ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

「1リットルの涙」の難病、遺伝子治療で改善=群馬大学

2008年03月14日 | 医療技術
 群馬大大学院医学系研究科の平井宏和教授(43)は14日、難病の脊髄(せきずい)小脳変性症を、遺伝子治療で改善するマウス実験に成功したと発表した。

 研究成果は、専門誌「欧州分子生物学機構機関誌」のネット版で公開される。この病気にかかると、脊髄や小脳の神経細胞が徐々に破壊され、歩行などが困難になる。根治療法は見つかっていない。平井教授は今後、サルを使った実験に取り組み、患者への応用を探るという。

 平井教授は3年前に、HIVウイルスから病原性を除去したベクター(遺伝子の運び屋)を作製。昨春、このベクターに「CRAG」と呼ばれる治療用の遺伝子を組み込んで、同変性症を発症させた生後21~25日のマウスの小脳に注入したところ、よろよろしたり転んだりしていたマウスが約2か月後には正常に歩けるほど回復したという。

 同変性症は、遺伝が原因の場合、神経細胞内に毒性のあるたんぱく質の塊が蓄積して発症すると考えられている。「CRAG」には塊を溶かす働きがあることが、培養細胞を使った実験ですでに確認されていた。しかし、生体細胞に注入する方法が確立されておらず、今回の研究で初めて、生体での効果が確認された。

 平井教授の話「サルでの実験は治療用遺伝子の量を増やせばうまくいくと思う。ベクターの安全性が確認されれば、人の臨床試験も行いたい」

 ◆脊髄小脳変性症◆ 患者の4割は遺伝性とされるが、それ以外は原因不明の神経疾患。歩行がふらつく、話すとき舌がもつれるなどの運動失調が主な症状で10、20年という長い期間をかけて進行する。国内の患者は約2万人。実在の女性患者の日記を基にした「1リットルの涙」はテレビドラマや映画にもなった。

[読売新聞 / 2008年03月14日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080314-OYT1T00499.htm

ES細胞使って腎臓・膵臓再生=東京大学

2008年03月14日 | 遺伝子組替マウス
 東京大の中内啓光教授のグループが万能細胞の一種である胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を使い、腎臓や膵臓(すい・ぞう)をつくる遺伝子を欠いたマウスの受精卵から、こうした臓器をもつマウスをつくることに成功した。受精卵にES細胞を注入したら臓器がまるごと再生された。将来の人間の臓器づくりの手法開発の足がかりになりそうだ。13日からの日本再生医療学会で発表する。

 中内教授らは遺伝子操作で腎臓がないマウスをつくった。このマウスの受精卵が細胞分裂を始めた初期の段階で、正常なマウスのES細胞を注入し、子宮に戻した。

 すると、生まれたマウスにはちゃんと腎臓ができていた。調べたら、注入したES細胞から腎臓ができたことがわかった。この腎臓が機能して、尿がつくられ、ぼうこうにたまっていくことも確かめた。

 同様の手法で膵臓も再生できた。血糖値の変化から、膵臓もほぼ正常に働いているとみられた。

 この成果を受けて、グループは新年度、サルの膵臓をブタの体内で再生させる研究を始める。

 中内教授は「狙った臓器を、体の中で発生の過程をたどって再生できたことが大きい。臨床応用につながるよう研究を進めていきたい」と話す。

[朝日新聞 / 2008年03月13日]
http://www.asahi.com/science/update/0312/TKY200803120249.html

幹細胞を移植し心筋再生、ブタを使った実験に成功=京都大学

2008年03月14日 | 再生医療
 人の心筋にわずかに含まれる幹細胞を取り出し、心筋梗塞(こうそく)を起こしたブタに移植して心臓の機能の一部を回復させる実験に、京都大の王英正准教授(心筋再生医学)のチームが成功した。名古屋市で開催の日本再生医療学会で14日、発表する。

 チームはマウスで同様の実験をしているが、今回は手法を改良し、人により近い条件で成功させた。臨床応用では患者本人の幹細胞を移植に使うのを想定。王准教授は「最も実用に近く、安全な手法だ」と話している。

 王准教授らは平成17年、心筋組織に高い能力を持つ幹細胞が1万分の1の割合で含まれているのを発見している。

 今回は患者1人から提供を受けた心筋組織から幹細胞を採取して1カ月かけて培養。血流を妨げて心筋梗塞を引き起こしたブタの患部に幹細胞を注射後、血管や細胞の成長を促す薬剤を含むゼラチンで覆った。4週間後に調べると、患部面積の8%で心筋が再生し、心臓の収縮機能が10~12%回復したという。

 王准教授は「iPS細胞や胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を使う手法も考えられるが、現時点では安全性などに課題が多い」と指摘している。
 
[産経ニュース / 2008年03月13日]
http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/080313/acd0803132329012-n1.htm

難病「ALS」の進行を抑制=東北大学

2008年03月14日 | ラット
 運動神経が死んで全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病、筋委縮性側索硬化症(ALS)になったラットの脊髄(せきずい)に、神経細胞を増やす働きがある物質を投与し病気の進行を抑える実験に、青木正志東北大講師(神経内科)らの研究チームが13日までに成功した。名古屋市で開催の日本再生医療学会で14日、発表する。

 サルの実験でも同様の効果が出始めており、引き続き効果と安全性が確認されれば、少数の患者を対象にした臨床試験を来春にも始める計画。

 チームは、神経を含む多様な細胞を増やす働きがある肝細胞増殖因子(HGF)という物質の働きで、脊髄の細胞死を抑制したり、神経のもとになる「前駆細胞」が神経に成長するのを促進するのではないかとみている。

[産経ニュース / 2008年03月13日]
http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/080313/acd0803130853004-n1.htm