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マングース、水銀解毒? 高濃度蓄積も平気 沖縄・奄美=東京農工大学

2007年10月14日 | 生きもの色々
 沖縄や奄美大島で野生化した外来種ジャワマングースの体内に、高い濃度の水銀が蓄積していることが、東京農工大大学院の渡辺泉・准教授(環境毒性学)のグループの研究でわかった。水銀を高濃度蓄積するクジラなどの海生哺乳(ほにゅう)類に近いレベルだが、汚染源は謎。中毒症状はなく、渡辺准教授は「両島のマングースには、有害なメチル水銀を無毒化する機構が備わっているようだ。野生の陸生哺乳類では他に報告例はない」と話す。

 沖縄と奄美のジャワマングースは、ハブ退治などのために人間が野生に放した。ところが、ヤンバルクイナやアマミノクロウサギなど島固有の希少種を捕食し、生息域を拡大。生態系への影響を防ぐため環境省は05年、マングースを特定外来生物に指定して防除事業を展開している。

 渡辺准教授らは、同事業で捕獲した奄美大島の57匹と沖縄の10匹を分析。最も蓄積する肝臓の総水銀濃度は、奄美が最高213ppm(平均21.0ppm)、沖縄が同112ppm(同23.1ppm)に上った(濃度は1グラムあたりの湿重量)。

 魚をえさにするハクジラ類などの海生哺乳類は、食物連鎖で水銀が濃縮し、成体で肝臓に数十から数百ppmレベルの総水銀をため込むという。このうち毒性の強いメチル水銀は、肝臓で元素の一つセレンと相互作用を起こし、毒性の低い無機水銀化合物に変わることが知られている。

 国内の陸生哺乳類の場合、せいぜい数十ppbレベル(1ppbは1ppmの1000分の1)と低く、海生哺乳類のように無毒化はできない。特に人間では、メチル水銀が血液脳関門を突破して脳細胞を破壊し、水俣病を引き起こした。マングースの水銀濃度は、人間なら水俣病にかかってもおかしくないレベルだという。

 両島のマングースは魚を食べない。クマネズミなど島内の他の陸上哺乳類からは高濃度の水銀は見つかっておらず、汚染源の謎は深まるばかり。

 研究グループでは、両島のマングースは少しずつ取り込んだメチル水銀を排泄(はいせつ)せず、肝臓で無毒化しているとみる。今後、解毒作用を担う遺伝子を特定し、マングースだけに効く駆除薬や、メチル水銀が人間の脳に入る前に解毒する薬品開発に結びつけたい考え。

 渡辺准教授は「世界中で水銀汚染が深刻。解毒機構を解明し、人間への応用につなげたい」と話している。

[朝日新聞 / 2007年10月14日]
http://www.asahi.com/science/update/1014/SEB200710140004.html


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