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ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

ヒトES細胞の大半は類似=京都大学教授ほか国際チーム、11カ国の59株を比較

2007年06月18日 | 再生医療
 京都大など世界11カ国、17カ所の研究機関が所有するヒト胚(はい)性幹細胞(ES細胞)59株の大半は、ES細胞に特徴的な遺伝子などが似ているとの研究結果を、日米欧などの国際チームが18日、米科学誌ネイチャーバイオテクノロジーに発表した。

 チームの1人で京都大再生医科学研究所の中辻憲夫所長は「各国の研究者がどのようなES細胞を使っているかが分かる貴重な研究。ES細胞の標準化につながるかもしれない」と話している。

 中辻所長によると、59株の遺伝子を解析すると、それぞれ独自につくったES細胞であるにかかわらず、約9割は似ていたという。

 似ていなかったほかの細胞は、分化が少し進むなどしている可能性があるという。(共同通信)

[京都新聞 / 2007年06月18日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007061800024&genre=G1&area=K10

シート移植し皮下に肝臓 マウス実験、200日機能=奈良県立医科大学、京都大学、東京女子医科大学

2007年06月18日 | 再生医療
 肝細胞のシートをマウスの皮膚の下に移植し、200日以上にわたり、肝臓の機能の一部を果たすことを確かめたとの研究結果を奈良県立医大と東京女子医大、京都大のグループが米科学誌ネイチャーメディスン(電子版)に18日、発表した。

 肝臓がつくるタンパク質が欠乏する血友病などの治療につながるのではないかという。

 研究グループによると、肝細胞は、ばらばらの状態で移植しても血液の供給がないと短期間で死滅する。そこで、培養皿で肝細胞のシートを作製。マウスの皮膚の下に毛細血管を張り巡らせた場所を作り、シートを移植した。

 すると周囲の血管内皮細胞などとくっつき生着、肝臓のような組織ができた。200日以上にわたり、肝臓と同様にアルブミンや血液凝固因子などを出し続けた。肝臓の特徴である再生増殖能力もあるという。

 研究グループの中島祥介奈良県立医大教授は「シートを使うと肝細胞が効率よく生き残る」と話している。

(共同)
[中日新聞 / 2007年06月18日]
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2007061701000496.html

プラスチックから人工血液を製造=英国シェフィールド大学

2007年05月11日 | 再生医療
英シェフィールドSheffield大学の研究グループが、プラスチック分子から人工血液を作り出したとBBCニュースが報じた。

このプラスチック分子は中心部に鉄原子を有するもので、ヒト血液中のヘモグロビンとよく似た機能をもつという。ヘモグロビンには体内の組織に酸素を運搬する働きがある。

緊急時に代用できる可能性をもつこの新しい血液は、冷蔵の必要がなく、本物の血液よりも長期間保存できるという。このため、救急車や軍隊でも多量に備えておくことが可能になると、同大学のLance Twyman博士は述べている。

BBCニュースによると、研究グループは、生体での試験に向けた試作品を開発するための資金援助を求めている。

(2007.05.11./HealthDayNews)

[Yahoo!ヘルスケア / 2007年05月11日]
http://health.yahoo.co.jp/news/detail?idx0=w30070508

ES細胞で作った肝細胞移植で病状改善=京都大学

2007年04月30日 | 再生医療
ES細胞で作った肝細胞移植で病状改善──京大が動物実験、人体へ応用も

 京都大学再生医科学研究所は、あらゆる組織・器官に成長する万能細胞である胚(はい)性幹細胞(ES細胞)から作った肝臓の細胞をマウスに移植し、病気の症状を改善させることに成功した。ES細胞から肝臓細胞を作る研究は以前からあったが、実際に細胞移植治療の有効性を確認したのは初めてという。将来、生体肝移植の代替医療となる可能性がある。

 石井隆道研究員と中辻憲夫教授らは、マウスのES細胞を約10日間培養。成長して肝臓に特有の遺伝子を持つようになった細胞だけを選び、肝障害を起こしたマウスに移植した。

 細胞は移植後7日目では肝臓の一部に存在するだけだが、35日後には3割超を占めるまでに成長した。肝臓で合成されるたんぱく質で肝臓の働きの指標となるアルブミンも分泌しており、移植したマウスの肝臓に細胞が生着し、きちんと機能しているのが確認できた。

 通常、35日後の肝障害マウスの生存率は20%程度だが、細胞移植したマウスは約67%が生存していた。一方、ES細胞を成長させないまま移植した場合では生存率の改善はみられなかった。

[日経ネット関西版 / 2007年04月30日]
http://www.nikkei.co.jp/kansai/news/39705.html

人工血管:絹の繊維を織物技法で筒状に 実験結果は良好=東京農工大学、農業生物資源研究所

2007年04月29日 | 再生医療
 絹の繊維を織物の技法で筒状に編んだ人工血管を、東京農工大や農業生物資源研究所(旧・蚕糸試験場)などの研究グループが作った。ラットでの実験では、移植から1年たっても血栓ができず経過は良好だ。人工血管は海外製がほとんどだが、研究グループは、日本の伝統的な材料と技法の組み合わせで国産の巻き返しを狙う。

 人工血管には、生体になじみやすいことに加え曲がりやすくつぶれにくい特性が求められる。市販品はポリエチレンなどの合成繊維製や合成樹脂製が主流だが、直径2ミリ以下の細い人工血管は血栓ができやすかった。

 朝倉哲郎・東京農工大教授(構造生物学)らは、絹が手術の縫合糸に使われ、生体へのなじみやすさと強度を兼ね備えていることに着目。「組み」や「巻き」と呼ばれる織物の技法を活用し、絹(太さ約30マイクロメートル=マイクロは100万分の1)を筒状に編んだ。これを絹の繊維を溶かした液に浸し、すき間を繊維でふさいだ。

 出来上がった人工血管(直径1.5ミリ、長さ1センチ)は、東大病院でラットの腹部大動脈に移植。1年後も血流は良好で、血栓もなかった。血管の内側には、生体になじんだことを示すたんぱく質の層もできていた。

 グループはブタなどの大型動物で実験を重ね、人での実用化を目指す。絹を軟骨や角膜を再生するための土台に使う研究も進める。朝倉教授は「絹には血栓の形成を抑制する働きがあり、再生医療の素材や生体材料として有用だ」と話している。【西川拓】

[毎日新聞 / 2007年04月29日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20070429k0000m040113000c.html

傷ついた網膜、薬で視細胞再生促すことに成功=理化学研究所

2007年04月11日 | 再生医療
 理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の研究グループは、マウスやサルの傷ついた網膜に薬を作用させ、物を見るのに必要な視細胞の再生を促すことに成功した。神経細胞を助ける役割の「グリア細胞」が分裂し、新たに視細胞ができたという。再生した視細胞が機能すると確認されれば、眼球に薬を注射して網膜を再生させる治療法の道が開ける。11日付の米科学誌「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」に掲載された。

 目に入った光は、網膜の視細胞で感知され、視神経を通じて視覚情報として脳に伝えられる。網膜は一度傷つくと修復が難しく、視細胞が徐々に失われる網膜色素変性という病気は日本に約3万人の患者がいるが、有効な治療法はないという。

 グループは、マウスやサルの網膜を取り出し、「Wnt3a」というたんぱく質などを投与することで、網膜のグリア細胞を盛んに分裂させることに成功した。さらに、視細胞が作られる際に必要なレチノイン酸を加え、視細胞になることを確認した。

 高橋政代チームリーダー(眼科学)は「マウスやサルでも自然な網膜の再生はごくわずか。研究を治療に生かすには、人でも網膜再生が起きるか調べ、新しくできた視細胞が網膜の神経回路に組み込まれるか確認しないといけない」と、今後の課題を説明している。【根本毅】


(写真は、理研・プレスリリースより、傷害後に視細胞が新生する様子。
緑:新生細胞、赤:視細胞、矢印が新生視細胞。成体ラットの単離培養網膜を傷害し、Wat3aを投与すると、新生細胞が多数生まれ、視細胞へと分化することが観察できた。)


[毎日新聞 / 2007年04月11日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20070412k0000m040010000c.html

理化学研究所 プレスリリース
「傷害を受けた網膜細胞を薬で再生する手法を発見
 - 移植治療と異なる薬物による新たな再生治療への第一歩 - 」
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2007/070411_2/detail.html

網膜再生に新手法 低分子化合物の投与効果 理化学研究所(産経新聞) - goo ニュース

角膜組織、細胞1個から再生に成功=東京大学病院

2007年03月14日 | 再生医療
 薬品や薬の副作用で角膜の表面が大きく傷ついたため起きる視力低下の治療に欠かせない角膜上皮組織を、1個の角膜の細胞から作製することに東京大病院の研究チームが成功した。

 これまでは角膜の正常な部分を2平方ミリ・メートル採取して培養する必要があったが、今回の方法を使えば、組織のもとになる幹細胞が1個でも採取できれば、視力回復につなげることが期待できるという。横浜市で開かれている日本再生医療学会で13日、発表した。

 同病院角膜組織再生医療寄付講座の山上聡客員助教授と横尾誠一助手らは、人間の角膜から黒目周辺の角膜輪部という部分を採取し、酵素でバラバラにして培養した。その結果、約1週間で直径約0・3ミリの塊になり、3週間後には直径約2センチのシート状の角膜上皮組織ができた。この組織は通常の角膜上皮組織と同じ三次元構造をしていた。

 山上客員助教授は「数年以内の臨床応用を目指したい」と話している。

[読売新聞 / 2007年03月14日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070314i407.htm

[薬事日報 / 2007年03月14日]の記事
http://www.yakuji.co.jp/entry2505.html

東京大学 医学部 眼科学教室のページ
http://plaza.umin.ac.jp/oph/index.html

コラーゲン:サケの皮から抽出し人工血管作成=北海道大学

2007年03月14日 | 再生医療
 北海道大などの研究チームが、サケの皮のコラーゲンから人工血管を作り、ラットの大動脈部分に移植したところ、2週間以上の生存が確認された。13日から横浜市内で始まる日本再生医療学会で発表する。海洋性動物のコラーゲンから人工血管を作成し、機能が確認されたのは世界初という。研究チームは、サケからヒトに感染するウイルスが報告されていないことなどから、安全性も高いとみている。【永山悦子】

 水産加工後に大量に廃棄される天然のサケの皮は北海道で年約2000トンに上る。ここからコラーゲンを抽出した場合、年約600トンを採取できるという。また、従来の人工組織は、牛やブタのコラーゲンを使っていたが、BSE(牛海綿状脳症)など感染症による危険性も懸念されている。

 このため、研究チームは廃棄量が大きく、安全性も高いサケの皮に注目し、再生医療への応用を目指した。

 課題はサケのコラーゲンが熱に弱く、19度で溶けてしまうことだった。そのままではヒトの体内に移植できないため、コラーゲンの構造を糸状の塊に変えたり、構成する分子間の結合を強めるなどの処理を行い、溶け始めの温度を55度まで上げることに成功した。

 耐熱性が上がったコラーゲンで内径1.6ミリ、厚さ0.6ミリのチューブを作り、今年2月下旬にラットの腹部の大動脈へ移植した。その結果、チューブは心臓の拍動に合わせて伸び縮みし、元の大動脈同様の強度と伸縮性が確認された。

 研究チームの永井展裕・北大創成科学共同研究機構特任助手(移植医療)は「今後イヌなどの大型動物で実験し、将来はヒトの心筋梗塞(こうそく)治療に使える細い口径の人工血管開発を目指したい」と話している。

[毎日新聞 / 2007年03月11日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20070311k0000m040119000c.html

北大リサーチ&ビジネスパーク構想、移植医療・組織工学のページ
http://www.cris.hokudai.ac.jp/cris/rbp/create_03/create_03_2/index.html

ES細胞:マウスの卵子使いクローン胚から作成=理化学研究所

2007年02月20日 | 再生医療
 理化学研究所の研究チームが、体外受精できなかったマウスの卵子を使い、胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を効率よく作り出すことに成功した。体外受精に失敗した卵子は通常捨てられるが、研究チームはこれにマウスの体細胞の核を移植し、クローン胚からES細胞を作った。クローン胚由来のES細胞を、新鮮な卵子を使わずに作り出す方法として注目を集めそうだ。19日付の米科学誌「カレント・バイオロジー」に発表した。

 研究チームは、体外受精を実施した920個のマウスの卵子のうち、受精しなかった卵子432個に体細胞の核を移植してクローン胚を作成。特定の化学物質に浸すことによって、クローン胚の6%からES細胞を作成できた。新鮮な卵子を使った場合(7%)とほとんど差がなかった。受精失敗後に24時間保存した卵子でも、4%からES細胞ができた。

 作成されたES細胞は、新鮮な卵子から作ったES細胞と同様に、さまざまな器官や組織に発達する能力が確認された。

 また、体外受精で受精しなかった別の卵子に体細胞の核を移植し、357個のクローン胚をメスのマウスの子宮へ戻したが、子どもは1匹も生まれなかった。体外受精しなかったマウスの卵子は、ES細胞を作る能力はあるものの、子どもまでは成長できないらしい。

 ヒトクローン胚からのES細胞が実現すれば、患者と同じ遺伝情報を持つ器官や組織を作ることができ、難病治療につながると期待されているが、胚を作るための新鮮な卵子の入手方法が課題になっている。研究チームの若山照彦・ゲノム・リプログラミング研究チームリーダーは「体外受精しなかった卵子がES細胞作成に使えることが、ほ乳類で初めて確認できた。ヒトでも体外受精せず廃棄する卵子を使えるようになれば、健康な女性や不妊患者から卵子を新たに採取する必要がなくなるかもしれない」と話している。【永山悦子】

[毎日新聞 / 2007年2月20日]

細胞から歯と毛が再生、マウスで成功=東京理科大学

2007年02月19日 | 再生医療
 マウスの胎児から歯のもとになる細胞を取り出して培養し、おとなの歯を再生させることに、東京理科大の辻孝・助教授(再生医工学)らの研究グループが成功した。作製の成功率は100%で、歯の中に血管や神経などもできていた。臓器を人工的に再生させる技術につながると期待される。18日付の米科学誌ネイチャーメソッズ電子版で発表する。

 胎児期にはさまざまな臓器や組織が、上皮細胞と間葉細胞という2種の細胞の相互作用でつくられる。辻さんらはこれに着目。マウス胎児のあごの歯胚(はい)から取り出した両細胞を酵素でばらばらにし、どちらも高密度の細胞塊にしたうえで、区分けしてコラーゲンのゲルに入れると、培養に成功することを突き止めた。

 さらに、この細胞塊を50匹のマウスの腎皮膜下に注射。14日後に、すべてで歯の形成を確認できた。歯の再生研究は他にもあるが、作製率は20~25%にとどまっていた。

 また、生体内で育てた歯や、生体の外で人工培養を続けた細胞塊を、おとなのマウスの歯を抜いた跡に移植すると、歯が高い頻度で生着した。この歯の内部には血管や神経のほか、クッションなどの役割を果たす歯根膜も再生できていた。

 グループは今回、同様の手法で毛の再生にも成功した。今後、肝臓や腎臓などの臓器づくりも目指すという。

[朝日新聞 / 2007年02月19日]
http://www.asahi.com/science/news/TKY200702180168.html

[東京理科大学新聞会 / 2007年02月19日]
http://tuspress.jp/archives/2007/02/19-2127.html

[FujiSankei Business / 2007年02月19日]
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200702190017a.nwc

子宮内膜細胞から筋肉細胞を作成=国立成育医療センター

2007年01月24日 | 再生医療
 国立成育医療センター研究所の梅沢明弘・生殖医療研究部長らのグループは、細胞治療技術を使い、筋ジストロフィーの治療につながる基礎実験に成功した。女性の子宮内膜の細胞から筋肉細胞を作り、欠損するとこの病気になるたんぱく質をマウスの中で作り出した。患者への負担や倫理的な課題のない治療技術につながるとみている。
 研究グループはまず、女性ボランティアに提供してもらった月経血を培養した。この血液中には子宮内膜の組織が混ざり、分化の機能を備えた間質細胞も含まれる。この中から約12%の比率で骨格筋の細胞を分化、成長させた。


[日経産業新聞 / 2007年1月24日]
http://health.nikkei.co.jp/news/top/index.cfm?i=2007012308016h1

国立成育医療センター研究所ホームページ

皮下脂肪から肝臓細胞を作製=国立がんセンター

2007年01月06日 | 再生医療
 国立がんセンター研究所と国立国際医療センターの研究チームが、人体の皮下脂肪から、肝臓細胞を作製することに成功した。

 肝炎や肝硬変など国内に350万人以上いる肝臓病患者の肝臓を修復する再生医療の実現に近づく成果として注目されそうだ。チームは「数年以内に臨床応用を検討したい」という。

 同研究所の落谷孝広・がん転移研究室長=分子腫瘍(しゅよう)学=とアグネス・バナス研究員らは、皮下脂肪に含まれている「間葉系幹細胞」という細胞に着目した。さまざまな臓器や組織の細胞に変化する可能性を秘めており、皮下脂肪の細胞の約10%を占める。

 研究チームは、国際医療センターで腹部の手術を受けた患者7人から皮下脂肪を5グラムずつ採取、この幹細胞を分離し、成長を促す3種類のたんぱく質を加えて約40日間培養したところ、ほぼすべてが肝細胞に変化した。

 得られた肝細胞の性質を調べてみると、血液の主成分の一つであるアルブミンをはじめ、薬物代謝酵素など肝臓でしか合成されないたんぱく質が14種類以上検出された。人工的に肝機能不全に陥らせたマウスに、この肝細胞約100万個を注射で移植したところ、上昇していたアンモニア濃度が1日で正常レベルに低下した。

 皮下脂肪から再生した細胞は、乳房の修復などにも用いられているが、肝臓の持つ複数の機能が確認されたのは世界で初めて。

 再生医療の研究では、胚(はい)性幹細胞(ES細胞)が有名だが、受精卵を壊して作るため批判を受けやすい。皮下脂肪を使えば倫理的な障害は少なく、患者自身から採取した細胞なので拒絶反応も起きないという利点がある。

 落谷室長は「皮下脂肪から作製した肝細胞は、機能などの点からみると、合格点ぎりぎりの60点程度。より本物に近い機能を持った肝細胞を作製したい」と話している。

[2007年1月6日 / 読売新聞]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070106i406.htm

心臓病治療に「心筋シート」=大阪大、東京女子医科大学

2007年01月02日 | 再生医療
 重い心臓病の治療で、患者自身の筋肉の細胞から「心筋シート」を作り心臓に張って心筋再生を図るという、世界でも例のない臨床研究を、大阪大や東京女子医大のグループが実施する。対象には、補助人工心臓を着けて心臓移植を待っている患者6人を予定。重い副作用がなく人工心臓を外せるようになるなど安全性と効果が確認できれば、より多くの患者に広げるという。

 大阪大病院未来医療センター長の澤芳樹教授(心臓血管・呼吸器外科学)らが計画。医学部の倫理委員会と、同センターの審査評価委員会の承認をすでに得ている。

 対象は、拡張型心筋症の70歳以下の患者。同症は心筋が弱って薄く伸び、心臓内の空間が広がって血液がうまく送り出せなくなる。重症になると心臓移植しか治療法はなく、患者は補助人工心臓を着けながらドナーからの提供を待つ。

 具体的には、まず患者の太ももから5~10グラムの筋肉を摘出。筋芽細胞という、筋肉が損傷を受けた時に分裂、分化して損傷を補う細胞を探し出す。その細胞を特殊な培養液で24時間培養して増やし、直径3~4センチ、厚さ50マイクロメートルのシートを10枚ほど作る。これを3枚重ねにして、左心室の表面に張る。

 イヌなどの動物を使った実験では、心筋が再生され、心臓のポンプ機能が回復することが確認されている。

 筋芽細胞を培養し、そのまま心筋内に注入する臨床研究は、欧米ですでに実施され、大阪大も取り組んでいる。一定の効果も報告されているが、欧米では注入した細胞の一部しか機能しないうえ、重い不整脈などの副作用も指摘されている。

 澤教授は「シートは、弱った心臓を覆うように張れるので効果も広く期待できる。シートを作る技術も確立している。慎重に研究を進めて結果を分析し、ほかの心臓病にも広げたい」と話す。

[2007.01.02/朝日新聞]
http://www.asahi.com/science/news/TKY200612300207.html

心筋再生:ヒト応用目指しブタ実験へ=自治医科大学、東京女子医科大学

2006年12月30日 | 再生医療
 自治医科大と東京女子医大の研究チームが来年1月、ブタの心筋細胞から作ったチューブを別のブタに移植し拍動させる実験に乗り出す。ラットを使った同様の実験は既に成功しており、研究チームの小林英司・自治医大教授(移植免疫)は「将来はヒトの細胞から心不全治療に使える『拍動動脈』を作りたい」と話す。

 現在、心臓移植を受けられない重症の心不全の患者は、補助人工心臓を埋め込む治療を受ける。長く使用できるタイプもあるが、機械を体内に入れることによる感染症や機械の故障などトラブルも多い。

 研究チームは昨年春、生まれたばかりのラットの心筋細胞を培養し、別のラットから取り出した動脈に巻きつけて直径1.3ミリのチューブを作った。それを大人のラットの大動脈に移植したところ、4週間後にチューブが独自の拍動をし、血圧が上がっていることを確認した。

 ブタの実験では、ブタの胎児から心筋細胞を採取して同様のチューブを作り、別の大人のブタの大動脈に移植する。移植するチューブが1本の場合と3本の場合を比べ、血圧上昇への関与を調べる。実験が成功すればヒトへの応用も視野に入ってくるという。

 ただ、大人のヒトの心筋細胞を増殖させることは難しいため、実現には受精卵から作る胚(はい)性幹細胞(ES細胞)などから心筋細胞を成長させる技術の確立が必要だ。

 小林教授は「国内では脳死臓器提供者が非常に少なく、移植までの待機期間が非常に長い。チューブは生体と同じ組織。補助人工心臓と違って動力の外部エネルギーも不要なため、成功すれば患者側のメリットは大きい」と話している。
【永山悦子】

[毎日新聞 2006年12月30日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20061230k0000m040117000c.html

腎臓再生:ラットの体内で 幹細胞から 世界初=東京慈恵会医科大学

2006年12月10日 | 再生医療
 東京慈恵会医科大と自治医大の研究チームが、ラットの胎児の体内にヒトの骨髄液由来の幹細胞を埋め込み、ヒトの腎臓の一部(糸球体と尿細管)を作ることに世界で初めて成功した。さらに、その組織を別のラットの腹部に移植したところ、移植を受けたラットの血管が入り込み、通常のラットの腎臓の10分の1の大きさまで成長した。重い腎臓病に苦しむ患者が多い中、患者自身の細胞を使って人工的に腎臓を再生し、移植後も機能させる可能性につながる成果として注目される。【永山悦子】

 研究チームは、免疫機能が確立されていない動物の胎児では、他の個体の組織への拒絶反応が低く、急速な臓器生成能力がある点に着目。

 ヒトの骨髄液に含まれる、さまざまな臓器の組織になる能力がある幹細胞を、臓器が出来る前の胎児ラット(受精後11.5日目)の腎臓が作られる部分に埋めた。2日後、腎臓の主な機能を担う糸球体と尿細管に発達し、血液から尿をろ過する能力も確認できた。

 さらに、この組織を別のラットの腹部の臓器を覆う「大網」と呼ばれる膜に移植したところ、組織内の糸球体に向かって新しい血管が伸び、移植された組織が成長した。

 チームによると、将来的には、重症腎不全の患者の骨髄幹細胞をブタなど、より大きなサイズの動物の胎児内で腎臓の初期段階まで成長させることを計画している。成長した組織を再び患者の体内に戻せば、大網から血管が伸びて尿を作ることができるようになり、人工透析治療や他者からの腎移植に頼らなくても済むとみている。

 今後、組織を移植する際、異種の動物が持つウイルスの感染をどう防ぐかという課題が解決されれば、実用化の可能性が高まるという。

 研究チームの横尾隆・東京慈恵会医科大助手(腎臓高血圧内科)は「自分自身の遺伝情報を持った臓器を再生して移植する新たな医療の可能性を、動物レベルで確かめることができた。現在の深刻なドナー(臓器提供者)不足を解決する一つの方法にしたい」と話している。

 ■解説 再生医療の実用化に一歩

 日本臓器移植ネットワークによると、先月末現在、腎臓移植を待つ患者は全国で1万1800人に上る。一方、脳死と心停止後の今年の腎臓提供者は先月末で101人で、生体腎移植や海外での移植に頼る人が後を絶たない。提供者不足が目立つ中、がんなど病気のため摘出した腎臓を使った移植まで明らかになった。

 臓器不全の難病患者にとって再生医療は、他人に頼る移植医療に代わる「頼みの綱」だ。しかし、従来は幹細胞から臓器の形状を作り、機能させることは難しかった。東京慈恵会医科大と自治医大の研究チームは、今回の成功を受け、「ギリギリの状態に追い詰められた患者のため、実用化を見据えた研究にしたい」と話す。

 動物の体内でヒトの臓器を育てて使うことは「異種移植」になるため、倫理的な問題やウイルス感染など、乗り越えるべき課題は残されている。だが、患者自身の遺伝情報を持つ臓器を実際に再生できる道筋が明らかになった意義は大きい。【永山悦子】

 ▽園田孝夫・大阪大名誉教授(日本臓器移植ネットワーク西日本支部長)の話 実際の臓器として機能するには、作られた尿を体外へ排出するために腎盂(じんう)や尿管の再生も必要だ。また臓器のサイズもブタやサルなど、より大型な動物での成功が求められる。まだ初期の段階の研究ではあるが、将来の方向性を示す糸口になる成果と言えるのではないか。

 ■幹細胞 自分と同じ細胞を作り出す能力しかない普通の細胞と違い、臓器や組織を構成する細胞に分化する能力を持つ。受精卵から作る「胚(はい)性幹細胞(ES細胞)」は、体のさまざまな細胞や臓器に成長する性質を持つため「万能幹細胞」とも呼ばれる。一方、血液、肝臓、皮膚など特定の細胞にだけ分化する幹細胞は「体性幹細胞」と呼ばれる。骨髄液由来の幹細胞は、胚性幹細胞に近い万能性が確認されている。

[毎日新聞 / 2006年12月10日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20061210k0000m040141000c.html