感染する可能性が高まる。新型インフルエンザの流行を最小限に抑えるためにも、この部分のアミノ酸の変化に注意を払い、監視する必要がある」と話している。

[読売新聞 / 2007年10月05日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20071005i307.htm

イグ・ノーベル賞:化学賞に邦人女性 排泄物からバニラ香

2007年10月05日 | 創薬
 【ケンブリッジ(米マサチューセッツ州)和田浩明】人を笑わせ、考えさせて科学への興味を誘う研究などに毎年贈られる「イグ・ノーベル賞」の化学賞を日本人研究者の山本麻由さん(26)が受賞し、ハーバード大学で4日授賞式が行われた。日本人の同賞受賞は12件目。ウシの排泄物からバニラの香り成分「バニリン」を抽出した研究が対象。山本さんは「受賞は廃棄物の活用法を知ってもらえるよい機会。ただ、この方法で抽出したバニリンは食物には向かないかも」と語った。

 山本さんは国立国際医療センター研究所の研究員だった04年に今回受賞した抽出方法を開発した。牛糞1グラムに水4ミリリットルを加え200度で60分間加熱すると、1グラムあたり約50マイクログラム(マイクロは100万分の1)のバニリンが抽出できた。

 バニリンは樹木などの木質成分「リグニン」から生成するため、馬や山羊などの草食動物の排泄物も利用可能だという。抽出コストはバニラ豆を原材料にする方法に比べ「およそ半分」(山本さん)。シャンプーやロウソクの芳香添加物などの応用が考えられる。

 授賞式では76年のノーベル化学賞受賞者、ウィリアム・リプスコム氏から同賞の今年のテーマ「ニワトリ」のトロフィーが手渡された。また、山本さんの名が冠されたアイスクリームを壇上のノーベル賞学者らが試食する一幕もあった。

 「裏ノーベル賞」とも言われるイグ・ノーベル賞は米国の「ユーモア科学研究ジャーナル」誌の編集長、マーク・エイブラムス氏が91年に創設。これまで日本人が11件で受賞している。

 今年の受賞は10分野で▽平和賞(米空軍ライト研究所、敵兵同士を恋に陥らせ士気を削ぐ化学兵器の研究)▽言語学賞(スペイン、逆に話された日本語とオランダ語をラットが区別できないことを発見)▽経済学賞(台湾、銀行強盗捕捉装置の発明)など。

[毎日新聞 / 2007年10月05日]
http://mainichi.jp/photo/news/20071005k0000e040025000c.html


【イグ・ノーベル賞、「牛の糞からバニラ」で邦人女性が受賞】

ボストン──「笑えるとしか言いようがなく、しかも記憶に残り、人々を考えさせる業績」に贈られる年恒例のイグ・ノーベル賞の第17回授賞式が4日夜、米ハーバード大学サンダース・シアターで催され、牛の糞(ふん)からバニラ香料成分を抽出した日本の山本麻由さん(26)が化学賞を受賞した。


国立国際医療センター研究所に所属する山本さんが受賞した研究内容は「牛糞からバニラの芳香成分vanillinの抽出」。牛の糞ときいて、会場からはどよめきが起こった。壇上では、牛の糞から抽出した香料を使った「バニラ」アイスクリームが式に多数参加した本家の「ノーベル賞」受賞者に配られ、教授らは意を決した表情で口に運んでいた。


今年の授賞式のテーマは「チキン」。このテーマは、授賞者選考には関係ないものの、式典途中に演じられるミニ・オペラや、過去の受賞者のスピーチ、授賞トロフィーなどのモチーフとなった。


式典中の注意事項として、鶏の投げ込みが禁止されたほか、授賞式の風物詩となっている紙ヒコーキについては、「航空関連テロ」対策が強化されている昨今の情勢を踏まえ、飛ばすことが原則禁止となった。しかし、サンダース・シアター基準に準ずるものだけは投げ飛ばすのが許された。


毎年、壇上の紙ヒコーキを掃除する役目を担うのはノーベル賞受賞者のロイ・グラウバー教授。今年もすげ笠をかぶってほうきを手にした姿で登場、壇上で紙ヒコーキを待ち構え、喝さいを浴びた。


今年の受賞一覧は以下の通り。


○化学賞:「牛糞からバニラの芳香成分vanillinの抽出」 牛の糞からバニラ香料成分の抽出に成功した、国立国際医療センター 研究所の医療生態学研究部の山本麻由氏に授与。壇上では、この抽出した香料を使ったアイスクリームが歴代のノーベル賞受賞者に配られた。


○医学賞:「剣飲みとその副作用について」の研究で、英国グロスターシャー州の放射線医師ブライアン・ウィットコーム氏と、米国人協力者のダン・メイヤー氏に授与。世界的に有名な剣飲みのパーフォーマー、メイヤー氏が研究に協力し、3カ月間で約2000本の剣を飲んで、その際の生体反応について調査した。授賞式では、壇上でメイヤー氏が剣飲みの実演を行い、盛大な拍手を受けた。


○物理学賞:「シーツの皺(しわ)のつき方について」研究した米ハーバード大学のラクシミナラヤナン・マハデバン氏と南米チリのエンリケ・セルダ氏に授与。


○生物学賞:「寝床で一緒に眠り、ムズムズ感を引き起こすダニ、昆虫、クモ、シダ類、菌類の全統計調査」を実施したオランダのヨハンナ・ファン・ブロンズウィック博士に授与。


○言語学賞:「ラットは日本語の逆さ言葉とオランダ語の逆さ言葉を聞き分けられない」ことを示したバルセロナ大学の研究チームに授与。


○文学賞:「アルファベット順に並び替える際に、英語の定冠詞『the』によって引き起こされる混乱」について研究した、オーストラリア・ブルーマウンテンズのグレンダ・ブラウ氏に授与。


○平和賞:「同性愛爆弾」を開発した米空軍ライト研究所に授与。この化学兵器は、敵の兵士間に広く、同性愛の感情の芽生えさせるという。


○栄養学賞:「底がないスープ皿で自動的に給仕される場合における、人間の食欲の限界について」を研究した、コーネル大学のブライアン・ワンシンク氏に授与。


○経済学賞:「銀行強盗を捕らえるネットの開発」で特許を取得した、台湾のクオ・チェン・シェ氏に授与。しかし、シェ氏の行方は数年前から分かっておらず、司会者は同氏についての情報提供を呼び掛けた。


○航空学賞:「バイアグラに時差ぼけ解消の効果」があることを発見した、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスにあるキルメス国立大学の研究者、パトリシア・アゴスティーノ氏とサンティアゴ・プラノ氏に授与。両氏は今年、男性の勃起(ぼっき)不全治療薬「バイアグラ」が時差ぼけの解消に有効だとする研究結果を発表し、話題となった。

[cnn.co.jp / 2007年10月04日]
http://www.cnn.co.jp/science/CNN200710050006.html

「動かせて痛みなし」新麻酔薬の可能性=ハーバード大学

2007年10月04日 | 創薬
 手術した部分をすぐに動かせて、痛みは感じない――そんな新しいタイプの麻酔薬の開発につながる局所麻酔の方法を、米ハーバード大などのグループが見つけた。4日付英科学誌ネイチャーに発表する。

 現在の局所麻酔は痛みを感じる神経だけでなく、運動神経などすべての神経の働きを抑えてしまう。体を動かしたり温度を感じたりできないのが難点だった。

 グループは、痛みを感じる神経細胞の多くに、唐辛子の主成分「カプサイシン」を受け止めるたんぱく質があることに注目。このたんぱく質にカプサイシンがくっつくと、細胞膜に穴をあけたような構造になる。グループは、この穴を通して細胞に入り込み、神経細胞の興奮を抑えることができる分子を見つけた。

 ラットの足に、カプサイシンとこの分子を注射すると、痛みを感じなくなったが、運動神経は正常で足を動かし続けることができた。

 生理学研究所の富永真琴教授は「臨床応用は今後の課題だが、まったく新しい選択的な局所麻酔薬をつくる可能性を開く成果だ」と話している。

[朝日新聞 / 2007年10月04日]
http://www.asahi.com/science/update/1003/TKY200710030347.html

「RNA干渉」でがん増殖抑制、マウス実験で成功=東京大学医科学研究所

2007年10月03日 | 遺伝子組替マウス
 がんの固まりに、がん遺伝子の働きを抑え込む遺伝物質を注射し、がんの増殖を抑えることに、東大医科学研究所ヒトゲノム解析センターの中村祐輔教授らのチームが、動物実験で成功した。

 正常な細胞にはほとんど影響しないため、副作用が少ないがん治療法の開発に向けた研究として注目される。横浜市で開催中の日本癌(がん)学会で3日、発表された。

 実験で使われた手法は「RNA干渉」と呼ばれ、がん遺伝子の情報をがん細胞中で運ぶRNAという物質の働きを、注入した別のRNAで止めてしまう。特定の遺伝子の働きを抑えるこの技術は、がんや感染症治療などへの応用が試みられている。中村教授らは、マウスの皮膚に人間の肺がん細胞を移植し、成長したがんの固まりに、この遺伝子の働きだけを抑える人工的に作ったRNAを注射した。その結果、RNAを注射したマウスでは、何もしなかったマウスに比べ、がんの増殖を約半分に抑えることに成功したほか、がん細胞の一部が死んでいることを確認した。

[読売新聞 / 2007年10月03日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20071003i508.htm

肥満のままでも糖尿病改善 特定酵素の欠損が鍵=筑波大学

2007年10月01日 | 遺伝子組替マウス
 肥満でも、ダイエットしないで糖尿病やメタボリック症候群を治療できる-。そんな夢のような方法を島野仁筑波大准教授(内分泌代謝・糖尿病内科)らの研究グループがマウスの実験で突き止め、1日付のネイチャーメディシン(電子版)に発表した。

 糖尿病は、膵臓が分泌するインスリンが不足したり効きが悪くなったりして、細胞が血液中のブドウ糖を取り込まなくなる。今回、ある特定の酵素を欠損させることでインスリンの効きが悪くなる状態の「インスリン抵抗性」を改善することに成功した。

 島野准教授は「太り放題でも病気にならない治療薬ができるかもしれない。しかし、あくまで生活習慣病には食事や運動の改善が1番で、それがどうしても続かない患者への手段だ」と話した。

[東京新聞(共同通信発) / 2007年10月01日]
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007093001000637.html