ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

夜行性・昼行性など活動リズム、脳内ホルモンが関与=早稲田大学

2008年03月02日 | 脳、神経
 動物の一日の活動リズムを、新しく発見された脳ホルモンが調節する仕組みを、早稲田大の筒井和義教授(脳科学)らのグループが突き止めた。

 夜行性といった動物の生態を解き明かす成果として注目を集めそうだ。米神経科学会誌に発表した。

 筒井教授らは、動物の動きを活発にするホルモンをイモリの脳から発見。ウズラの脳でも見つけた。

 ウズラは昼行性で、明るくなると動きだし、暗くなると休む。このホルモンの脳内の量を調べると、日中は増加し、夜には減少していた。また、オスはメスと比べて活発に活動するが、オスの方がメスよりたくさん分泌されていた。

 さらに詳しく分析すると、夜に分泌され、眠りを促すホルモンのメラトニンが、このホルモンの合成を抑制していることもわかった。筒井教授は「脳内ホルモンのメカニズムは、動物の生態に深くかかわっていることが明らかになった」としている。

[読売新聞 / 2008年03月02日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080302-OYT1T00038.htm

たんぱく質「ペリオスチン」:研究最前線 心筋を修復し、がん増殖を抑制?~毎日新聞コラム

2008年03月02日 | 再生医療
 ◇新治療法開発に期待

 日本人研究者が発見し、骨の再生に関係すると考えられてきたたんぱく質の「ペリオスチン」。急性心筋梗塞(こうそく)後の心筋の修復に重要な役割を果たしていることが分かった。がんの増殖抑制にもかかわっているとみられ、注目を集めている。ペリオスチン研究の最前線を探った。【河内敏康】

 ペリオスチンは99年、東京工業大の工藤明教授(細胞生物学)が発見した。重力や荷重による刺激を受けると骨を再生する仕組みで、重要な役割を果たすと考えられているたんぱく質だ。

 工藤教授らのチームは研究を続け05年、ヒトのペリオスチン抗体を作成。東京大医学部病理学教室と共同でヒトの病理組織を網羅的に調べたところ、ヒトやマウスの心筋梗塞を起こした組織にもペリオスチンが作られていることを見つけた。

 国内の急性心筋梗塞発症数は年間約15万人、そのうち約3割が死亡していると推定されている。回復している患者もいるが、心筋梗塞を起こした組織が、どのように修復されるかはなぞだった。

 研究チームは、ペリオスチンが体内で作られないように遺伝子操作したマウスで、冠動脈を結び人工的に心筋梗塞を起こさせた。その結果、心破裂を起こして91匹中62匹(約68%)が死んだ。普通のマウスで死んだのは80匹中25匹(約31%)で、30ポイント以上も差が開いた。

 さらに、梗塞を起こした部位を詳細に調べたところ、ペリオスチン欠如マウスは心筋細胞修復に重要なコラーゲンを作る線維芽細胞の数が少ないことを突き止めた。ペリオスチンを作る遺伝子を欠如マウスに入れると、心破裂率が普通のマウスとほぼ同じ割合にまで低下した。

 工藤教授は「急性心筋梗塞後の心筋修復のメカニズムを知ることで、新しい治療法の開発につながる可能性がある」と期待する。

 ◇米国では競争激化

 ペリオスチンをめぐる研究は、米国を中心に競争が激しくなっている。心筋細胞は線維芽細胞が分化してできるが、心臓の再生医療の第一人者、米ハーバード大ボストン小児病院のマーク・キーティング教授のチームは、ラットの心筋細胞にペリオスチンをふりかけると心筋細胞が増えることを確認し、昨年8月に米医学誌「ネイチャー・メディシン」に掲載された。

 米シンシナティ大小児病院のジェフェリー・モルケンティン教授らも、ペリオスチン欠如マウスで心破裂が起きやすくなることを発見。米医学誌「サーキュレーション・リサーチ」が昨年6月、成果を掲載した。ペリオスチンと心臓には深い関係があるようだ。

 ◇骨の再生にも関与か

 ペリオスチンは、がんの増殖抑制にも関与しているとみられる。工藤教授のチームが、ペリオスチン欠如マウスに、がん細胞を移植したところ、普通のマウスと比べ、がん細胞が大量に増殖した。ペリオスチンがあると、がんが正常細胞を圧迫する時の刺激で、線維芽細胞が被膜を作るため、がんの成長を抑制するとみられる。

 ペリオスチンは、筋肉に加わる物理的な力に応じて生じるたんぱく質と考えられていた。歯と骨の間にある歯根膜などで多く発現するからだ。工藤教授らは06年、ペリオスチン欠如マウスを詳細に観察。マウスの切歯は、すれたりして短くなると再生して元の長さまで伸びるが、ペリオスチン欠如によって歯根膜がうまく形成できず、切歯が再生できなくなってしまった。

 骨の再生メカニズムとの関係は、人間の長期宇宙滞在の可能性や寝たきり状態の改善などから注目される。慶応大の須田年生教授(幹細胞生物学)は「重力など機械的な刺激が少ないと、人間は骨量が減り、骨が細くなってしまう。ペリオスチンは骨の再生に関係している可能性が大きく、ペリオスチン研究による骨の再生メカニズムの解明が、こうした課題の克服に役立つと考えられる」と期待する。

[毎日新聞 / 2008年03月02日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20080302ddm016040088000c.html

iPS細胞から視細胞、マウスで成功=理化学研究所、京都大学

2008年03月02日 | 再生医療
 マウスの皮膚でつくった人工多能性幹細胞(iPS細胞)から、網膜にあって光を感じる視細胞をつくることに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の高橋政代チームリーダーと京都大の山中伸弥教授らが2日までに成功した。

 人のiPS細胞でも同様の実験を開始。患者本人の細胞を使えば、移植しても拒絶反応が起きないメリットが期待できる。高橋リーダーは「網膜色素変性症などの再生医療実現につながる一歩だ」としている。

 13日から名古屋市で開かれる日本再生医療学会で発表する。

 理研はこれまで、人の胚性幹細胞(ES細胞)から視細胞を効率良くつくるのに成功している。今回は山中教授が作成したマウスのiPS細胞を使い、同様の手法で網膜の前駆細胞をつくり、さらに視細胞に分化させるのに成功した。

 他人の受精卵からつくられるES細胞と違い、iPS細胞には患者と同じ遺伝子を持たせることが可能で、移植時の拒絶反応が避けられる。高橋リーダーは「分化能力の点でiPS細胞とES細胞は似通っている。次は人のiPS細胞から網膜細胞づくりを試したい」としている。

[北海道新聞 / 2008年03月02日]
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/environment/79238.html

実験用マーモセット、金武町に生産施設=沖縄科学技術大学院大学

2008年03月02日 | 生命&倫理
 【金武】製薬会社や研究機関が投薬効果などを試す実験に使用する霊長類マーモセットの世界最大の飼育生産施設の建設計画が金武町内で検討されていることが29日、分かった。約1万平方メートルの町有地に国の補助金などを活用して町営で施設を整備し、慶応義塾大学医学部や実験動物中央研究所(神奈川県)の研究者らが繁殖や開発、研究を進める方針。恩納村で建設が進む沖縄科学技術大学院大学や金武町が米軍ギンバル訓練場跡地利用計画で整備を予定している先端医療施設との連携を目指す。
 マーモセットはヒトと遺伝子が類似し薬効評価試験などで用いられる実験動物として需要が高く、日本国内では1匹30万―40万円の市場価格で取引されているという。野生では亜熱帯地域に生息するため、日本国内では沖縄が最も飼育に適しているという。
 町や計画書によると町内に整備を予定している施設では無菌状態による室内飼育体制で約2000匹を飼育する。1匹当たり年間4―6匹出産し、年間1500匹の販売が可能となれば4億5000万円以上の収益が出る予定。
 町は昨年6月ごろから施設建設に向けて調査を進めており、町内から新規雇用25人を見込み、飼育には県産飼料を使用することで地元への経済効果を期待する。町は建設費用は北部振興策事業の活用を検討しており、2008年度の調査事業の採択を目指し、準備を進めている。
 施設の運営主体は実験動物中央研究所の関連会社で実験動物の生産販売などを手掛ける日本クレア(東京都)に委託する方向で検討している。
 慶応義塾大の塾監局の原田悟参事によると、米国で1万匹以上、欧州と日本でそれぞれ2000匹以上の市場(年間)が期待でき、金武町の施設を世界市場に向けたマーモセットの一大飼育拠点として位置付けている。
 伊芸達博副町長は「実現すれば、ギンバル跡地での先端医療施設との連携で相乗効果が上がるのではないか」と期待を寄せた。(慶田城七瀬)

[琉球新報 2008年03月02日]
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-31829-storytopic-52.html