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医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

インスリン生産細胞保護分子を特定=東北大学

2008年03月05日 | 生活習慣病
 東北大学の研究チームが、血糖を下げるホルモン・インスリンの生産細胞(β細胞)を保護する分子を特定した。国内に多い2型糖尿病患者の場合、長期間の高血糖にさらされたβ細胞が“過労死”して徐々に減少し、症状が悪化する。今回の成果は細胞過労死を抑制し、糖尿病の悪化を防ぐ新しい治療法につながる可能性が期待される。

 大学院医学系研究科の岡芳知教授と石原寿光講師(分子代謝病態学)らは、2型糖尿病を発症させたネズミの膵島(ランゲルハンス島)にあるβ細胞で、これまで役割のよく分かっていなかった4E―BP1という分子(たんぱく質)が増えることを発見した。

 高血糖でインスリンの大量生産を続ける過労状態になると、β細胞は内部にごみがたまり死んでしまう。しかし、通常は過労ストレスがかかると、β細胞の休眠遺伝子が目覚めて4E―BP1を増加させ、細胞死しないようにブレーキをかけることを突き止めた。

 国内では、糖尿病患者と予備軍は、計1620万人を超えると推計される。その大半を占める2型糖尿病では、インスリンが生産されても、血糖が十分に下がらず、さらに生産が促される悪循環が続き、最終的に膵島の機能が失われる。研究チームは今後、新薬開発に役立てられるように、この分子の詳細な立体構造と、ブレーキ部分の仕組みの解明を目指す。今回の成果は、米科学誌電子版に掲載される。

 石原講師は「インスリン生産を促すことを目的とした既存薬は、過労状態のβ細胞に負担をかけてしまう。逆にβ細胞を保護できれば、長期的な血糖管理に新しい道が開ける可能性がある」と話している。

[読売新聞 / 2008年03月05日]
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/miyagi/news/20080305-OYT8T00316.htm

4億年前に入り込んだ遺伝情報、哺乳類の脳生成に深く関係=東京工業大学、理化学研究所

2008年03月05日 | 遺伝子
 何億年も前に脊椎(せきつい)動物のゲノム(全遺伝情報)の中に入り込んだ特殊な遺伝情報が、哺乳(ほにゅう)類特有の発達した脳を生み出すのに深く関係していることが東工大や理化学研究所などの共同研究でわかった。

 外から入り込んだ遺伝情報が、大きな進化を起こす引き金になった可能性を示す初めての証拠で、哺乳類誕生の謎を解明する手がかりとして注目されている。米科学アカデミー紀要に掲載された。

 研究チームは、進化の過程でゲノムに入り込み、その後は抜け落ちずに子孫に伝わる「レトロポゾン」という短い配列の遺伝情報を手がかりに、様々な動物のゲノムを調査。爬虫(はちゅう)類、鳥類、哺乳類に、特定のレトロポゾンが共通に存在し、哺乳類でのみ、脳組織の発達を促す役割を担っていることを突き止めた。

 このレトロポゾンが関係している脳組織は、ねずみのひげやもぐらの鼻先など哺乳類特有の感覚器官に反応する部分で、爬虫類や鳥類にはない構造をしている。レトロポゾンが入り込むことでゲノム上の領域が刺激され、脳組織の位置などを決める遺伝子が活性化されることがわかった。

 化石などから推定して、レトロポゾンは、約4億年前に脊椎動物のゲノムに入り込み、約2億年前に哺乳類の共通祖先の中で、高度な脳を発達させる機能を獲得したと見られている。

 同大大学院生命理工学研究科の岡田典弘教授は「遺伝子の研究では、突然変異の積み重ねなどの小進化に関係する成果は多いが、外から入る遺伝子で、体の構造に大きな変化をもたらすような大進化に関係する成果はなかった。進化の新しい研究手法になる」としている。

[読売新聞 / 2008年03月05日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080304-OYT1T00813.htm