goo blog サービス終了のお知らせ 

ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

ノーベル賞前哨戦、米ラスカー賞に遠藤氏 臨床研究部門=東京農工大学

2008年09月14日 | 創薬
 血液中のコレステロールを下げる特効薬のもとになる物質「スタチン」を発見した遠藤章・東京農工大名誉教授(74)が、米国で最も権威がある医学賞「ラスカー賞」の臨床医学部門の受賞者に選ばれた。米ラスカー財団が13日(日本時間14日)発表した。授賞式は26日、ニューヨークで開かれる。

 遠藤さんは、東北大を卒業後、製薬会社「三共」に入社した。カビを中心に6千種類の微生物を調べ、73年、コメの青カビが作り出すスタチンを初めて発見した。動物実験で血中のコレステロールの値を下げることを確認した。スタチンは、安全性確認の段階で何度も開発中止の危機に見舞われたが、87年に米国の製薬会社メルクがスタチンの商品化に成功した。その後、三共なども続いた。

 現在では、高脂血症や心筋梗塞(こうそく)、脳卒中などの治療・予防薬として世界100カ国以上で販売され、3千万人が服用し、世界で最も使用されている薬といわれる。

 日本人の受賞は、花房秀三郎・米ロックフェラー大名誉教授、利根川進・米マサチューセッツ工科大教授らに続いて5人目だが、臨床医学部門では初めて。ノーベル賞にも近く、利根川氏はラスカー賞の基礎医学部門の受賞者に選ばれた87年にノーベル医学・生理学賞を受賞している。

 遠藤さんは、「夢がかなってうれしい。野口英世やペニシリンを発見したフレミングのように、世の中に一つは役に立つことをしたいと思ってきた。若い人の夢を広げられるように、80歳までは現役でがんばりたい」と話した。(竹石涼子)

[朝日新聞 2008年09月14日]
http://www.asahi.com/science/update/0914/TKY200809130230.html

生ごみから抗がん物質 能美のバイオ技研など発見 微生物が生成、新薬に=バイオ技研工業、富山県立大学

2008年08月26日 | 創薬
 バイオ技研工業(能美市)と富山県立大工学部生物工学科の五十嵐康弘准教授ら研究グループは二十五日までに、抗がん作用のある新しい化合物を作り出す微生物を生ごみ処理槽の中から発見し、新薬開発を目指して国際特許を出願した。この微生物は生ごみを発酵分解しながら、がんの転移や活性を抑える化合物を生成していた。動物実験で毒性が非常に弱いことも分かり、医薬品としての用途が期待される。
 堆肥(たいひ)中の微生物に環境や農業以外の分野から着目した研究は珍しい。

 この微生物は放線菌の仲間で、バイオ技研工業が開発し、能美市内で稼働する有機ごみの処理システムで作られた堆肥から見つかった。

 微生物が作り出す複数の物質を調べたところ、いずれもがんの転移を抑制する作用と、細胞のがん化や炎症に関係する活性酸素を消去する作用を持つまったく新しい化合物であることが分かった。

 微生物に由来する医薬品としては、青カビから発見された「ペニシリン」や筑波山の土壌から見つかった「タクロリムス」などが有名だが、五十嵐准教授によると、堆肥はほとんど研究されてこなかったという。

 研究は生ごみ分解微生物の新たな利用法を探っていたバイオ技研工業の宮野内浩治社長が同准教授に依頼して昨年六月に始まった。短期間での成果に五十嵐准教授は「身近な生ごみの中にこんな面白い微生物がいるとは思わなかった」と話し、宮野内社長は「生ごみの発酵処理は環境に優しいだけでなく、有用な物質が眠る『宝の山』を作る技術だ」と自信を深めている。

[北国新聞 2008年08月26日]
http://www.hokkoku.co.jp/_today/H20080826102.htm

がん:抑制の化合物開発 特許申請、すい臓用新薬として期待=金沢大学

2008年07月15日 | 創薬
 がんの中でも治療が難しいすい臓がんなどに見られるがん細胞の増殖を抑え、死滅させる新たな化合物の開発に、金沢大の研究グループが成功。6月19日に特許申請した。すい臓がんの新たな抗がん剤創薬につながると期待される。試験管レベルだが、今後、動物実験で安全性などを確かめる。研究成果は10月に名古屋市である日本癌学会で発表する。【野上哲】
 向田直史・がん研究所教授(腫瘍(しゅよう)学)と石橋弘行・医薬保健研究域薬学系教授(有機化学)らの研究。「学部」の垣根を超えた、学内での“医薬連携”が成果に結びついた。
 向田教授らは03年に発見した、マウスの肝臓がんで特異的に働くたんぱく質「Pim―3」が、ヒトのすい臓、肝臓などのがんでも働いていることを確認。これが、がん細胞の増殖を促すと同時に、不要な細胞を死に至らせるアポトーシスという機能を妨げる働きがあることを突き止めた。
 一方、石橋教授らは「Pim―3」が働くメカニズムや分子構造を踏まえ、その働きを阻む物質を人工的に合成することに成功。実際に試験管内でヒトのすい臓がんの細胞などに加えたところ、死滅することを確認したという。
 向田教授は「特にすい臓は体の深部にあり、臓器自体も小さく、外科手術が難しい。新しい抗がん剤が求められている」と指摘。「新開発の化合物は特定のたんぱく質に働き、副作用も少ないと考えられる。安全性などの課題をクリアしていきたい」と話している。

[毎日新聞/Yahoo!ニュース 2008年07月15日]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080715-00000265-mailo-l17

積水メディカル、新薬候補検証で米市場に進出

2008年07月10日 | 創薬
 積水化学工業の医療関連子会社、積水メディカル(東京・中央)は9日、新薬候補物質の試験会社、米ゼノテック(カンザス州)を月内に買収すると発表した。買収金額は数十億円程度とみられ、動物や細胞を使って新薬候補物質の効き目を検証するサービスを米国で展開する。積水は同分野の国内首位。買収を通じて米国市場に本格参入する。
 積水が手掛けるのは臨床試験(治験)でヒトへの投与を始める前に行う薬物動態試験。新薬候補として見込める化合物の効き目を実験動物や細胞を使って評価する。積水は2006年に第一化学薬品を買収し同事業に進出。マウスを使う試験に強く、国内売上高は08年3月期で年39億円で国内首位という。


[NIKKEI NET/日本経済新聞 2008年07月10日]
http://health.nikkei.co.jp/news/top/index.cfm?i=2008070908281h1

インフルエンザ新薬に道?ウイルス増殖の仕組み発見=東京大学医科学研究所

2008年07月10日 | 創薬
 インフルエンザウイルスが人の細胞に感染して増えるために欠かせない複数のたんぱく質を、東京大学医科学研究所の河岡義裕教授(ウイルス感染)らのグループが突き止めた。新薬の開発に道を開く成果として注目されそうだ。10日付の英科学誌ネイチャー(電子版)に発表した。

 ウイルスは感染した細胞がもともと持っているたんぱく質を利用して増殖している。しかし、インフルエンザの場合、どんなたんぱく質がかかわっているかはほとんどわかっていなかった。

 ショウジョウバエの細胞に感染するように遺伝子を改変したインフルエンザウイルスを作製。細胞のどのたんぱく質が増殖にかかわっているかを調べた。

 すると、人と共通して持っているたんぱく質のうち、エネルギーを生み出したり、細胞の呼吸を助けたり、リボ核酸(RNA)の輸送にかかわったりする三つのたんぱく質の働きを抑えると、ウイルスが増殖できないことがわかった。

 現在、インフルエンザの治療薬として使われているタミフルは、すでに薬が効かない耐性ウイルスが報告されている。河岡教授は「今回特定したたんぱく質とウイルスの相互作用を抑えることができれば、新しい薬や治療法の開発につながる」と話している。

[朝日新聞 2008年07月10日]
http://www.asahi.com/science/update/0710/TKY200807100163.html

ファイザー:新薬研究開発のベンチャー企業設立

2008年07月03日 | 創薬
 米製薬大手ファイザーの日本法人は3日、閉鎖を決めた中央研究所(愛知県武豊町)の従業員が独立し、新薬の研究開発を行うベンチャー企業「ラクオリア創薬」を1日に設立したと発表した。製薬会社の研究開発組織が独立して新会社をスタートさせるのは国内初という。ベンチャーキャピタルやファイザーなどが計111億円を出資。ファイザーから15の新薬候補物質の知的財産権を譲り受け、毎年二つの新薬候補物質の創出を目指す。同研究所は会社の業績低迷で昨年1月に閉鎖を決めていた。

[毎日新聞 2008年07月03日]
http://mainichi.jp/select/biz/news/20080704k0000m020099000c.html



ラクオリア創薬株式会社
ファイザー株式会社


旧ファイザー中央研究所、ファイザー社より独立
ラクオリア創薬株式会社としてスタート

米国ファイザー社の研究開発グループの一翼を担ってきた愛知県の中央研究所はこのたび、日欧の投資会社の出資とファイザー社の支援により、独立した新たな研究開発型ベンチャー企業であるラクオリア創薬株式会社(RaQualia Pharma Inc.)として7月1日に事業を開始いたしましたのでご報告いたします。

新会社は、自ら新薬の化合物を開発する創薬ベンチャー企業であり、世界において最も革新的な新薬を生み出すグローバル研究開発型ライフサイエンス企業を目指します。ラクオリア創薬株式会社の従業員は70人です。本社は、旧ファイザー(株)中央研究所が所在した愛知県知多郡武豊町に置き、既存の研究施設や最先端研究機器を活用いたします。

新会社は、当初3年間は、探索研究と前臨床開発研究を中心にプロジェクトを推進し、4~5年目にはPOC(Proof Of Concept:臨床効果の検証)までの臨床試験を実施できる組織へと事業の拡大を図ります。新会社は、今後も市場成長が見込まれる「疼痛」と「消化管疾患」の2つの治療領域に関する革新的な創薬研究をビジネスの中核とするとともに、米国ファイザー社との契約に基づいて取得した知的財産を駆使して、製薬企業向けのライセンス供与の展開を積極的に行っていきます。

新会社はまず、疼痛疾患と消化管疾患の領域において6つの創薬研究プログラムを推進し、2008年度から継続して臨床開発候補品を創出し、開発ステージに進めていく計画です。開発ステージのパイプラインには、前臨床から臨床第2相試験までの有望な6つのグローバル開発化合物、及び、海外で既に上市あるいは申請済の3剤の国内開発販売権を持ち、豊富な導出機会があります。また、世界中の製薬企業、大学、公的研究機関やベンチャー企業と積極的に提携・共同研究を進めていきます。このようにオープンな形でのネットワークとバイオテクノロジーのイノベーションを推し進め、患者さんにとって有益な新薬候補と薬物標的の発見に寄与していきます。

会社概要
社名:ラクオリア創薬株式会社(RaQualia Pharma Inc.)
代表取締役社長&CEO:長久厚(ながひさ・あつし)
本社:愛知県知多郡武豊町字5号地2番地
従業員:70名(2008年7月1日現在)
事業内容:医薬品の研究開発、医薬品及び臨床開発候補品に関わる基盤技術の知的財産の販売及び使用許諾
資本金:1000万円(2008年7月1日現在)
主な出資予定者:
(1)エヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズ株式会社
(2)コラーキャピタル(Coller Capital)(英国)
(3)ファイザー株式会社

ビジョン:私たちは、創薬を通じて健康と幸せに貢献し、人々の心に陽をもたらします
経営理念:私たちは「Life(生命、生きるもの、人生)」の尊さを最優先に考え、サイエンスとテクノロジーを追求することで、社会に貢献していく集団です
文化:私たち一人ひとりは「Life(生涯)」を通じて、常に新たな価値を創造していく「Innovator=革新者」であり続けます
コーポレートスローガン:innovators for life

ラクオリア創薬の特徴と知的財産
(1)資産
多くのベンチャー企業が、初期の研究段階にあるごく限られた数の化合物、あるいは単一のターゲットや適応疾患を基盤としてスタートします。ラクオリアは、疼痛疾患と消化管疾患の領域において、継続的な生産性をもたらす複数の化合物と多様なターゲットを有しており、それらの多くはブロックバスターとなりえる製品を生み出す可能性を持っています。

またラクオリアは、旧ファイザー中央研究所時代に自ら開発した複数のプログラム「新薬の分子ターゲット(分子標的)」を保有しており、事業開始日から効率的な研究を行うことができます。

(2)IOCN(Integrated, Open Collaboration Network)ビジネスモデル
IOCNは、ラクオリアの根幹となるビジネスモデルで、社内外コラボレーションを最大限活用することにより、創薬イノベーションを促進する新しいプロセス・モデルといえます。IOCNは、大学やバイオベンチャー企業、公的研究機関、製薬会社と連携し、お互いに長期的な信頼関係に基づいてオープンな情報交換やノウハウの開示、相互学習に近い共同研究、柔軟なコラボレーションを促進させるネットワークです。

新薬開発におけるコラボレーションや提携は、1対1の限られたコラボレーションや提携であったり、自社の知的財産を守ろうとする意識が強く働くために情報の共有が阻害されたりして、多くの英知で優れた価値を生みだそうとする良い関係の構築には至っていないのが現状です。IOCNビジネスモデルでは、このモデルを実現することで1社では実現することが難しい革新的な薬の開発や社会的価値の創造、そしてラクオリアの最終目標である人々の生活を豊かにすることができるものと確信しています。

多くの企業は、新規にネットワークを作り上げなければなりません。ラクオリアは、過去数十年のファイザーで構築した多彩な国内外のネットワークを受け継いでおり、これはラクオリアの貴重な財産となっています。

(3)フラットな組織
組織は、極めて簡潔でマネジメントは一階層だけで構成されています。これは、社員間のオープンなコミュニケーションの促進、社風の強化、迅速な意思決定と行動、効率的な情報伝達、透明性と責任の明確化、これらすべてが競争優位につながっていきます。

(4)プロジェクト中心の組織
ラクオリアのオペレーションはプロジェクト単位で動くため、プロジェクト・リーダーが各部門長との相談の上、あらゆる専門の研究者や間接部門のスタッフを活用することができます。リーダーは、研究開発、臨床開発、あるいはビジネス開発の各ゴールを達成するために、集まった社員をその責任においてリードします。リーダーにはプロジェクトを遂行するための権限と責任が付与されていますが、メンバー間の上司という立場ではなく、あくまでもプロジェクトを成功に導く推進役です。

ラクオリアは、それぞれの仲間、ビジネスパートナーやステークホールダーの方々と「信頼」で結びついた関係を重視した企業活動を行います。

(5)トップクラスのプロフェッショナルな研究者集団
研究者たちは、多くの開発候補化合物を作り出してきた経験豊富な元ファイザー中央研究所の社員で、また、欧米研究所での研究経験、国内外学会発表経験や多くの論文発表など、優れた能力を有しています。

多くの新規企業は、企業立ち上げの際に優秀な人材の確保が困難であり、また生産性に影響する社風や文化の構築にその多くの時間と労力を割かなければなりません。ラクオリアでは、当初からトップクラスの人材が確保されており、その多くはファイザー以外の製薬会社での経験を持った研究者です。大手製薬企業のシステム、ノウハウ、さらには、ベンチャー企業のもつ柔軟性やスピードや情熱を、設立したその日から一体化できる集団です。

(6)最先端テクノロジーと充実した研究支援体制
ラクオリアは、設立時点から最先端の研究機器やテクノロジーを保有しており、ダイナミックな研究ができる環境です。

多くの新規企業は、その資金力の制約から研究のための十分な施設や研究設備の保有が困難ですが、ラクオリアには再購入価格で約43億円の最先端の機器類が使いやすい研究施設の中に整っています。

新規研究開発型企業の多くが保有することが困難なIT、人事、財務のインフラ機能に既に経験豊富な優秀な人材が配置されており、スタート時点からサイエンスに集中した効率的な研究活動が行える環境にあります。

[日刊工業新聞 2008年07月03日]
http://www.nikkan.co.jp/newrls/rls0704a-03.html

ファイザー株式会社 プレスリリース
 旧ファイザー中央研究所、ファイザー社より独立
 ラクオリア創薬株式会社としてスタート
http://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2008/2008_07_03.html



突然の閉鎖のニュースはとてもショックでした。
新会社スタート、頑張って下さい! エールを送ります。

ダチョウの卵で抗体、ウイルス撃破、ベンチャー設立=京都府立大学

2008年07月03日 | 創薬
 京都府立大生命環境科学研究科の塚本康浩教授が2日までに、ダチョウの卵黄からウイルス感染を防ぐ抗体を作るベンチャー企業「オーストリッチファーマ」(京都府精華町・けいはんなプラザ)を設立した。大流行の発生が懸念されている鳥インフルエンザウイルスの感染を防御するマスクの販売を年内に始めるとともに、感染症やがんなどのワクチンや治療薬開発も進める。

 抗体は、ウイルスなどの外敵(抗原)から守るために体内で作られ、抗原と結合して不活性化する。

 塚本教授は、人に極めて近い抗体を雌のダチョウで作り、卵黄から精製する世界初の技術を開発した。従来のマウスやウサギと比べ、質のよい抗体を安価に大量生産できる。この技術で、高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)の感染力を奪う抗体を作製した。マスクに抗体を染み込ませた実験で、ウイルス感染を完全に防ぐことができた。

 ファーマは、兵庫県内の契約牧場でダチョウを飼育しており、近く抗体の本格生産を始める。病院で使用するマスクや空調フィルターなどを生産、秋をめどに販売を開始する。さらに、他の感染症やがんなどの抗体の開発、検査キットや治療薬への応用も進める。

 塚本教授は「インフルエンザの感染を抑えたデータは世界で初めて。1カ月ほどで抗体開発はできるので、新型ウイルスにも対応できる」と話している。

[京都新聞 2008年07月03日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008070300033&genre=G1&area=K00

高血圧薬、アルツハイマー病防ぐ可能性=大阪大学

2008年05月26日 | 創薬
 高血圧や高脂血症の薬が、アルツハイマー病による記憶や認知機能の低下を防ぐかもしれない――。大阪大学の森下竜一教授、里直行准教授(臨床遺伝子治療学)らがこんな研究成果を近く学会で発表する。動物実験の結果でまだ研究が必要だが、病気予防につながる可能性がある。

 アルツハイマー病はβアミロイドという物質が脳に異常にたまり、神経細胞が侵されるのが原因と考えられる。

 森下さんらは、アンジオテンシン2受容体拮抗(きっこう)薬という高血圧薬(オルメサルタン)を飲ませたネズミと、飲ませていないネズミで、脳にβアミロイドを注入して認知力と記憶力を調べた。

 プールに入れて足がつく場所を探させると、薬を飲んでいないネズミは足場をあちこち探し回ったのに対し、4週間前から高血圧薬を飲ませていたネズミは、足場のある水域を中心に探すなど認知機能が高かった。足場発見までの時間も1回目は約50秒で大差なかったが、5回目には約35秒と約15秒で記憶力に差が見られた。

 βアミロイドは血管をうまく広がらなくさせる作用が知られる。その結果、神経活動に見合う血液が供給されず、認知機能などが低下するとみられる。今回の実験では薬の効果で血管が回復し、記憶に深くかかわる神経活動も増強されたと考えられるという。

 高脂血症薬では、いったん覚えた水飲み場の場所を1日たっても覚えているかをマウスで実験。薬の一つであるフルバスタチンを飲ませたマウスは、薬を飲んでいないマウスの3分の1ほどの時間で水飲み場を見つけた。

 成果は6月の国際高血圧学会と日本抗加齢医学会で発表する。(小西宏)

[朝日新聞 2008年05月26日]
http://www.asahi.com/health/news/TKY200805250195.html

スルメイカを用いて細胞内の情報伝達構造解明=新薬開発の促進期待=名古屋大学

2008年05月15日 | 創薬
 名古屋大学の研究グループが、ヒト体内にも存在し、細胞内で情報を伝達する「Gたんぱく質」の受容体の立体構造を、スルメイカを使った研究で突き止め、15日、英科学誌ネイチャーに発表した。

 Gたんぱく質の受容体の立体構造は、医薬品を効率よく開発・製造するために必要不可欠な情報。現在、研究に利用されている牛よりも、スルメイカの方がヒトに近い。今回の成果により、アレルギーや血管収縮・拡張などの新薬開発の促進が期待されるという。

[時事ドットコム / 2008年05月15日]
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200805/2008051500027&rel=j&g=soc

 神山勉教授と村上緑助教らの研究チームは、スルメイカの網膜から明るさと色覚を感知するGたんぱく質の受容体「ロドプシン」を取り出し、原子・分子を規則的に並べる結晶化に成功した。
 その上で、ロドプシンの結晶に大型放射光施設「SPring8」(兵庫県)でX線を当てて解析。ロドプシン2分子が天然の脂質を挟んで横向きに緩く結合した上で、情報を伝達することなどを突き止めた。(了)

[時事通信出版局・内外教育研究会 2008年05月15日]
http://book.jiji.com/kyouin/cgi-bin/edu.cgi?20080515-1

放射線から細胞や骨髄を保護する新薬、動物実験に成功=ロズウェルパークがん研究所、ペンシルベニア大学ら

2008年04月11日 | 創薬
【4月11日 AFP】米国の研究チームが、がんの放射線治療法において健康な細胞や骨髄を保護する新薬の動物実験に成功したと、米科学誌サイエンス(Science)の4月11日版に発表した。

 研究を行ったのは、米ロズウェルパークがん研究所(Roswell Park Cancer Institute)のLyudmila Burdelya氏、米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)のRichard Kolesnick医師、米ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)の腫瘍(しゅよう)学者Preet Chaudhary医師などによるチーム。

 放射線治療法はがん腫瘍の破壊に有効である一方、健康な細胞にも壊滅的な影響を与えてしまう。だが、チームが開発した新薬「CBLB502」を使用したところ、治療の効果を損なうことなく、マウスやサルの胃腸細胞や骨髄を放射線から保護したと、研究の主著者のBurdelya氏は話す。

 新薬は、1部のがん細胞が死滅を抑制するために利用する分子経路を活性化することで、効果を発する。放射線治療の直前に処方すると、胃腸細胞や骨髄の放射線による損傷が大幅に減り、延命ができるという。

 核施設や核爆弾などによる放射線被爆に対する効果も期待されている。ヒトに対する臨床試験は夏にも始まる可能性があるという。(c)AFP

[AFP BB News 2008年04月11日]
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2376808/2821935

統合失調症関与のタンパク質発見 治療薬に期待=アステラス製薬、米国立精神衛生研究所

2008年04月08日 | 創薬
 記憶や行動に影響を及ぼし、統合失調症の発症にもかかわるタンパク質を、アステラス製薬(東京)の松本光之主管研究員と米国立精神衛生研究所などのチームが発見し、米科学アカデミー紀要(電子版)に7日付で発表した。

 このタンパク質の働きを抑える物質が見つかれば、統合失調症などの治療薬に使える可能性があるといい、同社が研究を進めている。

 中枢神経で強く働いている「SREB2」と呼ばれるタンパク質。人や動物のゲノム(全遺伝情報)を利用した薬の研究過程で見つかった。

 松本さんらは、SREB2が脳で過剰に機能するマウスと、働かないマウスの2種類をつくって調べたところ、過剰なマウスでは脳が小さくなり中のすき間が拡大。記憶や情報処理など、統合失調症と関連する障害も観察された。

 一方、SREB2が働かないマウスでは脳の重量が増加、記憶力も向上するなど逆の傾向がみられた。

 さらに米国立精神衛生研究所の解析で、SREB2は人でも統合失調症へのかかりやすさを左右し、記憶に関係する、脳の「海馬」と呼ばれる部分の大きさに関係していることが判明した。

[msn産経ニュース / 2008年04月08日]

http://sankei.jp.msn.com/life/body/080408/bdy0804080901001-n1.htm

肝硬変 投薬で正常に ラットでの実験、線維化抑制に成功=札幌医科大学

2008年03月31日 | 創薬
 肝臓の細胞が線維化し治療が困難とされる肝硬変を、線維化を起こすタンパク質コラーゲンの生成を抑える薬を投与することで健康な状態に戻す実験に、札幌医大の新津洋司郎教授(臨床腫瘍(しゅよう)学)らのグループがラットで成功した。31日付の米科学誌ネイチャーバイオテクノロジー(電子版)に発表した。

 早ければ年内にも米国で治験(臨床試験)を始める予定。新津教授は「人に副作用が出ないかどうかの確認などが課題だが、5年以内に実用化したい」と話している。

 肝硬変は肝炎の慢性化などによりコラーゲンが過剰に分泌されて起きる。肝がんにも進行、日本では年に4万数千人が肝硬変と肝がんで死亡している。

 新津教授らは、遺伝情報を写し取るRNAの働きでタンパク質合成を抑制する「RNA干渉」という現象に着目し、コラーゲン生成を促す遺伝子の働きを抑えるRNA断片を設計した。これをリポソームという人工膜で包み、肝臓の中でコラーゲンを作る細胞が取り込みやすいようビタミンAを結合、肝臓内のコラーゲン生成だけを抑制する薬を開発した。

 肝硬変のラットを使った実験では、薬を投与しなかった60匹が約40日で全滅したのに対し、薬を毎週注射した12匹は生き続け、約5週間で肝臓が正常な状態に回復、副作用もなかった。

 肝臓内ではコラーゲンを溶かす物質も分泌されているため、蓄積したコラーゲンは徐々に取り除かれ、正常な肝細胞が回復したという。


[西日本新聞朝刊 / 2008年03月31日]
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/science/20080331/20080331_001.shtml



【マウスの肝硬変治った、治療薬の実用化も=札幌医科大学】

 治療困難とされてきた肝硬変を完治させる治療法を、札幌医科大(札幌市)の新津洋司郎教授らの研究グループが開発した。

 米科学誌「ネイチャー・バイオテクノロジー」4月号に掲載される。まだマウスでの実証段階だが、今後、人間への有効性も確認し、治療薬の実用化を目指す。

 肝硬変は、ウイルス感染などにより肝臓で増殖した「星形細胞」が多量のコラーゲンを分泌し、肝臓が硬化する病気。肝硬変や、それが進んだ肝がんで亡くなる人は、全国で年間約4万人にのぼる。

 新津教授らのグループは、星形細胞がコラーゲンを作るのに必要なたんぱく質「HSP47」に注目し、その働きを抑える物質「SiRNA」で薬を開発。この薬を、通常なら4~5週間で死ぬ肝硬変のマウスに投与したところ、増殖していた星形細胞も消え、肝硬変が完治したことが確認された。

[読売新聞 / 2008年03月31日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080331-OYT1T00235.htm


武田薬品、米アムジェン日本法人買収・900億円、バイオ医薬で攻勢

2008年02月04日 | 創薬
 武田薬品工業は世界最大のバイオ医薬品メーカーである米アムジェンの日本法人を買収する。買収額は900億円強とみられ、武田のM&A(合併・買収)としては過去最大となる。武田は遺伝子組み換え技術などを活用して作るバイオ医薬品で出遅れ気味で、買収により攻勢をかける。製薬業界ではエーザイが米製薬会社を買収するなど成長分野であるバイオ医薬を巡るM&Aが広がっており、国内製薬最大手である武田の攻勢により再編がさらに加速しそうだ。

 武田はアムジェン日本法人(東京・千代田)を買収すると同時に、米アムジェン本社が欧米で開発している13個の新薬候補物質を、日本で優先的に開発・生産・販売する権利を取得する。 (16:00)

[NIKKEI NET 日本経済新聞 / 2008年02月04日]
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080204AT1D0401504022008.html

武田薬品工業 ニュースリリース
武田薬品と米国アムジェン社(Amgen Inc.)による臨床開発品目に関するライセンス契約
ならびにアムジェン株式会社の株式譲渡契約について
http://www.takeda.co.jp/press/article_26107.html

抗がん剤使って関節リウマチ治療=東京医科歯科大学

2008年01月28日 | 創薬
 東京医科歯科大学の上阪等准教授(膠原(こうげん)病・リウマチ内科)らの研究チームは28日、抗がん剤で関節リウマチを治療する方法を開発したと発表した。

 マウスの実験で有効性を確認しており、10年で臨床試験実施にこぎつけたいという。成果は米免疫学会誌に掲載された。

 関節リウマチは、過剰な免疫反応が原因で分泌された物質が、関節内にある滑膜細胞を異常に増殖させ、骨の破壊、関節の変形などを起こす病気。国内に60~80万人の患者がいると推定される。

 上阪准教授らは、一部の抗がん剤が、滑膜細胞の増殖に重要な役割を果たしている酵素の働きを妨げることに着目。リウマチのマウスにこの抗がん剤を投与し、症状が改善することを確認した。投与量はがんの場合の3分の1で済み、副作用も少ない。

[読売新聞 / 2008年01月28日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080128-OYT1T00561.htm

東京医科歯科大学 プレスリリース
「関節リウマチ制圧に向けた新しい抗リウマチ薬の発見」
-従来薬と異なる作用メカニズムをもつ新種類の抗リウマチ薬-
http://www.tmd.ac.jp/cmn/soumu/kouhou/kisyakaiken20080128-1.html
http://www.tmd.ac.jp/cmn/soumu/kouhou/news20080128-1.htm

エボラウイルスを無毒化=東京大学医科学研究所

2008年01月22日 | 創薬
 感染すると致死率が50-90%と高く、ワクチンも治療薬もないエボラ出血熱の原因であるエボラウイルスを遺伝子操作で無毒化し、実験用の特殊な人工細胞の中でしか増えないようにすることに、東京大医科学研究所の河岡義裕教授、海老原秀喜助教らが世界で初めて成功し、米科学アカデミー紀要に22日、発表した。

 ウイルスの危険性が研究のネックだったが、この無毒化ウイルスを使えば、治療薬探しなどの研究が進むと期待される。このウイルスをワクチンとして使う道も考えられるという。

 チームは、遺伝子からウイルスを合成する「リバースジェネティクス」という手法を使い、エボラウイルスが持つ8個の遺伝子のうち、増殖に欠かせない「VP30」という遺伝子だけを取り除いたウイルスを作製した。 できたウイルスは、通常の細胞の中では増えず、毒性を発揮しないが、VP30遺伝子を組み込んだサルの細胞の中でだけ増殖。それ以外の見た目や性質は、本物のエボラウイルスと変わらず、治療薬探しなどの実験に使えることを確認した。

[中日新聞(共同) / 2008年01月22日]
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2008012201000015.html